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第二部

89.37 報酬

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 37 報酬

 リザルトを見ると大した報酬の変化はなく、強いて言うならカイトの感謝の気持ちがそれにあたるだろう。ビージェイなんかはかなり照れてしまっていた。

「ありがとうみんな」
「俺たちは同じ境遇の言わば同士じゃねーか、当然のことをしたまでさ」

 キメ顔で言って誤魔化しているが、ビージェイはカイトの感謝を素直に受け入れていた。

 マリシャはカイトの頭を撫でてお姉さんぶって見せ、リアルに姉のいるカイトは、「もう1人お姉ちゃんができたみたいだ」と言って笑った。

 ナナはカイトと抱き合って何かを話していた。それに関して、ビージェイが一歩身を退き聞こえないようにしていたため、俺は真似して聞こえないよう一歩退いた。

 2人が何を話しているのかは聞き取れないが、かなり長い時間何かを話し合っていた。

 カイトはちゃんと理解している。

 ここにいる5人の中で、一番帰還する可能性の高いのは自分であるということを。

「いい経験ができただろうか、これは彼女にとってプラスになったか、俺と彼女に確かな繋がりができたか――と考えているのかジャスティス・オブ・ジャスティス」

 唐突に話しかけてきたのはシャドー、一体今の今までどこに姿を隠していたのか。

 もしかするとそれはマリシャの胸元か、それとも誰かのアイテムストレージにアイテムとして収納されていたのか。

「何が言いたい――」
「ジャスティス……カイトにすがっても構わない、人は常に強者たりえない、ゆえにすがっても仕方がない……しかし、甘えるな」

 小さいウサギは元は俺のコピーのコピーで、元を辿れば、起源は俺であるわけだ。

 しかし、ウサギに説教されるいわれはない。

「お前もナナに甘えるなよ」
「……え!!」

 戸惑うウサギを拾い上げるカイト。

「どうかしたのかい?」

 カイトは硬直したウサギにそう問うが、さっきの言葉が響きすぎたのか、ウサギはそのまま鼻をピクピクさせて動かない。

「気にしなくていい、それより随分とナナと話し合っていたようだが……ま、女同士のそういうのは聞くのは野暮かな?」

 俺のちょっとした冗談に、横ではビージェイが呆れた顔で目元を押さえているに違いない。

「野暮?……!まさか、ボクがナナとそういう関係だと思っているのかい?!」
「ナナはとても整った顔立ちの女の子だ、カイトが惚れこんでも仕方ないと思ったが」
「ごごご誤解だよ!確かにボクは可愛い綺麗な女の子が好きだけど!」
「悪いカイト――冗談だ」

 カイトはキョトンとして、「冗談?ヤト……キミが冗談を言うなんて」と言う。

 さっきのウサギの言葉が、俺にそれを言わせたとすでに理解している。

 甘えるな……か。

「カイト、前に話したこと覚えているか?」
「この前の話かい?もちろんだよ」

 俺はそれを聞いて安心した。

「ならいい――」

 そう言った俺にカイトは拳を突き出す。

「いい思い出になったよ」

 拳と拳を合わせた瞬間、古い記憶のカイトとのやり取りとデジャヴる。

 これでカイトは向こうに帰っても、ここにいる全員と繋がっていられる。それが、俺の思い込みや自己満足であったとしても今はそれで構わない。
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