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第1章 蛇神と少女と蜘蛛神
蛇神さま②
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「……さい。…て下さい。起きて下さい」
「ん…」
体を揺さぶられる感覚がして意識が浮上してくる。目を覚ませば近くにいたのは、大きな蛇さんではなかった。
眼鏡をかけた、少し小ぶりな明るい緑色をした蛇さんだった。
「蛇さん?小さくなった?」
「…違います。はぁ、なぜ私が人間の世話など……」
そう言いながらも、頭に乗せたお盆を器用に机に置いた。
……いつの間にか机がある!!?
「お食事をお持ちしましたので、食べて下さい。お薬もありますから飲んで下さい」
「わ、分かった。……」
「なんですか……」
私が何か言いたげなのを理解したのか、緑色した蛇さんが聞いてくれる。
「大きな蛇さんは……?」
「……仕事です」
「お仕事?」
「そうです」
何のお仕事なんだろう?
……と疑問に思ったけど、ご飯を食べ終え薬を飲むと、緑の蛇さんが怪我の具合を見てくれた。
頭の布の先を咥えて器用に解いては、新しい薬の付いた布を巻いてくれる。
腕や足の布も取り替えてくれた。
「ありがとう」
「主様の命令ですから」
「それでも、ありがとうだよ」
「そうですか」
すると、外から賑やかなな声が聞こえてきた。緑の蛇さんは、舌打ちしながらも声の方に向かっていった。
「おう!邪魔するぜ!」
「お待ち下さい!この部屋はダメです!」
「良いじゃねぇか、人間がいるんだろ?知ってるぜ」
「だから、ダメだと言ってるんです!主様に言いつけますよ!」
黒い何かが部屋の中に入ってきた!!
「!!!!」
「よっ人間?」
私が眠るベッドの上で、赤い目をした大きい蜘蛛が私を見下ろしていた。
6つほどある赤い目が私を捉えて離さない。
「蜘蛛さん?」
「ふーん、俺を見ても怖がらねぇの?」
「怖がる?どうして?」
「いや、普通、こんな大きい蜘蛛が目の前に現れたら怖がるだろ……食われるんじゃねぇかって」
「蜘蛛さん、私を食べるの?」
「食わねぇよ」
蛇さんと同じ事を蜘蛛さんも言った。
緑の蛇さんは蜘蛛さんを部屋から出そうとしてるみたいで……
「もう、良いでしょう。話が済んだのなら出て下さい!」
「まだだ」
「?」
「おい、人間」
「はい」
「ここから出てけ!」
「え?」
「アイツは何だかんだ言ってお人好しだからな。泉に落ちたお前を助けたんだろうが、手当てして貰ったんだろ?なら、ここにいる理由はねぇよな」
「でも……」
出て行きたくない……蛇さんと、離れたくない。
なんで……
「お前、何も知らねぇの?アイツから何も聞かされてねぇのな」
「ダメです!言ってはいけません!!」
「アイツは蛇神だし、俺も神だ。人間がおいそれと近付ける存在ではないと知れ!あいつが来る前に消えろ!薄汚い人間が!」
「っ!」
「お前だって思ってるだろ?蛇神の傍にこんな餓鬼がいること自体が問題なんだ!」
「それは……!」
「1人で帰れねぇって言うなら、俺が連れてってやる。本当は、人間なんか乗せたくはねぇが仕方ねぇ」
ダンっと私の頭の横に足を突き刺し、口を大きく開けて、帰れって蜘蛛さ…蜘蛛神様が言う。蛇さんは神様だから、人間の私がそばに居るのが良くないって。
ポタポタと涙が布団の上に落ちる。
帰らないと迷惑になるって……
蛇神様の迷惑になるって……
「分かり、ました。帰ります」
「よし、なら背中に乗れ」
「はい」
「お待ち下さい!!主様に許可をっ!」
「大丈夫です、蛇神様は優しいから、多分止めると思うし。蛇さんも、私がいない方が良いでしょ?」
「じゃ、行くぞ」
「お待ち下さい!!」
蜘蛛神様が、白い光に包まれました。
緑の蛇さんの言葉は最後まで聞こえなかった。
「ん…」
体を揺さぶられる感覚がして意識が浮上してくる。目を覚ませば近くにいたのは、大きな蛇さんではなかった。
眼鏡をかけた、少し小ぶりな明るい緑色をした蛇さんだった。
「蛇さん?小さくなった?」
「…違います。はぁ、なぜ私が人間の世話など……」
そう言いながらも、頭に乗せたお盆を器用に机に置いた。
……いつの間にか机がある!!?
「お食事をお持ちしましたので、食べて下さい。お薬もありますから飲んで下さい」
「わ、分かった。……」
「なんですか……」
私が何か言いたげなのを理解したのか、緑色した蛇さんが聞いてくれる。
「大きな蛇さんは……?」
「……仕事です」
「お仕事?」
「そうです」
何のお仕事なんだろう?
……と疑問に思ったけど、ご飯を食べ終え薬を飲むと、緑の蛇さんが怪我の具合を見てくれた。
頭の布の先を咥えて器用に解いては、新しい薬の付いた布を巻いてくれる。
腕や足の布も取り替えてくれた。
「ありがとう」
「主様の命令ですから」
「それでも、ありがとうだよ」
「そうですか」
すると、外から賑やかなな声が聞こえてきた。緑の蛇さんは、舌打ちしながらも声の方に向かっていった。
「おう!邪魔するぜ!」
「お待ち下さい!この部屋はダメです!」
「良いじゃねぇか、人間がいるんだろ?知ってるぜ」
「だから、ダメだと言ってるんです!主様に言いつけますよ!」
黒い何かが部屋の中に入ってきた!!
「!!!!」
「よっ人間?」
私が眠るベッドの上で、赤い目をした大きい蜘蛛が私を見下ろしていた。
6つほどある赤い目が私を捉えて離さない。
「蜘蛛さん?」
「ふーん、俺を見ても怖がらねぇの?」
「怖がる?どうして?」
「いや、普通、こんな大きい蜘蛛が目の前に現れたら怖がるだろ……食われるんじゃねぇかって」
「蜘蛛さん、私を食べるの?」
「食わねぇよ」
蛇さんと同じ事を蜘蛛さんも言った。
緑の蛇さんは蜘蛛さんを部屋から出そうとしてるみたいで……
「もう、良いでしょう。話が済んだのなら出て下さい!」
「まだだ」
「?」
「おい、人間」
「はい」
「ここから出てけ!」
「え?」
「アイツは何だかんだ言ってお人好しだからな。泉に落ちたお前を助けたんだろうが、手当てして貰ったんだろ?なら、ここにいる理由はねぇよな」
「でも……」
出て行きたくない……蛇さんと、離れたくない。
なんで……
「お前、何も知らねぇの?アイツから何も聞かされてねぇのな」
「ダメです!言ってはいけません!!」
「アイツは蛇神だし、俺も神だ。人間がおいそれと近付ける存在ではないと知れ!あいつが来る前に消えろ!薄汚い人間が!」
「っ!」
「お前だって思ってるだろ?蛇神の傍にこんな餓鬼がいること自体が問題なんだ!」
「それは……!」
「1人で帰れねぇって言うなら、俺が連れてってやる。本当は、人間なんか乗せたくはねぇが仕方ねぇ」
ダンっと私の頭の横に足を突き刺し、口を大きく開けて、帰れって蜘蛛さ…蜘蛛神様が言う。蛇さんは神様だから、人間の私がそばに居るのが良くないって。
ポタポタと涙が布団の上に落ちる。
帰らないと迷惑になるって……
蛇神様の迷惑になるって……
「分かり、ました。帰ります」
「よし、なら背中に乗れ」
「はい」
「お待ち下さい!!主様に許可をっ!」
「大丈夫です、蛇神様は優しいから、多分止めると思うし。蛇さんも、私がいない方が良いでしょ?」
「じゃ、行くぞ」
「お待ち下さい!!」
蜘蛛神様が、白い光に包まれました。
緑の蛇さんの言葉は最後まで聞こえなかった。
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