【完結】転生?いいえ違うわ……なぜなら…

紫宛

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第3話

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彼らの大切な少女……

アリステラ

私は彼女を奪った最低な女

ミヤノ ソラ

最初は戸惑いながらも優しく接してくれた人達が冷たくなりました。
当然ですよね……私はアリステラじゃないのだもの……

だから、返そうと思いました。

あの人の大切な人を……
たとえ、それで私が死んでも……

大好きだから……愛して、しまったから……

あの人の悲しい顔を見たくない
あの人の辛い顔は、もう見たくないの

だから、私は魔法陣を発動させた。
この魔法陣には、離魂りこんの陣とアリステラの魂を呼び戻す陣が組み込んである。

アリステラの魂を呼び戻す為に、生贄として私の魂を捧げる。

強い魔力の奔流が起こり、陣を中心に魔力の風によって部屋は荒れた。

その瞬間

けたたましい音を響かせて、あの人が入ってきた。肩で息をしていてるから、凄く急いで駆け付けてくれたんだろうと思う。

私にじゃなくて、アリステラのために……

「はぁ、はぁ、やめて下さいっ!お嬢様っ」
「大丈夫~」

私の脳天気な返事に、彼は怒りの表情を浮かべ咎めるように言い放つ。

「貴方は!分かっているですか!その魔法は……っ!」
「しってるよ、私の魂を殺すまほう」

私が言うと、彼は顔を顰め辛そうに

「知っていて!……なぜ!?」
「これで、返してあげられる。私の魂を生け贄に、貴方の、貴方達の大切な人は帰ってくる……」

心臓の辺りに激痛が走り、アリステラの体は地面に倒れた。体が叩き付けられないよう、あの人の大切な人の体に傷がつかないよう、膝を付き手をついて倒れた。

そして、私の魂はアリステラの体から離れた。

「っ?!……止めてくれ!俺はそんな事、望んでいないっ!」

(うそ)

嘘よ、だって……私を見る度に辛く悲しい顔をする貴方を、ずっと見てきたんだもん。

﹣大丈夫~、わかってるもの。あなたの顔を見れば、私の事をよく思ってないの、わかってる…から……﹣

魔法陣の輝きが変わり、脱力感に襲われる。

「くそっ!どうすれば……どうすればいいんだ!」

彼の声が、遠くに聞こえる。
焦った顔が…

(あんな表情、初めてみる……な)

キュアンは、何とかして魔法陣を止めようとしていた。

(大丈夫、これでやっと笑顔のあなたを見れる……)

ソラの体が、下から少しづつ消えていく…

その時、ドアが蹴破られた。
ソラの意識は既に混濁しており、全ての事が遠い世界の出来事のようだった。

「キュアンっ!魔法陣からステラを出すんだ!」
「っ!!」

誰かの切羽詰まった声が響く。

この声は知ってる……アリステラを大切に思ってる人の1人で…魔法士の……ノクトだ……

それから、色々な人の声も聞こえる。
みんな、アリステラを大事に大切に思ってる人達……

「待ってろっ!お嬢様を助けたら、お前もっ!」

要らない……

助けは、要らない……

「急げっ!」

大丈夫、アリステラを連れて行かれても…
この陣は私を生け贄にするだけ…
彼女は戻ってくる……

「神のイタズラか分からんが、もう1つの世界で死んだ人間が、ステラの体に入ったのは事実みたいだっ!ただっ!ステラがそれを許さない限り、神でも他の魂を入れるなんて芸当は不可能だっ!つまりっ!」
「お嬢様が!アリステラ様がっ!それを望んだっという事だなっ!」
「あぁ!」

彼女の体は、胸の辺りまで消えていた。
急がなければ、本当に消えて……死んでしまう…っ

「おいっ!」

俺は、彼女の名前を知らない…いや、聞いたのかも知れない……だが…
アリステラ様のことしか、考えてこなかったから…食事の時も、散歩の時も、アリステラ様の好きな事を彼女に強要しただけだ。

お嬢様ならこうした。
お嬢様なら、完璧にこなせていた。
お嬢様なら……

彼女とお嬢様を比べ、出来ないことを責めた。俺の大切なお嬢様を……と。
もし、お嬢様が戻ってきた時に、努力して身につけた全てが衰えていたらどうしてくれるっ!と……

彼女が悪いわけじゃない
悪いわけじゃなかった……

死んだ彼女の魂を神が呼び、お嬢様が納得した上で彼女の魂を受け入れたなら……

俺は……っ!




「目を覚ませっ!女っ!」

ウトウトしていた意識が少しづつ浮上する……

誰かが……呼んでる気がしたから……

ふと、目を開けて自分を見下ろせば、私の体は胸の辺りまで消えていた。

﹣もうすぐね﹣

「お前の魂はっ!元の体には戻らないっ!分かってるだろう!お前の本来の体は死んで……」

﹣しってる…わ、じ、こにあったの……あの時に感じた痛みは、いまも、おぼえている…わ﹣
「ならっ!」
﹣しんでも、いいかな?って思ったの﹣

あなたが、笑ってくれるなら……



どうせ、私は……望まれていない…

これで……いいの…

でも、そう覚悟を決めたのに……

「魔法陣から出ろっ!早くっ」

あの人が叫ぶ……
私の右手が消え始めた……

「ステラの事は、俺が何とかするからっ!」

ノクトも叫ぶ……
私の右手は消え、左手も消え始めた……

「っ……はやく!そこから出てっ」

聞いた事のある女の人の声……
確か、私の朝の支度を手伝ってくれてた人…文句を言いながらも、完璧にこなしてくれてた。

「でてっ!消えちゃうっ!」

泣きながら叫んでるのは、私のご飯を作ってくれた人……アリステラの好物じゃなくて、私の好みを探して作ってくれた人。

「お願いですからっ!来て下さいっ!」

この人は……キュアンとは違う執事の人…
いつも怖い顔をしていたのに…何だか、悲しそう……?

左手も消えた頃、一際大きく

「たのむからっ!!」

彼の懇願が聞こえたのだ……
その瞬間、私の頬に温かな感触……霊体の私に触れる事など出来るはず無いのに…彼の大きく温かい手の感触が頬に感じる。

「くっ!」

私の頭を抱えるようにして、彼は魔法陣から飛び出した。

﹣どうして、触れ……?﹣

「俺の魔力をキュアンの手に纏わせたっ」

ノクトは、アリステラに魔力?を注いでいるみたい。

私はボーッとしながらも、周りを見てキュアンを見つめた。

私を嫌ってたはずの使用人の人達が、涙を流しながら私の無事?を喜んでいた。

﹣なんで?消えて欲しかったんじゃないの?﹣

消えかけていた私の体は、今度は少しづつ元の形に戻ろうとしていた。

後ろを向けば、さっきまであった魔力の奔流はなくなり魔法陣は消えていた。

私の魂は、アリステラに戻らなかった。
当然だ、離魂りこんの術は成功している。

だけど、私という生け贄は無くなり、彼女の魂が戻ってくるかは分からなかった。

けれど……

「ん……」

アリステラの体から微かに声が漏れた。
私と言う生け贄がなくても、ちゃんと魂は戻ってきたみたいだ。

﹣よかったね……﹣
「っ?!……良い訳ないだろうがっ!何故こんな真似をしたっ?!お前が死ぬ事を、本当に俺が望んでいると思ったのか?!」

﹣?﹣

私に怒る彼の顔は真剣だった……

﹣なぜ?だって、あなたの大切な人は帰ってくるよ﹣
「そういう問題じゃないだろうっ!」

そう言って、私を抱きしめるキュアン。
微かに肩が震えている……

(ないてるの?)

「良かった…お前が死ななくて……本当に、よかった…っ」

彼は小さく、「お前が死んでたら、俺は一生後悔した…」と呟いた。



それから数日後、ノクトが魔法人形を作ってくれた。私の本来の姿に似せて……

私がその中に入ってノクトが呪文を唱えると、魂が定着し魔法人形の体を私は自在に動かせるようになった。

中々言葉は話せなかったけど、でも優秀な魔法士が作った人形だけあって、魔法も使えるし、身体能力も高かった。

傷がついても、人形だから痛みはないし……

でも、痛みはないって言ってるのに、周りの人達が凄く過保護になった。

アリステラは、私が出たあと直ぐに目を覚まし、私を見て笑ってくれた。

『良かった、貴方が無事で』

と、そして私達はお友達になった。


キュアンは相変わらず、ステラの護衛騎士で執事も兼任していた。

ノクトはステラの家に住みこみ、私のメンテナンスを買って出てくれた。

使用人の皆さんも、普通に接してくれるようになった。

……実は、私は気付かなかったんです。
彼らは本当は私を嫌ってなどいない事に…

私がそう思い込んでいただけで、本当はどう接していいか分からなかっただけという事…
キュアンも、怒ってた訳じゃなく心配してただけだという事…を。
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