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本編
聖の最高位ヴァル・シエル
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「ここが……教会…?」
私はいま、街の教会に来ていた。
初めて街に来て、馬車で見たあの教会……
ここに来た理由
それは……数日前に話した打撲や、鞭打ちの痕を治して貰いに来たんです。
本当なら、鑑定した次の日に来る予定だったのだけど……
来た時に貰った、聖の魔晶石の力が無くなってしまって……
瘴気に充てられて、具合が悪くなって寝込んでたんです。
リヒテルさんや、シェイドさん達にすごく心配されました…とても、申し訳ないです。
そのうえ、アインス様やディディアナ様からお見舞いの品まで届いたし……
さらに……
『リア……ここに、聖の使い手いるの……』
ふ~ん、と教会を見上げながら声を掛けてきたのはヴァル。
聖の精霊さんだよ。
昨日の夜、突然来たの。
たぶん、精霊さん達が呼んだんだと思う……
私の為に…。
昨日の夜……
「セシリアの具合は、まだ良くならんのか…」
「凄く苦しそうだったわ……。私達は瘴気に慣れているけれど、フラウゼル王国は瘴気が少ない国なのでしょう?聖の魔晶石は、もう無いの?」
「ええ、聖の魔晶石は希少ですから…あの時に渡したのが最後です」
応接室で、セシリアの話をしているのは、ディオーネ家の面々とシェイドとカイル。
レイナは、セシリアに付きっきりで看病していた。
「このままでは、セシリアは回復しません…教会の治癒士に、来てもらう事は出来ないんでしょうか…?」
「難しいわね……」
教会の治癒士は、教会にいるからこそ聖の魔法が使える。
知られてはいないが……教会には、聖の精霊が少ないながらに存在している。精霊の存在が、彼らに魔法という力を、使わせる事が可能になっているのだ。
魔法と精霊は、密接に繋がっている事を人々は知らない。
精霊が居なくなったら、魔法が使えなくなる事を彼らは知らない。
何故なら、世界には必ず、何処にでも精霊は居るからだ。下級の精霊ならば、辺鄙な場所にも、人の寄り付かない場所にも、本当に何処にでも居るのだ。精霊の居ない所が無いから、魔法が使えなくなると言うことにもならない。故に誰も気付かないのだ。
フラウゼル王国は勿論の事、セラフィム帝国にも存在している。
だから、魔法を使う事が出来るのだ。
そして、聖の精霊……
瘴気に満ちた帝国では、聖の精霊は存在が難しい。だけど、教会は清められているため、精霊は存在出来ているという事だ。
教会から離れれば、聖の魔法は使えなくなってしまう。だから、治癒士に来てもらう事が難しいと、アーシェは言ったのだ。
ちなみに……
精霊が居なくなったら……
大地は枯れ、水は腐り、炎は消え、大気は淀み、光は閉ざされ、闇が増し、瘴気によって魔獣被害が多発する。
人間は誰一人住めなくなる。
「…………」
「……っ!」
「ぐっ……!!」
静寂が場を支配した時、シェイドは何かが全身に乗っかったような、圧力のような物を感じ取った。
次いで、猛烈な吐き気に襲われた。
「……ぅ」
アーシェ達も、全身に走る悪寒に吐き気を催した。
(何が起きたの!?これは何?!毒霧が、散布されたっ?!)
シェイドとカイルが、口元に手を当てながら視線を走らせる。何処かに、敵が居るのかも知れないからだ。でも、どんなに視線を動かしても、何も見つけられない。
(どういう……ことよ…っ)
気分が悪く膝を着くシェイドの耳に、気怠げな声が響いた。
『ふーん、ここがリアの住む家か…悪くない……かな』
「誰だ?!……っ」
『ぼく?……僕はヴァル。……聖の最高位ヴァル・シエルだよ』
その姿は、様々な光の粒を身に纏った白き青年だった。前に見た炎の最高位と違い、人に近い姿形をしていた。
最高位っ!?
また、最高位なの?!
『ねぇ…君たちは、ほんとうに……リアの味方……なの?
ぼくたちを、騙すと……許さないから……
今回のように、……集めた瘴気、君達に浴びさせる……から』
っ!
最後の言葉は、冷たく鋭利な刃物の如く私達を切り裂くようだった。
それに…、
この体の不調は瘴気のせいだと言うの?!
