聖女に永遠の愛を(R15指定⚠)

紫宛

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本編

永遠に君と(今)

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嫌な予感は、していた。

国王に呼ばれる事など、普段はない。
国王や貴族たちにレティ様は、疎まれているから、俺達にも近付く輩はほとんど居ない。
なのに、その日は、国王に呼ばれた。

嫌な予感は、してたんだ。

ラルフもグレンも、ラティルも一緒に呼ばれた。レティ様は、いつもの様に見送ってくれた。

気付くべきだった。

いつもと同じ……、
でも、いつもと違う何かに気付くべきだったのに!

レティ様から、離れなければ……!

国王からの、召集命令など、無視すれば良かったのに!

俺は……


謁見室で、国王と対峙する。
ラルフ達は、少し緊張してるみたいで動きがぎこち無い。
国王達も、何故かソワソワしていた。

ワァー!!
ドッガァーン!
ガシャーン!

「アルト、ラルフ!勅令だ!儂らを護れ!地下の避難所に逃げるこむぞ!」
「!!」
「アルト!」

そう言う事か!
暴動が起きたんだ。
溜まりに溜まった、民の不満が爆発したんだ。

!!!

レティ様は!!?

「ラルフ!戻るぞ!」
「ああ!グレン、ラティル!行くぞ!」

「ならん!貴様らは儂らを護れ!勅令だと言っただろう!」
「地下に向かうぞ!」

「断る!」

バタン!
「陛下~!!」

直後に扉が開かれ、入ってくるのはレティ様以外の聖女候補達と担当騎士達だ。

「おお、おお、来たか、さ!逃げるぞ。アルト護衛せい!儂らと聖女に怪我を負わせたら、ただでは済まさんぞ!」

「貴様らに、護る価値など無い!」
「何だと?!」
「アルト!こっちだ!急げ!」
「戻らぬか!!不敬罪に問うぞ!!」

国王の声を無視し、謁見室を飛び出す。




ラルフ達と聖堂に向かって、ひた走る。
城門付近が騒がしい、見れば群衆が騎士を蹴散らし扉を破ろうとしていた。

急がなければ!

聖堂は、王宮の外にある。
聖女は国王派と、国民に思われている。
城門に群衆が集まってるなら、

聖堂は……

いや、逃げて下さってるはず!





彼女は…


……っ、何故……


貴方は、まさか……!






 




聖堂の祈り間に飛び込んだ俺達が見たものは……


あ、ああぁ、ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙


「レティーーー!!!!!」


「アル、ト、泣くな……そ、なたの、泣き顔は、こたえ…る、のじゃ」 

「死なないで、下さい。俺を、置いて、行かないで、レティ」
 
嫌だ、イヤだ、いやだ!
死なないで、俺のレティ。

「すまぬ、な。それ、は、無理…じゃ」
「レティ、レティ!」

抱き締める手に、力を込める。

行かないで、と

「頼……みが、あるのじゃ、アルト」
「なん、ですか?」
「最、後の、頼みじゃ。---してくれぬか?」
「!!!」

彼女が最後に俺に望んだことは、本来なら許されない事。彼女が聖女で俺が騎士である限り、決して許されない事。

「死に、逝く、妾の、最後の頼み、じゃ、聞いて、おくれ」

震える手を伸ばし、俺の頬を撫でる彼女の手を捕まえ握る。
そして、ゆっくりと、顔を近づけ彼女の唇に自身のソレを押し付けた。
柔らかい彼女の唇を舌で撫で、深く重ねていく。
口内を撫でてから、唇を離すと、嬉しそうに微笑む彼女の姿がそこにあった。

「アルト」

静かに名を呼ばれる。

「ラルフ、グ…レン、ラティ、ル、みんな…大好き、じゃ
 あぁ、死に、たく、ないのぉ」

「レティ……!」
「ん?」
「愛、して………愛してる!今までも、これから先ずっと!ずっと、愛してます!」

告白すれば、待ってたと言わんばかりに満面の笑顔を浮かべ『遅いぞ、馬鹿もの』と言った。

「妾、も、じゃ……、そな…た、だけは、特別じゃった……ぞ………………」
「レティ?……レティ?!」
「レティ様!」
「あぁぁぁ!イヤだ!イヤだァ!レティーーー!!!」

レティの亡骸を抱き締めて、泣き叫んだ。
後ろから、泣き声が聞こえる。
彼らも、失った悲しみに泣き叫ぶ。
 


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