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第8話(シュテル目線)
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父上から連絡があった。
母上と話し揺さぶりをかけたが、微かな動揺のみで平然としていたと。
母上は、暫く動かないだろうと……。
「となると、ケイナかな……」
「シュテル?」
「あ、姉様。何でもないよっ」
とと、姉様と一緒にいるのに考え事してたらダメだったな。
姉様は、未だに俺を信用していない。
父上の事も……
でも……
ハーヴェイの事は、信頼してるように感じるな。まぁ、姉様にとっては「始めまして」なんだろうが……釈然としない。
仕方ないから、こっそり後ろにいるハーヴェイを睨んでも無理ないよな……っ
これから姉様の環境をかえてくんだが、あまり派手に動いて姉様の警戒心を強める訳にもいかないし。
「シュテル。今日私は、マーキス様の所に行く事になってるの。あなたはケイナとお留守番しててね。それから……」
『お姉様だけズルいっ!ケイナも行くっ!!』
っ?!
頭に昔の記憶が蘇ってくる。
そうだ……姉様が、婚約者に会いに行くと言った日……ケイナも無理やり着いて行ったんだった。
それで、ケイナがマーキスを気に入って……
最終的にマーキスは、ケイナを信じジュリア姉様を裏切った…。
俺も人の事は言えない……でも、マーキスだけでも姉様を信じていてくれたなら、あんな結末にはならなかったんじゃないかって……今でも思う。
今は……言ったところで全てが遅い。
けれど今の彼は……これから未来に起こることなど知る由もない。…分かってる、だからこそ未来を変えるんだ。
マーキスが姉様の婚約者に相応しいかは、今は考えるな。
それよりも、ケイナだ…
どうにかして、ケイナを止めないと……
……いや、むしろ2人を合わせて行動を起こした所で証拠を集める?
いや、それよりマーキスをこっち側に引き入れて……
「……テル、……ねぇ、シュ……」
「……え?なに、姉様」
「もう、やっぱり、聞いてなかったのね」
「ご、ごめんなさい、姉様……」
考え事に集中して姉様の声に気付かなかった。最近の姉様は、俺達を警戒しながらも優しく気にかけてくれている。
元々姉様は優しい。
だからこそ、母上やケイナに利用されたんだよな…文句も何も言わないから。
「姉様、ぼくもマーキス様にお会いしたいです!」
「え?……でも」
「お願いします!姉様っ」
取り敢えず、付いていくしかない。
このあと、どうせケイナも行きたいとか言い出すんだ。もう1人くらい増えても大丈夫だろ。
「ジュリア、連れて行ってあげなさい」
「……お父様」
「離れたくないのだろう」
父上が、俺を見て目配せで合図をおくる。
俺はそれに頷きで返し、姉様の手をギュッと握り「姉様と離れたくないっ」と駄々を捏ねた。
中身が14の俺としては恥ずかしい行動だが……仕方ない。俺は4歳、4歳だ。恥ずかしくないと言い聞かせ、大袈裟とも言える行動で「行きたい」を連呼した。
「分かりました。シュテル、大人しくしててね」
「はい!姉様」
「気を付けて行ってきなさい」
姉様と2人で父上に挨拶をして、玄関を出たところでアイツが来た。大きな足音を立てて駆け込んで来たのは、案の定ケイナだった。
「お姉様!どこに行くの?ケイナも一緒に行く!」
「ケイナ、私はマーキス様の所に行くだけよ。すぐ戻るから、大人しく待ってて」
「嫌よ!シュテルも行くんでしょ?!」
「シュテルは、お父様が連れて行きなさいって言ったからよ」
姉様が説得するけど、やはり聞く耳を持たない。あまりここで時間を潰すと、約束の時間を過ぎてしまう。
姉様は時計に目を落とし「仕方ないわね」と言って、ケイナも馬車に乗せた。
「イグニスさん、ケイナも一緒に連れて行くと、お父様に伝えてくれる?」
「畏まりました、お嬢様」
「出して」と御者に伝えると、馬車は直ぐに走り出した。
ここから、クンツァイト家のタウンハウスまでは数十分程度……
「2人とも、大人しくしててね」
「分かってるわよ」
「はい、姉様」
ケイナは、家から離れたからか態度が大きくなった。昔から、こんなに態度でかかったっけ?
そして、かなり上機嫌だ。
何を考えてるか、丸わかりだ…
どうせ、姉様からマーキスを奪おうとでも思ってんだろ。
「…………」
ハーヴェイに視線を移す。
彼は姉様の護衛だ、昔と違い今は姉様がどこに行くにも彼は付いていく。彼の能力で、怪しい者は直ぐに発見できるから。
コク
彼は頷く。
俺も頷く。
俺には時間を操る力がある。まだ、体が幼いから使える力は少ないのが残念だが……何か事件が起これば、時間を遡り証拠を持って元の時間に戻ればいい。
ただなぁ
ケイナは、後先考えないで行動するタイプだから、書類とかの証明が手に入るかどうか……状況証拠は集められるかもしれないけれど…
(映像録画ようの水晶持ってきたか?)
(ありますが、一つだけです)
(何時間?)
(MAX1時間です)
1時間分しか、録画出来ないか……
ハーヴェイと目で会話しながらも、これから取る行動を確認していく。
「もうすぐ付くわよ」
「やっとね!」
馬車が通りの道を曲がると、桃色の宝石クンツァイトを使った門が見えてきた。
門の前には屈強な騎士が立っていた。
彼らは、クンツァイト公爵家の血を引く者達で構成された私兵だ。
クンツァイト家は、胸に魔宝石クンツァイトを宿して生まれてくる。男女共に肉体強化の能力を持つから、騎士になるものが多い。
現クンツァイト家当主は、王家の騎士団長を務めていると聞く。
マーキスもまた、10歳だと言うのに1人で魔獣と戦う事も出来るほどに強いらしい。
……筋肉バカだから、ケイナのクソみたいな魅力に惹かれたのか?ルビー伯爵家の血を強く受け継いでるから、発育は良いもんな。
……今回もケイナに惹かれ、ジュリア姉様を裏切るようなら、その時に容赦しなければ良い。
2度目はないよ
マーキス・クンツァイト
母上と話し揺さぶりをかけたが、微かな動揺のみで平然としていたと。
母上は、暫く動かないだろうと……。
「となると、ケイナかな……」
「シュテル?」
「あ、姉様。何でもないよっ」
とと、姉様と一緒にいるのに考え事してたらダメだったな。
姉様は、未だに俺を信用していない。
父上の事も……
でも……
ハーヴェイの事は、信頼してるように感じるな。まぁ、姉様にとっては「始めまして」なんだろうが……釈然としない。
仕方ないから、こっそり後ろにいるハーヴェイを睨んでも無理ないよな……っ
これから姉様の環境をかえてくんだが、あまり派手に動いて姉様の警戒心を強める訳にもいかないし。
「シュテル。今日私は、マーキス様の所に行く事になってるの。あなたはケイナとお留守番しててね。それから……」
『お姉様だけズルいっ!ケイナも行くっ!!』
っ?!
頭に昔の記憶が蘇ってくる。
そうだ……姉様が、婚約者に会いに行くと言った日……ケイナも無理やり着いて行ったんだった。
それで、ケイナがマーキスを気に入って……
最終的にマーキスは、ケイナを信じジュリア姉様を裏切った…。
俺も人の事は言えない……でも、マーキスだけでも姉様を信じていてくれたなら、あんな結末にはならなかったんじゃないかって……今でも思う。
今は……言ったところで全てが遅い。
けれど今の彼は……これから未来に起こることなど知る由もない。…分かってる、だからこそ未来を変えるんだ。
マーキスが姉様の婚約者に相応しいかは、今は考えるな。
それよりも、ケイナだ…
どうにかして、ケイナを止めないと……
……いや、むしろ2人を合わせて行動を起こした所で証拠を集める?
