【完結】うさぎの精霊さんに選ばれたのは、姉の私でした。

紫宛

文字の大きさ
上 下
10 / 34
本編

第7話

しおりを挟む
お昼ご飯を食べて、宰相様の執務室に向かう途中……怖い人に会った……

「ぁ……」
「セラフィ様?」

(伯爵様……)

私が立ち止まった事で、後ろから付いてきていたジーク様が不思議そうな顔で問いかけてきた。そして、私が震えてるのを見て、私の視線を追った。

「グリゴール伯爵か……」

フェリクス様が小さく呟く。

ど、どうして伯爵様が……?
ここは、東の廊下なのに……
メルフィは居ないのに……

「セラフィ貴様……ソイツは?」

憎々しげな声で私の名前を呼び何かを言おうとして、伯爵様の目が私の腕の中にいるノクトールに止まった。

そうそう、精霊様だから呼び捨てはダメですよね?ってノクトールに聞いたら、私は良いんだって。何でかな?

「精霊様……です」
「精霊……だと?孵ったというのか、貴様如きの力に?こんなに早く?」
「………」
「チッ、まぁいい、どうせ大した力は無いだろう。小さな卵に小さな精霊だからな、弱いから貴様程度の力でも易々と帰ったのだろう」

……私は、何を言われてもいい……でも、ノクトールを馬鹿にするのは間違ってる。ノクトールは、小さくても精霊様。私たち人間より偉いのだもの。

「ノクトールを馬鹿にしないで下さいっ……!!」
「セラフィ様……」

今まで大きな声を出したことの無い私が声を荒らげたからなのか、2人の騎士が静かに前に立った。

『主様、構いませんよ。愚かで馬鹿な人間は、どこにでも居ますからね』
「なんだと?」
『おや、私は貴方の事だとは口にしていませんよ?』

ノクトールは、私の腕に前足を乗せて身を乗り出し右手でモノクルを上げた。
そして、フンと鼻を鳴らし視線を外してさらに

『だいたい、精霊妃候補に対してその言葉遣いは何なんです?精霊妃である我が主は、王族の次に偉い立場だとお聞きしたのですが?』

ノクトールは何故か、候補の部分を強く強調して言った。
ジーク様とフェリクス様は、私を決して前に出さなかったし伯爵様を近づけさせはしなかった。

「ふん、コイツが選ばれるはずがないだろう?大した能力ちからも魅力も無い、すぐに帰されるわ。おい、騎士共!そこを退け、わしはセラフィに用がある!」
「お断り致します」

フェリクス様が、私に手を伸ばした伯爵様の腕を掴んだ。

「残念ですが俺たちは、セラフィ様に危害を加える者から守るのが役目ですから」

ジーク様はそう言って、私をフワッと抱き上げて後ろに下がった。

「なっ、わしがコイツに危害を加えると!?」
「ええ、彼女の体には無数の傷跡がありましたので…もちろん、王宮の医師の力により全て治癒させて頂きましたが」
「ふん。無能な娘に躾をして何が悪い!」

フェリクス様とジーク様、伯爵様が睨み合っていると、階段の上の方から声が聞こえてきました。

「何の騒ぎですか?……フェリクス、セラフィ様はどこです?何時まで待っても来ないから、心配しましたよ」

宰相様です。
そう言えば、私達は宰相様のところに行く途中でした。時間になっても来ないので、探しに来てくれたみたいです。

「貴方は……、グリゴール伯爵ですね?こちらには何用で来たのですか?」
「セラフィに用がある!」
「セラフィ様は精霊妃候補様ですので、面会には許可が必要だと申したはずですが?メルフィ様には、きちんと許可を取っておりましたよね?……セラフィ様には必要ない、と?」

ゾクッ

な、なに?……なんか今、背中がゾクってした。

「宰相殿、セラフィ様が怯えております」
「!、っと、すみません。セラフィ様、行きましょうか?」
「え?でも……」

私が伯爵様を振り返ろうとすると、ジーク様の手が深く抱き締めるように動いて振り返れなかった。それに、フェリクス様が後ろに立ったので、どっちにしても伯爵様を見ることは出来なかったかもです。

「無視して大丈夫ですよ」
『アレが何かしてきましたら、私が追い払いますよ。こんな感じで…ね』

ノクトールの小さな手が振りあげられると、後ろから伯爵様の叫び声が聞こえた。

「何かしたの?」
『巣に帰って貰っただけですよ』
「?」
「では行きましょうか」

宰相様は何事も無かったかのように、前を向いて歩き出しました。ジーク様もフェリクス様も続きます。2人も、さっきまでの怖い顔じゃなくなってました。

でも、

私は、下ろして貰えませんでした。
しおりを挟む
感想 102

あなたにおすすめの小説

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

素直になる魔法薬を飲まされて

青葉めいこ
ファンタジー
公爵令嬢であるわたくしと婚約者である王太子とのお茶会で、それは起こった。 王太子手ずから淹れたハーブティーを飲んだら本音しか言えなくなったのだ。 「わたくしよりも容姿や能力が劣るあなたが大嫌いですわ」 「王太子妃や王妃程度では、このわたくしに相応しくありませんわ」 わたくしといちゃつきたくて素直になる魔法薬を飲ませた王太子は、わたくしの素直な気持ちにショックを受ける。 婚約解消後、わたくしは、わたくしに相応しい所に行った。 小説家になろうにも投稿しています。

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

(完結)初恋の勇者が選んだのは聖女の……でした

青空一夏
ファンタジー
私はアイラ、ジャスミン子爵家の長女だ。私には可愛らしい妹リリーがおり、リリーは両親やお兄様から溺愛されていた。私はこの国の基準では不器量で女性らしくなく恥ずべき存在だと思われていた。 この国の女性美の基準は小柄で華奢で編み物と刺繍が得意であること。風が吹けば飛ぶような儚げな風情の容姿が好まれ家庭的であることが大事だった。 私は読書と剣術、魔法が大好き。刺繍やレース編みなんて大嫌いだった。 そんな私は恋なんてしないと思っていたけれど一目惚れ。その男の子も私に気があると思っていた私は大人になってから自分の手柄を彼に譲る……そして彼は勇者になるのだが…… 勇者と聖女と魔物が出てくるファンタジー。ざまぁ要素あり。姉妹格差。ゆるふわ設定ご都合主義。中世ヨーロッパ風異世界。 ラブファンタジーのつもり……です。最後はヒロインが幸せになり、ヒロインを裏切った者は不幸になるという安心設定。因果応報の世界。

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...