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第10話 デート

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あの後何があったのか、私は休まされたので知りませんでしたが……お義母様と、帰ってきたお義父様が激怒して追い返したそうです。
更には、抗議文を公爵家に送るとも言ってました。
スタリオン伯爵家にも、送るそうです。


その翌日、

「「おはよう」」
「リシアちゃん、おはよう。よく眠れたかしら?」

食堂でレオン様と、お義父様お義母様に会いました。一緒に朝食を取り、この後の予定を聞かれたので、部屋で刺繍をすると伝えました。

ですが皆様、一様に顔を曇らせてしまいました。
私は何か良くない事を言ったでしょうか?

「リシアちゃん、ここに来てから部屋に籠ってばかりでしょう?そろそろ、外に出てみないかしら?レオンちゃんが案内するわよ?」
「いえ、私が外に出るのは、外聞によろしくありませんし、部屋で過ごすのは慣れてますから大丈夫です」

その時、レオン様から視線を感じました。
レオン様の方を見ると、微かに口が動いて……「キス」と「後でな」と動きました。

(はっ?!……私また?!)

また、って口にしてましたか?!

「リシア、レオンと町に行って来なさい」
「え……ですが…」

車椅子では、町の中を進むのには不便が……

「大丈夫だ」
「大丈夫よ」

お義父様とお義母様が、口を揃えて大丈夫と言いました。何が大丈夫なのか、分かりませんが……

「行ってきなさい」
「楽しんできてね♡」

食後のお茶を飲み終わると、レオン様が立ち上がり私の元に歩いて来ました。後ろに周り車椅子を押すと、向かったのは私が使わせ貰っている客室とは違う客室でした。

「何故、この部屋に?」
「リシアに合いそうな服を、母上が用意してくれた」
「え?」
「ユリア殿、頼めるか?」
「私にお任せ下さい、レオン様」

え?ユリア?
何を、お任せ下さいなの?

それを知ったのは、直ぐです。レオン様が部屋を出ていくと、何処に隠れていたのか沢山のメイドが現れました。そして、黄色いワンピースドレスに着替えさせられ、髪は左右から後ろに持っていきひとつに縛る。

何だか、お嬢様みたいな髪型です。
……と、思わず声が漏れたら、メイドさん達に「リシア様は、お嬢様ですよ!」と言われてしまいました。

アクセサリーを身につけ化粧を施されると、自分が自分じゃないみたいです。

皆さんの腕前は、凄いんですね……私な…じゃなくて、私がこんな風に変われるなんて驚きです。

「レオン様、お待たせ致しました」
「いや、……っ?!」

部屋の外には、既に外出着に着替えたレオン様が立っており私を見ると固まってしまいました。

「に、似合わないでしょうか……やっぱり、私なん……っ」

(また、言いそうになっちゃったっ!ど、どうしよう……)

私が悩んでいると、ユリアが助け舟を出して下さいました。ユリアには、レオン様との事を話していますから。

「大丈夫ですよ、お嬢様。今回は直ぐに感想を言わなかった辺境伯様が悪いんですから」
「う……すまん」

ユリアの言葉に怒ること無く謝罪し、私に向き直り「綺麗だ」と一言、言ってくださいました。

「こんな綺麗なリシアを連れて歩くと、変な虫が付きそうで怖いな」
「そんな事ありませんよ。今まで誰も私に声をかけた人は居ませんから」

私は怪我をして、車椅子で1度だけ参加した社交界を思い出していた。

遠巻きに見るだけで誰一人声をかけてくる人はなく、それどころか参加した事を批判されてしまいました。

同情が欲しいとか、婚約者が可哀想だとか……その後、家族だけじゃなくアギエル様にも、二度と社交界に出るなと怒られましたっけ。

もう、過去の思い出ですね……

「それこそ、有り得ない」
「そ、そうですか……」
「ああ」

レオン様の一言に、私の顔は真っ赤に染まってしまいました。レオン様の何気ない一言が私には、凄く嬉しい言葉なんです。

でもレオン様は、臆面もなく堂々と私を褒めるから、私はどんな反応をすれば良いのか悩みます。
今まで、褒められた事など1度もないから…

「行くか」
「はい」



そして出た町は……
最初に来た時より様変わりしていました!
私が初めてこの街に来た時はまだ、町の道はガタガタしており馬車でも結構揺れていました。

それが、全部……綺麗に均され、階段には坂が付けられていました。更には、お店の入り口は広くなっており、車椅子の私でも余裕で入れそうです。

「いつの間に……」
「リシアが来てから、騎士が町の人々が協力してくれてな」

馬車から降ろされて、車椅子に移る。
漕いでも引っかかる箇所はなく、とても漕ぎやすい。

「これなら、町にも出やすいだろ?」
「私の……為に、ですか」
「リシア。やりたい事、行きたい所、何も我慢する必要は無い。俺が、全部叶えてやる。幸せにすると言っただろう?」
「はい……はい、レオン様!」
「社交界にも、出たいなら出ればいい。俺が、絶対に守るから」

私の目から涙が溢れると、レオン様は仕方なさそうに笑い頭をずっと撫でて下さいました。
町の人に茶化されても、レオン様はずっと撫でて下さいました。

「レオン様、わたし、カフェとか行ってみたいです」
「ああ」
「山にピクニックとか、してみたかった」
「これからすればいい」
「町に……行ってみたかった」

こんなにも、この町は美しかったのですね。
人々の笑顔が、子供の笑い声が、私の胸に心にとても響く。

「レオン様と結婚できるなんて、私は幸せ者ですね」
「それは、俺のセリフだな」

私達は2人、平らに均された道を進む。皆さんの笑顔に引っ張られ私達も自然と笑顔になる。

レオン様が守っている町……
これから、私達が守っていく町……


一月後、私達は結婚します。
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