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第1章 蛇神と少女と蜘蛛神
罪と罰③(蛇神)(R15)(挿絵有り)
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蜘蛛の糸に縛られ、後ろに転がっている人間に俺は、奴にとって残酷な言葉を吐く。
「蜘蛛神、奴の足を片方くれてやれ」
「わぁーったよ」
「ま、待ってくれ!助けてくれ!死にたくない!」
「心配するな、殺しはしない。娘との約束に反するからな」
「そんな!」とか、「理不尽だ!」「止めてくれ」などの声が聞こえてくるが、無視する。
「神がすべて慈悲深いと、思わぬ事だ」
「そうだ!名無し!名無しは何処だ!?俺たちを助けろ!」
人間共が私の半身を探し始めた。
離れた所にいる娘に目をとめた瞬間、助けろと訳の分からない事を言い出した。
その言葉を聞いた蜘蛛神が、部下の蜘蛛に指示し村人を喰らい初めた。逃げる事も出来ず、ただただ、村人が食われるのを見て恐怖する人間共。
ふと、気配が動き後ろを振り返れば、そこには娘の護衛を任せていた、赤蛇と青蛇が人型で立っていた。
「何があった?娘の護衛を任せたはずだが?」
「主様、逃げ果せた人間が主様の半身様に手を出そうとしましたので捉えて参りました」
そう言って2人は、両脇に抱えた人間を放り投げるように寄越した。
(はぁ、また愚かな人間の始末か。殺しはしないが……)
「お、俺は、悪くない…」
「そ、村長に命令されたんだ……」
「助けてくれ、頼むっ…」
「なんで、俺達がこんな目にっ」
奴らは、泣き崩れ、懇願し、最後には絶望した目をしていた。だが俺も、手加減はしない。娘に手を出したのが運の尽きだったな。
全ての村人に罰を与え、俺は、この場を離れようとした。
「この化け物が!!神の子たる我らにこんな事をして、今に天罰が下るぞ!!!」
「天罰なら下っただろ?いま、まさに」
「なに?!」
「蛇神は、この地域の土地神なのだから」
蜘蛛神の言葉に唖然とした神父は、嘘だ嘘だ嘘だと発狂しながら叫んでいた。
「救いようがない村だな」
「んじゃ、離れるのか?」
「娘には悪影響しかなさそうだからな」
そう言うと蜘蛛神は嬉しそうに笑った。
何が嬉しいんだか……
離れた場所に避難させていた娘の元に行けば、両手をブンブン振り回し歓迎してくれた。
「ノエルさま!!」
「動くな、傷がまだ治りきっていないだろう」
「大丈夫ですよ」
満面の笑みで俺を見上げる娘に、「瑠璃」と一言いった。
「え?」
「お前の名だ……「瑠璃」という名を授けよう」
「良いのですか!!??」
「ああ、その代わり、俺と一緒に、この地から離れよう」
「え……でも…」
村の方を見るルリ。
虐げられ、暴言を吐かれ、体に沢山の傷を負わされながらも、娘は村人を案じていた。
「ノエルさま」
「なんだ」
嫌な予感がしたが、ルリの言葉を聞かないという選択肢はない。仕方が無いので、耳を傾けてやる。
「あのね、ノエルさまは、神さまだし、みんなやあの人にお仕置しなきゃいけないのは分かってるの。でも、ちゃんと反省したら、許してあげて欲しいの。だめ?」
「…………」
(あー、ルリに傷をつけた男の事だな)
(不死の呪いがかかってますし、何より今も叫び声が聞こえていますからね)
(ルリ嬢が気になるのも当然かもなぁ)
「……」
「ノエルさま」
「はぁぁ、仕方あるまい」
「あ、ありがとう!ノエルさま」
俺にお礼を伝えて、抱きつこうとしてきたルリを抱き上げる。顔の距離が近付き、ルリは俺の頬に口付けをした。
「ノエルさま、大好き」
ふふっと、幸せそうに笑い、放心してた俺の手から降りると、蜘蛛神の元に向かい同じように目元にキスをした。
「!!なっ!」
その後は、緑蛇、赤蛇、青蛇の順にキスをしていった。
「ルリ!!!!」
「ノエルさま?どうしたの?」
「誰にでもキスをするな!」
「どうして?感謝の印だよ?だめ?」
「だめだ!」
「まぁまぁ、固いこと言うなよ蛇神」
「ほら、言い合ってないで帰りましょう」
緑蛇が仕切り、ルリを背中に乗せて泉に向かって行ったのを慌てて追いかける俺たち。
ミシェイル王国北部を担当していた土地神ノエルは、今日この日を持って土地神の任を降りた。
徐々に衰退していった北部だが、王都には目立った打撃にはならなかった。
