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本編
第7話
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お昼ご飯を食べて、宰相様の執務室に向かう途中……怖い人に会った……
「ぁ……」
「セラフィ様?」
(伯爵様……)
私が立ち止まった事で、後ろから付いてきていたジーク様が不思議そうな顔で問いかけてきた。そして、私が震えてるのを見て、私の視線を追った。
「グリゴール伯爵か……」
フェリクス様が小さく呟く。
ど、どうして伯爵様が……?
ここは、東の廊下なのに……
メルフィは居ないのに……
「セラフィ貴様……ソイツは?」
憎々しげな声で私の名前を呼び何かを言おうとして、伯爵様の目が私の腕の中にいるノクトールに止まった。
そうそう、精霊様だから呼び捨てはダメですよね?ってノクトールに聞いたら、私は良いんだって。何でかな?
「精霊様……です」
「精霊……だと?孵ったというのか、貴様如きの力に?こんなに早く?」
「………」
「チッ、まぁいい、どうせ大した力は無いだろう。小さな卵に小さな精霊だからな、弱いから貴様程度の力でも易々と帰ったのだろう」
……私は、何を言われてもいい……でも、ノクトールを馬鹿にするのは間違ってる。ノクトールは、小さくても精霊様。私たち人間より偉いのだもの。
「ノクトールを馬鹿にしないで下さいっ……!!」
「セラフィ様……」
今まで大きな声を出したことの無い私が声を荒らげたからなのか、2人の騎士が静かに前に立った。
『主様、構いませんよ。愚かで馬鹿な人間は、どこにでも居ますからね』
「なんだと?」
『おや、私は貴方の事だとは口にしていませんよ?』
ノクトールは、私の腕に前足を乗せて身を乗り出し右手でモノクルを上げた。
そして、フンと鼻を鳴らし視線を外してさらに
『だいたい、精霊妃候補に対してその言葉遣いは何なんです?精霊妃候補である我が主は、王族の次に偉い立場だとお聞きしたのですが?』
ノクトールは何故か、候補の部分を強く強調して言った。
ジーク様とフェリクス様は、私を決して前に出さなかったし伯爵様を近づけさせはしなかった。
「ふん、コイツが選ばれるはずがないだろう?大した能力も魅力も無い、すぐに帰されるわ。おい、騎士共!そこを退け、わしはセラフィに用がある!」
「お断り致します」
フェリクス様が、私に手を伸ばした伯爵様の腕を掴んだ。
「残念ですが俺たちは、セラフィ様に危害を加える者から守るのが役目ですから」
ジーク様はそう言って、私をフワッと抱き上げて後ろに下がった。
「なっ、わしがコイツに危害を加えると!?」
「ええ、彼女の体には無数の傷跡がありましたので…もちろん、王宮の医師の力により全て治癒させて頂きましたが」
「ふん。無能な娘に躾をして何が悪い!」
フェリクス様とジーク様、伯爵様が睨み合っていると、階段の上の方から声が聞こえてきました。
「何の騒ぎですか?……フェリクス、セラフィ様はどこです?何時まで待っても来ないから、心配しましたよ」
宰相様です。
そう言えば、私達は宰相様のところに行く途中でした。時間になっても来ないので、探しに来てくれたみたいです。
「貴方は……、グリゴール伯爵ですね?こちらには何用で来たのですか?」
「セラフィに用がある!」
「セラフィ様は精霊妃候補様ですので、面会には許可が必要だと申したはずですが?メルフィ様には、きちんと許可を取っておりましたよね?……セラフィ様には必要ない、と?」
ゾクッ
な、なに?……なんか今、背中がゾクってした。
「宰相殿、セラフィ様が怯えております」
「!、っと、すみません。セラフィ様、行きましょうか?」
「え?でも……」
私が伯爵様を振り返ろうとすると、ジーク様の手が深く抱き締めるように動いて振り返れなかった。それに、フェリクス様が後ろに立ったので、どっちにしても伯爵様を見ることは出来なかったかもです。
「無視して大丈夫ですよ」
『アレが何かしてきましたら、私が追い払いますよ。こんな感じで…ね』
ノクトールの小さな手が振りあげられると、後ろから伯爵様の叫び声が聞こえた。
「何かしたの?」
『巣に帰って貰っただけですよ』
「?」
「では行きましょうか」
宰相様は何事も無かったかのように、前を向いて歩き出しました。ジーク様もフェリクス様も続きます。2人も、さっきまでの怖い顔じゃなくなってました。
でも、
私は、下ろして貰えませんでした。
「ぁ……」
「セラフィ様?」
(伯爵様……)
私が立ち止まった事で、後ろから付いてきていたジーク様が不思議そうな顔で問いかけてきた。そして、私が震えてるのを見て、私の視線を追った。
「グリゴール伯爵か……」
フェリクス様が小さく呟く。
ど、どうして伯爵様が……?
