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3話 家一軒にドジっ娘とロリッ娘だと!
しおりを挟む北の町、名前はラルンスといい、俺と柚夏奈が彷徨った森にはこの町へと進めないようにする人払いの呪文がかけられているそうだ。
ペノーが一緒にいることでようやく町へ到着することができたが、柚夏奈はまだ彼女を全裸にしてしまったことを反省している。
この町はペノーが言うには元エルフの隠れ里の一つらしく、俺はエルフが耳の尖がった美麗美男な種族なら、柚夏奈もそこまで目立たないだろうと考えていた。
「エルフは一人しかいないみたいだよ、って言う私もあったことは無いですけど」
「ペノー、この町で王都で使っていたお金って使える?」
「使えますよ、この町には宿屋が無いので、食事か鍛冶屋か食材屋でしか使う道はないですけど」
「宿屋が無いの?ならペノーちゃんはどこで寝泊まりを?」
「ここです」
そう言って視線で誘導されたのは、馬小屋の隣にある豚小屋の横にある犬小屋の後ろの屋根がある場所だった。
「や、屋根しかないけど……」
「はい、お金が無いので家も買えないし、荷物を馬小屋に置いてもらって昼間はここと森で食料を探して夜は馬と一緒に寝てって……あれ?柚夏奈さんどうしたの?」
「な、泣いてるの……あなたの境遇はきっと私が助けなきゃいけないの!色々な意味で」
柚夏奈は再び罪悪感で俺にコソコソと相談してくる。
「このお金で家買ってあげようよ!ペノーちゃんが住める立派な家を!」
「はいはい、落ち着いてくれ柚夏奈、まずは色々町の人に話を聞かないとな」
人払いの術が森に使われているのなら、この町に住むのは人ではない可能性が高い。
「さて、エルフかドワーフか、それともまったく別の存在か……」
「この町に住んでいるのは私以外はコルビット、猫耳に猫の尻尾の生えた人型の亜種族ですよ」
ネタばれありがとう、ペノーちゃん。
森の入口付近から町の中心へ向かうと、猫人と言える存在がそれなりの数いた。
「ん?ペノー、キノコ探しにでかけて人間捕まえてきたのか?」
「ちちち、ちがいます!恩人です!助けてくれたんです!」
「いいえ……襲ったんです、無垢な幼女を全裸にしたんです犯罪者なんです、ごめんなさい、すみません、もうしません」
柚夏奈……いつまで引きずるつもりなんだろうか、反省している姿も可愛いからもう少しそのままでもいいけど。
俺と柚夏奈のことをペノーが説明すると、猫人ことコルビット族の町の一番偉い猫のところへと案内してくれることになった。
「私がこの町の長であるコルビット族、アベノックじゃ」
アベノ!……うっ既視感があるのは気のせいだよな。
「なんか総理って言われた方がしっくりこない?」
くる、しっくりきちゃう。
「この町はラルンス、かつてはエルフが隠れ里にしていたが、今では我らコルビット族が住んでいる。というのも、エルフは人族との戦争で集結し殲滅されたためなのは誰もが知っていることだろう」
「へ~そうなんだ、俺たち異世界からこっちに魔王を倒すために呼ばれた奴らに巻き込まれてしまったためにこっちに来たんだけど」
「ほ~勇者パーティーが異世界から呼ばれる時に、魔法の範囲内にいたために巻き込まれてこちらに来た異世界人というわけですな」
「できれば当面はこの町を拠点に活動したいので、住む家と仕事を探したいんですよ、冒険者というのになれればと思ってます」
「この町を拠点にですか……住む家はすぐに手配できますが、冒険者になるには、人族の村か町でギルドに登録する必要があるのです。ここより北東にある村にギルドがありますのでそちらで手続きして下さればよろしいかと」
俺とアベノックの会話が終わると柚夏奈が驚いた様子で俺に聞いてきた。
「すごい慣れてるみたいに話てたけど、なんかアルバイトでもやってたの?」
「ん?あ~オンゲーで昔ギルドの人事やってたからさ、俺がギルドに入れる時にこう言ってもらえたら絶対採用するのにって思うのが、そういうこと理解している人だったからね。採用される側の心得的なのは分かってるつもりだよ」
「すごいね、ゲームって……中毒者になって一生ゲーム世界を現実と錯覚するだけだと思ってた」
柚夏奈の中のゲーム像が何かしらによって捏造されている気がする。
そうして俺たちは空き家へと案内され、ペノーも一緒についてきた。
「人族は歓迎しますよ、でもここへ辿り着くことができた者だけです。時に人族には我々の子どもたちを攫う者もいますしね」
「善い人間と悪い人間っていますからね、でも、私はペノーちゃんの服を……悪い人間なんです」
「我々コルビット族の中にも善し悪しはおります、そういう者がいた時はすぐに知らせてください、こちらで対応しますので」
俺たちが案内されたのは、森と隣接している建物で、北側の入り口からは遠いものの、森へは数歩で入れる。
「こんないいところ、いくらぐらいするんですか?」
「銀貨で24枚でお売りします、もとはエルフの家で魔法で劣化を防いでいますので、使わないより使っていただいた方がいいので」
「じゃここ買います、金貨で払っていいですか?」
「金貨ですか……すみません今銀貨の手持ちが無くて」
「何枚ありますか?」
「35枚です」
「ではそれだけ受け取って残りは後日ということでどうですか?」
「はい、わかりました」
そうして俺と柚夏奈は家を手に入れた。
家の中も綺麗でホコリすらなかった。
「立派な家ですね、やっぱりお金が全てなんですよね、私なんてまだ家無しだもんな~」
柚夏奈さん、分かっているからその「何とかしてあげて!」って顔で見るの止めて、むしろキミを何とかしてあげたくなっちゃうから。
俺はペノーの前で屈むと、彼女と目線を合わせた。
いつの間にか自分の服に着替えてポンチョ(法衣)を身に着けたままのペノーに、俺はできるだけ優しく微笑んで言う。
「ペノーさえよければ一緒に住まないか?」
「え?……無理です!」
「ん?俺たちと住むのは嫌かな?」
「だって、お二人はこの家でエッチなことするんですよね」
なななな何を言っているのかね!このロリッ娘は!
「ななな、何言ってるのペノーちゃん!!わ、私たちは清い交際をして……ってまだ付き合ってもいない……でも、責任はとってもらうんだから、もう婚約者ってことでぇ~え!だったら、そういうことも……起こりえる?」
「エッチなことをしている家に同居するなんて、そんなことできません!」
「……まず、俺たちはまだ子どもで今は生活するだけでいっぱいいっぱいだ、だからその、エ、エッチいことはしないからさ」
「ほ、本当です?」
疑いの目を向けるペノーはどうやらエッチいことには敏感で、それがドワーフの性質なのかそれとも彼女個人のものなのかは分からなかった。
「私と太一くんはそういうことしないよ!するとしても外でするから!」
「え!するんです?!外で!」
え!そうなの柚夏奈!
「……ごめん……なさい、今のは無しで……」
なし!今の無し!耳を真っ赤にして顔を隠す彼女はもう、可愛いかよ!
「ペノーさえよければだよ、結局キミがどうしたいかが一番大事なことだからね」
「……わ、分かりました、私もここで暮らします!」
「本当に?!よかった~」
柚夏奈も喜んでいるしひと段落、それにしても、幼女に家を与えることがこんなにも難しいとは思いもしなかった。
「わ、私は後妻ということで、だ、旦那様には将来的に尽くす所存です」
「へ~ペノーって7歳じゃなくて5歳なんだ……」
「ち、違いますよ!柚夏奈さんの後妻、側室です、太一さんの二番目の妻です!」
このロリッ娘は今何と?
「太一くんの妻!私が!って!ペノーちゃんが二番目ってえ?どういうこと?」
困惑した俺と柚夏奈に、ペノーはドワーフの女が男の家に住むことの意味を懇切丁寧に教えてくれたおかげで、俺と柚夏奈は理解はできたけど混乱は増してしまった。
「た、太一さん、不束者ですが、よろしくお願いします」
「……よろしくって……言われても」
「よろしく……してくれないです?」
「た、太一くん、わ、私は……いいよ、ペノーちゃんなら……」
いやいや、その表情はいいよって表情じゃないよね!明らかに嫌だよね!
俺は柚夏奈のために、ペノーの考えを改めてもらうことに四日かけて説得を続けた。
その結果、彼女の後妻という考えは何とか無くせた。
「主様、新しい法衣ができました、奥方にお似合いの一品になってます!」
「ありがとうペノー、注文通り巫女服っぽいのができたね」
俺の努力の結果、ペノーは後妻ではなく雇われの鍛冶士になり、柚夏奈は正式に俺の妻になってしまった。
その所為か、最近柚夏奈と目が合うと、気恥ずかしさで互いに目を逸らしてしまうようになってしまったけど。
「柚夏奈、ほら、この法衣を使ってくれ」
「これ、太一くんのアビリティを付与してるの?」
「ああ、一週間なら消えないように工夫しているから」
「巫女さんみたいな色合いだね、かわいい」
ああ、きっとそれをキミが着ればさらに可愛い!ほら可愛い!
「似合ってるかな、どう太一くん」
「似合ってるよ」
似合い過ぎて!可愛いかよ!
「本当にこんな物でいいんですか、主」
「こんな物って、スロット5つある法衣なんて探しても簡単に見つからないからね。ペノーは本当にいい鍛冶士だよ」
鍛冶士はスキルとして裁縫はもちろん、彫刻にも長けている。
「でも、アビリティが無いアイテムなんて、売り物にならないですよ?」
「そこなんだよな~、これほどにちゃんとした代物なのに、どうしてアビリティが付かないのか……」
俺がペノーの持つ金槌に針や糸を鑑定する気になったのは、おそらく人を信用していないからではなく、可能性を模索したかったからだ。
「これ、金槌にも針にも糸にまで、妙なアビリティが付けてあるね」
「……主には鑑定士としてアイテムのステータスとアビリティが見えるのですね。私には全然です、何が付いているのでしょう?」
「ペシャンの呪い?ってなんなのか全くわからないけど」
「ぺ!ペシャンの呪い!そ、それはかつていた不遇の鍛冶士の名です!そのドワーフが持つ鍛冶のアイテムには、アビリティが付与されない道具に変わって、作り出すアイテムが全てノンアビリティになるという話を聞いたことがあります!」
「なら、この道具の所為だろうね、キミが作る物にアビリティが付かないのは」
誰から貰った物かは想像がつく、きっとあの店の他の鍛冶士おそらくは親方だろう。
「これ、全部私の父の形見なんです!」
「って親父かよ!あ~親方さん……疑ってしまってすんません」
彼女の才能をやっかんだ鍛冶士って思ってたけど、そりゃ、こんなロリッ娘幼女に酷いことする人いませんよね。
「っぐ……分かりました。この道具たちは……質へ出します!」
「いやいや、そこまでしなくても」
「出します!私を守ってくれるどころか!私の人生をめちゃくちゃにしてくれた道具です!」
「だけど、その道具のおかげで俺たちとペノーはこうして一緒に暮らせるようになったんだよ?」
「そうでした!大切に保管しておきます!」
心変わり早!
「でも、厳重に注意事項として使うな!呪われているぞ!と記載しておきます!」
「いや、俺はその道具で装備とか作って欲しいんだけどな」
「はい!作ります!主に言われた時だけ!」
あの道具ありきじゃないと、スロットが5つで開いている物なんて少ないだろうしね。
その後、ペノーが作った剣はアビリティが3つ付いたAクラスのペノーソードが完成した。
どうやら、アイテム名は作った人の名前が由来らしいと分かったのはこの時だ。
俺たちが暮らすようになった家には3部屋あって、一部屋がペノーとその道具たちで占領され、もう一部屋には俺と柚夏奈が一緒に使うことになった。
もう一つの部屋はリビングとキッチンになっていて、というか無理矢理にキッチンにしたというか、その理由がエルフにはキッチンという概念が無かったからで。
外に大釜があることから、集団で同じ料理を作って食べるのがエルフの風習らしい。
「食中毒なんてことになれば、全滅必至だな」
「ん?何か言った太一くん」
「独り言だよ、ごめんな」
衝立を挟んで部屋は共有、家の構造上仕方ないけど……興奮する。
「なんか、ドキドキするね」
「そ、そうだな」
別の女の子と相部屋だったら気にしないと思うけど、柚夏奈は俺のことちゃんと男として見てくれているから余計にドキドキしてしまう。
「ね、太一くん……」
「ん?どうした柚夏奈」
「お風呂が無いけど……どうしたらいいんだろう」
「ああ、それならアビリティで……」
いや待てよ、アビリティで身を清潔に保てるだろうけど、ここは一つ手間をかけるのも手の内の一つか?
「ね、どうしたの?太一くん?」
「う、あ~、そうだ、ペノーに大きな桶作ってもらってさ、井戸も使い放題だしお湯は沸かせられるから」
「そっか、じゃ、どこで入るの?」
「部屋は濡れるとあれだから、キッチンはあれだし……外とかかな」
「……冗談だよね?」
「え?」
「冗談だよね?」
「いや、外って可能性が」
「可能性も無いはずだよね?」
「……(な、何だこのプレッシャーは!)」
「無いよね?」
「無いですはい、キッチンの前でいいと思います」
「だよね!冗談だと思った!」
想定していたよりも、柚夏奈さんの常識的な考えの圧は強くて、お外でペノーに衝立を置いて貰ってこっそり覗く作戦が日の目を見る日は無くなった。
その後、外に風呂場をペノーが一日で増築していて、キッチンで柚夏奈が入っているところに鉢合わせてキャ!ってイベントも消え去った。
「ゆ、優秀過ぎるぜ、ペノーちゃんよ……」
「せっかくだから三人で入りましょう!主!」
「だ、ダメだよペノーちゃん!私と太一くんだけならまだいいけど、ペノーちゃんと太一くんが一緒に入るのはダメ!」
え?今、混浴でもいいよって聞こえた気がする、言ったよね柚夏奈さん?……いや、気の所為?
こうして俺と柚夏奈は新たな同居人、ロリッ娘ドワーフのペノーを加えて新生活をスタートさせた。
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