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6話 半端な魔女っ娘エルフは裸になる運命である

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 エルフ、気性が荒くすぐ人の肉を食べる、なんてのはゲームだけの話らしい。

 綺麗で美人で美少女で、変な娘だった。

「パーフさん、新しい服どうですか?」
「緑で落ち着くですね、それにデザインもいいですです」

「銀貨三枚です」
「出世払いで」

「いいですよ」
 いいのかよ。

「パーフさん、出世払いで銀貨三枚、合計金貨三枚分の付け」
「金貨三枚って!何をそんなに買ったです!」

「杖でしょ、服でしょ、服ですね、服だ、服、服が、服で、服と、服?服かも?服なのでしょうか?服かもです」
 そんなに服買ったのかよ。

「ぐぬぬ、仕方ないですです」

 もうむしろペノーにがっつり首根っこ掴まれてるじゃんこの娘。

「ところで、どうして裸だったんだ?」
「むむ、私がどうして裸だったかです?決まってますです!」

「あ!パーフさん!ここで使っちゃだめですよ!主もやるなら外でお願いします!」

 そう言われるまま、俺はエルフ美少女パーフと外へ出る。

 外へ出ると、パーフを見て男が集まり、女たちは子どもを隠し始めた。

「い、いったいこれから何が起こるというんだ」

 俺はやけに緊張感の高まるシチュエーションに身構えていると、彼女はその木の杖を構えた。

「我が名はパーフ!高潔なるエルフ族にして真なるハイエルフ!さぁ眷属たる風よ!かの者を撃ち貫け!エアーショット!」

 風が杖に纏わりついて、激しく回転しだしたと思うと、ようやく俺は魔法だと察した。

「風の魔法か!っく、エルフといえば魔法だよな!」
「はぁぁぁああ!」

 だけど、その風は前に放たれることなく、彼女の服が一瞬で塵になってしまう。もちろん下着も含めてだ。

「おお!」

 歓声を上げる男たち、杖で際どい部分を隠すパーフ、開いた口が塞がらない俺。

「見たかです!これが私が裸だった理由ですです!」

「……ち」
 痴女がいる。

 その後、ペノーが持ってきた服を素早く来たパーフは、ペノーから更に借金が増えたことを聞くと俺に対して激怒した。

「どうして私に服を破らせたですです!」

「……ち」
 痴女がいる。

「まさか、見たりしてないよね?太一くん……」

「……ち」
 痴女がいる。

「主がさっきから、ち、しか言ってないんですよ柚夏奈さん」
 だって、痴女が今となりにいるんだぞ?

 俺は表情で柚夏奈やペノーにそう訴えるけど、二人ともその痴女に関しては一切触れることが無かった。

「改めて、私はパーフ、魔法士ですです」
「どうしてですって二回言うの?どうして?」

「です?ですです?」

 あれか……ですとデスで意味合いが違う言葉を二回連続で繋げているんじゃ。それがエルフとしての当然の語尾なのではないだろうか!

「可愛くないですか?です」

 俺の考察を返してくれ、あと可愛くはない、頭悪そうではあるけど。

「ね、太一くん、可愛いですです?」
「可愛い、柚夏奈が言えば数百倍可愛い!」

「あ、ありがとう……」
 言っておいて褒められると照れてしまう柚夏奈も可愛い。

「私の方が可愛いですです!」
 いや、お前は可愛く無いから……なんか、無理している感じがするし。

 エルフへの固定概念が崩れない俺は、すぐにはパーフのことを可愛いとは思えなかった。

「な、なんでそんな目で見るですです?!」
「……」

「そういえば、パーフさんは何歳なんですか?」
「私は……っ14ですです」

「え?なんか三桁あったような」
「114歳なんですか!おばあちゃんですね!」

「おば!」

 柚夏奈は驚いているようだけど、最初からその気配はしていた。一番そうだろうなと思ったのは、裸を恥ずかしがることが無かったからだ。

「114じゃないですです!い、1.14歳ですです」
 1.14歳つまり約1歳ってことか?

「嘘だな」
「嘘ですね!」

 俺とペノーがそう言うと、パーフは恥ずかしそうに何かの紙を持ち出した。というかその紙どこに隠し持っていたんだ。

「それは!エルフのステータス羊皮紙!」

 エルフは見た目と年齢が一致しないことが多いらしく、ステータスを表す羊皮紙を持っておくことが必須なのだとか。

「こ、このステータス羊皮紙には間違いなく、パーフさんの年齢は1年と14週らしいです!」
 いやむしろ今気にするところはそれどこから出したんってとこだからね。

「偽物ってこともあるんじゃないのか?」
「ありえません!この羊皮紙は手に持つ者のステータスを表示するのです!主!ほら!」

「たしかに、ピノーのステータスが表示……」
 年齢の項目に6歳と記載がある……8歳ぐらいだと思っていたのに、マジで幼女なんだな。

「1歳ってことはまだ赤ちゃんだよね?」
「いや、エルフの言うところの1歳は実は百年だったという説もある」

「いいえ主、エルフの一年だろうと、ドワーフの一年だろうと、人だろうと一年は一年です!」
 だよね、いや、でもね、どうみても生まれて一年には見えないんだわ。

「エルフってみんな成長が早いの?」

 柚夏奈の問いにパーフは自身の胸を揉みながら言う。

「パ、パーフが大きいのは、人に恋したからですです」
「なるほど!恋の病!」

 エルフという種族は、同種族以外に恋をすると身体に異変が起きるのだ!大抵は牙が出たり、胸が三つに成ったり、指の数が増えたり、四肢の数が増えたりと異形化することが多いらしい。

「小さいパーフは人間にあったですです、勇者というですです、剣を振るうと魔物が一撃で死ぬですです!カッコイイのですです!」

「勇者に恋したパーフはエルフの呪い的なまでの何かで急成長したってことか?」
「ですです!」

 そりゃ、1歳の女の子が裸になったところを男に見られても恥ずかしくもないだろうな。

「太一くん、この子……可哀想ね」
「う~ん、どう考えても納得はできないけど、異世界だもんな~あるのかもな~」

 そう言えば、肝心なことを聞くのを忘れていた。

「どうしてパーフはこんな町に一人でいるんだ?」
「そ、それを聞くですです?」

 その悲しげな目は、何かしら思い詰めている様子で、俺はそれ以上彼女に話させようとは思わなかった。

「ま、迷子になったですです、家も分からないのですです、魔法を使えるけど自分の服が破れるだけなのですです、でも裸になると変なおじさんがお金くれるですです、そうして今日まで生きてきたのですです」

 話させる気はなかったが、彼女は自ら勝手に身の上話をしてしまい、結果柚夏奈は迷いなくパーフに言った。

「お家が見つかるまで!家で暮らすといいよ!」
「ほ、本当ですかです!う、嬉しいですです!」

 ま、柚夏奈ならそう言い出すと思っていた。部屋はないけどうちには最高のロリ鍛冶士がいるしな。

 ペノーの鍛冶士のクラスには、建築のスキルもあるらしく、彼女は増改築も得意なのだ。

 これで、俺と柚夏奈は別々の部屋になるんだろうな。そう、思っていた時が俺にもありました。

「見てください!パーフさんのお部屋です!」

「……これ屋根裏じゃん」
「そうです!狭くて暗い部屋が良いというので、屋根裏を部屋に改造して屋根を補強してみました!」

「ペノーちゃんすごい!」
 なに、うちのロリッ娘長万能、そして柚夏奈は今日も可愛いかよ!

「ありがたいですです!ペノーちゃんありがとうですです!柚夏奈ママも太一パパもありがとうですです!」
 ……パパだと!

「ママって、やだ、もしかしてパーフちゃんって私と太一くんにコウノトリさんが運んでくれた赤ちゃんなのかな!」
 いやいや、そんな期待の眼差しで見られても肯定はできないぜ。

「ね!太一くん!」
「……そ、そうかもな!」

 肯定するでしょ!しちゃうでしょ!

「パーフちゃんはうちの子だよ!」
「違うですです、パーフ両親はエルフですです、子どもは女の子のココに男の子のコレをこうして子どもの種を出すとできますです」

 直球の球だぞ柚夏奈!さ!受け止められるか!

「へ~エルフの子作りって面白いんだね」
 空振り!ストライク!バッターアウト!

「エルフだけではないですです!人もドワーフだって一緒なはずですです!」
 再びの直球!さ!柚夏奈!

「パーフちゃんの妄想って斬新だね!」
 おっと!バッターバットをピッチャーに投げた!これはもう野球なんかじゃない!

 その後もパーフの言葉では柚夏奈は真実にたどりつけなかった。

 いずれは到着すると思うけど、今はこのままが良いと思う。

 そうして唐突に俺たちは新たに、自らの風魔法で全裸になる中途半端な魔法士エルフのパーフを仲間に加えた。
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