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第1話
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「……」
「…………」
目の前の男の人は怒っている。
……理由は分かっている、私が本物じゃないからだ。
私の体は、アリステラ・シュノーマンで…
私の名前は……
そら……宮野 空
元いた世界で死んだら、この世界のこの少女の体に入っていた。
目の前の男の人は、キュアンと言うそうです。この少女の護衛騎士であり、執事という立場です。
魔法で剣を作りだす所は綺麗で格好よかったです。うん。
何故知ったのかと言うと、いま、目の前で見たからです。
……そうです。
目の前のキュアンという男性が、滅茶苦茶冷たい眼差しで私を見て剣を作りだしたんです。
まぁ、直ぐに消してましたけど……アリステラという少女の体ですからね。
私がこの少女の体に入ったのは数日前です。
この少女は、高位貴族で洗練された美しい所作をするそうです。
もちろん私が入った事で、崩れたのは言うまでもなく。……別人が入ったんだし、言葉も言動も少女のように振舞えるわけもなく、一瞬でバレましたよね。
私が来た時は、少女が病で倒れた影響だと思ったそうです。でも、回復しても治らないから不審に思ったそうで……少女と仲の良い魔法士のノクトが呼ばれました。
この方にも睨まれました。
そうですよね、少女を追い出して私が入ったんですから…
魔法士の方が来て、魂を調べたら私の本来の姿に変わった。
「これがお前の真の姿か……」
「貴様は何者だ……」
「……何者と言われても…」
本当のことを話して信じてくれるんでしょうか……まぁ、言わない選択肢はないんですけど…
自分の名前が、宮野空という事、もう1つの世界で死んで、気が付いたら少女の中にいたことを話した。
もちろん、ノクトとキュアンが、後ろにいた使用人の方達が信じるはずもなく。
私は少女の屋敷の客間に閉じ込められることとなりました。
アリステラの部屋を、私に使わせる気はないみたい。それでも、体はアリステラなので最低限のお世話はしてくれるそうです。
私が変なことをしないように、お世話は基本キュアンが行うみたいです。もし万が一私が何かしても取り押さえられるようにです。
そして、ノクトが魔法士の誇りをかけて調べあげるそうです。
……この部屋に閉じ込められてから何日経過したでしょうか…
使用人の皆さんやキュアンという男性は、段々と苛立ってきました。
……私がこの体に入ってるということは、アリステラの魂が何処かにあるという事……そして、この状態が長く続くと言うことは、戻れなくなる可能性があるという事……
ある日、使用人の1人が小さく呟きました……
『……が死ねば、あの方は戻ってくるかも知れない……』
小さくて聞こえにくかったけど……私にはバッチリ聞こえてました。
私の魂が死ねば、アリステラの魂が戻ってくる……?
そうかも知れない……
……そしたら、あの人は……笑ってくれるかな…
この世界に来て、初めて見たあの人は…とっても格好良くて、あの人が見せる笑顔がすごく甘くて優しくて、すぐに好きになったわ。
でもそれは、この少女に対してで……私に向けてじゃない。
羨ましかった……この少女が…、みんなに愛されるアリステラが……
最初は、ラノベの世界みたいに私が主人公になれるんじゃないかって思った……。
けどそれはただの勘違いだと気がついた……どんなに愛されたって、それはアリステラであってソラじゃない。
そう思ったら、もうどうでも良くなった……
結局私は……誰にも愛されることは無いんだって……
両親には捨てられ、結婚を約束してた彼には浮気され結婚資金は奪われ……
(一度でいいから、誰かに愛されたかった……)
結局、この世界でも私は必要のない存在なんだ……
私がこの世界に来て、ひと月半経った……
私は今日、ある事を決行する……
このひと月半、キュアンさんは甲斐甲斐しく世話をしてくれた。使用人の人達も、なんとも言えない表情だけど意地悪や悪口は無くなった。
理由は分からない……けど。
最近私は、屋敷内だけなら自由に歩けるようになっていた。
向かうのは地下室……
手には魔法書……最初の頃、暇だろうからと持ってきてくれた本の中に、魔法書が紛れ込んでいた。きっと、使用人の誰かがわざと入れたのかな?と思う。
