12 / 34
本編
第8話
しおりを挟む
「では、精霊様を見せて頂けますか?セラフィ様」
「は、はいっ」
私は、宰相様の執務室で肌触りのいいソファに座ってお菓子を頂いています。
私の後ろには、ジーク様とフェリクス様が立っていて、宰相様は目の前に座っています。
「お菓子とお茶は、好きなだけ頼んで下さいね」
「あ、ありがとうございます」
『主様、後で私にも食べさせて下さい』
「う、うん」
ノクトールは、宰相様の手の中で観察されていた。
額の紋章、月の力、そして姿……
「セラフィ様、右手を見せて頂けますか?」
「はい」
右手の紋章は、ノクトールに名前を付けた時に変わりました。ノクトールの額にある紋章と同じものです。
「ふむ」
それが、何を意味するのか私には分かりません。
(やはり……)
(気付いたか…宰相よ)
(っ……)
宰相様、どうしたんだろう?
ノクトールと見つめ合ったまま動かなくなっちゃった……
(セラフィは、我が主。次代の精霊妃)
(……)
(主を貶し傷付ける者に、我は容赦せぬ。あの伯爵家や小娘もまた然り。我がする事に口出し、及び邪魔だてすること、罷り成らん)
(畏まりました、次代の月の精霊王 ノクトール様)
宰相は、ノクトールの言葉に目を瞑る事で答えた。
「セラフィ様、精霊様をお返ししますね」
観察が終わったのか、宰相様はノクトールを私の膝の上に戻してくれました。
ノクトールは、私の目を見て口を大きく開けてお菓子を催促します。
だから、テーブルにあったクッキーを1つ掴んで口元に持っていくと、ノクトールは鼻先で匂いを嗅ぎパクッとクッキーに齧り付きました。
(可愛い……)
優しく頭を撫でてあげる。
ふわふわして、暖かい……ずっと撫でていたくなる。
「セラフィ様、謁見室で話した内容を覚えていますか?」
「精霊様のお披露目……ですか?」
セラフィは、その事を思い出し俯いた。
「そうです。3日目と7日目に、孵っている精霊がいれば必ず行われる行事です。なのでセラフィ様には、3日目に行われるお披露目会に出席せねばなりません」
「……」
人前に出るのは、あまり好きでは無かった。
綺麗な服も、キラキラの石も、貰ったことは無かったから。
あの時の服だって、メルフィのを着せて貰っただけ……それに……
『ドレスは、宰相が用意してくれるでしょう。主様は、私を抱いて笑っていてくれたら良いのですよ』
「ええ、こちらで全てご用意させて頂きます」
「あの、でも、作法とか……」
ダンスも踊れないし、食事のマナーも知らない。
人付き合いも出来ないし、勉強も出来ない。
パーティーに行ったら、また馬鹿にされる……
「精霊妃は、全てにおいて特別に許可されています」
後ろから、フェリクス様の声が聞こえた。
(!?)
