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本編
セラフィム帝国の朝
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翌日。
私は、夜が開ける少し前に目が覚めた。
外はまだ暗く、誰も起きてこない時間帯。
早く朝の支度をして掃除を始めなきゃ、ご飯の準備もしないと怒られる……
私は鈍臭いから、早くから始めないとムチで叩かれる。
マリアシア様もシェイラ様も、レイディア様にもムチで叩かれちゃう!
「急がなきゃ……」
(痛いのはいや……苦しいのも…いや)
だから、言う事をちゃんと聞かなきゃ…怒られる前に、ちゃんと……
広い部屋の中を歩き、クローゼットに向かう。汚れてもいいような、ボロい服を探したけど見つからなくて……仕方ないのでシンプルなワンピースを手に取った。
「お嬢様?失礼しますね」
「レイナ?どうしたの?」
部屋の扉を控えめにノックし入って来たのは、一緒に帝国に来たレイナだった。
「お嬢様の部屋から物音がすると、衛兵の方から連絡が来ました。お嬢様、まだ夜明け前です。何かありましたか?」
「なにか……て…、それよりも!レイナも早く着替えなきゃダメだよっ!」
「お嬢様?」
「マリアシア様に見つかったら、レイナもムチで叩かれちゃうよっ」
私はレイナの手を引き、クローゼットに向かった。しかし、レイナは逆に私の手を引き止めた。
「お嬢様!ここはシルヴィアス家ではありません。お嬢様は必要とされています。ムチで叩く者などおりません!」
「……っ、分かんないじゃない!そんなの!私は無能だもの!魔力だってないのよ!?必要なくなったら捨てられるに決まってる!!その前に!わたしも働ける事、証明しなきゃ!!」
「お嬢様!落ち着いて下さい!お願いですから!お嬢様……!」
「離して!レイナ!離してよっ!!」
部屋の中の異常な光景に、衛兵は急いでシェイドの元に走った。もう1人の衛兵は隣室に向かい、事情を知るであろう侍女の家族を起こした。
「離してぇぇ!!!痛いのは嫌なの!苦しいのも辛いのも嫌なのぉ!!離してよぉぉ!」
レイナは、我を失い暴れるセシリアを抱きしめ、優しく背中を撫で続けた。それでも我を失ったセシリアは、抱き締める相手に気付かず暴れ続ける。
爪が当たり、傷付けていることも気付かず、振り回した腕が、相手を殴っていることにも気付かず、セシリアは暴れ続けた。
その時、歌が聞こえ始めた。
「~♪︎~~~♩♬」
歌が聞こえた時、セシリアは動きを止めた。
「お母さん……?」
歌を歌っていたのは、レイナの母だった。
衛兵が隣室に駆け込み、起こしてきたのだ。
何事かと思った母親だったが、衛兵の尋常じゃない慌てぶりに、急いで部屋を出て駆けつけたのだった。
セシリアが泊まっていた部屋では、娘のレイナが、セシリアを抱きしめ宥めていた。
セシリアの瞳が、シルヴィアス家にいた時のような、絶望色に染まっていた事に気付いた母親は、すぐさま子守唄を歌い出した。
セシリアの母親が我が子に歌っていた子守唄。
「~~♬~♪︎」
「お、かあさん……」
セシリアはレイナの母親に手を伸ばし、気を失うように眠った。
「お嬢様……」
「レイナ、セシリア様をベッドへ」
「はい」
セシリア様をベッドに寝かせて立ち上がると、後ろからシェイド様の声が聞こえた。
「大丈夫なの?」
シェイド様は、中には入らず扉に寄りかかるように立っていた。
「はい、落ち着いたと思います。
お母さん、ありがとう」
「良いのよ、それより、あなたの怪我の方が心配よ。セシリア様が起きる前に治さなきゃね」
「私が治してあげるわよ」
シェイドは、中に入る許可を貰い、レイナの体に負った傷を水の魔法で治した。
「「ありがとうございます」」
レイナと母親は、頭を下げた。
「先程の子守唄は、帝国式のようだけど、セシリアの母親は帝国の人間なのかしら?」
その声が聞こえた瞬間、シェイドが跪いた。
跪いたシェイドを見て、レイナとレイナの母親は腰を90度曲げて頭を下げた。
「ああ、良いのよ楽にして。アインスが来ようとしたのだけど、女性の部屋ですもの。代わりに私が来たのよ。
それよりも、先程の子守唄はどこで?」
「セシリア様の母親が歌っていた子守唄です。生まれは…申し訳ありませんが、存じ上げません。ただ、フラウゼル王国に旅行に来た旅人で旦那様が一目惚れしたとしか」
「そうなの……あの子守唄は、帝国で歌われるものだから。もしかしたらセシリアは、帝国の人間の血が流れてるのかも知れないわね」
皇太后様は最後に、セシリアが目を覚まし落ち着いたら謁見室に来るよう伝えた。
もし、まだ無理そうなら、そのまま休んでるよう伝え帰っていった。
私は、夜が開ける少し前に目が覚めた。
外はまだ暗く、誰も起きてこない時間帯。
早く朝の支度をして掃除を始めなきゃ、ご飯の準備もしないと怒られる……
私は鈍臭いから、早くから始めないとムチで叩かれる。
マリアシア様もシェイラ様も、レイディア様にもムチで叩かれちゃう!
