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本編
パートナー②
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ドレスは、「セシリアが気に入ったのなら、それに越したことはないわ」と言って、私が触れていたものに決まりました。
ドレスに合わせたアクセサリーや靴もオーダーメイドで購入し、当日はメイクやヘア専任の侍女達で完璧に仕上げるとお母さん達が息巻いてました。
……シェイドさんも、一緒になって話に参加してました。男の人は、こういう話が苦手だと思ってたんですけど……違うんでしょうか?
「いや、違わねぇよ」
「そうなんですか?」
「アイツが特別なだけだ」
アインス陛下に呼ばれて行った執務室で、シェイドさんが特別なのだと聞きました。あの話し方も昔からなのだそう。女性的な話し方をするからと言って、男性が好きとかは無いんだって。
「アイツは話し方はアレだが、女性には紳士的だし…人気があるぞ?」
と、意味深な笑みを私に向けてきました。
シェイドさんに人気があるのは分かりますが、お母さんもアインス陛下も何が言いたいのでしょうか……?
「……まさか、自覚なしか……?」
「はい?」
「いや、何でもない」
アインス陛下は、「これは面白いネタになるな」と小さく笑いながら言ってました。
(ネタ?)
よく分かりませんが、アインス陛下は楽しそうです。
その後は、精霊石や体調の事、今後やりたい事とかを話しました。
「それはそうと、そろそろ陛下と言うのはやめないか?」
「え?でも……」
「……。本来なら……私が、精霊士であるセシリア様を敬う立場なんですから」
「!?」
急に、アインス陛下の言葉遣いが丁寧になりましたっ!
前にも陛下は言ってました。精霊士は、精霊を味方につけ世界最強の力を持つと。私は最高位精霊を味方につけているから、更に強い力を持ってるって。
「これから私も、セシリア様に敬意を表し丁寧に接した方が宜しいですか?」
だから本当は、皆が私に敬意を払うべきだって。他国は分からないけど、この国の民なら皆が私に頭を垂れるだろうと。
皇帝陛下であるアインス様が私に頭を下げたら……シェイドさんだけじゃなく、お父さん達も今までとは同じ様には接してくれなくなるよね?
(そんなの嫌……)
だから……
「いつも通りに……お願いします!!」
「……直ぐにとは言わない。対等に接しろとも言わない。だが、せめて……公の場以外では普通に接してくれないか?普通に接してくれる奴は少ないんだ」
その内の一人はシェイドだぞ?と陛下……アインス様が言いました。お茶の時間や、他に人がいない時は普通に話す事を約束させられました。
私が頷くまで、アインス様が凝視してくるから負けました…
アインス様の執務室を出て庭園を通りかかると、庭に佇む人が……真剣な様な悲しそうな顔で遠くを見つめていました。……話しかける雰囲気では無かったので、静かに去ろうとしたのだけど…
「あら、声掛けてくれないのかしら?」
「っ」
振り向くと……その人は、優しい笑顔で私を見ていました。先程までの真剣でいて悲しげな顔ではなく、優しく包み込むような笑顔で……静かに私の方に歩いてきました。
西日で最初は顔が分からなかったけど、段々と近付いてくる姿は私のよく知る人だった。声と話し方で何となくは分かったけど…
「シェイドさん……」
「陛下との話は終わったかしら?」
「は、はい」
その言葉から、私の事を待っていてくれたのだと分かります。けれど、先程の表情が気になって上手く言葉を紡ぐ事が出来ません……
「?」
シェイドさんが心配そうな顔を私に向けますが、私はシェイドさんの顔が見れません。
「陛下との話で何かあった?」
「何も……」
「本当に?」
「はい」
「そう……」
あの時……シェイドさんは、確かに悲しそうな顔をしていました。真剣で悲しげな顔です。何を考えていたんでしょうか?
私は、シェイドさんと一緒に馬車に乗って屋敷に帰りました。道中、シェイドさんが話し掛けてくれますが、私は生返事しか出来ませんでした。
その夜……
眠れなかった私は、こっそりと庭に出ました。庭のガゼボのベンチに座って夜空を見上げると、綺麗な三日月が雲の隙間から顔を出していました。
「……」
夕方に見たシェイドさんの表情が気になります。
ですが、それを本人に聞いてもいいのでしょうか?