-------
その後、少し話をして私は自分の部屋に戻った。ごはんを食べてお風呂に入って、マッサージ?をして貰って、髪の毛にいい匂いのする水?をつけてもらい、お布団に入った。
ノクトールは、私の隣で背を向けて足を伸ばして横になりました。
私は、昼間の宰相様達の言葉を思い出していた。
『知っていますか?現在の月の精霊妃カイリオは元々平民で、現在は騎士です。ダンスもマナーも壊滅的なのを』
『水の精霊妃は、人嫌いで社交界には殆ど参加しませんね』
『そういや、太陽の精霊妃は王族に敬語を使ってなかったな』
『全て精霊妃には許されるのですよ。精霊妃は、精霊王に気に入られた者ですから。精霊妃を蔑ろにすると精霊王の怒りに触れますからね』
(私は精霊妃じゃないと思うから…許可おりないと思うけどなぁ……無礼だって怒られないかな)
そう思いながら、ノクトールに手を伸ばした。その背中を優しく撫でて、抱き寄せて、ノクトールの温もりに安心して眠った。
次の日
午前中は……宰相様と仕立て屋さん、宝石屋さんと一緒に、ドレスやアクセサリーを選びました。色はノクトールの色より少し明るめの青いドレス。アクセサリーは黄色やピンクの石が付いた物だった。
(うぅぅ、高そう……落としたら、どうしよう…)
仕立て屋さんは昼で帰り、選んだドレスの手直しをするそうです。レースを追加で付けたり、私の体に合わせて裾を直したりするそうです。宝石屋さんも、私に合わせて調整すると言ってました。
私は、昼ごはんを食べてから庭に出ました。
色取り取りの綺麗な花、優しい風、どこを歩いても飽きない景色に私は、とても楽しくなりました。
芝生の上に寝転んだり、ノクトールと追いかけっこしたりしました。
疲れて、木陰で休んでた私達にフェリクス様が声をかけてきて
「セラフィ様、誰か来ます」
「え……」
フェリクス様が指さした方を見ると、あの日……2番目に呼ばれた女の子が来ました。
その手には、淡い黄色の卵を持って。
「あら?…先客がいましたのね。私もご一緒してよろしいかしら?セラフィ様」
「あ、えっと、はい」
スカートを持ち上げてお辞儀をするコーネリア様は、優雅でとても綺麗だった。
メルフィと同じ貴族とは思えないほど、綺麗な仕草だった。
俯いていた私に、優しく微笑み丁寧に接してくれた。
「精霊様の名前を教えて頂けますか?」
「あ、ノクトール…です」
呼び捨てなんて、無礼だっって怒られるかな……
「ノクトール様ですのね、私は、コーネリアと申します。よろしくお願い致しますわ」
怒られなかった……驚いて、コーネリア様を見つめると、「分かっていますわ」と言ってくれました。
『ええ、よろしくお願いします』
「セラフィ様、私にも触らせて貰えますか?」
「はい!どうぞ……」
ノクトールをコーネリア様の膝の上に乗せてあげる。
「柔らかい手触りですのね、ふわふわで気持ちいいわ」
コーネリア様が、満足そうにノクトールを撫でていた
その時だった……
芝生に置かれていた、コーネリア様の卵が光ったのは……
『主さま、酷いですわ……私がいながら、他の精霊を愛でるなんて…』
光が収まり、姿を現したのは……、光る翼をはためかせ涙を流す鳥だった……
「は、はいっ」
私は、宰相様の執務室で肌触りのいいソファに座ってお菓子を頂いています。
私の後ろには、ジーク様とフェリクス様が立っていて、宰相様は目の前に座っています。
「お菓子とお茶は、好きなだけ頼んで下さいね」
「あ、ありがとうございます」
『主様、後で私にも食べさせて下さい』
「う、うん」
ノクトールは、宰相様の手の中で観察されていた。
額の紋章、月の力、そして姿……
「セラフィ様、右手を見せて頂けますか?」
「はい」
右手の紋章は、ノクトールに名前を付けた時に変わりました。ノクトールの額にある紋章と同じものです。
「ふむ」
それが、何を意味するのか私には分かりません。
(やはり……)
(気付いたか…宰相よ)
(っ……)
宰相様、どうしたんだろう?
