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第二部
113.
しおりを挟む「はは~は!この後、10分後――このBCOは変革します」
「何?」
「――BCOが変革?」
俺もケージェイも意外な答えに少しだけ戸惑う。
何せ俺でさえも、BCOは折り返しに差し掛かるところだと思っていたからだ。
「ええ、BCOは変革します!舞台はPVPへと移行し大規模な戦闘による殺し合いが始まる!あー約束のことですが、心配しないで下さい。帰還の件はこちらで、レベルの低い者たちを対象に行いますので――」
その言葉にケージェイは声を大きくする。
「待て――レベルの低い者だと!」
「はい!今回の報酬は1位の特権ですから、お2人になってしまった以上は、こちらの最良に任せていただきたいです~はい!」
ケージェイは納得のいかない顔をしている。
俺はそれほどではなかった、何せ、信用度としては口約束以下でしかなかったからだ。
「ケージェイ聞いたろ、BCOは変わる、このデスゲームはまだ終わらないらしい」
「デスゲーム?いいえ!これはただの殺戮ですよ!純粋に人の命を奪い合う殺し合い、その過程を記録するのが私の役目!人間のDNAや遺伝に刻まれた戦いへの本能、あえてゲームではないと私はここで言いきっておきます」
急に奇声を発するバットマンに、俺は少しだけブラフを投じてみる。
「お前たち〝組織〟の望みはそれか?」
ここでのブラフとは、組織という言葉で引き出せるものがないかどうか。
お前たちが組織だと理解しているぞ、というブラフでYESかNOかを引き出す。
「……私たちの望み……いいえ!これはむしろ私の望みですよ!」
その瞬間の違和感は小さなものではなかった。
バットマンは今、私たちの望みと言っておきながら、すぐにそれを否定し私の望みと言い換えた。集団の望みであるかのように見えたそれは、よくよく考えれば個人の望みでしかなかった――それを悟ったような言い方だ。
「ある一つに対し複数が同じ方向性を持っていたならば、集団の望みになります。しかし、個人の望みだと断言してしまった以上は、その望み自体が他とは別物であると言わざるを得ません。つまり私は、今まったくもって別の方向性を持っているということになる。素晴らしい!実に愉快です!」
バットマン自身が個人の望みを集団の望みのように言っておきながら、それを訂正する。
まるで、バットマン自身が集団の一部から、ただの個へとこの瞬間に変わったかのようではないか。
「組織的でありながら個でもあるわけか――」
組織でありながら縦にも横にも繋がらず、しかし、同じ目的を意識してそれぞれのやり方で行動し連携する。そんなやつらとなると、今後の展開がますます見えない。
一体、最終的にBCOで捕らえたプレイヤーに殺し合いをさせて、その結果に何を求めているのか。そして、バットマンという存在がどのような動機で行動しているのかも理解できない。
「どうやら、ようやく私も愉悦というものを覚えたようです!今後も互いに進化していきましょう!」
そう言ったバットマンの声は、それ以降は聞こえなくなった。
残された時間は8分程度。
「どうやら茶番だったようだ。……ヤト、これは私の勝手な頼みなんだが――」
ケージェイはそう言うと、いつの間にか装備し直した長剣と楯を手に俺に斬りかかってきた。
俺は咄嗟に槍で受ける。
「何のつもりだ、もう、俺たちが戦う理由はないだろ?」
笑いを浮かべるケージェイは囁くように、「いいや、理由ならある」と言って俺を弾き飛ばした。空中で体勢を立て直し、着地した俺はケージェイを見る。
「ヤト――キミは、自身の正義に対して何かを戸惑っている、いや、その正義自体が未熟と言ってもいい」
「俺の正義が未熟……」
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「宣言しよう!私は今後も秩序という正義で人を斬る、戦わず、逃げ、その身だけを守ろうとする弱者は斬って捨てる!」
「急にどうしたんだ?気でも狂ったのか――」
「私は至って冷静だ、ヤト、キミの正義は私には捨て置けない!未熟な正義はただの暴力、暴力は悪だ、つまり、キミは悪だ――」
ケージェイの言葉は理解できる、が、納得できるものではなかった。
「キミの正義は決定的に破綻している、悪がなんなのかすら分かっていないんじゃないか?己の欲望のまま、ただそれを受け入れられないからと暴力を振るうのは子どもの行動だ」
「……」
俺はケージェイに、反論するだけのものをこの身に持ってはいない。
「私にとってキミは悪だ、さぁ、キミのその覚束無い正義で私の正義とどう戦う?」
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