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一之書 令嬢は猫
しおりを挟む朝、俺は苦しみの中で目を覚ました。
その苦しみは美少女が俺の上で寝ているからと分かると、不思議と心地よいものだと感じてしまえた。
「そういえば、カレンお嬢様と一緒に住むことになったんだっけ」
俺の秘密基地兼マイホームは、現在ベットが一つしかなく、一人用であるために俺が寝ると他の人間は寝ることが困難になる。だから、苦渋の決断で彼女を抱えて寝ることにしたのだ。
最初は小さい女の子といえど、重くて寝づらかったけど、気が付けば眠ってた。
そして、お嬢様もしっかり寝ていることから、明日からもこれで過ごすことにこの時決め、深呼吸するとお嬢様の香りがハッキリと香ってきた。
「なんでこんなに良い匂いなんだろう」
そうして香りを堪能している間も、彼女は寝息をたてている。
「……寝ていてよかった」
そう言う俺は、完全に生理現象によって下腹部が天を目指していた。
美少女を体の上で寝かせているのだ、むしろこうなるのが普通だと思う。
俺はゆっくりと彼女の下から移動して、ベットから出ると、顔を洗うためにキッチンの水瓶へと移動する。
洗面所、何て場所もないから、そこから水を桶に入れて、顔に数回水をかけると洗顔は終わりで、石鹸を手に取り手を洗うと、朝食の用意を開始する。
朝食はこっちでは定番のせんべいの形のパンで、自慢の釜土で焼いていく。
こういう時にスキルが知識と経験として合わさるため、まるで今までそれを毎日使っていたかのように使用できる。
温度調節なんかもスキルと経験で余裕です。
釜土で焼いている間に、一度お嬢様の寝顔を拝見。
「……これ……マジ可愛い」
犯罪臭が凄いするけど、手を出さなければセーフ。
屋敷に寝泊まりしていた時は、深夜彼女がベルを鳴らしながら俺を呼びだして、それがトイレの合図であると分かっているから、慌ててベットから飛び起きる日もあった。
彼女がトイレをしたい時にできるように、片時も離れない半年と数週間だった。
それが今や、同じベットで寝起きすることになろうとは。
「さて……眠り姫が起きる前に」
ひとっ走りして朝のミルクを買いに行こう。
俺がいる街は、『アッセンベルク』という転生者が現れる神殿のある場所の一つである。
ちなみに、勇者が転生した場所は、王都の神殿であり、転生した時の神殿で既に格差が生じる世界だったりするのだ。
ま、スキルがアレの時点で俺が魔王軍と戦うとか無理だけどな。
「あら、おはようカケル」
「おはようございます!」
「よう!カケル!ほらこれ持っていけよ!」
「いいんですか!」
「おう!こないだの借りだぜ」
この街に暮らし出してもう半年以上経っている俺は、ある程度顔見知りって人が増えてきたりしている。
例えば、さっきのおじさんは野菜を売っている八百屋さんだし、その前のお姉さんはクスリを売ってくれる薬剤師的な人だ。
それ以外にも顔見知りは増えてきた気がする。
「おはようございます、カケルくん」
「あ、アルシェナさん、朝から見回りですか?」
「ええ、またキミみたいに悪党に脅されている人がいるかもしれないからね」
そう、前に俺は彼女に助けられたことがある。
数人の悪党に囲まれた時、助けに現れたのが彼女だった。
「その節はどうもありがとうございました」
「いいのよ、任務だから」
彼女は街の駐在兵士さんだ。日々この街の警備をしている。
「アルシェナにカケルじゃないの!おはよう!」
「マリー、おはよう」
「おはようございます、マリーさん」
彼女はマリー、評判の良いレストランの看板娘さんで、以前にレシピを教えてあげた。
「カケル~また新しいレシピ教えてよ~」
「すみません、考えついたら教えますよ」
いやいやそれは本音ではなく、将来のために元の世界のレシピは極力教えたくはないのだ。
冑姿のアルシェナさんは、髪の毛の色も表情も前に一度だけしか見たことが無いから、もう一度見たい気がするけど、正直思い出せない。でも、とても綺麗だった気がする。
一方のマリーさんは、オレンジ色の髪に、薄い赤色の瞳の可憐な女性だ。
二人と別れて、ミルクを買った俺は、真っ直ぐマイホームへと帰る。
左右を倉庫に挟まれた俺のマイホーム、何度見てもいい!最高だ!
