【完結】妹を庇って怪我をしたら、婚約破棄されました

紫宛

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第7話 元婚約者VS現婚約者達(R15)

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最初、レオン目線ですが、途中から母親のラミア目線になります。ご了承ください(*ᴗˬᴗ)⁾
R15は、保険です。

──────

「分かりました」

リシア?!
何を言い出すつもりだ!こんなヤツらと2人で話すと言うつもりじゃないだろうな!?

「ナターシャと話します」

ダメだっ!

「リシアっ!!」

リシアの名前を呼んでも、彼女の意思は変えられなかった。真剣な目で俺の瞳を見つめる。

今までで、彼女が自分の意志を通した事があったか?いつも遠慮ばかりで……こんな時ばかり、意志を通すんだな。

「少しで構いません。お願いレオン様…」
「……分かった」

俺は未だ、ギャーギャー騒ぐ男の首を掴むと引き摺るように部屋を出て行く。チラッとリシアを見れば、静かにナターシャとかいう女を見つめていた。

そして、母上が「何かあったら、呼ぶのよ」と彼女の耳元で囁くのを微かに聞いた。



「─、──」

リシアが、話し始めたようだ。彼女の声は聞こえない。一応配慮して、外に音が漏れないよう声の音量を落としているんだろう。
お前から婚約者を奪った女だぞ?!何を配慮する必要がある!

「──けど!─、─って話!」

あの女の声が、所々聞こえ始めた。
冷静に話ができないのか?あの女は……そして、声が聞こえ初めてから、男が落ち着かない様子で視線をさまよわせ、廊下をウロウロしだした。

母上と視線で合図を送り合い、男を逃がさないよう気を配ろうとした時だった。

「──本当に愛されると思ってるの?!満足に動けない女を、本気で愛すとでも?!」

な?!
女の物凄い大声が聞こえた。

「考え直してお姉様っ!アギエル様は、今でもお姉様を思ってくれてるのよ?!動けないお姉様に公爵夫人としての仕事を押し付けるのは申し訳ないって婚約破棄しただけなの!それが分からないの?!」

忍び足で逃げようとした男を捕まえ、鋭く睨む。
どういう事だ?という意味を込めて。

男は震えているが、構うことは無い。

「言え」
「な、なんの事だ?」
「死にたくなければ、言え」
「ナターシャが勝手に言ってるだけで、俺は関け……ぐぁ」

男の首を片手で握り持ち上げ、更に問い質す。

「それで?」
「お、……お…れ、ぐぅ……ぁ」

男の口からは泡が吹き始め、カクカクと痙攣し始めた。

「レオン、力を入れすぎよ。それじゃ何も、話せないわ」
「チッ」

母上の声が冷たく響き、俺は少しだけ力を緩めた。
緩めただけで、首は掴んだままだ。

「ゲホッ!がハッゴホッ」
「言え…、今度は緩めない」
「はぁ、はぁ、はぁ……仕方、無かったんだ!これ、しか……方法が…なくって……」
「何がだ」

顔面蒼白になりながら、男は涙目で訴える。

「……みと、……ないと、言っ……た……ぐがっ」
「レオン」

咎めるような母上の声が聞こえる。
無意識に力を込めてしまったようだ。

「ち、ちが……リ、シアじゃない、と公爵……と認……めな、いと」

つまり、アンティ公爵が、結婚相手はリシアじゃないと後継ぎとして認めないと言ったということか。

アンティ公爵夫妻は、リシアが怪我しても関係なく迎え入れるつもりだったようだな。

だが、この男が勝手に婚約破棄した上、あの女を婚約相手に選んだ。そして、アンティ公爵の怒りに触れ、急遽リシアを連れ戻しに来たということか……

「愚かだな」

腕を振り払い男を壁に叩きつける。
あの女の話も、聞く必要は無かったという事だな。

俺は、扉を開けるべく取っ手を掴み引いた。
扉を開いた先には、リシアが涙を目に浮かべ驚いていた。

「実に、聞くに耐えない内容だった」

この女の話も、そこで転がってる男の話も、何もかも。

「大丈夫……では、無さそうだな」
「レオン様……」

泣きそうなリシアをそっと抱きしめる。



「母上、俺はリシアを休ませる。後は頼んだ」
「ええ、良いわよぉ。しっかり、お灸を据えておくから、ふふ」

 母上……本気で怒っているな…
そろそろ、父上も帰ってくるだろうし……

「いえ、大丈夫で…」
「大丈夫じゃない、休め」

俺はリシアを抱き上げ、俺の寝室に連れて行った。車椅子は、後ろから侍女が押してくるから問題ないだろう。

「ちょっ!待って!お姉さ……っ?!」

女が叫ぶが、屈強な騎士が間に立つだけで言葉を失った。途中、母上に視線で「殺すなよ?」と訴えた。

「大丈夫よぉ、貴方じゃないものぉ」
「ふ、そうだな」



レオンが、リシアちゃんを部屋に連れて行ったあと私は、騎士に命じ男と女を地下に連れて行くよう言った。

「さぁて、お仕置の時間よ。あぁ、セバス、ダンテが帰って来たら、地下に来るよう言いなさい」
「畏まりました」

リシアちゃんにふざけた事を言った女は騎士に肩に担がられ、レオンに首締められた男は騎士に引き摺られて地下のある場所に向かった。

そこは、敵兵を捕まえ拷……じゃなくて、尋問する場所。ふふ、間違えちゃったわ。
ちょーと、血腥ちなまぐさいけど、良いわよね?

リシアちゃんを傷付けておいて、更に傷を増やした者達なんだし。

まぁ、相手は女だし、貴族だし?
怪我はさせないわ。
ただ、ちょっと怖がらせるだけよ。

「ふふ、リシアちゃんを傷付けたこと、後悔させちゃうんだから」

もう二度と、我が家に来ようなんて思わせない程度には痛め付けてもいいわよね?
痛め付ける、イコール怪我させる事ではないのよ?

言葉と態度と、ほんの少し力を込めるだけで人は簡単に恐怖するのだから……ね。

「覚悟、してね」



────

次回、母ラミア視点入ります(*ᴗˬᴗ)⁾
少し、残酷描写…あるかも?
↑は作者の感覚です。
「他視点あり」タグ追加しました。
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