死に場所を探す悪役令嬢は、討伐隊の隊長に愛されました(R15)

紫宛

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第7話 討伐後の一時

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キマイラは、ヴェイグ様達の手によって倒されました。それにより、村の村長さんがヴェイグ様たち討伐隊を招待し宴をするそうです。

……あ、当然私は参加しません。
村長さんの……仇を見るような目が、今も印象に残っています。ヴェイグ様やレヴィン様は、私のお陰で助かったのだから、と説得して下さいましたが……村長さんは首を縦に振ることはありませんでした。

聖女様を害した私を、村が受け入れる訳が無いのです。……当然、村にも入る事は出来なかったので今日は外で野宿です。

ヴェイグ様や討伐隊として参加していたチームは、村長さんや村の人達のお家にお邪魔するみたいです。


私は1人、村の外に結界を張って着ていたローブを脱ぎ丸め枕の代わりにします。

「…………」
(星が、綺麗ね……)

そんな静かな場所に、土を踏む音が近付いてくる気配がしました。……振り向くと、そこに居たのは……

「…………?」
(ヴェイグ様?)

口が動いたけれど、もちろん声は出てません。

こちらに向かってくる彼の顔は、とても険しくて……キマイラとの戦いで、勝手な行動をしたのを怒っているのだと理解しました。

「ほら、これを食え」

けれど、険しい彼の顔とは裏腹に、その言葉は優しく温かみがありました。そして、その手には湯気が立つ美味しそうな料理が……

「……」
「こっそり、くすねて来た」

ヴェイグ様達に出された食事を、私の為に彼らの目を盗んでわざわざ持って来て下さったそうです。

(ヴェイグ様……1日くらい食べなくても、私は死にはしませんよ?)

牢屋に居た時は、3日ほど食事がなくても生きていましたから…それを視線で訴えてみましたが、彼の一瞥で黙殺されました。

地面にお盆を置くと、「一番の功労者が、食わなくてどうする」と、彼は険しい顔を更に険しくさせて言いました。

「……」

そうかも知れませんが……でも、倒したのはヴェイグ様ですし。私が未だ食事に手をつけられないでいるとおもむろに、お盆の上のパンを手に取り1口大にちぎり始めました。

そして……

「食え」

と、ちぎったパンを私の口元に持ってきました。
驚いて彼の手元を凝視した私にヴェイグ様は、パンを唇に当て口を開くように催促しました。

「…………」

口を開けないと、ヴェイグ様の行為は終わらない気がしたので……私は諦めて口を開けると、口の中にふわふわのパンを押し込められました。

1口大でしたが……口に入れてみると、結構な大きさでした。ふわふわでしたので、何とか口に入りましたが……飲み込むのに時間がかかってしまいました。

更に、具が沢山入ったスープを匙ですくい、再び口元に持ってくるヴェイグ様。

(私が口を開けないと、この手はこのままなのよね?)

私は、満腹でお腹が苦しくなるまでヴェイグ様に食べさせて貰いました。
今は、食事と一緒に持ってきていたお茶を頂いています。

「なぜ、あんな事をした?」

あんな事……の意味は、魔法を使って勝手に飛び出したことを言っているのでしょう。
私は、ヴェイグ様の言葉に視線を外す事で拒否を示しました。

「もし、貴方が死んでいたなら……」

(私が死んでいたなら、きっと神様から許されたという事なのでしょうね)

でも、私の思いとは別にヴェイグ様はとんでもない事を言いました。

「もし、貴方が死んでいたなら…俺達は一生自分を許せなかった。貴方を守れなかった事を、一生悔やみながら生きていく事になった」

その言葉に私は息を飲み顔を上げ、ヴェイグ様を見上げた。

視線が交差する…真剣なヴェイグ様の瞳に、私の……何もかもを諦めた目が映る。

「…………」
「貴方を死なせては…俺は俺達は、自国の民に恨まれるだろうしな」

そして、彼は私の頭に手を乗せて「ゆっくり休んでくれ。俺が見張りをしておくから」と言いました。

『結界を張っているから、1人でも問題ありません』

と、地面に枝で文字を書く。
流石にヴェイグ様を巻き込み地面に寝かせるのは……

「貴方を1人にする気は無い。そんな事をすれば俺は、レヴィンや仲間に殺されるからな」

流石にそれはないと思います。と思ったけれど、思いの外真剣な彼の瞳に何も言えませんでした。
私は自分のローブを丸めた枕で横になると、ヴェイグ様が自身のマントを私にかけて下さいました。

汚れるからと返そうとしたけれど、力では敵いませんから……押し切られる形で、使わせて頂きました。



翌朝、目が覚めると…そこに居たのは、ヴェイグ様では無くレヴィン様でした。

「おはようございます、ミナージュ様」
『おはようございます?』

私は身振り手振りで挨拶を返しましたが、疑問が顔に出ていたんだと思います。レヴィン様が自分がいる理由を話して下さいました。

なんでも、朝早くプロキオン王国から使者が来たらしく対応しているそうです。レヴィン様は御一緒しなくてもいいのでしょうか?

「大丈夫ですよ。最初は私が対応していたのですが…埒があかなかったので……ヴェイグと交代したんです」

と、何故か背筋が寒くなるような笑顔でレヴィン様は話していました。

「さ、そんな事より食事にしましょうか」

話はここまでと言わんばかりに手を打つと、彼は用意していたんであろう食事を持って来ました。
昨日、ヴェイグ様に頂いたのと同じように温かく美味しいご飯でした。

今回も、くすねてきたんでしょうか……







食事を終えて砦に帰る時、遠くから何か喚くような声が聞こえてきました。それを宥めるような声と一緒に……

「聖女様、仕方ない事なのです……」
「どうしてよっ!私は帰らないわよ!」
「アイリス…お前の気持ちも分かるが、俺は……父上の気持ちも分かる。聖女のお前に何かあったら……怪我したらどうするんだ」
「でも……!」

そういう事なんですね……
プロキオン王国から来た使者は、アイリス様を連れ戻しにいらしたみたいです。
それにヴェイグ様は、快く送り出したそう。

「……っ、どうしてもって言うなら…次の討伐だけは参加させて……お願い。プロキオン王国の討伐だけは……ね?」

アイリス様のに先程まで難色を示していた王子や使者の方は、態度を一転させ…

「……そうだね!プロキオン王国の討伐に聖女が参加するのは、道理だ」
「……そうですね。陛下も分かって下さいますでしょう」
「わぁ、ありがとう!!という事でヴェイグ様、次の討伐もよろしくお願いします」

その言葉に、ヴェイグさま達は一斉に嫌な顔をしました。




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