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過去と闇
第21話 青年(他視点)
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ザックは、街中を全力で走っていた。
イレーネが語った過去の話、そこに出てきた青年は……もしかしたら……
俺達が調べた騎士かも知れなかった。
王女を守るために、命を懸けて救った騎士だと、もう亡くなってると……
でも、生きていた?
ギルドに駆けつければ、出てくるフォルスとラハルに出くわした。
事情を話せば、一緒にマスターのところに行くと言ってギルドの扉をくぐった。
戻ってきたフォルスに目を丸くしたヴォルフだったが、俺たちの雰囲気を察したのか、執務室に通してくれた。
「イレーネを助けた騎士クラトが生きている」
「!!」
場が静まり、ヴォルフは無言で通信魔道具を取りだし起動させた。
『なんだ』
数分もしないうちに繋がり、レオの声が聞こえた。
「レオ、クラトが生きている」
『なっ!本当か?』
「イレーネが、そう言ったらしい」
『っ、どこにいる?!』
「マヤンナ村だそうだ。ただ、10年以上眠り続けているらしい」
生き証人だった。
クラトは、イレーネを命懸けで守った騎士。俺達は、彼の存在を知っていたが、イレーネを助けた事で死んだと思っていた。
2年半前、勇者王決定戦でイレーネを見つけ、生きている事に感謝した。
俺達冒険者は、王女を亡くしたと思っていたが、レオもアルも両陛下や、城の使用人たち誰1人として、王女が死んだなどと思ってる人間はいなかった。
ずっと調べていたんだ。
そして分かった事は、イレーネに忠誠を誓うひとりの騎士が同行していたこと、イレーネ専属侍女が1人行方不明になってる事、同行していた騎士の半数以上が守旧派の一派と入れ替わっていた事が判明した。
『クラトが目覚めれば、あの事件の真相が明らかになる』
「ああ、マヤンナ村なら俺が知ってる。連れてくるから、信頼の出来る医師や魔道士を紹介してくれ」
『分かった。ただ、表立って行動する事は出来ないから頼むな』
「ああ」
報告を受けて対策をとったレオは、暫く腕を組んで俯き、意を決した様に口を開く。
事態は急速に動きつつある。
父上達からの報告で、サラサード公やイグニス侯の数々の不正の証拠を入手、及び、聖女や令嬢の誘拐の証拠、更に、13年半前の事件の物的証拠の入手……。
あとは、現行犯で…それには……
『それから、こちらもお前達に話しておきたい事がある』
「俺達もか?」
『ああ、イレーネにも関わることだ』
「「「!!」」」
『サラサード公が、血濡れの月曜日を呼び出したそうだ』
「では、前王陛下が?」
『ああ、バカな奴らだよ。
暗殺ギルドが、この国に居るはずがないのに。俺達が、そんな者達を野放しにするはずがないのにな』
「居たけど壊滅させたんだろ?そして、乗っ取って逆手にとった」
『……』
レオがニヤリと口の端を持ち上げ笑った。
そうだ、血濡れの月曜日なんて暗殺ギルドは本来なら存在しない。
何年か前にはいたが、俺達が壊滅させ乗っ取った。依頼人にサラサード公の名前があったからだ。
父上と母上は、傷心し離宮に引き篭もった様に見せかけ、秘密裏に行動するようになり、乗っ取った血濡れの月曜日の頭領に納まった。
『さらに、イグニス侯が、イレーネを誘拐しろとサラサードに依頼した』
「なんだと?!イグニス侯は、イレーネの正体に気付いたのか?」
『いや……』
珍しく歯切れの悪いレオハルト、憎悪が渦巻いてるかのような目をし、通信魔道具を睨みつけていた。
『イグニスは、……イレーネを犯すのだそうだ』
眉間に皺を寄せ、ギリリと歯を食い縛り告げた言葉に絶句した。
『母上はギルド代表として、その場にいたそうだ。その言葉を聞いて、怒りと憎しみで我を忘れそうになったと言ってたよ』
当然だよな、俺だって勢いに任せて殴りそうだし。
『2ヶ月後の勇者王決定戦でイレーネを誘拐すると言ってたそうだ』
「決定戦で……」
『上手く、イレーネと影を入れ替えられないかと思ってな』
「現行犯で捕らえるつもりか?」
『確実だろ?……だが、イレーネを危険に晒したくはない』
父上達や影が潜入してるとはいえ、危険がないとは言えないなか、イレーネを誘拐されたくはなかった。
俺達が突入するまでも時間がかかる。
イグニスの野郎に、ほんの少しでも触れて欲しくなかった。
「俺やシグレが必ず付いている」
「私も、成る丈傍にいるようにします」
「見す見す誘拐などさせん。
……万が一誘拐されても、必ず何かされる前に助け出す!」
大切な仲間だからな!とフォルス達が胸を叩く。
『東の勇者にも警戒してくれ、嫌な予感がするからな』
「分かった」
お互いに情報交換を終わらせ、フォルス達は宿屋に帰っていった。
「大丈夫だ、フォルスなら」
『分かってる』
それでも、心配そうな顔をするレオを放って俺は報告書に目を通し始めたのだが、通信魔道具からボソッと声が聞こえ
『この国の膿を全て出しきる日が近そうだ』とレオは薄く笑って通信を切った。
イレーネが語った過去の話、そこに出てきた青年は……もしかしたら……
俺達が調べた騎士かも知れなかった。
王女を守るために、命を懸けて救った騎士だと、もう亡くなってると……
でも、生きていた?
