『 使えない』と勇者のパーティを追い出された錬金術師は、本当はパーティ内最強だった

紫宛

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過去と闇

第18話久しぶりの王都

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前半、少し卑猥な言葉が出てきます。
苦手な方は、スキップして、イレーネ本編のみお読み下さい。

ーーーーー


王都の東の門から少し行った所にある小屋で……

(…………ふふ、もうすぐよ)

「……ル様、ザハル様?」
「ん……レニアか?」
「そうですわ、ザハル様」
「どうしたの?レニア?」

他の東の勇者メンバーも起き出してくる。
もう昼近くだと言うのに、小屋の中では男女の匂いが色濃く充満していた。
だがザハルは、レニアの腕を抱き寄せ、再び行為に走ろうとした。
ゴド達もレニアに触れながら、話を聞く。

「あっ……ん、北の勇者様が、ふ…ぅん、王都に来るそうですわ」
「なに?」
「ゃ……、イレーネも、一緒にじゃないかしら?……と思って。あ……ぁん」
「イレーネか……」

ザハルは、腰を動かしながら、憎しみの籠った声で呟く。

「あぁ!……はぁ、イレーネをもう一度、迎えましょう?そして、私達が上に行く為の奴隷にするのですわ」

声を上げて、ザハルの胸に体を預け「いい考えでしょう?」とレニアが妖艶な笑顔で言う。
私の目的の為に、犠牲になってもらうわよ?イレーネ。

(ふふ、待ってて下さい。私のイグニス様)





王都 北の門

少し時間がかかったが、無事に王都ルセリアに着いた北の勇者一行。

道中のアロイス雪原で、突然変異型のマンドラゴラが出現したのだ。
Lvは160。
通常のマンドラゴラのLvは、55前後で西の大地にしか存在しない。それは、気候が合わないから。

だが今回、アロイス雪原に現れたマンドラゴラは全身が青と白で構成され、数は3体。
王都の街道近くの雪原だったため、危険視され討伐する事になった。
攻撃は、広範囲の叫び、氷弾、ダイヤモンドダスト。
炎に弱くても、俊敏。
気配察知もあり、倒すのに時間がかかった。

昼には王都に到着する予定だったが、夜遅くに王都に着いた。

「思ってたよりも時間がかかったな」
「このままギルドに行くのは止めて、酒場で夕飯にしギルドへの報告は明日にしましょうか」
「よっしゃ!腹が減ってたんだよ!飯だ飯だ」
「……誰か来る」

シグレさんの言葉で、その場にいた全員が振り向く。

向かってくるのは……!

(っ!……え)

「……ザ、ハル……さん」
「予想外だな」
「ええ、私達が一緒なら接触してこないと思ってたのですが」

ザッザッザッと、私たちの元に歩いてきたのは東の勇者ザハルさん達だった。

「よぅ、イレーネ」
「ザハル……さん」
「元気だったか?お前に話があってさ。時間貰えないか?」

前のような、高圧的な話し方じゃない。
もしかしたら改心してくれたのかも……

「お話……ですか?……でも」

チラッとフォルスさんを見る。
その顔は、先程までの優しい笑顔がなくなり、険しい顔つきになっていた。
フォルスさんだけじゃなく、ラハルさんやザックさん、シグレさんまで皆一様に険しい顔をしていた。

「断る、行くぞイレーネ」

私の代わりに、フォルスさんが断ってくれる。フォルスさんの手が背に添えられ、歩くよう促される。
ザハルさんの横を通り過ぎようとした時、ガシッと腕を掴まれた。

「!」
「待てよ、少しぐらい話をしてくれてもいいだろ?」

ザハルさんは目の色を変え、私の腕をギリギリと力任せに握る。

「いっ……痛い…です」
「話、聞いてくれるだろ?」
「い、嫌です」
「おい、いつまで彼女の腕を掴んでいる気だ?」

フォルスさんの手が、私の腕を掴んでいるザハルさんの手首を掴み捻り上げると、ザハルさんが短い悲鳴をあげ手を離した。
ラハルさんが、私の手を引いてザックさんの後ろに下げると、シグレさんが傍に来て優しく肩を抱いてくれた。

「何すんだ、てめぇ!」
「何する、は、こちらのセリフだ。イレーネは俺達の大切なメンバーだ」

静かに牽制しながら、睨みつける。
ザハルさんの言葉が態度が、どんどん粗暴そぼうになっていく。

「話とはなんです?私達も一緒に聞きますよ」
「はっ!何で貴様らに話さなきゃならん!は、イレーネに話があるだよ!」
「ふ~ん、ここじゃ話せない話?なら、聞く必要ないよね?行こ、イレーネ」

私の肩を抱いていたシグレさんが、そのまま彼らと距離を取り離れようとした。

「待てよ!」
「まだ何かあるの?」
「イレーネ、また俺たちのメンバーにしてやる。有難く思え!」

何を言ってるんだろうか……。
私が、ザハルさん達のメンバーに?

(絶対に嫌だ)

「無理です。私はフォルスさん達の仲間になりましたから」
「だいたいお前、イレーネを追い出したくせに何言ってんだ?」
「私達が貴方に渡すわけがないでしょう。馬鹿なんですか?」
「うるせぇ!来い!イレーネ」
です!」

ここは北の門の前で、ザハルさん達は大きな声で話してる。周りには、かなり人だかりが出来ていて、私たちの話を聞いていた。

「あれって、東の勇者じゃない?」「やだ、ホント!」「ねぇ、あの話本当なのかな?」「前は信頼出来たが、今のザハル君は何かおかしくないかね?」「目がイカれてるよ!怖い」と、コソコソ話してる声が聞こえてきた。

それを聞いたザハルの目が、血走り市民を睨みつけた。

「うるせぇんだよ!クズが!俺様に文句があんのか!俺達に守られてる雑魚が!」

最低だった。
私が離れてから、何があったのか知らないけれど、市民を見るザハルさんの目には憎しみがみてとれた。

シーーーン

と、静かになる。

すると市民から……

「お前なんか!勇者じゃねぇ!消えろ」
「そうよ!最低!信じてたのに!」
「お母さ~ん、怖いよぉ~」

東の勇者を罵倒する言葉と、石が投げられた。

「何すんだよっ!」

「もぅ!こうなったら!」

レニアさんが何かを叫び、目に涙を浮かべフォルスさんの目をジッと見つめた。

「ん?」
「フォルスさま、私を助けて下さいな」

レニアさんの目にハートが浮かび、フォルスさんに撓垂しなだれ掛かる。

「言っておくが、俺達には魅了耐性がある。お前の魅了はかからないぞ」

魅了……?

「東の勇者たるザハルにも、魅了耐性があるはずでは?」
「いや、奴のステータスには魅了耐性の文字は無かった」
「えー、こんな女の魅了にかかるなんて、たかが知れてるよね。西や南の勇者だって持ってるよ」
「なっ!なんですってぇ!」

レニアが怒りで地団駄を踏むと、人垣の向こうから警備兵がやって来て、ザハルさん達を連れていった。

「フォルスさん」
「大丈夫だ。ラハル、ギルドに行くぞ。ザック、シグレ、イレーネを頼む」


半ば放心状態で立ち尽くす私に、ザックさんの手が添えられシグレさんと共に宿屋に向かった。
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