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カタストロフィ編
39話 二度目の転移。
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ドキドキと幸福感と罪悪感が合わさって、私は今主に……主にぃぃぃいいい!胸を揉まれてます!
柚夏奈さんがいないのをいい事に、主に大きくなった胸を見せて色仕掛けをしているんです!
主の手が!私のを~至福……幸せ過ぎる……あぁ太一さん。
「嘘……だろ!」
その時私は目を閉じていて主の声にゆっくり目を開けた。目を開けるとそこには数百人規模の人が周囲を囲む魔法陣の中央だった。
戸惑う主と私は、近寄ってくる女の人に警戒して、周囲の視線は興味でしかなかったけどその女の人が主に向かって話しかけると事態は一変する。
「平伏せよ!我がしもべたる眷属よ!」
首輪のようなものが主の首に現れそうになるも、それは弾けて粉々になってしまう。
「そんな!この騎士!隷属できません!」
そこからは主に対する攻撃が始まって、ただただ主は私を抱き締めたまま周囲を警戒し観察していた。
ローブ姿の女の人たちが杖を振るうと火や水や風の魔法が放たれ掻き消える。騎士風の男たちが主を攻撃しようと剣を振ると、主のアビリティで勝手に自滅していった。
困惑する私に、「大丈夫だから落ち着いて」と言う主は私の服を正してギュッと抱きしめてくれた。
「にぃぃいいわぁぁああ!」
その声は男の人の声だった。
主に抱き締められている私には顔も姿も確認することはできなかったけど、その男の手が握り拳を作って主に殴りかかる光景を見上げていた。
当たるはずがない、いつものように主のアビリティでその攻撃は効かない。そんな考えは、主の顔が拳でグニャリと変化すると間違いだったと理解させられた。
「ぐっ」
「にぃいわ!」
男は主に跨ってひたすら顔を殴り続けた。
止めて……お願いします、止めてください。
「ヤメテェェェエ!」
「アオ!命令よ!止まりなさい!」
「っく!」
男は命令された途端に拳を止めた。でも、ゆっくりとその拳をもう一度振り降ろそうとしているようで、命令した女の人の声が再び男へと命令する。
「平伏しなさい!アオ!」
「ぐはっ」
命令された男は地に顔を擦り付け、そのまま身動き取れなくなった。
「太一さん……」
私が主に近づこうとすると女の人はそれを止めて言う。
「止めておきなさいドワーフ……あなたが今するべきことは抵抗せず待つことよ」
「……太一さん!」
私はその人の言葉を無視して主の傍へ近寄り、傷付いた彼を守るように横で周囲を見る。
己の魔法で傷つきいたローブ姿の女の人たちや、己の剣を振るい傷ついた男たちが私たちを睨み付けてくる。
悪いのは呼び出して攻撃したのはあなたたちなのに、主も私も悪くないのに……どうして。
理不尽なことばかりに怒りが込み上げてくる。許さない、主を傷つける人たちを許さない。でも、私には主を守る力なんてなくて、ただただその後も成り行きに従うしかなかった。
「ドワーフを連れた騎士なんて初めて見ましたね」
「な、何なんですか!あなたたちは!」
「我々はカサトルシュ王立魔法学院召喚士候補生です。私の名前はエレオノーラ・フォン・アシュタットですわ」
聞き覚えの無いことばかりで不安しかないのに希望を失わずにいられたのは、主が傍にいたからで。
「私は……ペノー、こ、この方の専属鍛冶師です」
「よろしくペノー、で、その方は一体どこの騎士です?アルベーヌかしら?それともヘンベルト方面でしょうか?」
私はユリアーナメフィ女王が口にしていた太一さんの肩書を口にした。
「彼は羽生太一様、サダーラン聖法王国付き名誉騎士であり、ドラゴンスレイヤーと称された冒険者で、智将の魔王と称されたエミナリスを倒した勇者に勝利した方です!」
最後の部分は事実を言っているだけで公ではないのであまり意味はないけど、サダーラン聖法王国と言われれば分かるでしょう。
「サダーラン聖法王国……知らない国ですね」
「え……」
「ですが、智将の魔王の事は存じております、エミナリスは直近で倒された魔王であり、我々の身近な魔王とは因縁もあるとか」
私はその事実を知って驚愕を隠せなかった。
「ここはエミナリスのいた地より更に北、最果てとも接する地であり、魔王ルミアリス、武将の魔王と称されるかの魔王のいる地と隣接している地よ」
「……そんな、じゃあここは――」
世界で最も過酷な地、テンビベレウスの口先!
