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過去と闇
第23話 氷の薔薇・原種
しおりを挟む1日遅れで王都を出た私達は、スノースノーには帰らず、アロイス雪原の西、原種の薔薇森に向かっていた。
冬以外の季節で入手可能な、氷の薔薇・原種を取りに来たの。
クイーン・ロズ・フローズンを倒す事で、手に入る最高級素材。
エリクサーを作る際に必要になる素材。
※エリクサーとは※
体力と魔力を全回復、更に全ての状態異常回復、特級クラスの物は、パーティメンバー全員対応という優れもの。
錬金術Lvが高くないと作れない上に、必要になる素材の入手が大変困難なアイテム。
「すみません、私の我儘に付き合ってもらってしまって……」
「いや、構わない」
「氷の薔薇だったか?」
「はい、クイーン・ロズ・フローズンの試練(力試し)をクリアする事で入手出来るんですけど…」
「けど?」
「ただ、試練は1人で受けないといけなくて」
「クイーンのLvは固定で195だったよね?!」
「はい、でも、どうしても氷の薔薇・原種が必要なんです」
クイーンの試練の為に、炎撃系のアイテムを沢山持ってきたし、回復ポーションも持ってきたから大丈夫!だと思う。
「その、氷の薔薇で何作るんだ?」
「エリクサーです!」
「「「え?」」」
「錬金術Lvが、150になったんです!それで新しいアイテム作成が可能になって、その1つがエリクサーなんです」
Lvが上がる度に新しいアイテムの作成が可能になっていくのが楽しい。
知らなかった事を知れる事が嬉しい。
いつか、LvMAXで作れる賢者の石の作成が夢なの。
「エリクサーって確か、体力魔力全回復だったよね?」
「そうです、更に状態異常や病も回復しますし、特級クラスになれば、1度の使用でパーティ全員が恩恵を受けます」
まだ、初めてだから特級は無理だけど……
頑張れば、決定戦までに中級にはなるかな?
氷の薔薇は特殊で、万年雪と共にあれば魔力を流す事で枯れることはなく、存在し続ける素材。
「あのさ、それフォルスが戦ってイレーネにあげれば簡単じゃない?」
シグレさんが、そう提案してくれますが、首を縦に振ることは出来ません。
自分の力で手に入れなければ意味が無いからです。
クイーンの薔薇は持ち主を選ぶんです。
だから、入手した人しか扱えない素材だから、エリクサーを作るのは大変なんです。
「ダメです、クイーンの落とす素材は戦った本人にしか与えられないんです」
「そうなのか?」
「フォルスは、クイーンとやり合ったことは?」
「ないな」
フォルスは、自分が勇者になった頃からの事を思い浮かべるが、クイーンとやり合った記憶はなかった。勇者や冒険者は、町や人に危害が及ばない限り基本手を出さない。ましてや、クイーンのようにダンジョンボスとやり合う意味もない。落とす素材が色々な人に必要とされてても、譲渡が出来ないからだ。
「譲渡が出来ないなら、無理して戦う理由はない」
「そうですよね……私も薔薇が手に入るから戦うだけで、別口で入手可能なら、無理にクイーンとは戦いたいと思いませんし」
そうして話してる内に、原種の薔薇森に着いた。
ここからはダンジョンになるので、慎重に進む。
原種の薔薇森
基本モンスターLv100前後
落すアイテム、氷の薔薇・原種(クイーン)、氷の薔薇(スノー系モンスター)、アイスソード(クイーン)、その他
採取アイテム、万年雪、エレメントコア・氷、氷晶石、その他
氷で出来た樹木が生い茂り、氷の草花が太陽の光に照らされ幻想的な景色を作り出す。
目の前には……8つの目を持った……く、も
「っ!」
(うそ!フローズンスパイダー!!私はお化けと蜘蛛が1番苦手なのよっ!)
若干涙目になり、後ずさった瞬間、後ろから人影が飛び出した。
ザックさんだ。
背中に背負ってた大剣を振り上げ飛び上がると、フローズンスパイダーの頭に大剣を突き刺し引き抜くと、モンスターはその場に倒れた。
(一瞬だ……)
フローズンスパイダーのLvは最低でも110あり、1発で仕留める冒険者は少ない。
さすが、北の勇者パーティだと思う。
「大丈夫か?イレーネ」
「は、はい!私は大丈夫です!」
ザックさんに声をかけられ、裏返った声で返事をする。
その後も、スノーウルフやスノーウィッチと言ったモンスターが出てきて、ラハルさんやシグレさん達が倒していった。
スノーウィッチが張った罠に引っかかりそうになった時は、フォルスさんが助けてくれた。
私も戦おうとしたんだけど、クイーンのために力は温存しておけと言われ、大人しく守られることにしました。
ちょっと恥ずかしかったです、私も戦えるから。
原種の森、最奥
「クイーン・ロズ・フローズン!貴方の持つ氷の薔薇・原種が欲しく、試練に挑みに来ました!姿をお見せ下さい!」
私は、最奥の祭壇で宣誓をする。
すると、祭壇の上空で吹雪が起きる。
雪の結晶が舞う中、1人の女性が現れた。
私の前に降り立ち
『挑戦者は、お前か?』
「はい!」
クイーンは、値踏みするかのように私を観察する。
『欲しいのは、氷の薔薇・原種に相違ないか?』
「はい!」
『良かろう、相手になってやろう』
尊大な態度と言葉で、私を威圧する姿は正しく氷の女王。
居住まいを正し、一礼し杖を取り出す。
杖を構え、戦いが始まった。
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