ならば……セシリアの感じてる不調が、瘴気のせいだと言うならば、いま私が感じているこの悪寒や気持ち悪さを、セシリアは感じているという事。
なんて事……こんなに辛いものだったなんて……
「あぁ、セシリアは、魔晶石を無くしてから、毎日こんな不調を抱えているのか……」
『え……?リア……瘴気に充てられた?』
「あぁ、今も、部屋で、寝込んでおる」
『どこ?……ぼくが、なおす』
「案内したい、が…すまぬ。動けぬ」
『…………仕方、ない……リアの、ため』
聖の最高位の、諦めの言葉とため息で、シェイド達を襲っていた気持ちの悪さが無くなった。
その後、リヒテルとシェイドがセシリアの元に向かい、アーシェとセリオスは応接室に残る事になった。
アーシェの体調が回復しきれず、ぐったりとソファに横たわっていたからだ。
セシリアの部屋にやって来たヴァルは、一直線にセシリアの元に飛び、直ぐに瘴気を浄化した。
「あれ?ヴァルだ…」
『ひさしぶり……ぼくの、リア』
私はいま、街の教会に来ていた。
初めて街に来て、馬車で見たあの教会……
ここに来た理由
それは……数日前に話した打撲や、鞭打ちの痕を治して貰いに来たんです。
本当なら、鑑定した次の日に来る予定だったのだけど……
来た時に貰った、聖の魔晶石の力が無くなってしまって……
瘴気に充てられて、具合が悪くなって寝込んでたんです。
リヒテルさんや、シェイドさん達にすごく心配されました…とても、申し訳ないです。
そのうえ、アインス様やディディアナ様からお見舞いの品まで届いたし……
さらに……
『リア……ここに、聖の使い手いるの……』
ふ~ん、と教会を見上げながら声を掛けてきたのはヴァル。
聖の精霊さんだよ。
昨日の夜、突然来たの。
たぶん、精霊さん達が呼んだんだと思う……
私の為に…。
昨日の夜……
「セシリアの具合は、まだ良くならんのか…」
「凄く苦しそうだったわ……。私達は瘴気に慣れているけれど、フラウゼル王国は瘴気が少ない国なのでしょう?聖の魔晶石は、もう無いの?」
「ええ、聖の魔晶石は希少ですから…あの時に渡したのが最後です」
応接室で、セシリアの話をしているのは、ディオーネ家の面々とシェイドとカイル。
レイナは、セシリアに付きっきりで看病していた。
「このままでは、セシリアは回復しません…教会の治癒士に、来てもらう事は出来ないんでしょうか…?」
「難しいわね……」
教会の治癒士は、教会にいるからこそ聖の魔法が使える。
知られてはいないが……教会には、聖の精霊が少ないながらに存在している。精霊の存在が、彼らに魔法という力を、使わせる事が可能になっているのだ。
魔法と精霊は、密接に繋がっている事を人々は知らない。
精霊が居なくなったら、魔法が使えなくなる事を彼らは知らない。
何故なら、世界には必ず、何処にでも精霊は居るからだ。下級の精霊ならば、辺鄙な場所にも、人の寄り付かない場所にも、本当に何処にでも居るのだ。精霊の居ない所が無いから、魔法が使えなくなると言うことにもならない。故に誰も気付かないのだ。
フラウゼル王国は勿論の事、セラフィム帝国にも存在している。
だから、魔法を使う事が出来るのだ。
そして、聖の精霊……
瘴気に満ちた帝国では、聖の精霊は存在が難しい。だけど、教会は清められているため、精霊は存在出来ているという事だ。
教会から離れれば、聖の魔法は使えなくなってしまう。だから、治癒士に来てもらう事が難しいと、アーシェは言ったのだ。
ちなみに……
精霊が居なくなったら……
大地は枯れ、水は腐り、炎は消え、大気は淀み、光は閉ざされ、闇が増し、瘴気によって魔獣被害が多発する。
人間は誰一人住めなくなる。
「…………」
「……っ!」
「ぐっ……!!」
静寂が場を支配した時、シェイドは何かが全身に乗っかったような、圧力のような物を感じ取った。
次いで、猛烈な吐き気に襲われた。
「……ぅ」
アーシェ達も、全身に走る悪寒に吐き気を催した。
(何が起きたの!?これは何?!毒霧が、散布されたっ?!)
シェイドとカイルが、口元に手を当てながら視線を走らせる。何処かに、敵が居るのかも知れないからだ。でも、どんなに視線を動かしても、何も見つけられない。
(どういう……ことよ…っ)
気分が悪く膝を着くシェイドの耳に、気怠げな声が響いた。
『ふーん、ここがリアの住む家か…悪くない……かな』
「誰だ?!……っ」
『ぼく?……僕はヴァル。……聖の最高位ヴァル・シエルだよ』
その姿は、様々な光の粒を身に纏った白き青年だった。前に見た炎の最高位と違い、人に近い姿形をしていた。
最高位っ!?
また、最高位なの?!
『ねぇ…君たちは、ほんとうに……リアの味方……なの?
ぼくたちを、騙すと……許さないから……
今回のように、……集めた瘴気、君達に浴びさせる……から』
っ!
最後の言葉は、冷たく鋭利な刃物の如く私達を切り裂くようだった。
それに…、
この体の不調は瘴気のせいだと言うの?!
ならば……セシリアの感じてる不調が、瘴気のせいだと言うならば、いま私が感じているこの悪寒や気持ち悪さを、セシリアは感じているという事。
なんて事……こんなに辛いものだったなんて……
「あぁ、セシリアは、魔晶石を無くしてから、毎日こんな不調を抱えているのか……」
『え……?リア……瘴気に充てられた?』
「あぁ、今も、部屋で、寝込んでおる」
『どこ?……ぼくが、なおす』
「案内したい、が…すまぬ。動けぬ」
『…………仕方、ない……リアの、ため』
聖の最高位の、諦めの言葉とため息で、シェイド達を襲っていた気持ちの悪さが無くなった。
その後、リヒテルとシェイドがセシリアの元に向かい、アーシェとセリオスは応接室に残る事になった。
アーシェの体調が回復しきれず、ぐったりとソファに横たわっていたからだ。
セシリアの部屋にやって来たヴァルは、一直線にセシリアの元に飛び、直ぐに瘴気を浄化した。
「あれ?ヴァルだ…」
『ひさしぶり……ぼくの、リア』
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