……どうして、シェイドさんの事ばかり気になるのでしょう……
只々、静かに空を見上げて……どれくらい時間が経ったのでしょうか…近くで草を踏む音に視線を下げました。
「シェイド、さん?」
「こんな時間に何してるの、風邪引くわよ」
そう言って、手に持っていたブランケットを私の肩にかけてくれました。
そして、何も言わずに隣に座ってくれました。
「……」
聞いたら答えてくれるでしょうか……
子供だからと、適当に答える方では無いと分かってはいますが……
「どうしたの?何か悩み事かしら?」
「……シェイドさん」
「なんでしょうか?」
思いのほか真剣な顔をしていたんでしょうか、シェイドさんも 真剣な顔で聞き返してきました。声も丁寧なものに変わっています。
「夕方に会った時、何を考えてたんですか?」
「え?」
「…………」
「…舞踏会の事よ」
「舞踏会?」
また、シェイドさんの声や表情が少し暗く?悲しく?なった気がします。
「ねぇ、セシリア穣」
「はい」
「舞踏会のパートナー、どうするの?」
夕方の話から、何故か舞踏会のパートナーの話に変わっていました。
パートナー
確か、お母さんはお父さんかお兄さんをパートナーにするのが一般的だと言ってました。
「えっと、お父さんかお兄さんになるんじゃないかな?」
「そう……」
舞踏会だけど、社交デビューする訳じゃないんです。
ただ、私が精霊士だということとか、ディオーネ家の娘になった事とかを紹介する為の場だから…ダンスはまだ踊れなくても大丈夫だって言ってました。
エスコートも、まだそれほど気にしなくても良いって…
……シェイドさんに、お願いしたら引き受けてくれるのかな?迷惑にならないかな?年が違いすぎるって、引かれないかな?
「シェイドさん」「セシリア嬢」
同時でした。
お互いに顔を合わせ、苦笑いをして、2人でお先にどうぞって……
シェイドさんが頑なに私に譲るので、勇気を出して舞踏会に一緒に行って欲しいと言ってみることにしました。
「シェイドさん、あの、もし……その、舞踏会に……」
それでも、中々本題を切り出せないでいると…
「女性に言わせるなんて、最低ね…」
そう言ったシェイドさんは、ベンチから立ち上がり私の前で跪くと右手を胸に左手を私の前に差し出し
「セシリア嬢、どうか私と舞踏会に参加して下さいませんか?」
「え?」
シェイドさんの言葉が最初信じられませんでした。
(どうか私と舞踏会に参加して下さい……)
何度も頭の中で復唱し、漸く言葉の意味を受け止め彼の顔を真っ直ぐに見つめた。
「私と、出てくれるんですか?」
「……正直、悩みました。セシリア嬢は、公爵令嬢で王と同等なる精霊士です。侯爵家とはいえ、騎士の私とは身分が違います。誘うべきではないと理解していました」
「……」
それで、あんな表情をしていたんでしょうか。
「年も、かなり上だから…おじさんは嫌だと言われるかも知れないと」
「そ、そんな事、言いませんよ?!」
「分かっております。しかし、悩み始めると暗い考えばかりが頭を占めました」
私も一緒だと、思いました。
さっき、年がとか迷惑がとか考えてしまいましたから。
「それで、どうでしょうか?私と舞踏会に参加して下さいますか?」
「……私で、良ければ」
「ありがとうございます」
シェイドさんの手に自分の手を重ねると、シェイドさんは私の手を額に持っていき感謝の言葉を述べた。
何だか、段々と恥ずかしくなってきて……真っ赤になった頃に、シェイドさんは手を離してくれました。そして、笑われました。
そして、2人で並んで部屋に帰ったのですけど…
シェイドさんは背が高くて(私は…丁度半分くらい)なので、隣に並ぶと本当に子供で……ちょっと凹みます。
(最近はよく食べるようになったので、背も伸びてきたと思ったんだけどなぁ)
ドレスに合わせたアクセサリーや靴もオーダーメイドで購入し、当日はメイクやヘア専任の侍女達で完璧に仕上げるとお母さん達が息巻いてました。
……シェイドさんも、一緒になって話に参加してました。男の人は、こういう話が苦手だと思ってたんですけど……違うんでしょうか?
「いや、違わねぇよ」
「そうなんですか?」
「アイツが特別なだけだ」
アインス陛下に呼ばれて行った執務室で、シェイドさんが特別なのだと聞きました。あの話し方も昔からなのだそう。女性的な話し方をするからと言って、男性が好きとかは無いんだって。
「アイツは話し方はアレだが、女性には紳士的だし…人気があるぞ?」
と、意味深な笑みを私に向けてきました。
シェイドさんに人気があるのは分かりますが、お母さんもアインス陛下も何が言いたいのでしょうか……?