ノクトールと見つめ合ったまま動かなくなっちゃった……
(セラフィは、我が主。次代の精霊妃)
(……)
(主を貶し傷付ける者に、我は容赦せぬ。あの伯爵家や小娘もまた然り。我がする事に口出し、及び邪魔だてすること、罷り成らん)
(畏まりました、次代の月の精霊王 ノクトール様)
宰相は、ノクトールの言葉に目を瞑る事で答えた。
「セラフィ様、精霊様をお返ししますね」
観察が終わったのか、宰相様はノクトールを私の膝の上に戻してくれました。
ノクトールは、私の目を見て口を大きく開けてお菓子を催促します。
だから、テーブルにあったクッキーを1つ掴んで口元に持っていくと、ノクトールは鼻先で匂いを嗅ぎパクッとクッキーに齧り付きました。
(可愛い……)
優しく頭を撫でてあげる。
ふわふわして、暖かい……ずっと撫でていたくなる。
「セラフィ様、謁見室で話した内容を覚えていますか?」
「精霊様のお披露目……ですか?」
セラフィは、その事を思い出し俯いた。
「そうです。3日目と7日目に、孵っている精霊がいれば必ず行われる行事です。なのでセラフィ様には、3日目に行われるお披露目会に出席せねばなりません」
「……」
人前に出るのは、あまり好きでは無かった。
綺麗な服も、キラキラの石も、貰ったことは無かったから。
あの時の服だって、メルフィのを着せて貰っただけ……それに……
『ドレスは、宰相が用意してくれるでしょう。主様は、私を抱いて笑っていてくれたら良いのですよ』
「ええ、こちらで全てご用意させて頂きます」
「あの、でも、作法とか……」
ダンスも踊れないし、食事のマナーも知らない。
人付き合いも出来ないし、勉強も出来ない。
パーティーに行ったら、また馬鹿にされる……
「精霊妃は、全てにおいて特別に許可されています」
後ろから、フェリクス様の声が聞こえた。
(!?)
-------
その後、少し話をして私は自分の部屋に戻った。ごはんを食べてお風呂に入って、マッサージ?をして貰って、髪の毛にいい匂いのする水?をつけてもらい、お布団に入った。
ノクトールは、私の隣で背を向けて足を伸ばして横になりました。
私は、昼間の宰相様達の言葉を思い出していた。
『知っていますか?現在の月の精霊妃カイリオは元々平民で、現在は騎士です。ダンスもマナーも壊滅的なのを』
『水の精霊妃は、人嫌いで社交界には殆ど参加しませんね』
『そういや、太陽の精霊妃は王族に敬語を使ってなかったな』
『全て精霊妃には許されるのですよ。精霊妃は、精霊王に気に入られた者ですから。精霊妃を蔑ろにすると精霊王の怒りに触れますからね』
(私は精霊妃じゃないと思うから…許可おりないと思うけどなぁ……無礼だって怒られないかな)
そう思いながら、ノクトールに手を伸ばした。その背中を優しく撫でて、抱き寄せて、ノクトールの温もりに安心して眠った。
次の日
午前中は……宰相様と仕立て屋さん、宝石屋さんと一緒に、ドレスやアクセサリーを選びました。色はノクトールの色より少し明るめの青いドレス。アクセサリーは黄色やピンクの石が付いた物だった。
(うぅぅ、高そう……落としたら、どうしよう…)
仕立て屋さんは昼で帰り、選んだドレスの手直しをするそうです。レースを追加で付けたり、私の体に合わせて裾を直したりするそうです。宝石屋さんも、私に合わせて調整すると言ってました。
私は、昼ごはんを食べてから庭に出ました。
色取り取りの綺麗な花、優しい風、どこを歩いても飽きない景色に私は、とても楽しくなりました。
芝生の上に寝転んだり、ノクトールと追いかけっこしたりしました。
疲れて、木陰で休んでた私達にフェリクス様が声をかけてきて
「セラフィ様、誰か来ます」
「え……」
フェリクス様が指さした方を見ると、あの日……2番目に呼ばれた女の子が来ました。
その手には、淡い黄色の卵を持って。
「あら?…先客がいましたのね。私もご一緒してよろしいかしら?セラフィ様」
「あ、えっと、はい」
スカートを持ち上げてお辞儀をするコーネリア様は、優雅でとても綺麗だった。
メルフィと同じ貴族とは思えないほど、綺麗な仕草だった。
俯いていた私に、優しく微笑み丁寧に接してくれた。
「精霊様の名前を教えて頂けますか?」
「あ、ノクトール…です」