「急がなきゃ……」
(痛いのはいや……苦しいのも…いや)
だから、言う事をちゃんと聞かなきゃ…怒られる前に、ちゃんと……
広い部屋の中を歩き、クローゼットに向かう。汚れてもいいような、ボロい服を探したけど見つからなくて……仕方ないのでシンプルなワンピースを手に取った。
「お嬢様?失礼しますね」
「レイナ?どうしたの?」
部屋の扉を控えめにノックし入って来たのは、一緒に帝国に来たレイナだった。
「お嬢様の部屋から物音がすると、衛兵の方から連絡が来ました。お嬢様、まだ夜明け前です。何かありましたか?」
「なにか……て…、それよりも!レイナも早く着替えなきゃダメだよっ!」
「お嬢様?」
「マリアシア様に見つかったら、レイナもムチで叩かれちゃうよっ」
私はレイナの手を引き、クローゼットに向かった。しかし、レイナは逆に私の手を引き止めた。
「お嬢様!ここはシルヴィアス家ではありません。お嬢様は必要とされています。ムチで叩く者などおりません!」
「……っ、分かんないじゃない!そんなの!私は無能だもの!魔力だってないのよ!?必要なくなったら捨てられるに決まってる!!その前に!わたしも働ける事、証明しなきゃ!!」
「お嬢様!落ち着いて下さい!お願いですから!お嬢様……!」
「離して!レイナ!離してよっ!!」
部屋の中の異常な光景に、衛兵は急いでシェイドの元に走った。もう1人の衛兵は隣室に向かい、事情を知るであろう侍女の家族を起こした。
「離してぇぇ!!!痛いのは嫌なの!苦しいのも辛いのも嫌なのぉ!!離してよぉぉ!」
レイナは、我を失い暴れるセシリアを抱きしめ、優しく背中を撫で続けた。それでも我を失ったセシリアは、抱き締める相手に気付かず暴れ続ける。
爪が当たり、傷付けていることも気付かず、振り回した腕が、相手を殴っていることにも気付かず、セシリアは暴れ続けた。
その時、歌が聞こえ始めた。
「~♪︎~~~♩♬」
歌が聞こえた時、セシリアは動きを止めた。
「お母さん……?」
歌を歌っていたのは、レイナの母だった。
衛兵が隣室に駆け込み、起こしてきたのだ。
何事かと思った母親だったが、衛兵の尋常じゃない慌てぶりに、急いで部屋を出て駆けつけたのだった。
セシリアが泊まっていた部屋では、娘のレイナが、セシリアを抱きしめ宥めていた。
セシリアの瞳が、シルヴィアス家にいた時のような、絶望色に染まっていた事に気付いた母親は、すぐさま子守唄を歌い出した。
セシリアの母親が我が子に歌っていた子守唄。
「~~♬~♪︎」
「お、かあさん……」
セシリアはレイナの母親に手を伸ばし、気を失うように眠った。
「お嬢様……」
「レイナ、セシリア様をベッドへ」
「はい」
セシリア様をベッドに寝かせて立ち上がると、後ろからシェイド様の声が聞こえた。
「大丈夫なの?」
シェイド様は、中には入らず扉に寄りかかるように立っていた。
「はい、落ち着いたと思います。
お母さん、ありがとう」
「良いのよ、それより、あなたの怪我の方が心配よ。セシリア様が起きる前に治さなきゃね」
「私が治してあげるわよ」
シェイドは、中に入る許可を貰い、レイナの体に負った傷を水の魔法で治した。
「「ありがとうございます」」
レイナと母親は、頭を下げた。
「先程の子守唄は、帝国式のようだけど、セシリアの母親は帝国の人間なのかしら?」
その声が聞こえた瞬間、シェイドが跪いた。
跪いたシェイドを見て、レイナとレイナの母親は腰を90度曲げて頭を下げた。
「ああ、良いのよ楽にして。アインスが来ようとしたのだけど、女性の部屋ですもの。代わりに私が来たのよ。
それよりも、先程の子守唄はどこで?」
「セシリア様の母親が歌っていた子守唄です。生まれは…申し訳ありませんが、存じ上げません。ただ、フラウゼル王国に旅行に来た旅人で旦那様が一目惚れしたとしか」
「そうなの……あの子守唄は、帝国で歌われるものだから。もしかしたらセシリアは、帝国の人間の血が流れてるのかも知れないわね」
皇太后様は最後に、セシリアが目を覚まし落ち着いたら謁見室に来るよう伝えた。
もし、まだ無理そうなら、そのまま休んでるよう伝え帰っていった。
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