「……まさか、自覚なしか……?」
「はい?」
「いや、何でもない」
アインス陛下は、「これは面白いネタになるな」と小さく笑いながら言ってました。
(ネタ?)
よく分かりませんが、アインス陛下は楽しそうです。
その後は、精霊石や体調の事、今後やりたい事とかを話しました。
「それはそうと、そろそろ陛下と言うのはやめないか?」
「え?でも……」
「……。本来なら……私が、精霊士であるセシリア様を敬う立場なんですから」
「!?」
急に、アインス陛下の言葉遣いが丁寧になりましたっ!
前にも陛下は言ってました。精霊士は、精霊を味方につけ世界最強の力を持つと。私は最高位精霊を味方につけているから、更に強い力を持ってるって。
「これから私も、セシリア様に敬意を表し丁寧に接した方が宜しいですか?」
だから本当は、皆が私に敬意を払うべきだって。他国は分からないけど、この国の民なら皆が私に頭を垂れるだろうと。
皇帝陛下であるアインス様が私に頭を下げたら……シェイドさんだけじゃなく、お父さん達も今までとは同じ様には接してくれなくなるよね?
(そんなの嫌……)
だから……
「いつも通りに……お願いします!!」
「……直ぐにとは言わない。対等に接しろとも言わない。だが、せめて……公の場以外では普通に接してくれないか?普通に接してくれる奴は少ないんだ」
その内の一人はシェイドだぞ?と陛下……アインス様が言いました。お茶の時間や、他に人がいない時は普通に話す事を約束させられました。
私が頷くまで、アインス様が凝視してくるから負けました…
アインス様の執務室を出て庭園を通りかかると、庭に佇む人が……真剣な様な悲しそうな顔で遠くを見つめていました。……話しかける雰囲気では無かったので、静かに去ろうとしたのだけど…
「あら、声掛けてくれないのかしら?」
「っ」
振り向くと……その人は、優しい笑顔で私を見ていました。先程までの真剣でいて悲しげな顔ではなく、優しく包み込むような笑顔で……静かに私の方に歩いてきました。
西日で最初は顔が分からなかったけど、段々と近付いてくる姿は私のよく知る人だった。声と話し方で何となくは分かったけど…
「シェイドさん……」
「陛下との話は終わったかしら?」
「は、はい」
その言葉から、私の事を待っていてくれたのだと分かります。けれど、先程の表情が気になって上手く言葉を紡ぐ事が出来ません……
「?」
シェイドさんが心配そうな顔を私に向けますが、私はシェイドさんの顔が見れません。
「陛下との話で何かあった?」
「何も……」
「本当に?」
「はい」
「そう……」
あの時……シェイドさんは、確かに悲しそうな顔をしていました。真剣で悲しげな顔です。何を考えていたんでしょうか?
私は、シェイドさんと一緒に馬車に乗って屋敷に帰りました。道中、シェイドさんが話し掛けてくれますが、私は生返事しか出来ませんでした。
その夜……
眠れなかった私は、こっそりと庭に出ました。庭のガゼボのベンチに座って夜空を見上げると、綺麗な三日月が雲の隙間から顔を出していました。
「……」
夕方に見たシェイドさんの表情が気になります。
ですが、それを本人に聞いてもいいのでしょうか?
……どうして、シェイドさんの事ばかり気になるのでしょう……
只々、静かに空を見上げて……どれくらい時間が経ったのでしょうか…近くで草を踏む音に視線を下げました。
「シェイド、さん?」
「こんな時間に何してるの、風邪引くわよ」
そう言って、手に持っていたブランケットを私の肩にかけてくれました。
そして、何も言わずに隣に座ってくれました。
「……」
聞いたら答えてくれるでしょうか……
子供だからと、適当に答える方では無いと分かってはいますが……
「どうしたの?何か悩み事かしら?」
「……シェイドさん」
「なんでしょうか?」
思いのほか真剣な顔をしていたんでしょうか、シェイドさんも 真剣な顔で聞き返してきました。声も丁寧なものに変わっています。
「夕方に会った時、何を考えてたんですか?」
「え?」
「…………」
「…舞踏会の事よ」
「舞踏会?」
また、シェイドさんの声や表情が少し暗く?悲しく?なった気がします。
「ねぇ、セシリア穣」
「はい」
「舞踏会のパートナー、どうするの?」
夕方の話から、何故か舞踏会のパートナーの話に変わっていました。
パートナー
確か、お母さんはお父さんかお兄さんをパートナーにするのが一般的だと言ってました。
「えっと、お父さんかお兄さんになるんじゃないかな?」
「そう……」
舞踏会だけど、社交デビューする訳じゃないんです。
ただ、私が精霊士だということとか、ディオーネ家の娘になった事とかを紹介する為の場だから…ダンスはまだ踊れなくても大丈夫だって言ってました。
エスコートも、まだそれほど気にしなくても良いって…
……シェイドさんに、お願いしたら引き受けてくれるのかな?迷惑にならないかな?年が違いすぎるって、引かれないかな?