何て思いつつ扉を開けると、小さな鈴の音が鳴り響いていた。
リンリンという音は、お嬢様のトイレの合図だ。
屋敷にいた時は、クリスマスソングでも奏でるのかという程の大きさのベルだったけど、この家ではアレは大きすぎるため、小さなベルを買い直した。
「カケル……トイレ、トイレに……漏れちゃう」
「あぁごめんなさい、買い物に行ってて、失礼しますよ」
抱き上げると、彼女は子どもの様に体に抱き付いて、マイホームのトイレへと運び込む。
お嬢様が使うことを想定していなかったトイレは、屋敷のトイレより小さく狭い。
小を出す時は付き添う決まりで、彼女は俺の腕にしがみ付くようにして音を奏で始める。
もう何度も聞いて聞きなれた音でも、こうして環境が変わればまた違って聞こえてくる。
「終わった、拭いてちょうだい」
「はいはい」
小の時は前から、大の時は後ろから、もう慣れた作業でも狭いせいで少し窮屈だ。
「ちょっと、まだ?」
「ん~はい、終わりました」
命令口調も相変わらずだけど、彼女は俺のペットのようなものだから当然と言えば当然だ。
拭いた布と手を洗い終えた俺は、寝室で着替えを待つお嬢様に言う。
「じゃ、約束通り、言ってくれますか?お嬢様、いや、カレン」
「……言わなきゃだめ?」
これは相互契約だ。
「ダメです」
恥ずかしそうに、もじもじしながら、寝間着姿の彼女は言う。
「……ん~、拭いてくれて……ありがと、ニャン」
おいおいおいおい、こんな可愛いのは反則だろ!
「……かわいい、マジかわいい!」
彼女を抱き上げると、そのまま俺は頬を擦り付ける。
「ちょ、もう、やだ」
「スキンシップですよ、お嬢様」
俺もいつまでもお嬢様と呼ぶ口癖が治らない。
トイレの後は着替えさせる、下着も代えが一つであるため、昼までに洗濯しないとノーパンノーブラで彼女が過ごすことになる。
いつものセーラー服モドキを着せると、やはりニーソが欲しいと思ってしまう。でも、この世界にニーソは売ってないらしい。
「いつか穿かせたいな」
「……なにを穿かせるつもりなの、もう」
呆れ顔の彼女は、前よりずっとカワイイ女の子になった。
ある意味立場は逆転しているはずだけど、別の意味で立場が逆である俺と彼女。
「どっちが主人とかじゃないんだな~むしろ、対等な立場なのかも」
お世話がしたい人とされたい人の図。
「ご飯食べたい……」
「はい、今日はいつもと違って質素ですが、美味しいので食べてみて下さい」
「……本当に食べられるものなんでしょうね?」
彼女が疑うのは、彼女が以前庶民の食事を『残飯』と称していたその感覚からだろう。
「ま~食べてみてくださいよ」
そして、食事は彼女が唯一自分でできることで、貴族とはテーブルマナーで質が問われるらしいのが理由だ。
右手にフォーク、左手にナイフを持つ彼女は、「どうやって食べるのかしら」と焼いたせんべい状のパン、『ベッシュ』そう呼ばれる定番の食べ物だ。
焼きたてはナイフで切って刺す、だが、時間が経つとすぐに固くなるそれは、手に取ってそのまま噛み砕いた方が楽に食べられる。
「ナイフで切って小さくして食べるんですよ」
「……肉や野菜以外をナイフで切るのは初めてよ」
ま、そうでしょうな。
彼女は普段は焼いた肉と蒸し野菜を食すだけで、かなり偏った食生活をしていた。
時々出す野菜スープが好物になってしまうほどに、物心ついた頃からそんな生活を送ってきた彼女にとっては、ベッシュなど見たこともないだろう。
「で、感想は?」
「……お、美味しいわ」
意外そうな顔でそう言ったお嬢様に、食事の後はもちろんそれを言わせる。
「カケル……ありがと、ニャン」
その首を少し傾ける困った感じがまた良い!
