3 / 11
第1章 蛇神と少女と蜘蛛神
蛇神さま②
しおりを挟む
「……さい。…て下さい。起きて下さい」
「ん…」
体を揺さぶられる感覚がして意識が浮上してくる。目を覚ませば近くにいたのは、大きな蛇さんではなかった。
眼鏡をかけた、少し小ぶりな明るい緑色をした蛇さんだった。
「蛇さん?小さくなった?」
「…違います。はぁ、なぜ私が人間の世話など……」
そう言いながらも、頭に乗せたお盆を器用に机に置いた。
……いつの間にか机がある!!?
「お食事をお持ちしましたので、食べて下さい。お薬もありますから飲んで下さい」
「わ、分かった。……」
「なんですか……」
私が何か言いたげなのを理解したのか、緑色した蛇さんが聞いてくれる。
「大きな蛇さんは……?」
「……仕事です」
「お仕事?」
「そうです」
何のお仕事なんだろう?
……と疑問に思ったけど、ご飯を食べ終え薬を飲むと、緑の蛇さんが怪我の具合を見てくれた。
頭の布の先を咥えて器用に解いては、新しい薬の付いた布を巻いてくれる。
腕や足の布も取り替えてくれた。
「ありがとう」
「主様の命令ですから」
「それでも、ありがとうだよ」
「そうですか」
すると、外から賑やかなな声が聞こえてきた。緑の蛇さんは、舌打ちしながらも声の方に向かっていった。
「おう!邪魔するぜ!」
「お待ち下さい!この部屋はダメです!」
「良いじゃねぇか、人間がいるんだろ?知ってるぜ」
「だから、ダメだと言ってるんです!主様に言いつけますよ!」
黒い何かが部屋の中に入ってきた!!
「!!!!」
「よっ人間?」
私が眠るベッドの上で、赤い目をした大きい蜘蛛が私を見下ろしていた。
6つほどある赤い目が私を捉えて離さない。
「蜘蛛さん?」
「ふーん、俺を見ても怖がらねぇの?」
「怖がる?どうして?」
「いや、普通、こんな大きい蜘蛛が目の前に現れたら怖がるだろ……食われるんじゃねぇかって」
「蜘蛛さん、私を食べるの?」
「食わねぇよ」
蛇さんと同じ事を蜘蛛さんも言った。
緑の蛇さんは蜘蛛さんを部屋から出そうとしてるみたいで……
「もう、良いでしょう。話が済んだのなら出て下さい!」
「まだだ」
「?」
「おい、人間」
「はい」
「ここから出てけ!」
「え?」
「アイツは何だかんだ言ってお人好しだからな。泉に落ちたお前を助けたんだろうが、手当てして貰ったんだろ?なら、ここにいる理由はねぇよな」
「でも……」
出て行きたくない……蛇さんと、離れたくない。
なんで……
「お前、何も知らねぇの?アイツから何も聞かされてねぇのな」
「ダメです!言ってはいけません!!」
「アイツは蛇神だし、俺も神だ。人間がおいそれと近付ける存在ではないと知れ!あいつが来る前に消えろ!薄汚い人間が!」
「っ!」
「お前だって思ってるだろ?蛇神の傍にこんな餓鬼がいること自体が問題なんだ!」
「それは……!」
「1人で帰れねぇって言うなら、俺が連れてってやる。本当は、人間なんか乗せたくはねぇが仕方ねぇ」
ダンっと私の頭の横に足を突き刺し、口を大きく開けて、帰れって蜘蛛さ…蜘蛛神様が言う。蛇さんは神様だから、人間の私がそばに居るのが良くないって。
ポタポタと涙が布団の上に落ちる。
帰らないと迷惑になるって……
蛇神様の迷惑になるって……
「分かり、ました。帰ります」
「よし、なら背中に乗れ」
「はい」
「お待ち下さい!!主様に許可をっ!」
「大丈夫です、蛇神様は優しいから、多分止めると思うし。蛇さんも、私がいない方が良いでしょ?」
「じゃ、行くぞ」
「お待ち下さい!!」
蜘蛛神様が、白い光に包まれました。
緑の蛇さんの言葉は最後まで聞こえなかった。
「ん…」
体を揺さぶられる感覚がして意識が浮上してくる。目を覚ませば近くにいたのは、大きな蛇さんではなかった。
眼鏡をかけた、少し小ぶりな明るい緑色をした蛇さんだった。
「蛇さん?小さくなった?」
「…違います。はぁ、なぜ私が人間の世話など……」
そう言いながらも、頭に乗せたお盆を器用に机に置いた。
……いつの間にか机がある!!?