呼び捨てなんて、無礼だっって怒られるかな……
「ノクトール様ですのね、私は、コーネリアと申します。よろしくお願い致しますわ」
怒られなかった……驚いて、コーネリア様を見つめると、「分かっていますわ」と言ってくれました。
『ええ、よろしくお願いします』
「セラフィ様、私にも触らせて貰えますか?」
「はい!どうぞ……」
ノクトールをコーネリア様の膝の上に乗せてあげる。
「柔らかい手触りですのね、ふわふわで気持ちいいわ」
コーネリア様が、満足そうにノクトールを撫でていた
その時だった……
芝生に置かれていた、コーネリア様の卵が光ったのは……
『主さま、酷いですわ……私がいながら、他の精霊を愛でるなんて…』
光が収まり、姿を現したのは……、光る翼をはためかせ涙を流す鳥だった……
21
お気に入りに追加
1,620
あなたにおすすめの小説
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

妹に全てを奪われた私は、隣国の第二王子が口遊む歌に咲む
雨花 まる
恋愛
スタジッグ伯爵家には、二人の姉妹がいる。
両親によく似た妹オリヴィアは両親の愛を一身に受け、姉アイリスは我慢の日々を過ごした。それでも、いつかは愛されると信じて。しかし、妹はアイリスの婚約者までもを奪っていった。
絶望したアイリスは全てを諦め池へと向かったのだが……。そこで、意図せず隣国の第二王子と知り合うことになり日々が変わっていく。
奪われ続けた姉が隣国の第二王子に希望を貰うお話。
※この作品は、小説家になろう様にも投稿しております。

【完結】「お前に聖女の資格はない!」→じゃあ隣国で王妃になりますね
ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
【全7話完結保証!】
聖王国の誇り高き聖女リリエルは、突如として婚約者であるルヴェール王国のルシアン王子から「偽聖女」の烙印を押され追放されてしまう。傷つきながらも母国へ帰ろうとするが、運命のいたずらで隣国エストレア新王国の策士と名高いエリオット王子と出会う。
「僕が君を守る代わりに、その力で僕を助けてほしい」
甘く微笑む彼に導かれ、戸惑いながらも新しい人生を歩み始めたリリエル。けれど、彼女を追い詰めた隣国の陰謀が再び迫り――!?
追放された聖女と策略家の王子が織りなす、甘く切ない逆転ロマンス・ファンタジー。
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
愚者による愚行と愚策の結果……《完結》
アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。
それが転落の始まり……ではなかった。
本当の愚者は誰だったのか。
誰を相手にしていたのか。
後悔は……してもし足りない。
全13話
☆他社でも公開します

お妃候補に興味はないのですが…なぜか辞退する事が出来ません
Karamimi
恋愛
13歳の侯爵令嬢、ヴィクトリアは体が弱く、空気の綺麗な領地で静かに暮らしていた…というのは表向きの顔。実は彼女、領地の自由な生活がすっかり気に入り、両親を騙してずっと体の弱いふりをしていたのだ。
乗馬や剣の腕は一流、体も鍛えている為今では風邪一つひかない。その上非常に頭の回転が速くずる賢いヴィクトリア。
そんな彼女の元に、両親がお妃候補内定の話を持ってきたのだ。聞けば今年13歳になられたディーノ王太子殿下のお妃候補者として、ヴィクトリアが選ばれたとの事。どのお妃候補者が最も殿下の妃にふさわしいかを見極めるため、半年間王宮で生活をしなければいけないことが告げられた。
最初は抵抗していたヴィクトリアだったが、来年入学予定の面倒な貴族学院に通わなくてもいいという条件で、お妃候補者の話を受け入れたのだった。
“既にお妃には公爵令嬢のマーリン様が決まっているし、王宮では好き勝手しよう”
そう決め、軽い気持ちで王宮へと向かったのだが、なぜかディーノ殿下に気に入られてしまい…
何でもありのご都合主義の、ラブコメディです。
よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる