8 / 41
追放と加入
第2話 ギルドマスターに報告しました
しおりを挟む
東の勇者パーティに追い出された私は、宿屋を出て街の中を歩く。
先程まで流していた涙は、いつの間にか止まっていた。
「よっ!嬢ちゃん!どうした?辛気臭い顔して!うちの肉でも食って元気出せよ!」
ボーッとしながらも、ギルドに向けて歩いていた私は露店のおじさんに声かけられた。
冒険者ギルドのある区画には、宿屋、装備店や露天商があり活気に満ちている。
宿屋からギルドまでは、そう遠くなく10分ほど歩けば着く距離だ。
その為、間にある露天商のおじさんとは顔馴染みで良くおまけをしてくれる親切で優しい人だった。
「ありがとう、おじさん」
ふわりと笑えば、おじさんもニカッと返してくれる。
焼き鳥を1つ貰い、頬張りながら歩く。
これから先の事を考えないといけない。
パーティを抜けた今、討伐タイプの高難易度クエストは厳しい……採取系タイプを地道にこなしながら資金を貯めるしかない。
(そう言えば、前にパーティに誘ってくれた人達が居たな……)
そんな事を考えながら歩けば、直ぐにギルドに辿り着いた。
カランカラン
ギルドの扉を開けば、賑やかで活気に満ちた空間が広がっていた。
受付まで行き、職員に声かけると後ろから大きな声が聞こえた。
「お!錬金術師の嬢ちゃんじゃないか!久しぶりだな!」
「おや?本当ですね。もうクエストから戻ってきたのですか?相変わらず早いですね」
「よう、嬢ちゃん!前に貰ったポーション助かったぜ!また頼むわ!」
冒険者の方々に一遍に話しかけられ、どう対応していいか分からずオロオロしてしまう。
「あ……あの、その……えっ……と」
「こらー!イレーネちゃんが、困ってるですよ!いっぺんに話さないのです!」
頭の上の丸い耳をピコピコと動かしながら、私のために叱ってくれるこの人は、ギルドの受付嬢でネズミの獣人フヨウさんだ。
この国はティルセリア王国で、人間だけじゃなく様々な獣人や竜人が多く住んでいる。
その殆どが、他の国から逃げてき者達だ。
獣人や竜人は、基本争いごとを好まない。
その為、他国では奴隷だったり、見世物だったりと酷い扱いを受けていた。
だが、この国の王は彼らを蔑まず受け入れた。だから、この国では獣人は当たり前に存在する。
「あ、あの、フヨウさん、私は大丈夫です。ちょっと、びっくりしただけ」
「そういや今日は、あのいけ好かない連中は一緒じゃないのか?」
キョロキョロと、私の周りに目を配り、一人で来た事を確認する冒険者達。
「あ、そうなんです。その事でギルドマスターさんに話があるんです。フヨウさん、ギルドマスターさんは、居ますか?」
「ギルドマスターですか?居ますよぉ。嫌いな書類と睨めっこしてますです」
ギルドマスターに話があると言えば、フヨウさんが奥に続く階段に案内してくれる。
後に残された冒険者達は、何があったのかと気になり顔を見合せ……こっそりと後を付いて行った。
コンコン
「誰だ」
不機嫌そうな声で、来訪者を威圧する。
「マスター、お客様ですよぉ、入りますねぇ」
相手の返事も聞かず、ガチャっと扉を開けるフヨウさん。
部屋の中には、書類から顔を上げたギルドマスターが居て、凄んでいた。
「ひっ!」
堪らず短い悲鳴をあげてしまい、慌てて口に両手を当てた。
声が聞こえたのかは分からないが、視線を私に向けた。
「マスター、イレーネちゃんが泣いちゃうですよ。その威圧を抑えて下さいです」
いや、泣きはしないけど……マスターさんの顔が……怖い事になってます。
オークも裸足で逃げそうです。
「悪かったな、イレーネ」
「いえ、大丈夫です」
「ん、まずは入れ」
マスターさんから、入出の許可を貰い中に入って扉を閉めた。
緊張してた私は気付かなかったけど、扉の外には先程下で話した冒険者達が張り付くように聞き耳を立てていた。
「それで、どうした?イレーネ」
ギルドマスターさんは、名をヴォルフ。
焦げ茶の髪にオールバックで、左目に眼帯をした精悍な顔立ちの男性だ。
現役だった頃は、ドラゴンをも倒すSSランクの冒険者として有名だった人だ。
今も尚、力は衰えていないらしい。
私は先程起こった出来事をギルドマスターに話していく。
次第にフヨウさんは、青い顔をしてガタガタ震えだし、マスターさんは、厳つい顔が更に厳つくなった。
威圧感も垂れ流し状態だ。
そして、扉の外ではガタンという音がした。
「それで……?」
「奴らは、どうするって?」
凄みが増したマスターさんが、勇者達のことを聞いてきた。
「ザハルさん達は、暫く休養をとるそうです」
部屋の中に、重い沈黙が降りる。
私は、務めて明るく次の予定を伝えた。
先程まで流していた涙は、いつの間にか止まっていた。
「よっ!嬢ちゃん!どうした?辛気臭い顔して!うちの肉でも食って元気出せよ!」
ボーッとしながらも、ギルドに向けて歩いていた私は露店のおじさんに声かけられた。
冒険者ギルドのある区画には、宿屋、装備店や露天商があり活気に満ちている。
宿屋からギルドまでは、そう遠くなく10分ほど歩けば着く距離だ。
その為、間にある露天商のおじさんとは顔馴染みで良くおまけをしてくれる親切で優しい人だった。
「ありがとう、おじさん」
ふわりと笑えば、おじさんもニカッと返してくれる。
焼き鳥を1つ貰い、頬張りながら歩く。
これから先の事を考えないといけない。
パーティを抜けた今、討伐タイプの高難易度クエストは厳しい……採取系タイプを地道にこなしながら資金を貯めるしかない。
(そう言えば、前にパーティに誘ってくれた人達が居たな……)
そんな事を考えながら歩けば、直ぐにギルドに辿り着いた。
カランカラン
ギルドの扉を開けば、賑やかで活気に満ちた空間が広がっていた。
受付まで行き、職員に声かけると後ろから大きな声が聞こえた。
「お!錬金術師の嬢ちゃんじゃないか!久しぶりだな!」
