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第二部
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しおりを挟むその後、ナナは第9エリアの街シトリーへと帰り、俺たちも始まりし街へと帰路につく。
「なーヤト坊……この先どうなると思う?俺たちがさ残されてさ、それからここはどうなっちまうんだろうな?」
ビージェイの不安は分かる。しかし、それは誰にも、俺にも分からない。
「……さー、どうだろうな、ジョーカー側の思惑が少しでも分かれば推測もできたんだろうが、しかし、悲観することでもないだろ?」
「攻略不可能って分かっているゲームなんだ、……そうなっても仕方ねぇだろ――」
「何だ……らしくないことを言うな、……お前まさか、猫の手と別れるのが辛いのか?」
「な!んなこたね~よ!俺にロリコン属性付けようーとすんじゃね、こんにゃろ」
ビージェイにワシャワシャと髪をいじられるが、それほど抵抗感がない。
本当の兄がいる俺としても、兄とは本来こういうものなのかと思わせる。
正直、実の兄とは仲がよかったわけじゃない。
母に過度な期待を込められて育てられた兄と、母に無関心を貫かれた弟。
劣等感が生まれるとしたら互いにか、弟の方に生まれやすいその生い立ちで、俺と兄はそうはならなかった。それは父の存在がそうさせたのかもしれない。
父に過度な期待を込められて育てられた弟と、父に無関心を貫かれた兄。
そう、母と父どちらも兄と俺に期待をかけた。しかし、その期待のかけ方は、一方は厳しくで、もう一方は甘やかしだった。結局どちらがより辛いのかと聞かれると、前者だったろうと言うしかない。兄と遊んだ記憶はないが、兄に怒鳴られた記憶はあった。
広い洋風屋敷の廊下で、「お前は遊んでいられていいご身分だな!」と吐き捨てられた。
俺は小学生だったが、「ヒステリーを起こす歳でもないだろうに」と吐き捨てたことを覚えている。それが、小学生らしからぬ返答だったのは理解している。が、そう言ってしまうほど、あの時の俺には兄が子どもに見えた。
それ以来、兄とは顔も合わせていない。
「ビージェイ……兄貴ってよんでもいいか?」
「……どうした~ヤト坊!そんな子分みたいな呼び方したがるなんて」
「冗談だ、本気にするなよな」
「……ヤト坊よ――野郎のデレツンは求めてないんだけどな――」
ビージェイの言葉に俺は声を出して笑って、ビージェイも俺に釣られて笑っていた。
後ろを付いて歩くカイトとマリシャが、首を傾げているだろうことは見なくても分かる。そうして、始まりし街の近くまで着た時だった。
ビージェイが何かに気付いて指差す。指された方へ視線を向けると、そこには人だかりができていた。何の変哲もない人だかりに見えるのは、それがBCOで比較的安全な圏内ならそうなるのだろう、だが、ここは始まりし街から少し離れているモンスターもウロウロする外周だ。
その異状性の高さは明らかだった。
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