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本編
第3話 アトリエ追放②
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一瞬静かになったデュナメス様は、虚ろな目で私を見た。デュナメス様の言葉で顔を上げると、飛ばされて床に踞る私の元に1歩また1歩と近付いてくる。
「貴様が無能だから、アモル様は帰って来なくなった……」
「っ……」
(違う!って言いたいのに……言葉が…でな……)
……師匠が、未知の素材を求めて旅に出られて、帰って来なくなってから……もう2年になる。元々、アトリエに篭ったり、人の上に立ったり、大人数と接したりするのが好きじゃないみたいで…。私が7歳になる頃から、よく旅には出ていました。
それでも、帰ってきてくれてたんです。
でも……、10歳の誕生日を迎えて直ぐ、師匠はまた旅に出て……半年経って、今回は長いなぁなんて思いながら過ごして……1年経って…何かあったのかと心配になって……
2年……こんなに長いあいだ、帰ってこないなんてこと、今まで無かったのに……やっぱり、私のせいなのかな……
私が約立たずだから、面と向かって言えないから、師匠優しいから…だから、アトリエごと私を捨てたのかな……また…………捨てられたのかな……
「もう……我慢ならん!お前が居なくなればっ!あの方は帰ってくる!アモル様さえいれば!このアトリエも!あの方々の信頼も!価値も!きっと!元に戻るんだ!」
「……っ」
私の肩を掴んで凄み、そのまま持ち上げ肩に私を担ぐとアトリエの外に出るデュナメス様。
そして……
「出てけ!そして二度と俺……いや、アトリエの前に現れるな!消し炭になりたくなければ消えろ!」
そう言って、私を放り投げドアを閉めた。
チリリンとなるアトリエのドアのベルが、虚しく響き渡る。
「……ぅぅ……」
なんで……
もう……、師匠を待つことも許されないの……?
迷惑だから……?
殴られても、蹴られても、辛くても悲しくても、我慢してきたのに……服や飾り物で、ちょっとだけでも貢献出来てるって……
師匠は、それでもいいってっ……
「……なんで……帰ってきてくれないの……ししょー……」
追い出されたアトリエを見続けてると、バタンと大きな音が響いて、ドアからデュナメス様が顔を出した。
「消えろ!クズがっ!」
そう言って投げてくるのは……
私がさっきまで使ってた……氷輝石……
使わなかった分を、釜の横に置いておいたやつ。
額に当たって、ツーっと血が垂れるのを視界の隅に捉え、何が起きたのか分からずボーゼンと座り込む私に、デュナメス様はまた何かを投げようと腕を持ち上げた。
けれど……その何かが、私に当たる前に、私の体は横から勢いよく飛んできた何かと一緒に転がった。よく見れば、私に飛びついてきたのは先程のオーガの少年。
彼が体当たりしてくれたおかげで、デュナメス様が投げつけた金剛石は私に当たらずにすんだ。
「ダイ、ジョブ……?」
「なんで、戻ってきたの……」
「……シ、ン、パイ?」
人族が話す共通語が上手く話せなくても、一生懸命に伝えてくる。私が、心配だったからと。
「チッ、異形種がっ!」
そう言ってデュナメス様は、もう一度アトリエに戻った。けれど、次は何を持ってくるか分からない。早くここを離れないと……!
「おいで」
「ウン」
急いで立ち上がり、オーガの少年の手を引いて急いでアトリエを離れた。今度は額の怪我だけですまない。
きっと殺される……
彼にとって、異種族はゴミ同然だから。
そして、彼にとっては、私もまたゴミ同然なのだろうから。
「貴様が無能だから、アモル様は帰って来なくなった……」
「っ……」
(違う!って言いたいのに……言葉が…でな……)
……師匠が、未知の素材を求めて旅に出られて、帰って来なくなってから……もう2年になる。元々、アトリエに篭ったり、人の上に立ったり、大人数と接したりするのが好きじゃないみたいで…。私が7歳になる頃から、よく旅には出ていました。
それでも、帰ってきてくれてたんです。
でも……、10歳の誕生日を迎えて直ぐ、師匠はまた旅に出て……半年経って、今回は長いなぁなんて思いながら過ごして……1年経って…何かあったのかと心配になって……
2年……こんなに長いあいだ、帰ってこないなんてこと、今まで無かったのに……やっぱり、私のせいなのかな……
私が約立たずだから、面と向かって言えないから、師匠優しいから…だから、アトリエごと私を捨てたのかな……また…………捨てられたのかな……
「もう……我慢ならん!お前が居なくなればっ!あの方は帰ってくる!アモル様さえいれば!このアトリエも!あの方々の信頼も!価値も!きっと!元に戻るんだ!」
「……っ」
私の肩を掴んで凄み、そのまま持ち上げ肩に私を担ぐとアトリエの外に出るデュナメス様。
そして……
「出てけ!そして二度と俺……いや、アトリエの前に現れるな!消し炭になりたくなければ消えろ!」
そう言って、私を放り投げドアを閉めた。
チリリンとなるアトリエのドアのベルが、虚しく響き渡る。
「……ぅぅ……」
なんで……
もう……、師匠を待つことも許されないの……?
迷惑だから……?
殴られても、蹴られても、辛くても悲しくても、我慢してきたのに……服や飾り物で、ちょっとだけでも貢献出来てるって……
師匠は、それでもいいってっ……
「……なんで……帰ってきてくれないの……ししょー……」
追い出されたアトリエを見続けてると、バタンと大きな音が響いて、ドアからデュナメス様が顔を出した。
「消えろ!クズがっ!」
そう言って投げてくるのは……
私がさっきまで使ってた……氷輝石……
使わなかった分を、釜の横に置いておいたやつ。
額に当たって、ツーっと血が垂れるのを視界の隅に捉え、何が起きたのか分からずボーゼンと座り込む私に、デュナメス様はまた何かを投げようと腕を持ち上げた。
けれど……その何かが、私に当たる前に、私の体は横から勢いよく飛んできた何かと一緒に転がった。よく見れば、私に飛びついてきたのは先程のオーガの少年。
彼が体当たりしてくれたおかげで、デュナメス様が投げつけた金剛石は私に当たらずにすんだ。
「ダイ、ジョブ……?」
「なんで、戻ってきたの……」
「……シ、ン、パイ?」
人族が話す共通語が上手く話せなくても、一生懸命に伝えてくる。私が、心配だったからと。
「チッ、異形種がっ!」
そう言ってデュナメス様は、もう一度アトリエに戻った。けれど、次は何を持ってくるか分からない。早くここを離れないと……!
「おいで」
「ウン」
急いで立ち上がり、オーガの少年の手を引いて急いでアトリエを離れた。今度は額の怪我だけですまない。
きっと殺される……
彼にとって、異種族はゴミ同然だから。
そして、彼にとっては、私もまたゴミ同然なのだろうから。
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