短編集

紫宛

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【王太子が婚約者になりました~】

クロード&ミューティア(バレンタイン)

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この物語は、もしもの世界です。
他作品の本編とは、一切関係ありません。
ご了承ください(ᴗ͈ˬᴗ͈⸝⸝)
────

「ティア」
「何ですか?無駄な話ならば、手を動かしながらでお願いします」

殿下の声に顔を上げ、その顔を見て重要では無いなと思い再び書類に目を通す。
サミュエルさんも、何事かと顔を上げたが一瞬の内に後悔し下を向いた。

「明日が何の日か、知ってるか?」
「2月14日ですね。それがどうかしましたか?」

世間一般の常識で言うならば、バレンタインですね。城内の男性も女性も浮き足立ってますから、気付かない方がおかしいですね。

「何の日か……知ってるな?」
「……」
「明日は、出かけるぞ!」
「仕事が滞っております。無理ですね」
「サミュエルにやらせる」
「え?!」

サミュエルさんが、再び顔を上げる気配がしました。私もチラッと、横目でサミュエルさんを見ると、見事に表情が抜け落ち、真っ青になっていました。

この忙しい時に、何を考えているのですか!
結婚した時も、色々ありましたが……

また、殿下の気まぐれですか。

…………


別に出かけなくても、チョコの準備はしてたんですが……?

「はぁ、仕方ありません。数時間だけですよ!それ以外は、私でも持ちこたえられませんからね!」

サミュエルさんが、諦めたようにいいましたわ。これって、付き合わなければいけない感じでしょうか……はぁ。



次の日、2月14日

「迎えに来たぞ、ティア」

朝早く、クロード様が部屋に来た。

(早すぎませんか?)

時間の指定はなく、なるべく早くとは聞いてましたが……

「クロード様?まだ、準備が出来ておりません。もう少しお待ち下さいませ」
「構わん」

30分ほど待たせ部屋をでると、向かいの壁に寄りかかり書類を見ているクロード様がいた。

「お待たせしましたわ」
「よし、じゃ行くか」

持っていた書類を執事に渡し、私に手を差し出すクロード様。そして、私が持っている荷物に目を落とすと、ニヤッと笑い「持ってやろうか」と聞いてくる。

分かってて聞くのだから本当にタチが悪いですわ。

「結構です!」


結婚してから、だいぶ経ちますのに、私達の関係は、あまり変わりませんわ。
仕事に忙殺されて二人の時間は、無いに等しいですし……初夜だって…。

ミューティアは、こっそりとため息をついた。

「着いたぞ」

殿下の言葉に顔を上げれば、目の前に広がるのは静かな湖面。馬車から降りて、目の前の光景に息を飲む。

とても綺麗な光景だったから。

「ティア、忘れ物だ」

馬車の中から、防寒具を取りだし私の首に巻く。「風邪を引かれては困るからな」と言い訳の如く早口でクロード様は言った。

「ありがとうございます」
「ああ」

一陣の風が吹く。

「クロード様」
「なんだ?」
「ありがとうございます」
「なにがだ」
「何でもありません」
「そうか」

忙しく、私が寂しい思いをしていた事を、ご存知だったのだろう。顔には出さないようにしていたつもりですが……やっぱりバレてしまいますのね。

いつもそうです、私は表情に出てない筈なのに、クロード様には見事に筒抜け。
お礼を伝えても、受け取って下さらない。

「クロード様」
「ん?」
「愛してますわ…コレ、受け取って下さる?」
「!!」
「今日は、バレンタインですのよ?愛を伝える日です。わたくしの愛、受け取って下さいますか?」
「…受け取るに決まっているだろう。後で返せと言われても返さないからな」
「言いませんわよ」

クロードの手がミューティアの頬に伸びる。
前に垂れていた髪を耳にかけ、頬に唇を落とす。額にも落とし、ミューティアを見つめる。

ミューティアは、静かに瞳を閉じた。

「ふっ」
「何ですか?」
は、ちゃんと閉じたな」

パチッと目を開けた瞬間に、唇にキスを落とすクロード。

「俺も愛してる、ティアだけを」


~完~

─────

『王太子が婚約者になりました~』から
ミューティアとクロード、バレンタイン編です。本編とは、一切関係ありませんので、よろしくお願いします(ᴗ͈ˬᴗ͈⸝⸝)
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