かつていたカタストロフィ、テンビベレウスは世界の半分に横たわる巨大蛇で、その口先は焦土と化していたとされることからこの魔王と最果てと闇とが重なる地をそう称した。
そして、私はそのエレオノーラさんに連れられ、主は複数の騎士風の男に運ばれて建物の中へと移動した。
ローブ姿のエレオノーラさんと同じような服装の女の人、そして中でも老婆と呼べる老いた方が待っている部屋に連れて行かれた私は、そこで色々と取り調べを受けることになった。
私は懇切丁寧に説明して、何度も聞き返す女の人たちに同じことを何度も説明し続けた。
「はぁ……つまりはあなたたちのせいで、悪辣な勇者から国やその仲間の英雄や姫を守り、悪人を善人に変え国々を救済したかの国の英雄をあのような非道な行いで傷つけたという事なのではなくて、エレオノーラ・フォン・アシュタット」
「で、ですが学院長、最初に手を出したのはかの騎士です」
「それはここにいるペノーさんの話を聞いて誤解だと分かったはずですよエレオノーラ。彼は召喚されてただそこにいただけ、彼の攻撃から身を守る装備にあなたたちが攻撃をしたのでしょう?最初の契約付与をごり押したことがそもそもの間違いです」
「あれはミリアーナが……」
ミリアーナ・ベン・ノン・クラエルス、黒髪の彼女がそもそも主を召喚した女だ。
「私はただ隷属できなかったと事実を申しただけ、勝手にポンポンと魔法を放ったのは他の魔術師たちですわ」
「けれど!あなたも派手に魔法を使っていたじゃない!」
「いいえ、私は私の騎士になるお方にずっと隷属の魔法を付与しようとしていただけですわ」
「……静粛に」
老婆としか言えない議長らしき女の人がそう言うと、エレオノーラさんもミリアーナも口を閉じてしまう。
「ペノーさん、あなたのご主人様はどれほど寛容でしょうか……この度の無礼の数々、お怒りは相当のもの」
「……太一さんは私のご主人様ではありません、主と称するのは将来の夫として(これは便乗ではないのです主!ただ事実を!)」
「そ、そうですか、それで彼はお怒りになるでしょうか?」
「……怒ったりしないと思います、太一さんはこれまで一度たりとも自分から暴力をふったことがありません。あ!そう言えば勇者を素手で殴ったことはあります、でもそれは勇者が女性に非道を行った結果です、主は悪くありません」
「……勇者を殴り飛ばす者などまるで“フジミアオ”ですね」
そう言えば、アオという名は度々この場で口にされていた。太一さんを殴った男の名前だけど、太一さんを傷つけた初めての存在だ。
「彼も高位騎士を殴ってしまったことがあり、今回かの騎士を殴った者でもありますが、エレオノーラ……フジミアオからは何か聞きましたか?」
「はい、その前に訂正しておきます、彼の名前はフジミではなくフシミです、フシミアオそれが私の騎士の名です」
「フシミ……フシミ、分かりました言い辛いですが覚えるよう努力しましょう」
「フシミアオ、彼とペノーさんの主は同じ世界出身で、同じタイミングでこちらへ召喚させられたようです。そして、別れた二人はこの地にて再会しましたが、フシミはペノーさんの主を恨んでいるようです。聞いた私の意見ではありますが、フシミアオ自身の責任であると思えます」
「そうですか……ますます申し訳ないことをしてしまいましたね。……こういたしましょう、エレオノーラ、あなたの全てをかの御仁に捧げ許しをこいましょう。フシミアオはミリアーナへ譲渡することで彼の行く当てもできるでしょう」
「……それが妥当ですね、アシュタット家の息女としてはかの御仁に身を捧ぐことで手打ちが妥当だと考えます」
妥当なわけがないです!いらんおせっかいです!柚夏奈さんに全裸にしてもらいますよ!
「それでは――」
「冗談じゃありませんわ!フシミアオなんていりませんの!私があの騎士へ身を捧げることでも構わないのではありませんこと?!」
某国の騎士に身を捧げる私……何という健気!何という悲劇の主人公!
ミリアーナさんがそんなことを考えていることなど、私以外の女の人には筒抜けだった。
エレオノーラさんは溜息を吐くと、「学院長、事実確認をしてみてはどうです?」と老婆……うん老婆に視線を向けた。
「まずエレオノーラは次女であること、まだ婚約していないこと、本人も拒否していないことが今回適任と思われます。対してミリアーナは長女であり婚約者もあり、何よりお父上様が反対なされること間違いなし……」
「決定ですかね」
「ですね」
「異議なし」
異議ありありですが!主に謝罪を申すのであれば!主が欲しているゲィムとやらを用意するべきでは!この世界にはないですが。
「あの……ところで主はどこにいるんでしょうか……」
「彼は今治療しているところです、筆頭魔法師であるメイルランフェス・べ・ダリアンマイステル、彼女が治療に当たっているのでしっかり完治するでしょう。そう言えば、問題として報告がきていたので治療のため了承しているのですが、彼の騎士服やアイテムを全て外しているそうです」
「な!つまり裸ってことですか!裸ってことですね!ダメです!主には柚夏奈さんという人がいるのです!そんなどこの馬の骨かも分からない女に任せられません!」
「ユカナサンとは?……心配はいらないでしょう、彼女メイルランフェスは男に興味を持ったことはありません、二年前に元婚約者に性転換魔法を使い女の子にしてしまったくらいです……あるとすれば彼が彼女に変わることくらいでしょうか」
「もっとダメでしょう!」
こうしてはいられない!今すぐ主のところへ行かなければ!
その時、会議室の扉を勢いよく開けて入ってくるローブ姿の女の人が叫んだ。
「大変です!召喚用の魔法陣から数名の侵入者が現れて暴れています!」
「なんですって!逆召喚!いや!転移でしょうか、そんな高等技術を行使する者がこの学院に!」
「転移してきた者の中で、ぜ、全裸の女が自身を最悪の使徒メキドナリマエステルと名乗っているんです!」
「ば、メキドナリマエステル!あのカタストロフィで最も死を世界にまき散らした化け物がこの学院の魔法陣に転移!あばばばば……」
老婆はそのまま腰を抜かして倒れてしまうと、エレオノーラが足を震わせながら立ち上がる。
「ミ、ミリアーナ、あなたは学院長を連れて一年生とともに退避しなさい、できるだけ東に逃げるとよいでしょう」
「エエエエレオノーラこそ!学院長を連れて退避なさい!私が殿を務めてみせますわ!」
今にも腰が抜けそうな二人に私はようやくその事実を口にできた。
「あの~その最悪の使徒さんは私の仲間?いや家族かな?それで、主のペットなのですが……私が話し合いに向かいましょうか?」
「……マジですの!」
「最悪の使徒がペットなどありえるわけが!」
色々とその場では言われたけど、実際に向かえば分かるとだろうと私はエンドちゃんのもとへと向かうことにした。
柚夏奈さんがいないのをいい事に、主に大きくなった胸を見せて色仕掛けをしているんです!
主の手が!私のを~至福……幸せ過ぎる……あぁ太一さん。
「嘘……だろ!」
その時私は目を閉じていて主の声にゆっくり目を開けた。目を開けるとそこには数百人規模の人が周囲を囲む魔法陣の中央だった。
戸惑う主と私は、近寄ってくる女の人に警戒して、周囲の視線は興味でしかなかったけどその女の人が主に向かって話しかけると事態は一変する。
「平伏せよ!我がしもべたる眷属よ!」
首輪のようなものが主の首に現れそうになるも、それは弾けて粉々になってしまう。
「そんな!この騎士!隷属できません!」
そこからは主に対する攻撃が始まって、ただただ主は私を抱き締めたまま周囲を警戒し観察していた。
ローブ姿の女の人たちが杖を振るうと火や水や風の魔法が放たれ掻き消える。騎士風の男たちが主を攻撃しようと剣を振ると、主のアビリティで勝手に自滅していった。
困惑する私に、「大丈夫だから落ち着いて」と言う主は私の服を正してギュッと抱きしめてくれた。
「にぃぃいいわぁぁああ!」
その声は男の人の声だった。
主に抱き締められている私には顔も姿も確認することはできなかったけど、その男の手が握り拳を作って主に殴りかかる光景を見上げていた。
当たるはずがない、いつものように主のアビリティでその攻撃は効かない。そんな考えは、主の顔が拳でグニャリと変化すると間違いだったと理解させられた。
「ぐっ」
「にぃいわ!」
男は主に跨ってひたすら顔を殴り続けた。
止めて……お願いします、止めてください。
「ヤメテェェェエ!」
「アオ!命令よ!止まりなさい!」
「っく!」
