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第11話
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「旦那様、本気ですか?ガーネット家の力を借りるというのは……」
ガーネット家
それは、王家に使える貴族の中で特出した家系。裁判に置いて、最も重要な立ち位置にいる者…
それが……
ガーネット家当主 ファクト・ガーネット。
実は、ガーネット家と我がタンザナイト家は、裏で繋がっている存在だ。
ガーネット家が仮面で顔を隠しながら表の世界で裁判をし、タンザナイト家は裏で情報を集める役目を負っている。
表面上では、仲が悪いと見せているが……な。繋がっていると分かれば、情報が集めにくくなるから…この事を知っているのは当主と次期当主のみ。
シュテルが14の誕生日を迎えた時に伝えたから、あれも知っている。
必ず、物的証拠を集めるが…それでも言い逃れ出来る可能性が無いわけじゃない。
先代国王が未だ、ルビー伯爵家を支援している。だが今の国王は、先代とは逆の考えで実力のある者に支援すべきと考えている。
貴族であろうとなかろうと、能力のある者が上に立つべきと。私もそれには賛成だ。
かつての栄光にしがみつき、能力を鍛えることもせず傍受するだけの者に、価値はない。
実はルビー伯爵家もまた、その価値のない一族の一つと私達は考えている。彼らの先祖は確かに王家に尽くした一家ではあるが、今の彼らは王家の威信をまるで我が事のように振る舞う…
……残念ながら私たちの結婚も、この事が関係している。マーシェリーは、先王陛下のお気に入りだ。私と婚約した時、当時国王だった先王陛下の命令で決まってしまった。
だが、結婚当初は今の感じではなくもう少し謙虚だった気がするが…?
いや、まぁ良い。
取り敢えず最悪の事態を考えて、ファクトの協力を得られるよう手紙を書くしかない。
マーシェリーは難しいかも知れないが、ケイナならば何かしらのボロを必ず出す。
そうすれば、ファクトの力で嘘を暴く事が出来るはずだ…
マーシェリーの邪魔が入らなければだが。
「クロード、頼みがある」
「分かっております」
「コレを、ビジュ3番通りの……」
どこで誰が聞いてるか分からないから、クロードに耳打ちし伝えた。
クロードは、一度頷き部屋を出て行く。
隠密としての能力もあるクロードなら、付けられることも無いだろう。
ビジュ3番通りの廃屋にあるポスト……ガーネット家に連絡を取る時に使う、秘密の手段。
王家にも……
そこに、小さなノックが響く。
「誰だ?」
「ぁ……ごめんなさい、お父様…」
っ?!ジュリア?!
考え事をしていたせいで、思いの外冷たい声で返事をしたせいで、ジュリアが怯えてしまった。
「いや、大丈夫だ。入りなさい、どうした?」
ジュリアは一瞬考え込み、おずおずと私に近寄って来た。
(やはり、まだ心許せない……か)
あれから、結構な月日が経っているにも関わらず…ジュリアは、まだ笑顔を見せてはくれなかった。
今のジュリアには初対面のはずのハーヴェイでさえ、まだ見てないと言っていた。
そう言えば、そろそろハーヴェイの姉のステラ嬢も来るはずじゃないか?
ステラ嬢なら、女同士だしきっと心開いてくれるだろう…。
「欲しい…物があるんです……」
小さな声で怯えながら欲しいと言った物は、魔宝石タンザナイトだった。
「タンザナイト?」
「ぁ、ダメなら良いんです。…その、小鳥が怪我で…ごめんなさいっ」
私が聞き返すと、ジュリアはダメだと思ったのか「ごめんなさい」と言ってすぐな踵を返した。
「待ちなさい、ダメとは言ってない」
「え?」
驚いたような、訝しむような顔で振り返るジュリア。
「少し待ちなさい」
私は部屋に備え付けの金庫に行き、中から小さな魔宝石タンザナイトを取りだし、ジュリアの手に乗せた。
「今は、これで我慢しなさい。近いうちに加工し、ちゃんとした物を贈ろう」
「え?……これだけでも、大丈夫です、けど…」
ジュリアは、私達と必ず距離を取ろうとする。料理人や使用人を変えた事で、やっと一緒に食事をとるようになった。
最初、ケイナが色々言っていたが、マーシェリーが止めに入った事で言わなくなった。
妻が庇うとは思わなかったから、不思議だったが…何か思惑があるんだろうな。
シュテルとは、少しは話すが…私とは殆ど話さないからな……
「何かあるといけないから、受け取っておきなさい」
「……分かり、ました」
ジュリアは、小さな魔宝石を持って部屋を出て行った。私は直ぐに、魔宝石の加工場に連絡を入れて、魔宝石タンザナイトを使ったブローチを作るよう依頼した。
ルーファスはまた金庫に行き、ブローチにするには少し大きめのタンザナイトを取り出した。直ぐに、職人がデザイン画を持ってくるだろうからその時に渡せるように。
(ふぅ、ジュリアは私に心を開いてくれるだろうか……。いつか……でいい。いつか、心開いてくれたなら……)
私はジュリアとの仲の改善と、ケイナの方に力を注いでいて気付かなかった……
既に妻マーシェリーが動いていた事、妻が本当は焦っていた事、そして……マーキス。
彼が、事件に関与しジュリアにしていた行為……ケイナとの関係。
ケイナは、ジュリアと一緒に行ったのが最初ではなかったんだ。
ガーネット家
それは、王家に使える貴族の中で特出した家系。裁判に置いて、最も重要な立ち位置にいる者…
それが……
ガーネット家当主 ファクト・ガーネット。
実は、ガーネット家と我がタンザナイト家は、裏で繋がっている存在だ。
ガーネット家が仮面で顔を隠しながら表の世界で裁判をし、タンザナイト家は裏で情報を集める役目を負っている。
表面上では、仲が悪いと見せているが……な。繋がっていると分かれば、情報が集めにくくなるから…この事を知っているのは当主と次期当主のみ。
シュテルが14の誕生日を迎えた時に伝えたから、あれも知っている。
必ず、物的証拠を集めるが…それでも言い逃れ出来る可能性が無いわけじゃない。
先代国王が未だ、ルビー伯爵家を支援している。だが今の国王は、先代とは逆の考えで実力のある者に支援すべきと考えている。
貴族であろうとなかろうと、能力のある者が上に立つべきと。私もそれには賛成だ。
かつての栄光にしがみつき、能力を鍛えることもせず傍受するだけの者に、価値はない。
実はルビー伯爵家もまた、その価値のない一族の一つと私達は考えている。彼らの先祖は確かに王家に尽くした一家ではあるが、今の彼らは王家の威信をまるで我が事のように振る舞う…
……残念ながら私たちの結婚も、この事が関係している。マーシェリーは、先王陛下のお気に入りだ。私と婚約した時、当時国王だった先王陛下の命令で決まってしまった。
だが、結婚当初は今の感じではなくもう少し謙虚だった気がするが…?
いや、まぁ良い。
取り敢えず最悪の事態を考えて、ファクトの協力を得られるよう手紙を書くしかない。
マーシェリーは難しいかも知れないが、ケイナならば何かしらのボロを必ず出す。
そうすれば、ファクトの力で嘘を暴く事が出来るはずだ…
マーシェリーの邪魔が入らなければだが。
「クロード、頼みがある」
「分かっております」
「コレを、ビジュ3番通りの……」
どこで誰が聞いてるか分からないから、クロードに耳打ちし伝えた。
クロードは、一度頷き部屋を出て行く。
隠密としての能力もあるクロードなら、付けられることも無いだろう。
ビジュ3番通りの廃屋にあるポスト……ガーネット家に連絡を取る時に使う、秘密の手段。
王家にも……
そこに、小さなノックが響く。
「誰だ?」
「ぁ……ごめんなさい、お父様…」
っ?!ジュリア?!
考え事をしていたせいで、思いの外冷たい声で返事をしたせいで、ジュリアが怯えてしまった。
「いや、大丈夫だ。入りなさい、どうした?」
ジュリアは一瞬考え込み、おずおずと私に近寄って来た。
(やはり、まだ心許せない……か)
あれから、結構な月日が経っているにも関わらず…ジュリアは、まだ笑顔を見せてはくれなかった。
今のジュリアには初対面のはずのハーヴェイでさえ、まだ見てないと言っていた。
そう言えば、そろそろハーヴェイの姉のステラ嬢も来るはずじゃないか?
ステラ嬢なら、女同士だしきっと心開いてくれるだろう…。
「欲しい…物があるんです……」
小さな声で怯えながら欲しいと言った物は、魔宝石タンザナイトだった。
「タンザナイト?」
「ぁ、ダメなら良いんです。…その、小鳥が怪我で…ごめんなさいっ」
私が聞き返すと、ジュリアはダメだと思ったのか「ごめんなさい」と言ってすぐな踵を返した。
「待ちなさい、ダメとは言ってない」
「え?」
驚いたような、訝しむような顔で振り返るジュリア。
「少し待ちなさい」
私は部屋に備え付けの金庫に行き、中から小さな魔宝石タンザナイトを取りだし、ジュリアの手に乗せた。
「今は、これで我慢しなさい。近いうちに加工し、ちゃんとした物を贈ろう」
「え?……これだけでも、大丈夫です、けど…」
ジュリアは、私達と必ず距離を取ろうとする。料理人や使用人を変えた事で、やっと一緒に食事をとるようになった。
最初、ケイナが色々言っていたが、マーシェリーが止めに入った事で言わなくなった。
妻が庇うとは思わなかったから、不思議だったが…何か思惑があるんだろうな。
シュテルとは、少しは話すが…私とは殆ど話さないからな……
「何かあるといけないから、受け取っておきなさい」
「……分かり、ました」
ジュリアは、小さな魔宝石を持って部屋を出て行った。私は直ぐに、魔宝石の加工場に連絡を入れて、魔宝石タンザナイトを使ったブローチを作るよう依頼した。
ルーファスはまた金庫に行き、ブローチにするには少し大きめのタンザナイトを取り出した。直ぐに、職人がデザイン画を持ってくるだろうからその時に渡せるように。
(ふぅ、ジュリアは私に心を開いてくれるだろうか……。いつか……でいい。いつか、心開いてくれたなら……)
私はジュリアとの仲の改善と、ケイナの方に力を注いでいて気付かなかった……
既に妻マーシェリーが動いていた事、妻が本当は焦っていた事、そして……マーキス。
彼が、事件に関与しジュリアにしていた行為……ケイナとの関係。
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