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26話 ロリドワーフは怒り、半端エルフは勘違いし、ハーフエルドは甘える。
しおりを挟む太一さんが帰ってきました、女を二人連れて……正確には柚夏奈さんもいるから三人か……、なんですか!何なんですか!!帰るって言ってたからまた会えたのは嬉しいですけど!
「お嫁さんを増やして帰って来るなんて!酷いです!あんまりです!」
憤慨する私を見て彼は苦笑いを浮かべる。
「ペノーこの二人はさっきも言ったけど、ただの同郷の学友でね」
「でも、この前四人で一緒に寝たよね?」
「あの時の柚夏奈ちゃんの顔、正直怖かったわ」
「だって!市宮さんはともかく、新野さんは大きくなった胸を太一くんに何度も押し当ててたじゃない!」
やっぱり胸ですか!三人とも大きいですもんね!
実際にはミユさんの胸は小さかったらしいですけど、太一さんの力で大きくなったとか……って!やっぱり大きい方がいいんじゃないですか!
「ペノーちゃんだっけ?太一くんのこと好きなんだね、この食器の模様太一くんリスペクト入り過ぎだし」
「大好きです!主は私にとって神にも等しい人なんです!柚夏奈さん以外はエッチなことしないでください!」
「カワイイね~お嬢ちゃん名前なんて言うの?シロたん?え?太一くんに名前付けてもらったの~」
「……シロ、ミイカ怖い……」
ガクブルなシロの言う通り、ミイカさんは要注意人物です!笑顔で次々に話を変えて!おっぱいも大きいし!何か主も好きそうだし!柚夏奈さんも許してる感じがするし!
「いいんですか?柚夏奈さん!」
「んん?何が?」
久しぶりの楽しい主との食後に柚夏奈さんにそれとなく話を聞いてみた。
結果、二人も主に助けられて惚れているのだとか!……何なんですか!主!カッコイイ!私も勇者をぶっ飛ばす主を見たかったですよ!
「って!そ、そこ!何してるんですか!」
「何って……太一くんとハグ?」
ななんなななんあなんぁな!うらやまけしからん!
「おんどれ!そこは柚夏奈さんと私の席ですよ!」
「お~怒ってる……ロリッ娘が怒ってる!」
「あ~もう!柚夏奈さん!あの人いいんですか?!柚夏奈さん!」
食器を洗い続ける柚夏奈さんは私の言葉に笑顔で頷く。
「あの人は私たちの世界の人だから、常識があるんだよ。ペノーちゃんやパーフちゃんやシロちゃんよりずっとまともだから」
「ま、まともなんでしょうか……」
「例えば、この先元の世界へ帰ってもあの二人は太一くんから自然に離れていくわ、残るのは私だけなの、こういうの分からないでしょ?ペノーちゃん」
分からんです、私は柚夏奈さんのいう話が理解できない……これが柚夏奈さんの言う“常識”なんだろうけど。
「それでも主は……」
「どうした?ペノー」
「主……私はダメなのにどうしてミイカさんとミユさんはいいんですか?女なのに、女の子なのに」
本当は聞きたくなかった、主の口から本当の理由を聞きたくなかった。
「俺は普通の人間じゃない、異世界から来た人間だからいつかは元の世界へ帰る、だからペノーとは友だち以上にはなれない」
ズルい、ズルい、ズルい、ズルい!
「こんなにも主のことを……太一さんのことを好きなのに!どうして私はダメなんですか!」
「……だから言っているだろ、キミだからダメなんじゃない、むしろ俺だからダメなんだよ」
「……ズルいです、私だって太一さんに助けられて……こんなにも想っているのに」
「ありがとう、もしも、キミが大人になったらきっといい人が見つかるように祈っているから」
「……ドワーフの女の子は大人になっても小さいです……胸は確かに大きくなりますけど」
苦笑いする太一さんは、少し寂しそうに私の頭を撫でてくれた。そうだ、太一さんだって寂しいんだ。そう分かったら少しだけもう少しだけこうしていても。
「あ~ペノーだけズルいですです!」
「パーフはちょっとここで待ってなさい」
あっ感謝します柚夏奈さん!柚夏奈さんはさすが太一さんが選んだ女の人です!尊敬します!器量と度量が違います!
そうして私は、太一さんたちとの最後の時を楽しく過ごすことを誓った。
ペノーが太一に甘えている様子を見ていたパーフは思う。
こ、この家での私の地位がまたさらに落ちた気がする……主にあのミイちゃんとミユの二人のせいで。
いや、彼女の考え方は間違いであり、本当は太一や柚夏奈の中では市宮と新野の二人よりも地位は上だった。
しかし、扱いだけは相変わらずであるため本人が気づくはずもなかった。
「太一……考え直すつもりはないですです?」
「え?なにを?」
「ここにいる全員を妻として愛し子を成すことを!」
「……非常識だよ、そんなあり得ない事を言われても頷けないかな」
表情を引きつらせる彼にパーフはジ~とその表情を読み解く。
これは間違いなく脈あり!
そうして再び彼女は間違いだらけの行動をとることになる。
姫と勇者の結婚式当日、パーフは柚夏奈と美衣香と心優が乗る馬車に乗り三人にある提案をしていた。
「結婚式?私たちと太一くんが?」
「ですです!太一さんたちの世界では結婚は18歳からって聞いてますです!だから合法的にこちらの世界で一緒に“みんな”で結婚すればいいのですです!」
「……パーフ」
柚夏奈がその表情を俯かせてパーフににじり寄ると両肩を掴む。
「ゆゆゆ柚夏奈さん」
怯えるパーフは尻叩きが待っているに違いないと涙を浮かべる。
「良い考えね!ぜひそうするべきだわ!」
「へ?」
満面の笑みの柚夏奈は提案を全工程して美衣香と相談し出す。そんな彼女を見たパーフは予想外そうに内心困惑してしまう。
絶対反対されると思っていたのに……これはもしや、私と太一との仲を許してくれている証!
断じてそんなことはないのだが、彼女の知性はどうしても自身に都合の良いように考えてしまいがちで。
「じゃ!私も結婚してもいいですです?」
「いや、それはだめだよパーフ」
「え?」
「パーフはまだ1歳だから結婚はこっちの世界でもダメでしょ?」
「え、そんなことはないんですです」
「いいえ、ありますから」
こうして彼女の『全員一緒にお嫁さん計画』は失敗に終わった。
「どうしたシロ?」
「……タイチ、こんどはいついなくなる?」
「……ん~この結婚式が終わったらすぐになるかな」
「そっか……ざんねん、いっぱいあまえてもいい?」
「ああ、いいよ」
タイチはだいすき、でも、はなれるのはつらい……つらいよ。
シロの気持ちは彼を好きだからなのだが、それは柚夏奈へも同じくらいの想いがあり、恋愛とはまた別の好きである。
「タイチ、シロこんどがっこうに行く」
「学校って例の亜人の学校かい?」
「うん」
「それはいいことだね、俺もお兄ちゃんとして見守って……おっと……これは」
「タイチ?」
無垢なシロにはさすがの太一も残していく罪悪感が大きいようで。
ついついシロをギュッと抱きしめてしまう。
「あ~!ズルいです!私も主にギュッしてほしいです!」
「だってさ、タイチ」
「はは、いいぞ~ギュッしてやる!」
悪ノリするパーフがいないと太一はペノーとシロに甘々な態度で、いつも傍にいる柚夏奈もいないからかペノーが幸せ過ぎて笑い方が変になってしまっていた。
「ほらほらギュ~」
「のほほのほのほほほほ」
「シロ~も~」
「よしよしよし」
「う~ふ~タイチ~」
そんなこととは知らずパーフは柚夏奈にお尻を叩かれてしまう発言をしてしまい、それほど痛くないのに大袈裟に泣いて太一の気を引こうとするも、馬車間の距離の問題で彼女の嘘泣きは空しく響くだけだった。
そうして彼ら彼女らは、姫と勇者の結婚式に参加するために王都へと向かう。
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