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プロローグ

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「「天にまします我らが命の父、水を司る龍神よ、我が祈りに答えたまえ」」

2人の少女が祭壇の上で、神に捧げる舞と祝詞を唱えていた。

右手に鈴を持ち、左手に鈴から伸びる紐を持って、龍神に感謝と癒しを捧げ、水の力を乞う。

「「汝が負わし傷を、我が祈りで癒し、我が魂を捧げん」」

舞は終盤に差し掛かり、2人の少女も声に緊張が混じる。

「「我が前にその姿を現し契約を交わさん、われが死ぬまで共にあれ!」」

そう言って2人の少女は、自らの手を天にかざすと、スパッと指が少し裂け血が滴り落ちた。

祭壇に血が落ちると、辺り一面光り輝き天を貫いた。その光が空を裂き、何匹もの龍が姿を現した。

龍神を見た人達が「おお!」と歓声を上げると、嬉しそうに隣の人と手を叩き合い抱き合っていた。

その中から1匹の強大な龍が降りてきた。他の龍よりも大きく立派な龍は、恐らく王なのだろうと皆が確信した。

「どちらが呼んだのだ!?龍神王を呼んだのはっ?!」

フラフラと降りて来て、片方の少女の前で姿を消した。

「セラフィー様だ!」
「やはり、セラフィー様でしたね!」
「もう片方は?」

そして、もう片方の少女は……

『娘、我と契約してくれぬか?』
「私で良ければ……」
『心美しき娘……我は其方がよい。娘よ、其方の名は?』
「ニィナ」
『ニィナ、よろしく頼む』

蛇よりも少し大きい位のサイズの龍神が、少女と契約をした。すると少女の手の甲に、龍と星を円で囲った様な文様が現れた。

「あんな小さな……やはり出来損ない…」
「セラフィー様は?」
「契約は出来なかったようだが、呼び出せたのだ……今後契約できる可能性はある」
「そうたな!」

周りの大人が何やら話してる頃、少女は小さな蛇の様な龍を両手で持ち上げていた。

『娘よ、我に名を……』
「名前?」
『そうだ、汝に我の証を刻み、我に名を付けることで契約は成す』
「……ハイル」
『ハイルか……よい名よ。契約は成された!』

ハイルと名付けられた小さき龍が、声高に宣言すると、空にいた龍達が喜んでいると少女は感じた。

そして、空にいた龍は消えた……。

「ふん、こんなチビ龍しか呼べないなんて、お姉さまは本当に出来損ないね」
「セラフィー……」
「こんなのが姉なんて、私はなんて可哀想なの……」
「ごめんなさい……」




この数年後……セラフィーは、龍神の巫女として隣国の王に見初められ、結婚する事になる。
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