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5話
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「っ?」
《っ……痛いですわ。私叩かれたのですか?メディに?なぜ?》
目がパチパチさせて驚き固まっているリディ。護衛の騎士や侍女も驚いていた。
もちろん俺も、側近も。
「ヴェル様は、私と会う約束をしてたのに、アンタが邪魔したんでしょう!」
「え……?」
《え?ヴェルグ様と約束?邪魔?……メディと?いつ?この時間?そんな……!やっぱりヴェルグ様はメディの事が好きなの?!》
ビクッと肩を震わせるリディ。
それでも表情は変わらなかったが、瞳が悲しげに揺れている?
そして、相変わらず彼女の心の声は雄弁だ。
(誤解だからな!リディ)
俺は、直ぐに訂正を入れた。
リディに誤解されたら悲しい。
「何をしている?お前は実の姉に何をした?そもそも、約束などしていないだろう」
声が少し低くなってしまったが、リディに暴言を吐く女には丁度いいだろ。
たとえ、妹でも言っていい事と悪いことがあるのを知らないのか。
「邪魔をしたこの女が悪いのです!私とヴェル様の仲を邪魔した!」
「何を言っている?私は行かないとアーキスから聞いただろう」
「確かに伝えたよ、俺」
「アース様も!エル様も!フィン様も!なんで私に靡かないのよ!ここは乙女ゲーの世界でしょ?!わたし、ヒロインなのよ?!」
「乙女ゲー?」
「ヒロイン?」
「何言ってるのですか?そして、何気に私たちを愛称で呼びましたが、許可してませんよ?勝手に呼ばないでください。不愉快です」
アーキスもラフィンも初めて聞く言葉に、困惑気味だ。エルバートも困惑していたが、それよりも彼女が口にした愛称呼びを咎めた。
「何でよ!?どうして上手くいかないの?!…もう、良いわよっ」
そう言って怒鳴り散らしながら、ラウンジを出ていった。
「何だったんだ……一体」
《メディ…どうして……?昔はあんなんじゃなかったわ。優しい良い子だったのに、お父様もお母様も変わってしまった。何が原因なの?ヴェルグ様も変わってしまうの?私は……》
不安そうな声と、愁いを帯びた瞳。
彼女の顔は、無表情のように見えて意外と目が感情を物語っていた。
「リディ、不安そうな顔をするな」
顔を上げ私を見上げるリディ。
「ヴェルグ様」
「ヴェル、と呼んで欲しい。君になら許す。私は君と婚約して良かったと思っている。だから、そう不安そうな顔をするな」
《え?なぜ私が不安に思ってると分かったのでしょうか?顔に出てました?!》
リディは、両手で自分の顔をムニムニと触りだした。
「ふっ」
「っ、笑いましたね。ヴェ……」
「リディ?」
「ヴェ、ヴェ…ル、……ヴェル……様」
《は、恥ずかしいですわ……でも、とても嬉しい。ヴェルグ様が私といて下さることが。メディではなく、私に笑って下さることが。私を……見て下さることが。お慕いしておりますわ、ヴェル様》
顔が赤く染まり、そっぽを向くリディにその場にいた全員が可愛いと思った。
《っ……痛いですわ。私叩かれたのですか?メディに?なぜ?》
目がパチパチさせて驚き固まっているリディ。護衛の騎士や侍女も驚いていた。
もちろん俺も、側近も。
「ヴェル様は、私と会う約束をしてたのに、アンタが邪魔したんでしょう!」
「え……?」
《え?ヴェルグ様と約束?邪魔?……メディと?いつ?この時間?そんな……!やっぱりヴェルグ様はメディの事が好きなの?!》
ビクッと肩を震わせるリディ。
それでも表情は変わらなかったが、瞳が悲しげに揺れている?
そして、相変わらず彼女の心の声は雄弁だ。
(誤解だからな!リディ)
俺は、直ぐに訂正を入れた。
リディに誤解されたら悲しい。
「何をしている?お前は実の姉に何をした?そもそも、約束などしていないだろう」
声が少し低くなってしまったが、リディに暴言を吐く女には丁度いいだろ。
たとえ、妹でも言っていい事と悪いことがあるのを知らないのか。
「邪魔をしたこの女が悪いのです!私とヴェル様の仲を邪魔した!」
「何を言っている?私は行かないとアーキスから聞いただろう」
「確かに伝えたよ、俺」
「アース様も!エル様も!フィン様も!なんで私に靡かないのよ!ここは乙女ゲーの世界でしょ?!わたし、ヒロインなのよ?!」
「乙女ゲー?」
「ヒロイン?」
「何言ってるのですか?そして、何気に私たちを愛称で呼びましたが、許可してませんよ?勝手に呼ばないでください。不愉快です」
アーキスもラフィンも初めて聞く言葉に、困惑気味だ。エルバートも困惑していたが、それよりも彼女が口にした愛称呼びを咎めた。
「何でよ!?どうして上手くいかないの?!…もう、良いわよっ」
そう言って怒鳴り散らしながら、ラウンジを出ていった。
「何だったんだ……一体」
《メディ…どうして……?昔はあんなんじゃなかったわ。優しい良い子だったのに、お父様もお母様も変わってしまった。何が原因なの?ヴェルグ様も変わってしまうの?私は……》
不安そうな声と、愁いを帯びた瞳。
彼女の顔は、無表情のように見えて意外と目が感情を物語っていた。
「リディ、不安そうな顔をするな」
顔を上げ私を見上げるリディ。
「ヴェルグ様」
「ヴェル、と呼んで欲しい。君になら許す。私は君と婚約して良かったと思っている。だから、そう不安そうな顔をするな」
《え?なぜ私が不安に思ってると分かったのでしょうか?顔に出てました?!》
リディは、両手で自分の顔をムニムニと触りだした。
「ふっ」
「っ、笑いましたね。ヴェ……」
「リディ?」
「ヴェ、ヴェ…ル、……ヴェル……様」
《は、恥ずかしいですわ……でも、とても嬉しい。ヴェルグ様が私といて下さることが。メディではなく、私に笑って下さることが。私を……見て下さることが。お慕いしておりますわ、ヴェル様》
顔が赤く染まり、そっぽを向くリディにその場にいた全員が可愛いと思った。
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