それから俺は掃除や洗濯を手順よく終わらせていく。
一方のカレンお嬢様はというと。
「……1……2……3……4」
本を頭の上に乗せているイメージがコツらしい、その礼節に則ったお辞儀は。
彼女の日常、令嬢として日々お辞儀とテーブルマナーと後は会話練習。
「今日はお招き頂きありがとうございますわ、陛下におかれましては、ご健康とご多幸をお祈りいたします」
王に謁見する時の言葉から、格上から格下に対しての挨拶を反復する。
挨拶一つで格が知れるのだ、当然と言えば当然日々そうしているのだろう。
ただ、彼女はまだ14歳で、社交界デビューもまだらしいけど。結局は一切披露すること無く彼女は俺のペットになった。
俺が用事を終えると、昼前までは少し時間ができる。その時間を使って、お嬢様を愛玩することにした。
「……み、見ているだけなのか?」
「ま、今日は」
椅子に座る彼女はピンと姿勢を伸ばしていて、俺は思わずその絵画のような綺麗な様子を堪能する。
「でも、やっぱり少しスキンシップはしようかな」
彼女を抱き上げて、ベットの上へ移動させると、前に座らせて後ろから耳に後ろから息を吹きかけたり、首元やアゴの下を擦る。ま、つまり猫扱いする。
「ん~、ん~くすぐったい」
「よしよし~ほらカレン、カワイイ~良い子良い子、ふー」
「んっ」
その反応が凄く楽しい。
「ね、カケル……いつになったら私を玩具のように扱うの?」
「……玩具?」
「そう、私を紐で縛ったり、ムチで叩いたりするんでしょ……」
「いやいや、そんなことするわけないでしょ?愛でるんですよ!分かりますか?ペットって愛情を尽くして互いに信頼を高めることが必須なんです!」
貴族はやっぱりそういうのあるんだな~って思いつつ、彼女の勘違いにようやく気が付いた俺は、優しく後ろから抱き締めて囁いた。
「愛して、愛情を尽くして養ってあげますよ、俺の可愛いお嬢様」
「……はぐっ」
はぐ?
「こ、怖かったよぉぉおお」
「な、泣いちゃった」
そうか、お嬢様、俺が怖かったんだろうな、ま、怖いよな普通。
出会って半年だ、彼女が俺を百信頼するのは無理な話で、きっと気疲れして昨日は熟睡したんだろうな。
ストレスはペットの大敵である。
「安心してください、もしも、貴族に戻れないとしても、俺が一生をかけて面倒みてあげますから。でないと、トイレも一人でできないお嬢様は生きていけないですからね」
「カケルぅぅう」
まったく、我が主は泣き虫だな。
「元いた世界の俺の国では、カレンお嬢様のような方を援助するパパ活なるものがあります」
ま、実際は食事するだけや近況報告するだけってのが項目だけど、俺が今やっていることは主に犯罪臭のする行為ばかりだろう。
「パパ活……そんなことをして楽しいのか?」
「ええ、楽しいです、カレンお嬢様はお可愛らしいので」
「……」
顔を真っ赤に染める彼女も前までは想像もつかなかった。
いつもツンとした態度で俺と距離を取っていたから。もしかして、これがデレというやつなのかもしれない。
「カケル、トイレ」
ん~いいムードが台無し。
「はいはい、行きましょう行きましょう」
そうしてトイレに連れて行くと、この日は布に赤い下り物がついていた。
それは生理という奴で、この世界ではタンポン家はあっても、生理用品は無い。
「……あれですね、今日は天気がいいようですよ」
「……らしいな」
「一緒に買い物にでも行きますか?」
「……行かない、体が重くて動きたくない」
「なら、寝ていますか?」
「そうする」
そうして、彼女はベットに入る。
その姿まるで猫の如し!
なんてふざけているけど、本当に辛そうで、見ていて苦しい、変わってあげられるなら変わってあげたい。
そういえば、彼女が辛そうにしているのを初めて見る気がする。
屋敷にいた時は、いつだって令嬢を振舞っていたのかもしれない。
「お昼、何がいいですか?」
「……バニラアイス」
「……それはデザートですね」
苦笑いする俺は、彼女が喜びそうな、そう、流しそうめん的なアクションのいる食べ物を考えた。
そうめんは無理、色々と材料や手間で時間がかかる。なら、チーズフォンデュはどうだろうか。うん、それなら意外とできるかもしれない。
そうしてチーズを買ったり、野菜を買ったりパンを買ったり、準備を終えるとお嬢様に声をかける。
「お昼の支度ができましたよ」
「うん」
そう言って出てくる彼女の手を取って、エスコートするのももう何度目だろうか。
そんな気持ちに耽っていると、彼女は融けたチーズを見て言う。
「なに、このゲロみたいなやつは」
「融けたチーズですけど!」
「融けたチーズ……で、どうするの」
「これはチーズフォンデュと申しまして、こうして串に野菜等を刺しまして、チーズを絡めて食すのです」
「また、妙な食べ物を考えたのねカケル」
そう言いつつ、食べようとするお嬢様に、「お熱いですので、ふーふーしてお召し上がりください」というと、彼女は愛らしくそうした。
「ふーふー」
はい!可愛い!
「はむ……!……これは、美味ね!」
そうして満面の笑みを見られただけで俺は幸せになれる。料理って本当にいいものですね。
その後もちろん、彼女はお礼に俺に言う。
「あ、ありがと、ニャン」
まだ恥ずかしさからテレている様子がまた、もう何とも言えないですな。
そんな事をしているうちに夕食を向かえて、そしてお風呂の時間となる。
お風呂は屋敷でもここでも湯浴みで、ま、水が貴重でもあるため、湯舟何て贅沢なものは使ってられない。
「う~」
「ほら、脇あげてください」
「う~」
「ほら、お股触れますよ」
「う~」
彼女はお風呂ではいつも唸っている。
それが恥ずかしいからだとは分かっているけど、父君の教育で自分で洗濯掃除は勿論、体を洗うことすら禁止されているからだ。
最初それを聞いた時は、常軌を逸していると思ったけど、今でもそう思うけど、慣れれば作業としては介護と何ら変わりない。
最初はよく、暗示の様に俺はホームヘルパーだ!と拳を握って作業に没頭していた。
まるで何か見えないものに束縛されているような、そんな彼女の人生は、酷く歪で、でも、その心だけみれば、男にとってこれほど無垢なものは無いと思えるほどに素直だった。
「入口拭きますね」
「優しくよ、最近血だって出てるから」
そんな話もこんな行為も、普通の常識ではあり得ないと言える。でも、彼女は当たり前に他人にそれをさせ、自分では一度たりともしたことがない。
「……お嬢様、自分で洗いたいと思ったことはありますか?」
「……無いと言えば嘘になるけど、今はもうこれが当たり前だから、でも、ミカエルにしなくてよかったとは思うの」
「?それはどういう意味ですか?」
「メイドたちがどんどん辞めて、仕方なく男の人でもと言った時、真っ先に候補に挙がったのは彼で、でも……怖かったから、目が、怖かったから、だから、勝手に、あなたを雇って」
「……初耳ですね」
そして、その違和感は俺の頭の思考の中に、歪んだ歯車として、異音を響かせながら回り出した。
「ミカエルさん自身が立候補したんですか?」
「そうよ、メイドを解雇したのも彼で、小さい頃から時々、メイドに付き添って、私のトイレや入浴にも立ち会ってたけど……その視線が気持ち悪くて、禁止していたのよ」
「……そうですか」
分かりたくない、この世界に来て、最初は戸惑うことも多くて、慣れてしまうのに慣れてしまっていた俺は、彼女が抱えている現状に至った経緯、その背景が何となくだけど想像できてしまっていた。
「……ラノベの読み過ぎだ」
「なに?ラノベって何の話?」
「いいえ、別に、そうだ姫様、お友だちのミレイユ様やマリリン様とは、トイレの話やお風呂の話をしたことはございますか?」
「そんな話するわけないでしょ、お友だちにトイレはどうしてるの?誰がお世話してるの?何て普通聞かないわ」
そう、普通聞かない。聞くわけがない。
「……現実は想像よりも気持ちの悪いものである、何てラノベの主人公が言ってた気がする」
「そうだ、カケル」
「はい」
「ありがと、ニャン、ニャン」
や、ヤバイ、何か、旨が痛い、めっちゃ可愛い、でも痛い。
「とても可愛いですよ、お嬢様」
「私、イヤじゃなくなってきたの、カケル本当に嬉しそうだから」
あー神よ、罰するなら俺を罰してくれ、そして、彼女がこの先、不幸になることはないようにしてほしい。
「お嬢様」
「なに?」
「この身に誓って、お嬢様を幸せに養って差し上げますよ」
「本当に?途中で捨てたりしたら、許さないんだから」
この愚か者の命にかけて、決して裏切らず、見限ることもしません。
「お休みなさいお嬢様」
「お休み、カケル」
お嬢様は、俺の上でのんびりと眠りにつく。
対して俺は、一切眠ることができないまま、お嬢様が動く度に心臓がドキドキして中々寝付けなかった。
「で、結局寝れないまま朝を迎えたわけさ」
でも、全然かまわない、むしろ、望むところだ。
さて、この可愛い生物のために、今日も一日始めますか!
「……でももうちょっとだけ、こうしていたいな」
数分間だけ少女の重みと感触と香りを堪能した俺は、颯爽と朝の朝食の準備を済ませると、お嬢様を起こしに向かう。
「朝ですよ、起きてください」
「……もう少し、もう少しだけだから……」
そういう彼女の服を無理矢理に……いやいや、語弊が生まれるな、そう、同意の上で着せ替えていく……むしろ犯罪臭が増した気がするが、気のせいだと思いたい。
何度着せ替えても、やっぱりニーソが欲しい。
「クソ!こうなったら!」
むしろ作ってしまえ。
スキルはポイント制で、料理や家事をする度に経験値とそのポイントが貯まっている。
それを裁縫やら製作やらに費やせばきっと!
俺は、そのスキルをステータスプレートと呼ばれるもので取得した。
ステータスプレートは、この世界に転生した時にこの街のギルドで無料で配布されたものであり、誰もが一枚は手にしているもの。ちなみに、再発行には銀貨10枚、1万ほどかかる。
そうして得たスキルのおかげで、俺は脳裏にニーソを完成させていた。
「よし!早速材料を揃えよう!」
ニーソ、ニーソ、ニーソ。
「待てよ、白色か、黒色か、俺は、どっちを選んだらいいんだ!」
むしろ両方だ!
細かい繊維を編むために、俺は編むための専用の器具を作らなくてはならない。
「金貨1枚だよ」
「金貨5枚だね」
「それなら特注だからな、金貨13枚は必要かな」
計190万、ふふふ、日当10万の俺に隙は無い!
全て購入して荷車を借りてホームへと運ぶ。
「ただいま」
「もう、どこに行ってたの、トイレ!トイレ!」
はいはい、仰せのままに。
今日もお嬢様のトイレは小で、大はもちろん毎日出してはいるけど、そのウサギのような大を見るのは、お昼から夕方のいつかだ。
トイレ後、寝室にお嬢様を置き去り、トイレで使用した布をさっそく洗濯して、それが終わると、俺はアルコール消毒と、入念な水洗いで手を清潔にする。
ちなみにお嬢様は何をしても汚くないです、いや本当に。
そして、俺はニーソを作るための作業場を、使い余していた地下室に設置し出すと、お嬢様が興味津々で作業を覗きに来た。
「なになに、何を作るのかしら?」
「見ててください、お嬢様の可愛さが更に増すものを作ってみせますよ!」
俺がそう言うと、お嬢様は待ち遠しそうに見ていた。
数時間、完成にはそれだけの時間を要した。いや、スキルってすごいね。
「これ何?」
「これは足に穿くニーソックスというものです!こっちはガーダーベルトです!」
ニーソは完成したけど、落ちないようにするための方法がガーダーベルトしか思いつかなかったため、急遽それを作ったけど、金具部分を自作するのに、鍛冶スキルを取得する必要があったのは誤算だった。
「へ~で、早く」
ま、俺が着せますよね、もちろん。
そうして穿かせたニーソは、とても満足のいくものでした。
「うむ、完璧な絶対領域、どうですかカレンお嬢様」
「うん、なんか暖かくていいわね、それに肌触りがとてもいいわ」
できればずっとミニスカートを穿かせておきたいけど、彼女は外ではその短さ故に穿いてはくれない。
彼女が普段穿いているスカートは、膝下まで隠れる長さで、セーラー服なだけに一歩間違えば昭和臭がする。
でもホームでは、ちゃんと短いのを穿いてくれる彼女はマジで優しい。ま、スカートが短くても恥ずかしいと思ってないだけだろう。つまり、俺だけ特別視されているということ!もしくは、興味が無いのかもしれない。
「カケル……ありがと、ニャン」
その足を内股にして言うのは反則ですよ!お嬢様!
かなりお嬢様との仲が近寄った。そんな出来事の後、まさかお嬢様がそんな事を言うとは、俺は思いもしていなかった。
「カケル、私、貴族として返り咲きたいの」
「……というと?」
「私に投資してくれない?」
彼女も彼女なりに将来を考えていたんだと、その時ハッキリ理解した。
でも、こんな純粋な子を貴族社会に戻すのはちょっと嫌だな。
「何を考えてます?まず、ビジョンを教えてください」
「カケルの資金でまず」
「まず?」
「ドレイを買いましょう!」
ファー!
「そのドレイを使って財務官を暗殺するの!」
ファー!
「そうすれば、お父様も財産も元通りよ!」
アウト!完全にアウト!
「却下します」
「えぇ!何で~」
まったく、どこの悪徳貴族ですか!
「お嬢様は俺のペットがお似合いです」
「う~バカにしてるでしょ」
してます、てかバカです。
そうして、お嬢様の無謀な野望は事前に防ぐことができた。
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