いや、それよりマーキスをこっち側に引き入れて……
「……テル、……ねぇ、シュ……」
「……え?なに、姉様」
「もう、やっぱり、聞いてなかったのね」
「ご、ごめんなさい、姉様……」
考え事に集中して姉様の声に気付かなかった。最近の姉様は、俺達を警戒しながらも優しく気にかけてくれている。
元々姉様は優しい。
だからこそ、母上やケイナに利用されたんだよな…文句も何も言わないから。
「姉様、ぼくもマーキス様にお会いしたいです!」
「え?……でも」
「お願いします!姉様っ」
取り敢えず、付いていくしかない。
このあと、どうせケイナも行きたいとか言い出すんだ。もう1人くらい増えても大丈夫だろ。
「ジュリア、連れて行ってあげなさい」
「……お父様」
「離れたくないのだろう」
父上が、俺を見て目配せで合図をおくる。
俺はそれに頷きで返し、姉様の手をギュッと握り「姉様と離れたくないっ」と駄々を捏ねた。
中身が14の俺としては恥ずかしい行動だが……仕方ない。俺は4歳、4歳だ。恥ずかしくないと言い聞かせ、大袈裟とも言える行動で「行きたい」を連呼した。
「分かりました。シュテル、大人しくしててね」
「はい!姉様」
「気を付けて行ってきなさい」
姉様と2人で父上に挨拶をして、玄関を出たところでアイツが来た。大きな足音を立てて駆け込んで来たのは、案の定ケイナだった。
「お姉様!どこに行くの?ケイナも一緒に行く!」
「ケイナ、私はマーキス様の所に行くだけよ。すぐ戻るから、大人しく待ってて」
「嫌よ!シュテルも行くんでしょ?!」
「シュテルは、お父様が連れて行きなさいって言ったからよ」
姉様が説得するけど、やはり聞く耳を持たない。あまりここで時間を潰すと、約束の時間を過ぎてしまう。
姉様は時計に目を落とし「仕方ないわね」と言って、ケイナも馬車に乗せた。
「イグニスさん、ケイナも一緒に連れて行くと、お父様に伝えてくれる?」
「畏まりました、お嬢様」
「出して」と御者に伝えると、馬車は直ぐに走り出した。
ここから、クンツァイト家のタウンハウスまでは数十分程度……
「2人とも、大人しくしててね」
「分かってるわよ」
「はい、姉様」
ケイナは、家から離れたからか態度が大きくなった。昔から、こんなに態度でかかったっけ?
そして、かなり上機嫌だ。
何を考えてるか、丸わかりだ…
どうせ、姉様からマーキスを奪おうとでも思ってんだろ。
「…………」
ハーヴェイに視線を移す。
彼は姉様の護衛だ、昔と違い今は姉様がどこに行くにも彼は付いていく。彼の能力で、怪しい者は直ぐに発見できるから。
コク
彼は頷く。
俺も頷く。
俺には時間を操る力がある。まだ、体が幼いから使える力は少ないのが残念だが……何か事件が起これば、時間を遡り証拠を持って元の時間に戻ればいい。
ただなぁ
ケイナは、後先考えないで行動するタイプだから、書類とかの証明が手に入るかどうか……状況証拠は集められるかもしれないけれど…
(映像録画ようの水晶持ってきたか?)
(ありますが、一つだけです)
(何時間?)
(MAX1時間です)
1時間分しか、録画出来ないか……
ハーヴェイと目で会話しながらも、これから取る行動を確認していく。
「もうすぐ付くわよ」
「やっとね!」
馬車が通りの道を曲がると、桃色の宝石クンツァイトを使った門が見えてきた。
門の前には屈強な騎士が立っていた。
彼らは、クンツァイト公爵家の血を引く者達で構成された私兵だ。
クンツァイト家は、胸に魔宝石クンツァイトを宿して生まれてくる。男女共に肉体強化の能力を持つから、騎士になるものが多い。
現クンツァイト家当主は、王家の騎士団長を務めていると聞く。
マーキスもまた、10歳だと言うのに1人で魔獣と戦う事も出来るほどに強いらしい。
……筋肉バカだから、ケイナのクソみたいな魅力に惹かれたのか?ルビー伯爵家の血を強く受け継いでるから、発育は良いもんな。
……今回もケイナに惹かれ、ジュリア姉様を裏切るようなら、その時に容赦しなければ良い。
2度目はないよ
マーキス・クンツァイト
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