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神聖王国と砂漠の国
第31話 帝国 エゼルブラッド
しおりを挟む扉の前にはグレッドが立っており、部屋に入ればナタリーが世話をしていた。
「陛下……」
「アシャラの容態は?」
「変わらずです」
「そうか」
彼女の眠るベットに近寄り、その頬に手を伸ばす。あの日から、彼女が俺を庇った日から、もう3日が経とうとしてる。なのに、彼女は目覚めない。
「浄化魔法が使えれば、常に清潔に保てましたのに…こんな魔道具の所為で……」
「今夜も俺が付いている、お前達は下がってよい」
「……」
皆は顔を見合わせ、静かに頷いた。
「では、隣に控えておりますから、何かあればお呼びくださいませ」
「分かった」
部屋の扉が静かに閉まる。扉の前にはグレッドが立っている。彼もまた、悔やんでいたんだろう。奴は彼女の護衛を担当していたのだから……
アシャラの事だけでは無い、シルフィアの事も考えねばならん。だが……
「アシャラ……」
「頼む、死ぬな、アシャラ……」
別室では、ローザとライラがティルクの行方を探っていた。
「ライラ様……」
「うむ、先程から探っているが…何故か気配がまるで無い。これはどういう事だ?」
「カレンにも探って貰ってますが……」
ローザは、緩く首を横に振った。
「もし、本当に危機的状況に陥っているのだとしたら、ティルクだけでは助かりませんわ」
「私達の力を合わせませんと」
「……くっ、公爵や陛下にも伝えねばならんか」
2人は頷き合い、静かに夜は更けていった。
同時刻、公爵が泊まる客室にジェラルドとレンフォード、アルベルト、リチャードが揃っていた。
「リチャード…帝国に動きがあったか?」
「分かりません。シア様が、かなり力を入れて調べていたようですが……私には…」
「そうか…」
帝国は、神聖王国より南東に位置する国でエゼルブラッドという。昔、神聖王国に戦争を仕掛け負けている国だ。その際、帝国は人質を寄越してきた。自分の娘を寄越す事で忠誠を誓うと言ってきたのだ。帝国を真に信用する事は出来ぬと、私と婚姻する事で牽制と監視を行う事になった。
その後、4人の子宝に恵まれ、私は妻を信用しきってしまっていた。だが、……シルフィアは、疑い密かに影を使い調べていたようだ。
「父上、もしかしてヴィフラと帝国は繋がっているのでは?」
「シアが追放されてから、ヴィフラは一切動きを見せなかったし」
「うむ、陛下に伝えた方がいいかも知れんな」
ピチャーン、ピチャーン
「水の…音……」
(また、夢かしら……)
『主様……』
ピチャー--ン
『我が主様』
「!!ティルク?」
目の前に、1輪の青い薔薇が現れた。
両の手を前に差し出し、青薔薇に添えると、青薔薇は1人の少年へと姿を変えた。
『主様、良かった。やっと声が通じた』
顔は無表情だが、声はとても嬉しそうだ。
『ずっと、主様に呼び掛けてました』
「また、貴方に助けられたのね」
『いいえ、僕だけの力では助けられませんでした。こうして、命を繋ぎ止めるのが精一杯で……ごめんなさい』
しゅんと項垂れるティルクの頭を優しくポンポンと撫でる。感謝の意志を込めて。
「起きなくては…ティルク、もう少しだけ力を頂戴ね。陛下に伝えなければならない事がありますから」
『分かった、頑張る!!』
「真実を話したら、陛下は私をお嫌いになるかしら……」
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