だが、土地神ノエルの力は強く、彼が消えた後、他の土地神もミシェイル王国を離れたそうだ。
ミシェイル王国を離れ、彼らはルリの要望により、海の見える国に旅立って行った。
「蜘蛛神、奴の足を片方くれてやれ」
「わぁーったよ」
「ま、待ってくれ!助けてくれ!死にたくない!」
「心配するな、殺しはしない。娘との約束に反するからな」
「そんな!」とか、「理不尽だ!」「止めてくれ」などの声が聞こえてくるが、無視する。
「神がすべて慈悲深いと、思わぬ事だ」
「そうだ!名無し!名無しは何処だ!?俺たちを助けろ!」
人間共が私の半身を探し始めた。
離れた所にいる娘に目をとめた瞬間、助けろと訳の分からない事を言い出した。
その言葉を聞いた蜘蛛神が、部下の蜘蛛に指示し村人を喰らい初めた。逃げる事も出来ず、ただただ、村人が食われるのを見て恐怖する人間共。
ふと、気配が動き後ろを振り返れば、そこには娘の護衛を任せていた、赤蛇と青蛇が人型で立っていた。
「何があった?娘の護衛を任せたはずだが?」
「主様、逃げ果せた人間が主様の半身様に手を出そうとしましたので捉えて参りました」
そう言って2人は、両脇に抱えた人間を放り投げるように寄越した。
(はぁ、また愚かな人間の始末か。殺しはしないが……)
「お、俺は、悪くない…」
「そ、村長に命令されたんだ……」
「助けてくれ、頼むっ…」
「なんで、俺達がこんな目にっ」
奴らは、泣き崩れ、懇願し、最後には絶望した目をしていた。だが俺も、手加減はしない。娘に手を出したのが運の尽きだったな。
全ての村人に罰を与え、俺は、この場を離れようとした。
「この化け物が!!神の子たる我らにこんな事をして、今に天罰が下るぞ!!!」
「天罰なら下っただろ?いま、まさに」
「なに?!」
「蛇神は、この地域の土地神なのだから」
蜘蛛神の言葉に唖然とした神父は、嘘だ嘘だ嘘だと発狂しながら叫んでいた。
「救いようがない村だな」
「んじゃ、離れるのか?」
「娘には悪影響しかなさそうだからな」
そう言うと蜘蛛神は嬉しそうに笑った。
何が嬉しいんだか……
離れた場所に避難させていた娘の元に行けば、両手をブンブン振り回し歓迎してくれた。
「ノエルさま!!」
「動くな、傷がまだ治りきっていないだろう」
「大丈夫ですよ」
満面の笑みで俺を見上げる娘に、「瑠璃」と一言いった。
「え?」
「お前の名だ……「瑠璃」という名を授けよう」
「良いのですか!!??」
「ああ、その代わり、俺と一緒に、この地から離れよう」
「え……でも…」
村の方を見るルリ。
虐げられ、暴言を吐かれ、体に沢山の傷を負わされながらも、娘は村人を案じていた。
「ノエルさま」
「なんだ」
嫌な予感がしたが、ルリの言葉を聞かないという選択肢はない。仕方が無いので、耳を傾けてやる。
「あのね、ノエルさまは、神さまだし、みんなやあの人にお仕置しなきゃいけないのは分かってるの。でも、ちゃんと反省したら、許してあげて欲しいの。だめ?」
「…………」
(あー、ルリに傷をつけた男の事だな)
(不死の呪いがかかってますし、何より今も叫び声が聞こえていますからね)
(ルリ嬢が気になるのも当然かもなぁ)
「……」
「ノエルさま」
「はぁぁ、仕方あるまい」
「あ、ありがとう!ノエルさま」
俺にお礼を伝えて、抱きつこうとしてきたルリを抱き上げる。顔の距離が近付き、ルリは俺の頬に口付けをした。
「ノエルさま、大好き」
ふふっと、幸せそうに笑い、放心してた俺の手から降りると、蜘蛛神の元に向かい同じように目元にキスをした。
「!!なっ!」
その後は、緑蛇、赤蛇、青蛇の順にキスをしていった。
「ルリ!!!!」
「ノエルさま?どうしたの?」
「誰にでもキスをするな!」
「どうして?感謝の印だよ?だめ?」
「だめだ!」
「まぁまぁ、固いこと言うなよ蛇神」
「ほら、言い合ってないで帰りましょう」
緑蛇が仕切り、ルリを背中に乗せて泉に向かって行ったのを慌てて追いかける俺たち。
ミシェイル王国北部を担当していた土地神ノエルは、今日この日を持って土地神の任を降りた。
徐々に衰退していった北部だが、王都には目立った打撃にはならなかった。
だが、土地神ノエルの力は強く、彼が消えた後、他の土地神もミシェイル王国を離れたそうだ。
ミシェイル王国を離れ、彼らはルリの要望により、海の見える国に旅立って行った。
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