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第二部

70.

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 そして高2の春。

 久しぶりに親友が直接会いたいと言ってきた。

 だが、その頃ナナは部活の大会に向けて忙しく、すぐに返信はできなかった。

 それから大会の予選も終了して、夏の合宿前に親友と会うことにしたナナ。

 親友は、〝会ってくれてありがとう、ゴメンね私が間違ってた……〟、そう言ってナナに謝った。しかし、ナナは部活の忙しさや将来の進路に迷っていて、親友の謝罪を〝今更――〟と軽くあしらい遠ざけてしまった。

 再び日々の忙しさに戻り、ナナが親友の謝罪を受け入れなかったことを少し後悔し始めた頃。

 部活の夏合宿。とても熱い日だった。
 親友は自殺した。
 原因は妊娠。

 親友の友だちが付き合っていた男に無理やり。それも、一度や二度じゃなかったらしい。

 そして、誰にも言えず、誰にも頼れず、親友は自ら命を絶った。

 親友が連絡を取り謝ってきたのは、助けてほしかったからではないか、そう考えたナナ。

 葬儀で親友の母親から手紙を渡されるナナ。

 それはナナ宛の遺書だった。

 〝平千晶様〟

 〝あなたとの友情が 思えば私の唯一の宝物でした〟

 〝小学生の時 足を擦りむいた私を背負ってくれたこと 今でも覚えています〟

 〝中学生の時 怖い先輩に絡まれた時 庇ってくれた事 今でも忘れません〟

 〝そんなあなたに 私はとても酷いことを言ってしまったこと ずっと後悔しています〟

 〝心配してくれてありがとう 手を伸ばしてくれてありがとう〟

 〝あの時 私が手を払わなければ 今でも私たちは友人でいられたのでしょうか〟

 〝平千晶様〟

 〝ちーちゃん〟

 〝ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい〟

 〝本当に何度謝っても足りないです〟

 〝私が今日 命を捨てるのはあなたのせいではありません〟

 〝最後まで馬鹿な私でごめんなさい〟

 〝橘奈那〟

 その手紙はナナに事実を突きつけた。

 あの日、あの時、親友の伸ばした手を握っていたなら。

 手を握らなくても、話しさえ聞いていれば――

 その瞬間、ナナの全身が痙攣に襲われ、そのまま病院へ。発作に近いものだったのだが、ストレスによるものなのだろうと医師は言う。

 結局、全力で取り組んだ部活の大会でも発作のせいで出場することはなく。

 そしてその発作は、ナナの親友への罪悪感が引き起こすものだろうと思ってしまっていた。

 何度も親友と会った最後の瞬間を思い出して胸が苦しくなる。医師は気分転換が必要だと言い、フルダイブを彼女に薦めた。

 ナナは、それまでも何度かフルダイブVRは体験したことがあった。

 親友とも――

 部活柄身体を動かして戦うタイトルを選んで、それがたまたまBCOだった。

 オープン前のテストだったこともあり、親友がVRで使っていた名前7NANA7をアバターにつけた。

 親友の分身、それを自身のアバターの名前に選んだことは、もしかすると贖罪だったのかもしれない。

 BCOはナナにとっては楽しいと思える場所だった。仮想であってリアルに剣を振っている感覚に素直にのめり込んだ。

 次第に発作も起こらなくなり、部活にも顔を出せるほどには回復していった。このまま以前のように、そんな考えも頭にあった。
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