男は命令された途端に拳を止めた。でも、ゆっくりとその拳をもう一度振り降ろそうとしているようで、命令した女の人の声が再び男へと命令する。
「平伏しなさい!アオ!」
「ぐはっ」
命令された男は地に顔を擦り付け、そのまま身動き取れなくなった。
「太一さん……」
私が主に近づこうとすると女の人はそれを止めて言う。
「止めておきなさいドワーフ……あなたが今するべきことは抵抗せず待つことよ」
「……太一さん!」
私はその人の言葉を無視して主の傍へ近寄り、傷付いた彼を守るように横で周囲を見る。
己の魔法で傷つきいたローブ姿の女の人たちや、己の剣を振るい傷ついた男たちが私たちを睨み付けてくる。
悪いのは呼び出して攻撃したのはあなたたちなのに、主も私も悪くないのに……どうして。
理不尽なことばかりに怒りが込み上げてくる。許さない、主を傷つける人たちを許さない。でも、私には主を守る力なんてなくて、ただただその後も成り行きに従うしかなかった。
「ドワーフを連れた騎士なんて初めて見ましたね」
「な、何なんですか!あなたたちは!」
「我々はカサトルシュ王立魔法学院召喚士候補生です。私の名前はエレオノーラ・フォン・アシュタットですわ」
聞き覚えの無いことばかりで不安しかないのに希望を失わずにいられたのは、主が傍にいたからで。
「私は……ペノー、こ、この方の専属鍛冶師です」
「よろしくペノー、で、その方は一体どこの騎士です?アルベーヌかしら?それともヘンベルト方面でしょうか?」
私はユリアーナメフィ女王が口にしていた太一さんの肩書を口にした。
「彼は羽生太一様、サダーラン聖法王国付き名誉騎士であり、ドラゴンスレイヤーと称された冒険者で、智将の魔王と称されたエミナリスを倒した勇者に勝利した方です!」
最後の部分は事実を言っているだけで公ではないのであまり意味はないけど、サダーラン聖法王国と言われれば分かるでしょう。
「サダーラン聖法王国……知らない国ですね」
「え……」
「ですが、智将の魔王の事は存じております、エミナリスは直近で倒された魔王であり、我々の身近な魔王とは因縁もあるとか」
私はその事実を知って驚愕を隠せなかった。
「ここはエミナリスのいた地より更に北、最果てとも接する地であり、魔王ルミアリス、武将の魔王と称されるかの魔王のいる地と隣接している地よ」
「……そんな、じゃあここは――」
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かつていたカタストロフィ、テンビベレウスは世界の半分に横たわる巨大蛇で、その口先は焦土と化していたとされることからこの魔王と最果てと闇とが重なる地をそう称した。
そして、私はそのエレオノーラさんに連れられ、主は複数の騎士風の男に運ばれて建物の中へと移動した。
ローブ姿のエレオノーラさんと同じような服装の女の人、そして中でも老婆と呼べる老いた方が待っている部屋に連れて行かれた私は、そこで色々と取り調べを受けることになった。
私は懇切丁寧に説明して、何度も聞き返す女の人たちに同じことを何度も説明し続けた。
「はぁ……つまりはあなたたちのせいで、悪辣な勇者から国やその仲間の英雄や姫を守り、悪人を善人に変え国々を救済したかの国の英雄をあのような非道な行いで傷つけたという事なのではなくて、エレオノーラ・フォン・アシュタット」
「で、ですが学院長、最初に手を出したのはかの騎士です」
「それはここにいるペノーさんの話を聞いて誤解だと分かったはずですよエレオノーラ。彼は召喚されてただそこにいただけ、彼の攻撃から身を守る装備にあなたたちが攻撃をしたのでしょう?最初の契約付与をごり押したことがそもそもの間違いです」
「あれはミリアーナが……」
ミリアーナ・ベン・ノン・クラエルス、黒髪の彼女がそもそも主を召喚した女だ。
「私はただ隷属できなかったと事実を申しただけ、勝手にポンポンと魔法を放ったのは他の魔術師たちですわ」
「けれど!あなたも派手に魔法を使っていたじゃない!」
「いいえ、私は私の騎士になるお方にずっと隷属の魔法を付与しようとしていただけですわ」
「……静粛に」
老婆としか言えない議長らしき女の人がそう言うと、エレオノーラさんもミリアーナも口を閉じてしまう。
「ペノーさん、あなたのご主人様はどれほど寛容でしょうか……この度の無礼の数々、お怒りは相当のもの」
「……太一さんは私のご主人様ではありません、主と称するのは将来の夫として(これは便乗ではないのです主!ただ事実を!)」
「そ、そうですか、それで彼はお怒りになるでしょうか?」