「シェイドさん」「セシリア嬢」
同時でした。
お互いに顔を合わせ、苦笑いをして、2人でお先にどうぞって……
シェイドさんが頑なに私に譲るので、勇気を出して舞踏会に一緒に行って欲しいと言ってみることにしました。
「シェイドさん、あの、もし……その、舞踏会に……」
それでも、中々本題を切り出せないでいると…
「女性に言わせるなんて、最低ね…」
そう言ったシェイドさんは、ベンチから立ち上がり私の前で跪くと右手を胸に左手を私の前に差し出し
「セシリア嬢、どうか私と舞踏会に参加して下さいませんか?」
「え?」
シェイドさんの言葉が最初信じられませんでした。
(どうか私と舞踏会に参加して下さい……)
何度も頭の中で復唱し、漸く言葉の意味を受け止め彼の顔を真っ直ぐに見つめた。
「私と、出てくれるんですか?」
「……正直、悩みました。セシリア嬢は、公爵令嬢で王と同等なる精霊士です。侯爵家とはいえ、騎士の私とは身分が違います。誘うべきではないと理解していました」
「……」
それで、あんな表情をしていたんでしょうか。
「年も、かなり上だから…おじさんは嫌だと言われるかも知れないと」
「そ、そんな事、言いませんよ?!」
「分かっております。しかし、悩み始めると暗い考えばかりが頭を占めました」
私も一緒だと、思いました。
さっき、年がとか迷惑がとか考えてしまいましたから。
「それで、どうでしょうか?私と舞踏会に参加して下さいますか?」
「……私で、良ければ」
「ありがとうございます」
シェイドさんの手に自分の手を重ねると、シェイドさんは私の手を額に持っていき感謝の言葉を述べた。
何だか、段々と恥ずかしくなってきて……真っ赤になった頃に、シェイドさんは手を離してくれました。そして、笑われました。
そして、2人で並んで部屋に帰ったのですけど…
シェイドさんは背が高くて(私は…丁度半分くらい)なので、隣に並ぶと本当に子供で……ちょっと凹みます。
(最近はよく食べるようになったので、背も伸びてきたと思ったんだけどなぁ)
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最新話セシリア嬢の『嬢』の字が豊穣の『穣』になってます
久しぶりの更新で楽しみに読ませて頂いてます(*´˘`*)♥
セシリアちゃん、シェイド様への気持ちを自覚し始めたのかしら?
と、ワクワクしております(p*'v`*q)
ありがとうございます(*ᴗˬᴗ)⁾
修正させて頂きました。
まぁ、年が離れすぎてるので、成長するのを待ってからのお付き合いにはなりそうですが……シェイドには頑張って貰ってくっついて欲しいと私は強く思ってます。
この思いを作品には出さないよう気をつけます。
おしゃれは女の子の武装&心意気なのです❗ては抜けません( ・∀・)bビシッ。
ですね!
セシリアも、その内オシャレに目覚めるでしょうし( *´艸`)オシャレで完全武装し、舞踏会の参加者達の度肝を抜かしちゃいましょうか!!
更新ありがとうございます🎵いつも楽しく読ませてもらっています💕「パートナー①」の『貴族』が【帰属】になっていました。この小説は凄く好きで何回も読み返しています。頑張って下さいq(*・ω・*)pファイト!
ありがとうございます(*ᴗˬᴗ)⁾
貴族の件、修正させて頂きました!!
応援のお言葉と凄く嬉しいお言葉ありがとうございます❣️頑張りますね(*•̀ㅂ•́)و✧