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追放と加入
第9話 アロイス雪原
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ゾワッ
「……っ!」
(え?なに?)
いま、背中がゾワッとした!
「……嫌な予感がする……」
辺りはシーンと静まり返っており、自分の息遣いのみが聞こえる。
ゆっくりと顔を上げ……後ろを振り向く。
そこに居たのは……
「ひやぁああああああ!」
「うわぁああああああ!」
2人の絶叫が、辺りにこだまする。
(いやぁぁぁ!お化け怖い!お化け怖い!お化け怖い!)
私は頭を抱え、俯く。
なんでなんでなんで?聖水かけたし、魔除け持ったし!魔除の鈴も付けてるのに!
「あ、あの」
(怖い!怖い!怖い!)
「もし……」
(こうなったら、ホーリー系のアイテム……!)
「お嬢さん」
ぽんと肩に手を置かれた。
(いやぁぁぁ!……って、手?それに声?)
ふと、正気に戻りバッと振り返ると、そこに居たのは……
背負子を背負った行商人だった。
「はっ、はぁ、お兄さん?」
「すみません…こんな所に女の子が居るなんておもわず…勘違いで叫んでしまって……」
「い、いえ、私もお化けと勘違いして……すみません」
手に持っていた聖石(神聖魔法を発動出来るアイテム)を急いで背中に隠し、立ち上がって頭を下げると、お兄さんが驚きながらも微笑み頭を下げてくれた。
(あはは、申し訳ない)
「お兄さんも、月影草を?」
「いえ、僕は月光草を取りに来たんです」
「そうなんですね、月光草を手に入れたら、直ぐに出ますか?」
「え?」
「あ、えっと……」
何故こんな事を聞くのかというと……1人で帰るのが嫌だからです!
怖いんです!
誰かと一緒の方が、怖さが幾分楽になるんです!
「あ、はい、月光草を取ったら出ますね。一緒に出ますか?」
クスクス笑いながら、無駄のない手つきで月光草を採取していく。
月影草は、要らないのかな?
疑問が顔に出ていたのか、お兄さんが振り向き教えてくれる。
「月影草は薬師には、あまり需要がないんですよ。錬金術師の方は使われるみたいですが」
あー、そっか、確かに。
月影草は、錬金術師にとっては、状態異常回復に使う素材だが、薬師は違う素材を使う。
薬師と錬金術師では、同じポーションでも作り方が違うし使う素材も違う事がよくある。
「よし、取り終わりました。行きましょうか…えっ~と」
「あっ、すみません。自己紹介まだでしたね。私はイレーネと言います、錬金術師をしてます。よろしくお願いします」
「ご丁寧にありがとうございます。ぼくは行商人のエルマンよろしく。それにしても、貴方がイレーネさんなんですね。お噂はよく聞きますよ」
「え?どんな噂ですか?」
「貴方が作るポーションやアイテムは、とても効果が高いと」
「あ、ありがとうございます」
失意の森を出るまで、当たり障りのない会話を続けた。そして聞いたのは、エルマンさんはこの後、失意の森を迂回し、エルフの住む森に行くそうだ。
「イレーネさんは、アロイス雪原ですか、確かに今行かないと突破するのは大変になりますね」
「はい、来月になったら吹雪が酷くなり、進むのは困難になりますから…」
そうして会話してると、先程まで感じてた怖さがなくなり、笑みが零れてくるので不思議だ。
失意の森の入り口に到着して、別れの挨拶をする。
「エルマンさん、ここまでありがとうございました。お陰で助かりました、ホントに」
「こちらこそ、楽しい時間をありがとうございます。スノースノーまで、お気を付けて」
エルマンさんと別れて、白銀の狼と別れた場所まで行く。そこから、左に曲がり街道を進むと、チラチラと白い何かが舞い始めた。
(雪だ……)
手を出し掌を上にして雪を受け止める。
(冷たい)
冷たくて、歩く度にふわりふわりと舞う雪が可愛くてテンションが上がる。
暫くその場所で、クルクルと回りながら雪と遊んでた。
(流石に寒い!)
遊び過ぎた!!
体が震える。
カバンから防寒具を取りだし羽織るが、中々温まらない。
そりゃそうよね、あんな寒い中、防寒具も着ず遊ぶなんて……馬鹿だったわ。
「仕方ないわ、今日は休むべきね」
アロイス雪原のモンスターLvは最低でも70。寒くて体が動かない中、進むのはとても危険な行為だ。アロイス雪原の手前でテントを張り、焚き火をする。火が消えると困るので、結界石を使いテントと焚き火周りにバリアを張る。
こうすれば、風が吹くことは無いので火が消えることはない。
テントの中で、明日の予定を考える。
「明日は、保温石をポケットに入れて行動しなきゃね」
明日、北の勇者と偶然会う事を彼女はまだ知らない。
「……っ!」
(え?なに?)