「……怒ったりしないと思います、太一さんはこれまで一度たりとも自分から暴力をふったことがありません。あ!そう言えば勇者を素手で殴ったことはあります、でもそれは勇者が女性に非道を行った結果です、主は悪くありません」
「……勇者を殴り飛ばす者などまるで“フジミアオ”ですね」
そう言えば、アオという名は度々この場で口にされていた。太一さんを殴った男の名前だけど、太一さんを傷つけた初めての存在だ。
「彼も高位騎士を殴ってしまったことがあり、今回かの騎士を殴った者でもありますが、エレオノーラ……フジミアオからは何か聞きましたか?」
「はい、その前に訂正しておきます、彼の名前はフジミではなくフシミです、フシミアオそれが私の騎士の名です」
「フシミ……フシミ、分かりました言い辛いですが覚えるよう努力しましょう」
「フシミアオ、彼とペノーさんの主は同じ世界出身で、同じタイミングでこちらへ召喚させられたようです。そして、別れた二人はこの地にて再会しましたが、フシミはペノーさんの主を恨んでいるようです。聞いた私の意見ではありますが、フシミアオ自身の責任であると思えます」
「そうですか……ますます申し訳ないことをしてしまいましたね。……こういたしましょう、エレオノーラ、あなたの全てをかの御仁に捧げ許しをこいましょう。フシミアオはミリアーナへ譲渡することで彼の行く当てもできるでしょう」
「……それが妥当ですね、アシュタット家の息女としてはかの御仁に身を捧ぐことで手打ちが妥当だと考えます」
妥当なわけがないです!いらんおせっかいです!柚夏奈さんに全裸にしてもらいますよ!
「それでは――」
「冗談じゃありませんわ!フシミアオなんていりませんの!私があの騎士へ身を捧げることでも構わないのではありませんこと?!」
某国の騎士に身を捧げる私……何という健気!何という悲劇の主人公!
ミリアーナさんがそんなことを考えていることなど、私以外の女の人には筒抜けだった。
エレオノーラさんは溜息を吐くと、「学院長、事実確認をしてみてはどうです?」と老婆……うん老婆に視線を向けた。
「まずエレオノーラは次女であること、まだ婚約していないこと、本人も拒否していないことが今回適任と思われます。対してミリアーナは長女であり婚約者もあり、何よりお父上様が反対なされること間違いなし……」
「決定ですかね」
「ですね」
「異議なし」
異議ありありですが!主に謝罪を申すのであれば!主が欲しているゲィムとやらを用意するべきでは!この世界にはないですが。
「あの……ところで主はどこにいるんでしょうか……」
「彼は今治療しているところです、筆頭魔法師であるメイルランフェス・べ・ダリアンマイステル、彼女が治療に当たっているのでしっかり完治するでしょう。そう言えば、問題として報告がきていたので治療のため了承しているのですが、彼の騎士服やアイテムを全て外しているそうです」
「な!つまり裸ってことですか!裸ってことですね!ダメです!主には柚夏奈さんという人がいるのです!そんなどこの馬の骨かも分からない女に任せられません!」
「ユカナサンとは?……心配はいらないでしょう、彼女メイルランフェスは男に興味を持ったことはありません、二年前に元婚約者に性転換魔法を使い女の子にしてしまったくらいです……あるとすれば彼が彼女に変わることくらいでしょうか」
「もっとダメでしょう!」
こうしてはいられない!今すぐ主のところへ行かなければ!
その時、会議室の扉を勢いよく開けて入ってくるローブ姿の女の人が叫んだ。
「大変です!召喚用の魔法陣から数名の侵入者が現れて暴れています!」
「なんですって!逆召喚!いや!転移でしょうか、そんな高等技術を行使する者がこの学院に!」
「転移してきた者の中で、ぜ、全裸の女が自身を最悪の使徒メキドナリマエステルと名乗っているんです!」
「ば、メキドナリマエステル!あのカタストロフィで最も死を世界にまき散らした化け物がこの学院の魔法陣に転移!あばばばば……」
老婆はそのまま腰を抜かして倒れてしまうと、エレオノーラが足を震わせながら立ち上がる。
「ミ、ミリアーナ、あなたは学院長を連れて一年生とともに退避しなさい、できるだけ東に逃げるとよいでしょう」
「エエエエレオノーラこそ!学院長を連れて退避なさい!私が殿を務めてみせますわ!」
今にも腰が抜けそうな二人に私はようやくその事実を口にできた。
「あの~その最悪の使徒さんは私の仲間?いや家族かな?それで、主のペットなのですが……私が話し合いに向かいましょうか?」
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