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19話 そうして俺たちは終わりの始まりを知り、ドワーフと元ドレイは泣き、エルフも泣く(その尻の痛みに)。
しおりを挟む「ぱんつ、見たいの?」
「はい!」
「どうしても?」
「はい!」
そんなやり取りをしているのは柚夏奈とペノーで、俺は会話を聞く人が状況を理解していない場合犯罪臭がするのではと危惧するところである。
ま、柚夏奈の下着の作りを真似したいペノーが現物を見たがっているだけだけどね。
「はい」
って!脱ぎたて渡すのかよ!ってそもそも一枚しかないもんね!穿いてて当然だもんね!あ~びっくりした!って!ノーパンじゃないか!
「ゆ、柚夏奈さん?」
「何?太一くん」
「それ渡したら……下は穿いてないよね」
「……気になるの?」
いやいや、そこで照れながらじらすってどいうこと?なに?俺って何を試されているの?
「実は……ほら~ペノーの作ってくれた予備の下着を付けてま~す」
それを直接見せる柚夏奈さんマジ天然!そこに惚れる!射貫かれる!
「いま、俺の心臓に矢が刺さったよ」
「だ!大丈夫ですか?!主!」
「だ、大丈夫大丈夫、あれだよオーバーな表現ってやつだよ」
ペノーはまだ俺と柚夏奈の会話にいちいち全力なんだよな~、ま、そういう文化的なコミュニケーションって馴染むのに時間かかるよな。
「そういえば聞いた?太一くん」
「もしかして、シロが欲しいって言ってたアレの事かな?」
「違うよ、市宮さんと新野さんたち、魔王を退治したらしいよ」
「……勇者パーティーたちが……まじか……もう少し時間がかかるって思ってたのにな」
「あんまり驚かないんだね」
「うん、柚夏奈は知らないかもだけど、この世界には魔王がいっぱいいるんだよ。今回倒した魔王なんて、世間じゃ最も弱い魔王って言われているのなんだぜ?」
「そうなんだ」
この手の話は、王都にいる間に図書館の書物を読み漁った俺には当然頭にある知識だ。
「たしか……エミナリス、智将の魔王だった気がするよ今回やられたやつは」
「エミナリス?こっちの言葉で【溢れる知識】だったと思うけど」
へ~柚夏奈はこっちの言葉をわざわざ調べたんだ、俺はもう和訳されているものをもう一回こっちの言葉に訳し直して和訳するのが嫌だからしなかったけど。
そもそも、話す言葉文字が全て日本語になっている時点で便利なんだけど、ラノベとかだともう当たり前だから最初気にもしなかったな。
「エミナリス、ルミアリス、カルトデア、ザトラーダ、テウスマナ、パーチスケウ……その六魔王が現状の魔王だったかな」
「智将の魔王、武将の魔王、貪る魔王、這いずる魔王、天地の魔王、冥混の魔王だね」
「意味深な名前ばかりだけど、ようは通り名みたいなものらしいよ」
「冥混ってどういう意味だろうね、冥土と混沌ってことなら地獄みたいな意味かな?」
「いや、冥混は単なる迷っている魔王だよ」
「何に?」
「さぁ、何にだろうね」
それに関しては俺の知識にもない、というか書物に無かったと言うべきかもしれないけど。
「分からなくても別にいいのか……四人が帰ってきたら私たちも一緒に帰るんだし」
「え?主……帰るって」
「ん~そうだよな、もう話しておかないとだよな」
俺はここにいるペノーと部屋にいたシロとパーフを呼んで、俺と柚夏奈が元の世界へと遠からず帰ることになることを伝えた。
三人とも、もちろんそれを喜びはしない。
「どうして帰っちゃうんですか?」
「それは、元々こっちの世界の人間じゃないし、巻き込まれたわけで」
「タイチは私の事嫌いになったの」
「元々そんなに気を許した覚えはないけど、パーフに限ってだけど」
「シロのこと……きらい?」
「むしろ好きだよ、こんな白い統一感のある女の子は向こうにいないしね」
ムスっとした柚夏奈は、「シロの方が好きなんだ~」と言う。
「いやいや、柚夏奈と比べたらどんな女の子も俺の瞳には入らないぜ!(むしろその豊満な胸とド天然な行動にメロメロなんですけどね!)」
あえて言うなら、シロは動物的好きで柚夏奈は女の子として好き、ペノーは妹の様に好きで、パーフは観葉植物的な。
「今!私だけかなり低く見てますです!?」
「……」
サッと視線を逸らすのはズバリそうだからでしょう!
パーフの事は低く見ているわけではなく、ただ、今のところ彼女と何かあったわけでもないからであり。
「ペノーは互いに持ちつ持たれつだし、シロは助けた経緯があって、パーフとはほら……まだ何も無いしさ」
「何度も裸を見たじゃないですか」
「うん、まるで植物展か美術展に行った気持ちにさせられる裸体だよ」
「生物として何か致命的欠陥でもあるんですかです!?ユカナさん!あなたの裸を見せてくださいですです!私とどれだけの差があるのですです!」
あ、柚夏奈さんお怒りですね、分かってますよほらペノーとシロはこっち向いておこうね。
「きゃん!」
「発想が!全然!子どもじゃない!」
「イタイ!お尻が!腫れる!」
自業自得とペノーとシロは思いつつ、俺との会話に戻り悲しげな表情をする。
「この家は三人で住むにはちょうどいい広さだし、ペノーがいればお金には困らないだろ?シロが働けるようになればペノーも楽になるだろうし、それまではパーフもペノーを手伝ってあげて」
「無理です……主がいないなんて無理です」
「シロも……」
二人の言葉にパーフも同意だが、その尻の痛みに声は出ない。
「俺だって三人とも……二人とも大事な友だちだし、いつまでも一緒にこうして暮らせたらって思うよ」
この時パーフは、ギリギリ私も入っていた!と内心感動していた。
「ある意味、タイミングとしてはちょうどじゃないかな、ペノーは自立してシロも自由になった……カタストロフとも結局お目にかかることはなかったし」
「カタストロフ?」
柚夏奈はその言葉にだけは口を出した。
「あ~なんでもない、少し(口が滑っただけだから)」
図書館の蔵書に書かれていた厄災、カタストロフかカタストロフィと呼ばれるこの世界のバグ。
破滅的な強さを誇るドラゴンの使徒、人型のドラゴン……ゲーム的にはドラゴニュートとでも呼べばいいだろうか。
そして核爆弾のような存在である炎火の使徒、人型の炎の化身、ボルケーノベントはできれば一生見なくてもいい。
最後に最悪の使徒、死をまき散らす死を与え生を奪う、デスサイズの化身、命名ジ・エンド……とても美しい女性の姿をしているとか……柚夏奈とどっちが綺麗かな。
「噂では数億年前から存在しているこの世界のガンみたいなものらしいよ」
「そんな危険なものがいるの?」
「いる……かもしれない」
ペノーやパーフにとっては身近な神話であり、物語やあやし語や恐れ語として知らされる話。
「主……話をそらさないで」
「……ペノー、何も今すぐってわけじゃない、キミやシロ、パーフにも最後の時までいい思い出を作ろうじゃないか」
「そうだよ、私も太一くんも三人の事……大好きなんだよ」
柚夏奈の言葉に火が付いたように泣き出すペノー。
「柚夏奈さ~ん!あるじ~!私~私~!」
「正直、連れて帰りたいほどに……」
そう言って、叶わないことだと理解していたから俺は言葉を詰まらせた。
「タイチ、思い出に子どもを作ろ?」
「パ、パーフそれは」
言ってはいけない事だよ。
「パ~フちゃん」
「あ!ユ、ユカナさん……」
その後、パーフが座れないほどに柚夏奈にお尻を叩かれた。
そうして俺たちが帰るという話は、一切しなくなった。それと同時にペノーとシロは俺と柚夏奈との時間を過ごし、その別れの時の感情に怯えるようになった。
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コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
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