ギルドに駆けつければ、出てくるフォルスとラハルに出くわした。
事情を話せば、一緒にマスターのところに行くと言ってギルドの扉をくぐった。
戻ってきたフォルスに目を丸くしたヴォルフだったが、俺たちの雰囲気を察したのか、執務室に通してくれた。
「イレーネを助けた騎士クラトが生きている」
「!!」
場が静まり、ヴォルフは無言で通信魔道具を取りだし起動させた。
『なんだ』
数分もしないうちに繋がり、レオの声が聞こえた。
「レオ、クラトが生きている」
『なっ!本当か?』
「イレーネが、そう言ったらしい」
『っ、どこにいる?!』
「マヤンナ村だそうだ。ただ、10年以上眠り続けているらしい」
生き証人だった。
クラトは、イレーネを命懸けで守った騎士。俺達は、彼の存在を知っていたが、イレーネを助けた事で死んだと思っていた。
2年半前、勇者王決定戦でイレーネを見つけ、生きている事に感謝した。
俺達冒険者は、王女を亡くしたと思っていたが、レオもアルも両陛下や、城の使用人たち誰1人として、王女が死んだなどと思ってる人間はいなかった。
ずっと調べていたんだ。
そして分かった事は、イレーネに忠誠を誓うひとりの騎士が同行していたこと、イレーネ専属侍女が1人行方不明になってる事、同行していた騎士の半数以上が守旧派の一派と入れ替わっていた事が判明した。
『クラトが目覚めれば、あの事件の真相が明らかになる』
「ああ、マヤンナ村なら俺が知ってる。連れてくるから、信頼の出来る医師や魔道士を紹介してくれ」
『分かった。ただ、表立って行動する事は出来ないから頼むな』
「ああ」
報告を受けて対策をとったレオは、暫く腕を組んで俯き、意を決した様に口を開く。
事態は急速に動きつつある。
父上達からの報告で、サラサード公やイグニス侯の数々の不正の証拠を入手、及び、聖女や令嬢の誘拐の証拠、更に、13年半前の事件の物的証拠の入手……。
あとは、現行犯で…それには……
『それから、こちらもお前達に話しておきたい事がある』
「俺達もか?」
『ああ、イレーネにも関わることだ』
「「「!!」」」
『サラサード公が、血濡れの月曜日を呼び出したそうだ』
「では、前王陛下が?」
『ああ、バカな奴らだよ。
暗殺ギルドが、この国に居るはずがないのに。俺達が、そんな者達を野放しにするはずがないのにな』
「居たけど壊滅させたんだろ?そして、乗っ取って逆手にとった」
『……』
レオがニヤリと口の端を持ち上げ笑った。
そうだ、血濡れの月曜日なんて暗殺ギルドは本来なら存在しない。
何年か前にはいたが、俺達が壊滅させ乗っ取った。依頼人にサラサード公の名前があったからだ。
父上と母上は、傷心し離宮に引き篭もった様に見せかけ、秘密裏に行動するようになり、乗っ取った血濡れの月曜日の頭領に納まった。
『さらに、イグニス侯が、イレーネを誘拐しろとサラサードに依頼した』
「なんだと?!イグニス侯は、イレーネの正体に気付いたのか?」
『いや……』
珍しく歯切れの悪いレオハルト、憎悪が渦巻いてるかのような目をし、通信魔道具を睨みつけていた。
『イグニスは、……イレーネを犯すのだそうだ』
眉間に皺を寄せ、ギリリと歯を食い縛り告げた言葉に絶句した。
『母上はギルド代表として、その場にいたそうだ。その言葉を聞いて、怒りと憎しみで我を忘れそうになったと言ってたよ』
当然だよな、俺だって勢いに任せて殴りそうだし。
『2ヶ月後の勇者王決定戦でイレーネを誘拐すると言ってたそうだ』
「決定戦で……」
『上手く、イレーネと影を入れ替えられないかと思ってな』
「現行犯で捕らえるつもりか?」
『確実だろ?……だが、イレーネを危険に晒したくはない』
父上達や影が潜入してるとはいえ、危険がないとは言えないなか、イレーネを誘拐されたくはなかった。
俺達が突入するまでも時間がかかる。
イグニスの野郎に、ほんの少しでも触れて欲しくなかった。
「俺やシグレが必ず付いている」
「私も、成る丈傍にいるようにします」
「見す見す誘拐などさせん。
……万が一誘拐されても、必ず何かされる前に助け出す!」
大切な仲間だからな!とフォルス達が胸を叩く。
『東の勇者にも警戒してくれ、嫌な予感がするからな』
「分かった」
お互いに情報交換を終わらせ、フォルス達は宿屋に帰っていった。
「大丈夫だ、フォルスなら」
『分かってる』
それでも、心配そうな顔をするレオを放って俺は報告書に目を通し始めたのだが、通信魔道具からボソッと声が聞こえ
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