「お食事をお持ちしましたので、食べて下さい。お薬もありますから飲んで下さい」
「わ、分かった。……」
「なんですか……」
私が何か言いたげなのを理解したのか、緑色した蛇さんが聞いてくれる。
「大きな蛇さんは……?」
「……仕事です」
「お仕事?」
「そうです」
何のお仕事なんだろう?
……と疑問に思ったけど、ご飯を食べ終え薬を飲むと、緑の蛇さんが怪我の具合を見てくれた。
頭の布の先を咥えて器用に解いては、新しい薬の付いた布を巻いてくれる。
腕や足の布も取り替えてくれた。
「ありがとう」
「主様の命令ですから」
「それでも、ありがとうだよ」
「そうですか」
すると、外から賑やかなな声が聞こえてきた。緑の蛇さんは、舌打ちしながらも声の方に向かっていった。
「おう!邪魔するぜ!」
「お待ち下さい!この部屋はダメです!」
「良いじゃねぇか、人間がいるんだろ?知ってるぜ」
「だから、ダメだと言ってるんです!主様に言いつけますよ!」
黒い何かが部屋の中に入ってきた!!
「!!!!」
「よっ人間?」
私が眠るベッドの上で、赤い目をした大きい蜘蛛が私を見下ろしていた。
6つほどある赤い目が私を捉えて離さない。
「蜘蛛さん?」
「ふーん、俺を見ても怖がらねぇの?」
「怖がる?どうして?」
「いや、普通、こんな大きい蜘蛛が目の前に現れたら怖がるだろ……食われるんじゃねぇかって」
「蜘蛛さん、私を食べるの?」
「食わねぇよ」
蛇さんと同じ事を蜘蛛さんも言った。
緑の蛇さんは蜘蛛さんを部屋から出そうとしてるみたいで……
「もう、良いでしょう。話が済んだのなら出て下さい!」
「まだだ」
「?」
「おい、人間」
「はい」
「ここから出てけ!」
「え?」
「アイツは何だかんだ言ってお人好しだからな。泉に落ちたお前を助けたんだろうが、手当てして貰ったんだろ?なら、ここにいる理由はねぇよな」
「でも……」
出て行きたくない……蛇さんと、離れたくない。
なんで……
「お前、何も知らねぇの?アイツから何も聞かされてねぇのな」
「ダメです!言ってはいけません!!」
「アイツは蛇神だし、俺も神だ。人間がおいそれと近付ける存在ではないと知れ!あいつが来る前に消えろ!薄汚い人間が!」
「っ!」
「お前だって思ってるだろ?蛇神の傍にこんな餓鬼がいること自体が問題なんだ!」
「それは……!」
「1人で帰れねぇって言うなら、俺が連れてってやる。本当は、人間なんか乗せたくはねぇが仕方ねぇ」
ダンっと私の頭の横に足を突き刺し、口を大きく開けて、帰れって蜘蛛さ…蜘蛛神様が言う。蛇さんは神様だから、人間の私がそばに居るのが良くないって。
ポタポタと涙が布団の上に落ちる。
帰らないと迷惑になるって……
蛇神様の迷惑になるって……
「分かり、ました。帰ります」
「よし、なら背中に乗れ」
「はい」
「お待ち下さい!!主様に許可をっ!」
「大丈夫です、蛇神様は優しいから、多分止めると思うし。蛇さんも、私がいない方が良いでしょ?」
「じゃ、行くぞ」
「お待ち下さい!!」
蜘蛛神様が、白い光に包まれました。
緑の蛇さんの言葉は最後まで聞こえなかった。
0
お気に入りに追加
455
あなたにおすすめの小説

九尾の狐に嫁入りします~妖狐様は取り換えられた花嫁を溺愛する~
束原ミヤコ
キャラ文芸
八十神薫子(やそがみかおるこ)は、帝都守護職についている鎮守の神と呼ばれる、神の血を引く家に巫女を捧げる八十神家にうまれた。
八十神家にうまれる女は、神癒(しんゆ)――鎮守の神の法力を回復させたり、増大させたりする力を持つ。