いま、背中がゾワッとした!
「……嫌な予感がする……」
辺りはシーンと静まり返っており、自分の息遣いのみが聞こえる。
ゆっくりと顔を上げ……後ろを振り向く。
そこに居たのは……
「ひやぁああああああ!」
「うわぁああああああ!」
2人の絶叫が、辺りにこだまする。
(いやぁぁぁ!お化け怖い!お化け怖い!お化け怖い!)
私は頭を抱え、俯く。
なんでなんでなんで?聖水かけたし、魔除け持ったし!魔除の鈴も付けてるのに!
「あ、あの」
(怖い!怖い!怖い!)
「もし……」
(こうなったら、ホーリー系のアイテム……!)
「お嬢さん」
ぽんと肩に手を置かれた。
(いやぁぁぁ!……って、手?それに声?)
ふと、正気に戻りバッと振り返ると、そこに居たのは……
背負子を背負った行商人だった。
「はっ、はぁ、お兄さん?」
「すみません…こんな所に女の子が居るなんておもわず…勘違いで叫んでしまって……」
「い、いえ、私もお化けと勘違いして……すみません」
手に持っていた聖石(神聖魔法を発動出来るアイテム)を急いで背中に隠し、立ち上がって頭を下げると、お兄さんが驚きながらも微笑み頭を下げてくれた。
(あはは、申し訳ない)
「お兄さんも、月影草を?」
「いえ、僕は月光草を取りに来たんです」
「そうなんですね、月光草を手に入れたら、直ぐに出ますか?」
「え?」
「あ、えっと……」
何故こんな事を聞くのかというと……1人で帰るのが嫌だからです!
怖いんです!
誰かと一緒の方が、怖さが幾分楽になるんです!
「あ、はい、月光草を取ったら出ますね。一緒に出ますか?」
クスクス笑いながら、無駄のない手つきで月光草を採取していく。
月影草は、要らないのかな?
疑問が顔に出ていたのか、お兄さんが振り向き教えてくれる。
「月影草は薬師には、あまり需要がないんですよ。錬金術師の方は使われるみたいですが」
あー、そっか、確かに。
月影草は、錬金術師にとっては、状態異常回復に使う素材だが、薬師は違う素材を使う。
薬師と錬金術師では、同じポーションでも作り方が違うし使う素材も違う事がよくある。
「よし、取り終わりました。行きましょうか…えっ~と」
「あっ、すみません。自己紹介まだでしたね。私はイレーネと言います、錬金術師をしてます。よろしくお願いします」
「ご丁寧にありがとうございます。ぼくは行商人のエルマンよろしく。それにしても、貴方がイレーネさんなんですね。お噂はよく聞きますよ」
「え?どんな噂ですか?」
「貴方が作るポーションやアイテムは、とても効果が高いと」
「あ、ありがとうございます」
失意の森を出るまで、当たり障りのない会話を続けた。そして聞いたのは、エルマンさんはこの後、失意の森を迂回し、エルフの住む森に行くそうだ。
「イレーネさんは、アロイス雪原ですか、確かに今行かないと突破するのは大変になりますね」
「はい、来月になったら吹雪が酷くなり、進むのは困難になりますから…」
そうして会話してると、先程まで感じてた怖さがなくなり、笑みが零れてくるので不思議だ。
失意の森の入り口に到着して、別れの挨拶をする。
「エルマンさん、ここまでありがとうございました。お陰で助かりました、ホントに」
「こちらこそ、楽しい時間をありがとうございます。スノースノーまで、お気を付けて」
エルマンさんと別れて、白銀の狼と別れた場所まで行く。そこから、左に曲がり街道を進むと、チラチラと白い何かが舞い始めた。
(雪だ……)
手を出し掌を上にして雪を受け止める。
(冷たい)
冷たくて、歩く度にふわりふわりと舞う雪が可愛くてテンションが上がる。
暫くその場所で、クルクルと回りながら雪と遊んでた。
(流石に寒い!)
遊び過ぎた!!
体が震える。
カバンから防寒具を取りだし羽織るが、中々温まらない。
そりゃそうよね、あんな寒い中、防寒具も着ず遊ぶなんて……馬鹿だったわ。
「仕方ないわ、今日は休むべきね」
アロイス雪原のモンスターLvは最低でも70。寒くて体が動かない中、進むのはとても危険な行為だ。アロイス雪原の手前でテントを張り、焚き火をする。火が消えると困るので、結界石を使いテントと焚き火周りにバリアを張る。
こうすれば、風が吹くことは無いので火が消えることはない。
テントの中で、明日の予定を考える。
「明日は、保温石をポケットに入れて行動しなきゃね」
明日、北の勇者と偶然会う事を彼女はまだ知らない。
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