ここは、東の廊下なのに……
メルフィは居ないのに……
「セラフィ貴様……ソイツは?」
憎々しげな声で私の名前を呼び何かを言おうとして、伯爵様の目が私の腕の中にいるノクトールに止まった。
そうそう、精霊様だから呼び捨てはダメですよね?ってノクトールに聞いたら、私は良いんだって。何でかな?
「精霊様……です」
「精霊……だと?孵ったというのか、貴様如きの力に?こんなに早く?」
「………」
「チッ、まぁいい、どうせ大した力は無いだろう。小さな卵に小さな精霊だからな、弱いから貴様程度の力でも易々と帰ったのだろう」
……私は、何を言われてもいい……でも、ノクトールを馬鹿にするのは間違ってる。ノクトールは、小さくても精霊様。私たち人間より偉いのだもの。
「ノクトールを馬鹿にしないで下さいっ……!!」
「セラフィ様……」
今まで大きな声を出したことの無い私が声を荒らげたからなのか、2人の騎士が静かに前に立った。
『主様、構いませんよ。愚かで馬鹿な人間は、どこにでも居ますからね』
「なんだと?」
『おや、私は貴方の事だとは口にしていませんよ?』
ノクトールは、私の腕に前足を乗せて身を乗り出し右手でモノクルを上げた。
そして、フンと鼻を鳴らし視線を外してさらに
『だいたい、精霊妃候補に対してその言葉遣いは何なんです?精霊妃候補である我が主は、王族の次に偉い立場だとお聞きしたのですが?』
ノクトールは何故か、候補の部分を強く強調して言った。
ジーク様とフェリクス様は、私を決して前に出さなかったし伯爵様を近づけさせはしなかった。
「ふん、コイツが選ばれるはずがないだろう?大した能力も魅力も無い、すぐに帰されるわ。おい、騎士共!そこを退け、わしはセラフィに用がある!」
「お断り致します」
フェリクス様が、私に手を伸ばした伯爵様の腕を掴んだ。
「残念ですが俺たちは、セラフィ様に危害を加える者から守るのが役目ですから」
ジーク様はそう言って、私をフワッと抱き上げて後ろに下がった。
「なっ、わしがコイツに危害を加えると!?」
「ええ、彼女の体には無数の傷跡がありましたので…もちろん、王宮の医師の力により全て治癒させて頂きましたが」
「ふん。無能な娘に躾をして何が悪い!」
フェリクス様とジーク様、伯爵様が睨み合っていると、階段の上の方から声が聞こえてきました。
「何の騒ぎですか?……フェリクス、セラフィ様はどこです?何時まで待っても来ないから、心配しましたよ」
宰相様です。
そう言えば、私達は宰相様のところに行く途中でした。時間になっても来ないので、探しに来てくれたみたいです。
「貴方は……、グリゴール伯爵ですね?こちらには何用で来たのですか?」
「セラフィに用がある!」
「セラフィ様は精霊妃候補様ですので、面会には許可が必要だと申したはずですが?メルフィ様には、きちんと許可を取っておりましたよね?……セラフィ様には必要ない、と?」
ゾクッ
な、なに?……なんか今、背中がゾクってした。
「宰相殿、セラフィ様が怯えております」
「!、っと、すみません。セラフィ様、行きましょうか?」
「え?でも……」
私が伯爵様を振り返ろうとすると、ジーク様の手が深く抱き締めるように動いて振り返れなかった。それに、フェリクス様が後ろに立ったので、どっちにしても伯爵様を見ることは出来なかったかもです。
「無視して大丈夫ですよ」
『アレが何かしてきましたら、私が追い払いますよ。こんな感じで…ね』
ノクトールの小さな手が振りあげられると、後ろから伯爵様の叫び声が聞こえた。
「何かしたの?」
『巣に帰って貰っただけですよ』
「?」
「では行きましょうか」
宰相様は何事も無かったかのように、前を向いて歩き出しました。ジーク様もフェリクス様も続きます。2人も、さっきまでの怖い顔じゃなくなってました。
でも、
私は、下ろして貰えませんでした。
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