国を守護する聖獣は、聖女と呼ばれた少女より嫌われ者の悪女を望む

紫宛

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第4話 出会い

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フルスターリの王都フルスタに、私たちは足を踏み入れました。街の入口には兵士が立っていたので、厳しい審査があるのかと思えば…持ち物検査と印を入れられるだけでした。

この印は、私が貴族で殿下の代理で王都を訪れた際にも入れられたものです。街を出る時に印を抜きました。

何でも、誰かを傷付けたり犯罪を犯すと赤く光るんだそう。そして、身体能力含め全能力が低下するので逃げる事が出来ないそうです。

実際にこの国で罪を犯した訳では無いので、聞きかじりですが……

「こんな軽くて良いのでしょうか?私みたいに犯罪者を入れて後々問題に……」
『ならないよ……』
『ん、リアは犯罪者じゃないもんね!』

いつの間にか、ソル様は私をリアと愛称で呼ぶようになりました。嫌ではありません、むしろ嬉しいです。レゴル様や家族にも、愛称で呼ばれた事はありませんでしたから…

『ねぇ、リア……これから、王様に会うの?』

レヴォネ様が私の左手を引きながら、街の中にある屋台に目を光らせています。

『その前に、腹ごしらえだよ!リアはお腹すいてるでしょ?!』

ソル様も同じように私の右手を引きながら、街の中の屋台に連れて行こうとします。

「今の私に、会って下さるでしょうか……」

街に入る前は、2人に勇気づけられて会うって決めましたが…やはり、お城を前にすると尻込みしてしまいます。

『大丈夫……』
『大丈夫だよ!僕達の存在に気付いてるだろうからね!』

『『問題があるとしたら……僕たちの方かな』』と2人は言いました。ケンカになるかも知れないと…

どういう事でしょうか?

その理由は話して下さいませんでした。行けばわかるから……と。

街の屋台で、ヴィルトボアという魔獣の肉を串焼きにしている店を見つけ、3人で座って食べました。お金は、レヴォネ様が出してくださいました。

普段聖域や神域にいらっしゃるだろう御二人が、地上のお金や勘定に詳しいのは驚きましたが…よく遊びに来ていたそうです。

『だから、リアの事も知ってたんだ!』
『ん…』

ソル様の言葉に、レヴォネ様は頷きました。

お腹も膨れ、そろそろお城に行く事になりました。
それに伴って、私の緊張も高まって行きます。

『もし、リアに何かしたらその時点で僕達が容赦しないよ』
『守る、安心して……』

優しく、それでいて強く手を握られる。
その瞳を見つめれば、強い眼差しで見つめ返される。

「信じろ」……そう言われているみたい。

だから私も……2人の手を強く握り返し、門の前に佇む兵士に声を掛けました。

「竜王陛下に拝謁賜りたく……」
「話は聞いています、お通り下さい」
「……え?」

兵士の方が、聞いたと言ました。
私が行く事は、ソル様達しか知らないはずなのに……。もしかして、食事の前にソル様が言ったことが理由でしょうか?『僕達の存在に気付いてる』と言ってましたから……

兵士の方の案内で謁見室に向かっていると、大理石で作られた階段や柱が目に入って来ました。フルスターリでは石職人の技術が向上し、近年他国にも技術提供をしていると聞きます。

それにしても……大理石で作られたお城は美しい流線型で、何度見ても何時間見ていても飽きるものではありません。

石職人の技術の高さに敬服し感動すら覚えます。

先程まで感じていた緊張は解れ、気持ちを引き締める事も出来ました。もうなるようにしか、なりませんものね。

「竜王陛下、お客様をお連れしました」
「入れ」

扉は閉まっていますのに、威圧の様なものを既に感じます。

「どうぞ」

扉は開かれ、兵士の方に促され、そしてソル様とレヴォネ様に手を引かれ中に入ります。

「お前達は、外に出ていろ」
「はっ」

私達が中に入ると竜王陛下は、兵士や文官達を外に出しました。中に居るのは、私とソル様レヴォネ様、ラファール竜王陛下と竜王陛下の護衛兼側近のゼファール様、宰相ナファール様、更に小さな銀色の龍が残りました。

ラファール様、ゼファール様、ナファール様は、血は繋がってませんが御兄弟です。ナファール様が長男で、ラファール様は次男、ゼファール様が三男です。

ある程度は、貴族時代に知りました。この国の事も、陛下たちの事情も、情勢も…

「久しぶりですね、ラフィーリア様」
「この様な格好で失礼しますわ、ナファール様」

初めに声をかけて下さったのは、宰相のナファール様です。私は旅装束の格好で、不格好ですがカーテシーで挨拶をしました。

この格好は、処刑場から逃げ出した後にレヴォネ様が用意して下さいました。ソル様よりセンスは良いからと。

「私の事は聞き及んでいると思いますが…」
「……あぁ、だが…貴方がそのような事をするとは思っていない。全ての情報を入手している訳では無い……が、今まで接して来て貴方が毒をもって聖女を害すはずは無いと確信を持って言える」
「ええ。我が国との架け橋になって下さった貴方が、そのような愚かな事をなさるとは思えません」
「あぁ、貴方なら姑息な手段より正々堂々と叩きのめすだろ」

……ゼファール様、ちょっと論点が違う気がしますわ……でも、信じて下さるのですね。

『妾は信じぬ!金龍の愛し子などっ!』

そう怒り始めたのは、ラファール竜王陛下の肩に乗った銀色の龍でした。
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