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神聖王国と砂漠の国
第2話 落ちた公爵令嬢2
しおりを挟む連れていかれた場所は……セレスティナとソルファレナの国境付近の森だった。
その森は、魔獣が住み着く危険な森で幾度となく国より兵士が派遣されていた。
しかし、魔獣は減ること無く増えるばかりで人は寄り付かず魔術師による境界結界で魔獣を外に出さないようにする事が精一杯だった。
人の出入りは出来るようだが、魔獣が出す瘴気に侵され精神が壊れていく者が続出しているらしい。
そんな中に、私を乗せた馬車は進んで行く。
どこまで行くのだろう。
森の中を、中ほどまで進んで馬車は止まった。
「出ろ」
騎士は私を引っ張り、後ろから蹴飛ばした。
咄嗟に手を出したが間に合わず、馬車を転がり落ちる。
「__っ」
目の前には、小さな小屋があり、小太りの男が待ち構えていた。
「ほうほう、この方が______?」
「そうだ……_____、___ _____では、頼んだぞ」
小太りの男と兵士が何やら話している……だが、ここからではあまり聞こえない。
騎士は、話終えると馬車に再び乗り来た道を戻っていった。
小太りの男は、私の元に歩み寄り顎を掴みあげた。
「ふむ、まあ、悪くないでしょう。今日から出荷まで教育してあげますよ」
……と、下卑た笑みを浮かべ私を見下ろした。
そして、持っていたロープで手と足を縛り上げ担いで小屋の中に入っていく。
「___っ、離しなさい……!」
力いっぱい暴れるが、男に女が力で勝て訳もなく、連れていかれる。
「騒ぐんじゃねぇ!痛てぇ目にあいてぇのか!!」
「……っ」
小屋の中は、殺風景で机と椅子があるだけで他は何も無かった。
男が壁を触ると、カチッと音がして床に階段が現れた。明かりをつけ階段を降りていく。どのくらい降りたかは分からないが…広い場所にでた。
「おらよっと」
ドサッ
地面に落とされ、縛られた手を天井から吊るされたロープに括り付けた
___
突如、腹部に強烈な痛みが走る。
男に蹴られたのだ……
思考の闇にふけっていた私は、一瞬にして現実に引き戻された。
「ゴホッ!ゲホッ」
咳き込んでると、2発目が入る。
両手を縛られ吊るされた状態では、庇うことも出来ず……再び腹部に痛みが走った。
「オラッ!何ボケっとしてんだ!てめぇは、貴族でも平民でもねぇ!奴隷なんだ!」
地面に降ろされ、床に転がされる。
男は笑いながら、私の髪を無造作に掴みあげた。
髪を引っ張られ、顔を上げると男の顔が目の前にある。
「奴隷の焼印を押した時から、貴様は人ですらなくなったんだ。いつまで、人の振りをしている?」
「……っ、くっ」
目に涙を溜めながら、目の前の男を睨みつける。
「生意気な小娘が……っ!」
一瞬何が起きたのか分からなかった。
顔がとても痛くて、口の中に鉄の味が混じる。
ブチブチと何がが抜ける音がした。
顔を蹴られ、髪が抜けたのだと、遅れて気付く。
(なぜ……なぜ、わたくしが……)
「まぁ、いい」
「明日になれば、買い手がつくんだからな」
「せいぜい、今夜を楽しめよ」
そう言って、男は部屋から出ていく。
私は、その場で、ただただ涙を流していた。
恐怖と痛みが、苦しみと悲しみが支配する彼女は、気づかなかった…
彼女を思う者達が、密かに行動に移そうとしている事を。
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