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本編
第2話 アトリエ追放①
しおりを挟む鏡の前に行き、2人とも嬉しそうにクルクル回っては眺めていた。嬉しそうにはしゃぐ妖精を見ていたカイムは、窓の方から視線を感じ振り返るとオーガの少年と目が合った。
何故か気になったカイムは、窓に足を向け少年に話しかけると、彼は自分の容姿が恐ろしいせいで友達が出来ないと打ち明けた。
オーガは、褐色の肌に角が生え金の目をしている。他の魔族と違い、職人気質で温厚な性格をしている者が多い。ただ、言葉が荒い者が多いので、勘違いされやすい種族だ。
「そっかぁ、幻惑草があれば、少しは見た目が変えられるかもだけど……根本的な解決にはならないかも……」
このヴィロン王国は、人間以外の種族を嫌ってる者が多い。王族が、他種族を認めていないからだ。そのため、消極的かつ厭戦的な考えを持つ他種族の者達はヴィロン王国を離れた。
この少年は、物乞いのようだった。
普通、幼い子は孤児院か教会、国が運営する養護院が保護する決まりになっている。しかし、それは人族に限ったこと……他種族で、特に人間と異なる姿をしている少年は、受け入れられなかったのだろう。
だから……少年の願いを叶えても、幻惑草を使って見た目を変化させても、彼が友達を作れるとは思えなかった。既に、認知されてしまっているだろうから……
「……ヤッ、パリ……ムズカ、シイ……」
カイムの表情を見て、少年は理解したのか悲しげな顔をして俯いた……友達を作りたくて、見て聞いて、頑張って覚えたのだろう人の言葉を使う少年に、私は何かしてあげたくなった……が……
その時……
廊下の先からドタドタと激しい音を響かせて、誰かがこっちに向かって走ってくるのが聞こえたのは。
「っ!みんな隠れて!さっ、貴方も、もう行って…ごめんね、力になれなくて」
カイムは、瞬時に音の正体が誰か気付き妖精達を逃がす。彼女の声を聞き慌てて姿を消す妖精。オーガの少年も、カイムを気にかけつつ窓から離れた。
このアトリエの現主は、大の人族主義者。他種族は、一切認めない人間だ。他種族を見かけたら、嬲り殺しかけない。ましてや、子供なんて気にもとめないだろう。
(わたし、……何かしたかな……怒られるようなこと…)
胸の前で手を握り、音の主が中に入ってくるのを覚悟して待った。
「カイム!!!!」
「はいっ!」
扉が壊れるんじゃないかと思うくらいに激しく開かれ、デュナメス様は一直線に私に向かって歩き胸ぐらを掴んできた。
「貴様は!何をしたか分かっているのか!」
……何をしたか?
何したんだろう……?
分からないけど謝らなきゃ……
「も、申し訳ありません!」
「貴様のせいで!貴様の存在が!貴様がっ……!」
「っっ!」
デュナメス様が、何に怒ってるか分からないけど……私のせいだって連呼してる。顔を真っ赤にして、怒りの形相で……私を殴り飛ばした。
「ポーションも作れぬ無能が!貴様がいるだけで、このアトリエは!アトリエの価値がっ!」
「すみませんっ!ごめんなさいっ」
「あの方は!何故こんな無能を放置してるのか!何故っ!」
「っ!」
私がポーションを作れないせいで……師匠が……
師匠は、本当に凄い人なのに……私のせいで…
……私の存在が……アトリエの価値も、師匠の価値も、下げているのだとデュナメス様は言った。
「……貴様のせいだ……」
ハアハアと息を切らせるデュナメス様。
何故か気になったカイムは、窓に足を向け少年に話しかけると、彼は自分の容姿が恐ろしいせいで友達が出来ないと打ち明けた。
オーガは、褐色の肌に角が生え金の目をしている。他の魔族と違い、職人気質で温厚な性格をしている者が多い。ただ、言葉が荒い者が多いので、勘違いされやすい種族だ。
「そっかぁ、幻惑草があれば、少しは見た目が変えられるかもだけど……根本的な解決にはならないかも……」
このヴィロン王国は、人間以外の種族を嫌ってる者が多い。王族が、他種族を認めていないからだ。そのため、消極的かつ厭戦的な考えを持つ他種族の者達はヴィロン王国を離れた。
この少年は、物乞いのようだった。
普通、幼い子は孤児院か教会、国が運営する養護院が保護する決まりになっている。しかし、それは人族に限ったこと……他種族で、特に人間と異なる姿をしている少年は、受け入れられなかったのだろう。
だから……少年の願いを叶えても、幻惑草を使って見た目を変化させても、彼が友達を作れるとは思えなかった。既に、認知されてしまっているだろうから……
「……ヤッ、パリ……ムズカ、シイ……」
カイムの表情を見て、少年は理解したのか悲しげな顔をして俯いた……友達を作りたくて、見て聞いて、頑張って覚えたのだろう人の言葉を使う少年に、私は何かしてあげたくなった……が……
その時……
廊下の先からドタドタと激しい音を響かせて、誰かがこっちに向かって走ってくるのが聞こえたのは。
「っ!みんな隠れて!さっ、貴方も、もう行って…ごめんね、力になれなくて」
カイムは、瞬時に音の正体が誰か気付き妖精達を逃がす。彼女の声を聞き慌てて姿を消す妖精。オーガの少年も、カイムを気にかけつつ窓から離れた。
このアトリエの現主は、大の人族主義者。他種族は、一切認めない人間だ。他種族を見かけたら、嬲り殺しかけない。ましてや、子供なんて気にもとめないだろう。
(わたし、……何かしたかな……怒られるようなこと…)
胸の前で手を握り、音の主が中に入ってくるのを覚悟して待った。
「カイム!!!!」
「はいっ!」
扉が壊れるんじゃないかと思うくらいに激しく開かれ、デュナメス様は一直線に私に向かって歩き胸ぐらを掴んできた。
「貴様は!何をしたか分かっているのか!」
……何をしたか?
何したんだろう……?
分からないけど謝らなきゃ……
「も、申し訳ありません!」
「貴様のせいで!貴様の存在が!貴様がっ……!」
「っっ!」
デュナメス様が、何に怒ってるか分からないけど……私のせいだって連呼してる。顔を真っ赤にして、怒りの形相で……私を殴り飛ばした。
「ポーションも作れぬ無能が!貴様がいるだけで、このアトリエは!アトリエの価値がっ!」
「すみませんっ!ごめんなさいっ」
「あの方は!何故こんな無能を放置してるのか!何故っ!」
「っ!」
私がポーションを作れないせいで……師匠が……
師匠は、本当に凄い人なのに……私のせいで…
……私の存在が……アトリエの価値も、師匠の価値も、下げているのだとデュナメス様は言った。
「……貴様のせいだ……」
ハアハアと息を切らせるデュナメス様。
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