けれど薫子はうまれつきそれを持たず、八十神家では役立たずとして、使用人として家に置いて貰っていた。
ある日、鎮守の神の一人である玉藻家の当主、玉藻由良(たまもゆら)から、神癒の巫女を嫁に欲しいという手紙が八十神家に届く。
神癒の力を持つ薫子の妹、咲子は、玉藻由良はいつも仮面を被っており、その顔は仕事中に焼け爛れて無残な化け物のようになっていると、泣いて嫌がる。
薫子は父上に言いつけられて、玉藻の元へと嫁ぐことになる。
何の力も持たないのに、嘘をつくように言われて。
鎮守の神を騙すなど、神を謀るのと同じ。
とてもそんなことはできないと怯えながら玉藻の元へ嫁いだ薫子を、玉藻は「よくきた、俺の花嫁」といって、とても優しく扱ってくれて――。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
おにぎり屋さんの裏稼業 〜お祓い請け賜わります〜
瀬崎由美
キャラ文芸
高校2年生の八神美琴は、幼い頃に両親を亡くしてからは祖母の真知子と、親戚のツバキと一緒に暮らしている。
大学通りにある屋敷の片隅で営んでいるオニギリ屋さん『おにひめ』は、気まぐれの営業ながらも学生達に人気のお店だ。でも、真知子の本業は人ならざるものを対処するお祓い屋。霊やあやかしにまつわる相談に訪れて来る人が後を絶たない。
そんなある日、祓いの仕事から戻って来た真知子が家の中で倒れてしまう。加齢による力の限界を感じた祖母から、美琴は祓いの力の継承を受ける。と、美琴はこれまで視えなかったモノが視えるようになり……。
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?
公主の嫁入り
マチバリ
キャラ文芸
宗国の公主である雪花は、後宮の最奥にある月花宮で息をひそめて生きていた。母の身分が低かったことを理由に他の妃たちから冷遇されていたからだ。
17歳になったある日、皇帝となった兄の命により龍の血を継ぐという道士の元へ降嫁する事が決まる。政略結婚の道具として役に立ちたいと願いつつも怯えていた雪花だったが、顔を合わせた道士の焔蓮は優しい人で……ぎこちなくも心を通わせ、夫婦となっていく二人の物語。
中華習作かつ色々ふんわりなファンタジー設定です。
【完結】「妹の身代わりに殺戮の王子に嫁がされた王女。離宮の庭で妖精とじゃがいもを育ててたら、殿下の溺愛が始まりました」
まほりろ
恋愛
国王の愛人の娘であるヒロインは、母親の死後、王宮内で放置されていた。
食事は一日に一回、カビたパンや腐った果物、生のじゃがいもなどが届くだけだった。
しかしヒロインはそれでもなんとか暮らしていた。
ヒロインの母親は妖精の村の出身で、彼女には妖精がついていたのだ。
その妖精はヒロインに引き継がれ、彼女に加護の力を与えてくれていた。
ある日、数年ぶりに国王に呼び出されたヒロインは、異母妹の代わりに殺戮の王子と二つ名のある隣国の王太子に嫁ぐことになり……。
※カクヨムにも投稿してます。カクヨム先行投稿。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
※2023年9月17日女性向けホットランキング1位まで上がりました。ありがとうございます。
※2023年9月20日恋愛ジャンル1位まで上がりました。ありがとうございます。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる