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本編

第6話

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「うさぎさん?」

昨日の夜、傷を癒してすぐ眠りに落ちたセラフィは、気付かなかった。
夜中、月の光がベッドに降り注ぎ、枕元にあった精霊の卵が孵化している事に。

『目が覚めましたか?我が主』

驚きを隠せないセラフィの耳に、低くお腹に響くような声が届く。

……うさぎの外見に似合わず……


『我が主?』
「わ、私の事、ですか?」
『ええ、主様。私に名を下さい』
「なまえ?」
『はい』

目の前のうさぎさんは、片方だけのメガネに触れて名前をつけて欲しいと言ってきました。副騎士団長のサレフさんと同じ半分だけのメガネです。その事をフェリクス様に聞いたら、「モノクル」と言うものらしいです。

うさぎさん……男の子?でいいのかな

「うさぎさんは、男の子?」
『我が主、精霊に人で言う男女の概念はありません。ですが、人間の世界で言うなら私は男性的思考を持っていると言えます』
「?」
『男性と捉えてもらって大丈夫ですよ』

うさぎさんは、男の子みたいです。
……でも、大人の男の子みたいな感じがします。

「……なまえ……私が付けてもいいの?」
『主様に付けて頂きたいのです』

その時、部屋をノックする音が聞こえて、アンナさんとフェリクス様が入って来た。

「セラフィ様?起きていらっしゃいますか?」

2人がベッドに近付いてきて、息を飲んだ。

「セラフィ様……この方は……」
『私は、セラフィ様の精霊です。名前はまだありません。以後お見知りおきを』
「お嬢様!もう卵を孵されたのですか!?」

遅れて入って来たジーク様が、驚きの声を上げた。

「あ、アンナさん。うさぎさんが名前を付けてって…私、名付けした事ない……分からない」
「…、セラフィ様。セラフィ様が付けられた名前でしたら、精霊様はどんな名でも嬉しいと思いますよ」

その言葉にうさぎさんは、大きく頷いた。
だから、真剣に考えようと思って……でも、本当にどうすればいいか悩んでたら、ジーク様が書庫室に誘ってくれました。

字が読めないと話したら、フェリクス様が教えてくれるって……。

薄いピンク色の可愛いワンピースに着替えて、朝ごはんにじゃがいものスープとパンを食べました。

まだ、沢山は食べれませんでした。
でも、とっても美味しかったです!



「セラフィ様、こちらが書庫室です」

ご飯を食べ終わって、フェリクス様とジーク様と3人で書庫室という場所に行きました。アンナさんはお留守番だそうです。お部屋のお掃除をすると言ってました。

部屋から出て、まずは一階のフロアに行って、そこにあった大きな階段を上って、左側の廊下を進んだら奥に大きな扉が見えた。

「ここ?」
「精霊妃候補様は自由に出入り可能ですので、いつでもご利用下さい」

中に入ってみると、不思議な空間でした。
窓はなくて、でもすごく明るくて、本棚が浮いているんです。

ここの空間は、風の精霊さんの力を借りているそうです。風の精霊妃様を通してお願いしたとフェリクス様が言ってました。

光は、太陽の精霊さんの力だそうです。
本はお日様に当たると傷んでしまうから、太陽の精霊さんの力でランプに光を灯してるんだって。炎は燃える可能性があるから、書庫室では使用禁止なんだそうです。

私は、月や夜を意味する色々な国の言葉が乗っている本を読みました。
……本当は、隣でフェリクス様が読んでくれました。

「……ノクト」

その中で、夜を意味する「ノクト」という言葉に惹かれました。

だから

ノク……ノクトー?

ノト……?

ノク……トー、ル?ノクトール……っ!?

「うさぎさん。うさぎさんの名前は、ノクトール!ノクトールと読んで良いですか?」
『ノクトール……。主様!ありがとうございます。

我が名は、ノクトール!
 月の精霊 ノクトール!』

ノクトールが宣言すると、私の右手にあった紋章が光って変わりました。ノクトールの額にある模様と同じものに変わったんです。うさぎさんとお揃い……嬉しいです。

「お嬢様、宰相に今回の事を報告に行きませんと」
「あ、そうだった」

卵が帰ったら、宰相さんに報告に行くように言われてたんだった。

「お昼ご飯の後でも大丈夫ですか?」
「では、昼食後に宰相に謁見出来るよう手配しておきます」
「あ、ありがとうございます」

もう、私が丁寧な言葉を使っても、フェリクス様もジーク様も何も言わなくなりました。
ただ、様は付けないでと言われました。


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