「おや?本当ですね。もうクエストから戻ってきたのですか?相変わらず早いですね」
「よう、嬢ちゃん!前に貰ったポーション助かったぜ!また頼むわ!」
冒険者の方々に一遍に話しかけられ、どう対応していいか分からずオロオロしてしまう。
「あ……あの、その……えっ……と」
「こらー!イレーネちゃんが、困ってるですよ!いっぺんに話さないのです!」
頭の上の丸い耳をピコピコと動かしながら、私のために叱ってくれるこの人は、ギルドの受付嬢でネズミの獣人フヨウさんだ。
この国はティルセリア王国で、人間だけじゃなく様々な獣人や竜人が多く住んでいる。
その殆どが、他の国から逃げてき者達だ。
獣人や竜人は、基本争いごとを好まない。
その為、他国では奴隷だったり、見世物だったりと酷い扱いを受けていた。
だが、この国の王は彼らを蔑まず受け入れた。だから、この国では獣人は当たり前に存在する。
「あ、あの、フヨウさん、私は大丈夫です。ちょっと、びっくりしただけ」
「そういや今日は、あのいけ好かない連中は一緒じゃないのか?」
キョロキョロと、私の周りに目を配り、一人で来た事を確認する冒険者達。
「あ、そうなんです。その事でギルドマスターさんに話があるんです。フヨウさん、ギルドマスターさんは、居ますか?」
「ギルドマスターですか?居ますよぉ。嫌いな書類と睨めっこしてますです」
ギルドマスターに話があると言えば、フヨウさんが奥に続く階段に案内してくれる。
後に残された冒険者達は、何があったのかと気になり顔を見合せ……こっそりと後を付いて行った。
コンコン
「誰だ」
不機嫌そうな声で、来訪者を威圧する。
「マスター、お客様ですよぉ、入りますねぇ」
相手の返事も聞かず、ガチャっと扉を開けるフヨウさん。
部屋の中には、書類から顔を上げたギルドマスターが居て、凄んでいた。
「ひっ!」
堪らず短い悲鳴をあげてしまい、慌てて口に両手を当てた。
声が聞こえたのかは分からないが、視線を私に向けた。
「マスター、イレーネちゃんが泣いちゃうですよ。その威圧を抑えて下さいです」
いや、泣きはしないけど……マスターさんの顔が……怖い事になってます。
オークも裸足で逃げそうです。
「悪かったな、イレーネ」
「いえ、大丈夫です」
「ん、まずは入れ」
マスターさんから、入出の許可を貰い中に入って扉を閉めた。
緊張してた私は気付かなかったけど、扉の外には先程下で話した冒険者達が張り付くように聞き耳を立てていた。
「それで、どうした?イレーネ」
ギルドマスターさんは、名をヴォルフ。
焦げ茶の髪にオールバックで、左目に眼帯をした精悍な顔立ちの男性だ。
現役だった頃は、ドラゴンをも倒すSSランクの冒険者として有名だった人だ。
今も尚、力は衰えていないらしい。
私は先程起こった出来事をギルドマスターに話していく。
次第にフヨウさんは、青い顔をしてガタガタ震えだし、マスターさんは、厳つい顔が更に厳つくなった。
威圧感も垂れ流し状態だ。
そして、扉の外ではガタンという音がした。
「それで……?」
「奴らは、どうするって?」
凄みが増したマスターさんが、勇者達のことを聞いてきた。
「ザハルさん達は、暫く休養をとるそうです」
部屋の中に、重い沈黙が降りる。
私は、務めて明るく次の予定を伝えた。
1
お気に入りに追加
4,894
あなたにおすすめの小説
国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る
はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。
そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。
幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。
だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。
はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。
彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。
いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました
ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。
そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった……
失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。
その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。
※小説家になろうにも投稿しています。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる
みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。
「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。
「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」
「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」
追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる