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第1章 蛇神と少女と蜘蛛神

蛇神さま

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「…………」

気が付けば、近くにさっきの大きな蛇がいてびっくりした。

「あ、あの……」
「食べろ」

そう言って頭を下げる蛇さん。
頭を下げた蛇さんの頭の上には、湯気が立った美味しそうなご飯が乗ったお盆があって…
手に取っていいのか悩んでたら…

「さっさと取れ」

と言われたので、急いでお盆を受け取る。

ご飯……作ってくれたのかな……?
失礼かもしれないけど、まじまじと蛇さんを見てしまった。

「なんだ」
「ううん、ありがとう、ございます」
「……ふん」

備えてあったスプーンを手に取って、食べた雑炊は味が染み込んでてとても美味しかった。

「お盆を乗せろ」

お腹が膨れて落ち着いたら、蛇さんが再び頭にお盆を乗せて出ていった。
直ぐに戻ってきて、また頭を下げると、コップと粉?の入った紙を乗せたお盆を差し出して来た。

「薬だ」
「え?」
「飲め」

コップと薬を受け取ると、蛇さんは頭を傾げて早く飲めと催促してくる。
気分は落ちついていて、目の前にいる蛇さんが話してる事実にも驚いたけど、何故かストンと胸に落ち着いた。
前々から、知っている気がしたから。

そう言えばと、頭に手を当てたり腕を見てみると白い布が巻かれていた。

「怪我の治療ならした」

私が不思議に思ってたら蛇さんが手当してくれたと教えてくれた。
でも、どうやって布を巻いてくれたんだろう?

「あり、がとう、ございます?」
「ふん」

蛇さんは私を寝かすように頭を動かし、布団を咥えて掛けてくれた。
トントンと布団を叩き「寝ろ」と言ってくれた。

どうして、蛇さんは私に優しくしてくれるんだろう?私が眠りにつくまで、蛇さんは傍に居てくれた。

赤く長い舌で顔を舐められた気がするけど、私はすぐに眠りに落ちた。

「俺を見ても怖がらなかったのはお前だけだ…だから……」

蛇さんが何かを呟いたけど、眠りに落ちた私には何も聞こえなかった。




深い眠りの中、私は自分の幼い頃の夢を見ていた。今も大きくはないけど、今よりうんと小さい頃。

パパとママが生きてた頃。
村の人達が優しかった頃。
他所から来た私たちを暖かく迎えてくれた村の人達。

でも、私達が村の掟を破ったから……
森の中に足を踏み入れたから……
泉に住まう化け物が現れたって、村人達が騒ぎだして、パパもママも森に入ってたの。

私も追いかけたの一生懸命。
でも、見失ってしまって……
そしたら、……誰かが傍に来てくれたの。
もう、思い出せないけれど……

その人?は「帰れ」って言ったけど、私は帰り方が分からないって言ったの。
気が付いたら村の入り口に倒れてたらしいの。
その日からパパもママも帰って来なくなって、村長さんや村の人たちが冷たくなったの。
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