1 / 5
プロローグ
しおりを挟む
「あら?貴方まさか、その格好で社交デビューするつもりかしら?やめて頂戴、恥ずかしい」
今日は義妹の社交デビューの日。
昼から念入りに磨き上げた義妹イリアは、今ドレスに着替えている。
「そうだな、お前は具合が悪くて来れないと陛下に伝えておく」
本来なら私は、もっと早くに社交デビューしているはずだった。お母様が生きていれば……
「ねぇ、お義父様お母様。もしお義姉様が、自分でドレスを用意したら、連れて行って差し上げては?フフ」
「そうねぇ。用意出来たら、会場に来ても良いわよ?出来たら……ね」
そう言って、私を屋敷の外に放り出した。
どうせ、用意出来ないと思っているんだろう。まぁ、出来ないと思うけど……でも……
『必ず、社交デビューするのよ?お父様に頼んで…そうすれば、あの方は貴方を必ず見つけて下さる』
「良いわね?」と言った、お母様の最後の言葉……
「無理だと思うけど……伯父様やウォルター様に頼んでみましょう」
伯父様は、お父様のお兄様に当たります。お父様は、お母様の家に嫁ぎ伯爵になったんです。その母は死に、お父様は新しいお母様を娶りました。
お母様のご両親は、お父様のご実家に頭が上がらないらしく、誰にも文句を言われること無く今のお義母様がやって来ました。
義妹イリアと共に……
私は、伯父であるフラウスキー侯爵家に向かった。
私の家は伯爵家で、侯爵家のタウンハウスまでは同じ貴族街に住んでいても遠いです。
漸く辿り着いた時には、もう夕方で……
無駄だと知りつつも、門番さんに声をかけました。
門番の人は、私をひと睨みすると「去れ!物乞いめがっ」と言いました。
「ち、違いますっ!私はシアラと言います。フランセル伯爵の娘、シアラ・フランセルです!」
「なにぃ?」
門番は、私の顔をジッと見つめ小さく舌打ちをしました。
「伯父様に、会わせて欲しくて……」
「何の用で?」
私達は、ほぼ同時に言葉を発しました。
「旦那様は、もうお出になられる。話なら今度にしろ」
「少しで良いので、お願いします!」
私と門番が話している間に、門の向こうから馬車が来ていました。
門番が門を開けると、馬車の窓が開き中から伯父様が顔を出しました。
「何の騒ぎだ?」
「旦那様、それが……」
門番が私の顔を横目でチラッとみる。
次いで、伯父様も私を見た……途端にゴミを見るような目に変わり、伯父様が降りてきました。
「貴様が何用でここにおる?」
「伯父様、お願いがあります。ドレスを一着下さいませんか?お願いします」
私は頭を下げました……ですが、伯父様は人に物を頼む態度ではないと言いました。
人に物を頼むなら、土下座をするべきだと……
……私は、地面に膝を着いて頭を下げました。
どうしても、社交デビューしなきゃいけないんです。それが、亡くなったお母様とした最後の約束。
今まで、1度たりと許して貰えなかった社交デビューが、今回はドレスを用意すれば参加しても良いと言ってくれたのです。
次は、いつ参加してもいいと言ってくれるか分かりません……
「お願い、します」
でも、私のそんな思いは、相手に通じる訳がありませんでした。伯父様は、私の手を踏みつけ蹴り飛ばすと「消え失せろ」と言ったのです。
そのまま馬車に乗り込み、行ってしまいました。
門番も、私を無視し去っていきました。
「つっぅ……」
(ごめんなさい、お母様……約束、守れそうにありません)
蹴られたお腹が痛い
踏まれた手が赤くなる
私はゆっくりと立ち上がり、前を向きました。
(え?)