(私に死んで欲しくて……)
だから今夜、
私は彼らにアリステラを返す。
「…………」
目の前の男の人は怒っている。
……理由は分かっている、私が本物じゃないからだ。
私の体は、アリステラ・シュノーマンで…
私の名前は……
そら……宮野 空
元いた世界で死んだら、この世界のこの少女の体に入っていた。
目の前の男の人は、キュアンと言うそうです。この少女の護衛騎士であり、執事という立場です。
魔法で剣を作りだす所は綺麗で格好よかったです。うん。
何故知ったのかと言うと、いま、目の前で見たからです。
……そうです。
目の前のキュアンという男性が、滅茶苦茶冷たい眼差しで私を見て剣を作りだしたんです。
まぁ、直ぐに消してましたけど……アリステラという少女の体ですからね。
私がこの少女の体に入ったのは数日前です。
この少女は、高位貴族で洗練された美しい所作をするそうです。
もちろん私が入った事で、崩れたのは言うまでもなく。……別人が入ったんだし、言葉も言動も少女のように振舞えるわけもなく、一瞬でバレましたよね。
私が来た時は、少女が病で倒れた影響だと思ったそうです。でも、回復しても治らないから不審に思ったそうで……少女と仲の良い魔法士のノクトが呼ばれました。
この方にも睨まれました。
そうですよね、少女を追い出して私が入ったんですから…
魔法士の方が来て、魂を調べたら私の本来の姿に変わった。
「これがお前の真の姿か……」
「貴様は何者だ……」
「……何者と言われても…」
本当のことを話して信じてくれるんでしょうか……まぁ、言わない選択肢はないんですけど…
自分の名前が、宮野空という事、もう1つの世界で死んで、気が付いたら少女の中にいたことを話した。
もちろん、ノクトとキュアンが、後ろにいた使用人の方達が信じるはずもなく。
私は少女の屋敷の客間に閉じ込められることとなりました。
アリステラの部屋を、私に使わせる気はないみたい。それでも、体はアリステラなので最低限のお世話はしてくれるそうです。
私が変なことをしないように、お世話は基本キュアンが行うみたいです。もし万が一私が何かしても取り押さえられるようにです。
そして、ノクトが魔法士の誇りをかけて調べあげるそうです。
……この部屋に閉じ込められてから何日経過したでしょうか…
使用人の皆さんやキュアンという男性は、段々と苛立ってきました。
……私がこの体に入ってるということは、アリステラの魂が何処かにあるという事……そして、この状態が長く続くと言うことは、戻れなくなる可能性があるという事……
ある日、使用人の1人が小さく呟きました……
『……が死ねば、あの方は戻ってくるかも知れない……』
小さくて聞こえにくかったけど……私にはバッチリ聞こえてました。
私の魂が死ねば、アリステラの魂が戻ってくる……?
そうかも知れない……
……そしたら、あの人は……笑ってくれるかな…
この世界に来て、初めて見たあの人は…とっても格好良くて、あの人が見せる笑顔がすごく甘くて優しくて、すぐに好きになったわ。
でもそれは、この少女に対してで……私に向けてじゃない。
羨ましかった……この少女が…、みんなに愛されるアリステラが……
最初は、ラノベの世界みたいに私が主人公になれるんじゃないかって思った……。
けどそれはただの勘違いだと気がついた……どんなに愛されたって、それはアリステラであってソラじゃない。
そう思ったら、もうどうでも良くなった……
結局私は……誰にも愛されることは無いんだって……
両親には捨てられ、結婚を約束してた彼には浮気され結婚資金は奪われ……
(一度でいいから、誰かに愛されたかった……)
結局、この世界でも私は必要のない存在なんだ……
私がこの世界に来て、ひと月半経った……
私は今日、ある事を決行する……
このひと月半、キュアンさんは甲斐甲斐しく世話をしてくれた。使用人の人達も、なんとも言えない表情だけど意地悪や悪口は無くなった。
理由は分からない……けど。
最近私は、屋敷内だけなら自由に歩けるようになっていた。
向かうのは地下室……
手には魔法書……最初の頃、暇だろうからと持ってきてくれた本の中に、魔法書が紛れ込んでいた。きっと、使用人の誰かがわざと入れたのかな?と思う。
(私に死んで欲しくて……)
だから今夜、
私は彼らにアリステラを返す。
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