真っ黒でした。
顔を上げると、目の前が真っ黒で……私はもう夜が来たのかと、一瞬思ってしまいましたが……でも違いました。
男の人です。
黒の礼服を着た、背の高い男の人がすぐ目の前に立っていました。
「最悪だ……嫌な物を、見てしまった……」
頭上で、男の人が呟きました。
私のせいで、この方の気分を害してしまったみたいです。……着ている服からして、凄く身なりが良いので高位貴族だと思います。
「申し訳ありません……」
「…………」
男の人が、何も言わず私を見つめます。
私も、男の人の目を見ました。
青色の綺麗な目です…
「紫……」
最悪だ……と、小さく男の人は呟きました。
そして、私の手を掴み「来い」と言って引っ張って行きました。連れてかれたのは、彼が乗って来たと思われる馬車です。
﹣くそっ……あのバカ共…。分かってて、こんな仕打ちをしたのか?知らなかったとは言わせないぞ……﹣
向かいに座った男の人は、ブツブツと小さく呟き続けていました。
今日は義妹の社交デビューの日。
昼から念入りに磨き上げた義妹イリアは、今ドレスに着替えている。
「そうだな、お前は具合が悪くて来れないと陛下に伝えておく」
本来なら私は、もっと早くに社交デビューしているはずだった。お母様が生きていれば……
「ねぇ、お義父様お母様。もしお義姉様が、自分でドレスを用意したら、連れて行って差し上げては?フフ」
「そうねぇ。用意出来たら、会場に来ても良いわよ?出来たら……ね」
そう言って、私を屋敷の外に放り出した。
どうせ、用意出来ないと思っているんだろう。まぁ、出来ないと思うけど……でも……
『必ず、社交デビューするのよ?お父様に頼んで…そうすれば、あの方は貴方を必ず見つけて下さる』
「良いわね?」と言った、お母様の最後の言葉……
「無理だと思うけど……伯父様やウォルター様に頼んでみましょう」
伯父様は、お父様のお兄様に当たります。お父様は、お母様の家に嫁ぎ伯爵になったんです。その母は死に、お父様は新しいお母様を娶りました。
お母様のご両親は、お父様のご実家に頭が上がらないらしく、誰にも文句を言われること無く今のお義母様がやって来ました。
義妹イリアと共に……
私は、伯父であるフラウスキー侯爵家に向かった。
私の家は伯爵家で、侯爵家のタウンハウスまでは同じ貴族街に住んでいても遠いです。
漸く辿り着いた時には、もう夕方で……
無駄だと知りつつも、門番さんに声をかけました。
門番の人は、私をひと睨みすると「去れ!物乞いめがっ」と言いました。
「ち、違いますっ!私はシアラと言います。フランセル伯爵の娘、シアラ・フランセルです!」
「なにぃ?」
門番は、私の顔をジッと見つめ小さく舌打ちをしました。
「伯父様に、会わせて欲しくて……」
「何の用で?」
私達は、ほぼ同時に言葉を発しました。
「旦那様は、もうお出になられる。話なら今度にしろ」
「少しで良いので、お願いします!」
私と門番が話している間に、門の向こうから馬車が来ていました。
門番が門を開けると、馬車の窓が開き中から伯父様が顔を出しました。
「何の騒ぎだ?」
「旦那様、それが……」
門番が私の顔を横目でチラッとみる。
次いで、伯父様も私を見た……途端にゴミを見るような目に変わり、伯父様が降りてきました。
「貴様が何用でここにおる?」
「伯父様、お願いがあります。ドレスを一着下さいませんか?お願いします」
私は頭を下げました……ですが、伯父様は人に物を頼む態度ではないと言いました。
人に物を頼むなら、土下座をするべきだと……
……私は、地面に膝を着いて頭を下げました。
どうしても、社交デビューしなきゃいけないんです。それが、亡くなったお母様とした最後の約束。
今まで、1度たりと許して貰えなかった社交デビューが、今回はドレスを用意すれば参加しても良いと言ってくれたのです。
次は、いつ参加してもいいと言ってくれるか分かりません……
「お願い、します」
でも、私のそんな思いは、相手に通じる訳がありませんでした。伯父様は、私の手を踏みつけ蹴り飛ばすと「消え失せろ」と言ったのです。
そのまま馬車に乗り込み、行ってしまいました。
門番も、私を無視し去っていきました。
「つっぅ……」
(ごめんなさい、お母様……約束、守れそうにありません)
蹴られたお腹が痛い
踏まれた手が赤くなる
私はゆっくりと立ち上がり、前を向きました。
(え?)
真っ黒でした。
顔を上げると、目の前が真っ黒で……私はもう夜が来たのかと、一瞬思ってしまいましたが……でも違いました。
男の人です。
黒の礼服を着た、背の高い男の人がすぐ目の前に立っていました。
「最悪だ……嫌な物を、見てしまった……」
頭上で、男の人が呟きました。
私のせいで、この方の気分を害してしまったみたいです。……着ている服からして、凄く身なりが良いので高位貴族だと思います。
「申し訳ありません……」
「…………」
男の人が、何も言わず私を見つめます。
私も、男の人の目を見ました。
青色の綺麗な目です…
「紫……」
最悪だ……と、小さく男の人は呟きました。
そして、私の手を掴み「来い」と言って引っ張って行きました。連れてかれたのは、彼が乗って来たと思われる馬車です。
﹣くそっ……あのバカ共…。分かってて、こんな仕打ちをしたのか?知らなかったとは言わせないぞ……﹣
向かいに座った男の人は、ブツブツと小さく呟き続けていました。
0
お気に入りに追加
1,100
あなたにおすすめの小説
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。
BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。
しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。
その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。
婚約破棄されたおっとり令嬢は「実験成功」とほくそ笑む
柴野
恋愛
おっとりしている――つまり気の利かない頭の鈍い奴と有名な令嬢イダイア。
周囲からどれだけ罵られようとも笑顔でいる様を皆が怖がり、誰も寄り付かなくなっていたところ、彼女は婚約者であった王太子に「真実の愛を見つけたから気味の悪いお前のような女はもういらん!」と言われて婚約破棄されてしまう。
しかしそれを受けた彼女は悲しむでも困惑するでもなく、一人ほくそ笑んだ。
「実験成功、ですわねぇ」
イダイアは静かに呟き、そして哀れなる王太子に真実を教え始めるのだった。
※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?
tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」
「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」
子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く
とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。
まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。
しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。
なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう!
そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。
しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。
すると彼に
「こんな遺書じゃダメだね」
「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」
と思いっきりダメ出しをされてしまった。
それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。
「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」
これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。
そんなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる