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1話 なんとなく親友は、ただの級友

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「では、それぞれの鑑定結果をお伝えします。内海尚斗様、騎士、平凡なクラスであり珍しくはありません、魔王と戦うには無力なクラスですね」

「……っち役立たずってことかよ」
「ラッキーじゃん、下手に戦える楯役なんてことにもなり兼ねなかたんだぞ尚斗」

「たしかに……さすがゲーム好きの太一、てか、既に勇者がいるなんて反則だろ」

 それは同感である。

「伏見蒼様も同様の騎士クラス、羽生太一様は鑑定士、私と同じクラスですが、私はクラス鑑定士で羽生太一様はアイテム鑑定士になります。これもありふれているクラスですね」

「……平均最高――」

 というのは建前である。本心は珍しいクラスだった方がよかったと思っている。

「太一は戦闘には向かないクラスか、蒼は俺と同じで和也はなんなんだ?」

「木下和也様は盗賊、犯罪者になることが多く、冒険には不向きなクラスです」

「完全に外れだよ僕、まだ羽生の方がましだよね」
「いやいや、和也の方がましだろ、羽生は戦えないんだぜ」

 どうせ俺は戦えないですよ。

「まぁまぁ、目糞鼻糞だぜ伏見」
「尚やん、ま確かにそうかもね、戦わないなら一緒か」

 つまり自分も目糞か鼻糞であると肯定しているんだけど、ちなみに俺は肯定した覚えはない。

「最後になりますが、新垣柚夏奈様は調律士、とても珍しいクラスですが、調律士は勇者様のパーティーに既にいますので、今回は残ってもらっています」

「は、はい」

 委員長は安心した様子で頷くと、今一番気になっていることを口にした。

「私たちは、いつ頃帰れますか?」

「そうだ、俺らいつ頃帰れるんだ?」
「それ大事だよな」

 俺も含めて全員の共通の想いだった。自身が主役ではないと分かれば、早く帰りたいと思うのは必然で。

「ゲームもないアニメもない、こんな世界では辛いし」

 俺がそう呟くと木下だけが共感を表す。

「安心して下さい、勇者様が魔王を討伐したのち、揃って帰還できると保障いたします」

「よ、よかった」
「ふ~、で、俺らこれから何してればいいんだ?」

 尚斗の言葉にローブ姿の女性は口元に笑みを浮かべて言う。

「ご自由におくつろぎ下さい、この屋敷を出る時にメイドに声をかけさえすれば、特に何も禁止はありません」

 そうして俺たちは、異世界転移先で自堕落な生活を開始させた。

 おはようからおやすみまで、メイドが全部準備してくれる。世話はしてくれないけど、ホテルウーマンと思えばかなりの高級ホテルに泊まっている感覚だ。

 メイドさんが俺たちを客以上に見ていないのは間違いないけど、下心無し過ぎて尚斗とか伏見とかは困惑している。

 笑顔で華麗にスルーするメイドさんになんども声をかけていく二人は、変な努力をしているなと思いつつ見ていて少しは退屈凌ぎになった。

 そんな中で勇者パーティーたちの訓練風景を見た尚斗たちと俺は、使命感に燃える彼らとは違う自分たちの状況に溜息を吐くことになる。

「もうだめだ、俺は今すぐにでもゲームがしたい!」
「でた、太一の禁断症状」

「メイドさん、俺と同じアイテム鑑定士の付き添いで兵舎の観光させてくれない?」

 俺の言葉に尚斗と伏見は言う。

「ムリムリ、俺だってメイドさんと観光断られたし」
「俺も」

 確かに二人ともすぐに断られていた。

「太一様、すぐに手配します」

「え?いいの?言ってみるもんだ」
「な!どうして太一だけ!」

 たぶん、何かしら向こうにも考えがあっての俺への許可だろうな。

 数分でローブ姿の女が現れたが、おそらくは普通の特に美人でもないであろう中年のおばちゃんが現れた。

「なんだ、おばさんじゃん」

 伏見、そうだとしても言わないのが礼儀だぜ、ほら、ちょっと怒ってるし。

「……太一様、兵舎の案内をします、ジョアンナです」
「よろしくお願いします」

 あ~早くアイテム鑑定しながらこのクラスのバグかチート探したい。でないと、ゲームしなさ過ぎてストレスが凄い……。

 俺は兵舎に案内されると、そこには整理された剣や防具が置かれていた。

「太一様、この中のアイテムならお好きに鑑定しても構いません」

「……中に変わった剣や防具があったら分けておけばいいですかね」
「え?」

「あれでしょ、偽物が混ざってないか確認したかったんでしょ?でないと俺に大事な兵舎の武器庫なんて入れる許可でないでしょ」
「……はい、実は、最近供給された剣や防具を粗雑品とすり替えて質に入れる騎士がいるようでして」

「鑑定士の立場的に、ここの鑑定をして素直に報告すると、騎士側から圧力がかけられるからやりたくない、だから部外者の俺にたまたま粗悪品を見つけて欲しいってわけですね」
「……お察しの通りです太一様、さすが異世界のお方」

 いや、肯定するんだ、まぁ素直でよろしいという事にしておこう。

 見たところ剣だけで数千、鎧に冑にその他もろもろ、人員を割くにもこう狭いと少数精鋭で鑑定するしかない。

「じゃ、さっそく鑑定しますか!」

 アイテム鑑定士、見た物がアイテムであれば、その名前から使用用途、耐久度、レア度、アビリティが視界に浮かぶ。

 ARのような科学の産物ではなく、どうやら神あるいはシステム的なこの世界の原則らしい。

「レア度C?スラスソード……耐久は1498、なるほど、で、こっちがアビリティ、スロットが二つで1は斬撃強化、2は斬撃強化」

 同じアビリティでも上乗せされるわけだな……ん?

「ジョアンナさん、このアビリティの鍵マークなんですか?」
「?鍵マークですか?いや、私には何も」

 なるほど、アイテム鑑定士同士でも能力に差異があるわけか。

 鍵マークは外せない、ロックされているようなものか、なら、初めからロックされていないものなら変化させられるかもしれない。

 と思い発って兵舎のアイテムを片端から鑑定してみたものの、全てにロックが付いていてどうにもこうにもならなかった。

「ジョアンナさん、こっち、粗雑品ですね、レア度も違うし」
「レア度?」

「あ~そうか、等級です等級」

 ジョアンナさんにはレア度は等級として見えているらしい、まだまだ調査する必要がある。

「あの、これから街の散策してもいいですか?」
「街でですか?……分かりました、上には私から言っておきますよ、出かけの門兵にこれを手渡して下さい、そこでお金と身分証を受け取れば、帰ってくれば門兵が変わっていても入れます」

「了解しました。じゃ、また」
「ええ、太一様」

 ジョアンナさんはお抱えの職員ではないようで、どうやら俺への警戒心は必要ないと思っているらしい……正しいけど、俺が問題を起こしたら彼女に迷惑がかかるから、気を付けよう。

 兵所の門前で兵士にその板のようなものを手渡すと、代わりに小さな袋と首から下げられる板が手渡された。

 街へ入ると石造りの道はしっかりとした作りで、建物も真新しさが目立つ。歩きながら触れてみて分かったけど、魔法か何かしらの特殊なもので加工しているかコーティングしているようで、それが真新しさを出しているんだろう。

「できれば道案内でもあればなって思ってたけど、思った通り、スーパーマーケットみたいに、食品やら鍛冶やらが並んでいるようだけど」

 煙突から昇る煙からもおそらくはと察することができる。

 街並みを効率よく回れるようにしているところはゲームみたいな感じがして、日本も見習うべきっていうのは新幹線やら車やらがあっても思ってしまう。

「ここを抜けると、へぇ一気に鍛冶やら武具防具屋やらが並んでるわけだ」

 カンカンと金槌が音を奏で、客引きが多いことから鍛冶師と販売側が多くて競争が起きているんだろうな。

「あれもこれも、ロックが付いていて、アビリティの枠も少ないか……俺とジョアンナさんとの違いがロックされているマークが見えるか見えないかなら、それがかかっていないものがあればやれることあるんだけど」

 そういえば、制服とか俺の私物はまだ確かめてなかったな。加えてスマホとかカバンとかはこっちには来てはいないし、ロックが付いてないアイテムさえあればな。

「……ん?なんだこれ、めっちゃ安いな」
「お客さん!そいつは質はいいんですがね、いかんせんアビリティが付かなかったやつでして、買手がいないんですよ」

 アビリティってやっぱ重要なんだな、で、アイテム鑑定アイテム鑑定。

「……まじかよ」

 スロットが五つ、しかも鍵無し!レア度Bの良質武器!

「こっちの防具も、この法衣も、この指輪もかよ……」
「ど、どうしました?」

 お、何だこのちっこいのは。

「そ、それを作ったペノーです……ど、ドワーフです」

 やべ、ドワーフってもっとこうゴツゴツした小さいジジイだと思ってたんだけど、こんな幼女なのかよ。

「キミがこれ作ったわけだ、おじさんこれ兵舎横の屋敷に送ってくれる?」
「兵舎の横?……屋敷……お!あんたまさか異世界から来た人かね」

「そっすけど」
「異世界の鍛冶の技術とかどんなんか教えて貰えんかね」

「……いいですけど、つまんないですよ」
「ああ!」

 それから数十分かけて、PCやらキャドやらを教えて、機械まで話た俺におっさんは「へ~よく分からんが凄いんだな!」と理解していないことを示した。

 それからすぐに帰宅した俺は、残った金を兵士に渡すと兵士は「全部使ってよかったんだぞ」と言うため、「あとはお好きに」と言うとめちゃめちゃ喜んでいた。

「太一様、兵士に金銭を寄与するのはおよしください、あれは彼らの給与の半年分に相当する額が入ってたんですよ!」
「……ならひと月分だけあげて残りは回収したらいいでしょ、無理なんですか?」

「無理です!明日の朝には彼らの胃袋から排泄されていることでしょう!」
 やっべ、面倒なことになってしまった、と思いつつアビリティを弄る俺って結構タフネスだな。
「聞いているんですか!太一様!」

「……今度買い物行った時にはあなたに渡しますよ、だからもう許して」
「……本当ですね」

 メイドのレミリアさんは美人でがめついと分かったのはこの時だった気がする。

「さて、ようやく一人になれた」

 尚斗たちはいつものようにメイドさんたちへのアタック中、心置きなく一人で没頭できる。

 数なら剣の方が多いな、こっちの剣に試しに付けてみるかね。

「最初は斬撃強化、これを入れてみて……ん~どうやって記入するんだ?二度押しとか?違うか、長押しか!違うな……」

 スマホみたくいろいろ試したけど、結局数時間かけて分かったことは記入できないってことで、昼食をいつものように尚斗たちと食べるとまた部屋でそれと睨めっこを始めた。

「太一、メイドさんとデートの行き方とか分かんねぇ?」
「……外出したいって言って、兵士に金貰ってからメイドさんに何でも買ってあげるって言えばいけるっしょ」

 などという適当なことを言ったら、本当に尚斗たちはその方法で各々の押しのメイドさんとデートに行けたらしい。ちなみに、木下はあまり乗り気じゃなかったらしいけど。

 それよりも俺は自身のこのアビリティスロットの空白に、どうすれば文字の記入をすることができるのかを模索し続けていて、結局二日目の昼に事の進展はあった。

 それはメイドのレミリアさんの一言がきっかけだ。

「この世界のアイテムのアビリティは神様のお授け下さった宝なので、たとえ異世界のお方であってもアビリティ付与なんて無理だと思いますよ太一様」
「……そっか、神ね、神、神様」

 記入とかじゃなくて、祈ったりしてみたり、生贄って可能性もあるかも。

 そう、例えば頭の中で念じてみたり。

『斬撃強化』

 その瞬間、俺のスキルの可能性が広がった。

「あ、付いた……」

 本当にようやくスタートラインに立った俺は、最初の剣に斬撃強化を三つと斬撃貫通と斬撃鎧破壊を付けて手に持ってみた。

「あ、筋力足りてねぇ、俺じゃ使えないじゃんこれ……」

 手にすれば分かる、持つことはできても、きっと筋力を付けても適正がないからアビリティは何も発動しない。

 物理的には野菜や木などは斬れるけど、魔物は斬ることができない。

「アイテム鑑定士のステータス上昇ってどれくらいだよ、てかレベルが見えないのが面倒だな、せめて上昇値から逆算で必要レベルが分かればな」

 結局、俺が付けた剣や防具は全て俺自身では何も確かめられない代物で、他のアイテム鑑定士に鑑定してもらって全てのアビリティが効果を発揮していることは分かっても、一部のアビリティは視界にすら浮かばないことが分かった。

 例えばこの法衣に付けたアビリティだ。

「スロット1、不変・破壊不可。スロット2、全攻撃耐性。スロット3、全悪影響耐性。スロット4、高魔障壁・高出力。スロット5、全敵対行為反射を付けた完全防御法衣……ペノーの法衣。これが効果を発揮してくれればまず死ぬことは無い」

 日本の法衣と比べると、かなりファンタジーよりの法衣だし、でも着てみると軽いしなんかカッコイイ。

「あとは指輪を付けて、ほい俺最強……」

 発動しさえすればだけど……、この向こうの世界の靴のスロットが二つだけでロックが付いていなかった。だから不変・破壊不可と時間修復だけ付けておいた。

 何か月かしたら効果が出ているか分かるけど、速度増加なんてつけても、ステータスが足りていないからってアビリティは発動しない。

「にしても、それぞれのアビリティについているこの時間制限のようなものは、斬撃強化で一ヵ月くらい720時間で消失する、こっちの全敵対行為反射なんて3分しかもたないらしいけど、俺が付けている間はカウントが停止しているし減った分も一度触れればカウントが元に戻る」

 つまりは、俺が触れないとアビリティは消失してしまう。逆に俺が日に一度でも触れれば永続的に効果は発揮される。

「それを前提にすると、他人が使うアイテムには最低でも24時間程度の余裕がないと厳しいってことか……」

 俺がボーっとしていると、いつの間にか尚斗が部屋に入ってきていて俺のアイテムが見つかってしまう。

「太一、その恰好どうしたん?」
「わ!って、尚斗じゃん、焦った……まじホラー」

「で、どうしたんそれ」

 俺は本当は話したくはなかったけど、誤魔化しながら尚斗に話した。

「この法衣は分からないけど、そっちに置いてある剣や防具は強いアビリティが付いていて、たぶんこっちの世界の騎士の人たちよりも強くなれると思う……」
「へ~アビリティが付いて、どうして自分で使わないんだ?」

「いや、使えないだよ、俺アイテム鑑定士じゃん、ステータス足りなくてアビリティが発動しないんだよ」
「……な~るほどね~これちょい借りてもいいかな?」

「いいよ、何ならあげるけど」
「ラッキー」

 この時の俺は、上手く誤魔化せたことだけに安心していて、まさかあんなことになるとは思ってもいなかった。

 数日後、何やら兵舎側に人が大勢集まっている様子だったから、俺も野次馬的に様子を見に入って行く。

 そこには、メイドたちの集まりの中に尚斗たちがいて、何やらモテモテの様子だった。

「……委員長、何があったの?」
「羽生くん、うん、何かメイドさんたちが騎士に勝てばデートしてあげるって内海くんたちに言ったらしくて、模擬戦闘をして騎士たちを倒しちゃったのよ。内海くんたち戦ったこともないのに、凄く早く動いて剣で剣を斬っちゃうしで圧勝しちゃったの」

 まさか、あのチートアイテムをこういうことに使うとは思ってもいなかった。

 防具に付けたアビリティで俊敏に動けるし体力も回復する。普通の防具を身に着けた騎士なんかに負けるわけがない。

「……羽生くんも戦えば強いの?」
「いやいや、俺アイテム鑑定士だしね」

「そっか」

 その安心の意図は読める、同類がいてよかったって思っているか、ただ、同じ立場の人が一人でもいて安心したってことだろう。委員長の性格からして後者かな。

 にしても、アイテムだけで正式な騎士に勝つことができるなんてな。チートアイテムか……高く売れそうだな。

 だけど、俺のそんな考えとは別に尚斗たちは正式な騎士に勝利したことで何かを計画し出していた。

 約二日後、朝から慌ただしく何かを準備している尚斗に俺は声をかけた。

「何か忙しそうだな尚斗」
「おう、太一、まぁ出発の準備をしているんだ。市宮と新野が出発したのが数日前だし、追いつけないかもだけど、ちょっと冒険者になろうかなってさ」

 そんなちょっとコンビニ行ってくるみたいな感じで。

「コンビニに行くみたいな言い方するんだな。冒険者ってことはこの街を出るのか?木下と伏見も一緒か」
「まぁな」

 なら、俺もついて行けば、手に入れたアイテムにアビリティを付与して最強の冒険者パーティーができるんじゃね。

 俺がそんなことを考えていたら、伏見が不満そうな顔で現れて言う。

「尚やん、まさか羽生を連れて行くなんて言わないよな」
「……伏見、お前が使っている装備を見つけたのは俺だぞ」

「だけど、装備できないんだろ?俺たちは馬に乗れないから走って移動するけど、お前ついて来れるのかよ」
「……運転手付きの馬車を借りればいいだろ」

「お守の必要な足手まといは連れて行けないって言ってんだよ羽生」

 分かっていないな、尚斗はこういう時俺を連れて行くんだよ、異世界での適応能力は他の誰よりも高いからな。
「尚斗、まさかおいて行かないよな?」
「……悪い太一、伏見の言う通りだと俺も思う」

「は?」
「ほらな、戦えないアイテム鑑定士連れて行くくらいなら、美人のアイテム鑑定士雇うって方がまだましだ」

 ちょっと待てって、尚斗、こういう時のお前は俺を一応連れて行く奴だろ。

「尚斗、まじで言ってんのかよ」
「だってさ、お前足手まといだろ……装備も着けれないし、戦えない、アイテム鑑定士ってだけで連れて行くよりアイテム鑑定代だけ出せばいい話だしさ」

「そうそう、尚やんの言う通り、萎えるじゃん役にたたない奴がパーティーにいるとさ」
「悪いな羽生、僕も蒼と尚やんの言う通りだと思うからさ」

 木下の言葉なんてどうでもいい、本当にどうでもよかった。

「……そうだな、確かに俺も守ってもらいながら冒険ってのも悪いしな……」

 なんて言ってはみたものの、やっぱり冒険ってものに憧れはあって、まさか尚斗が俺を置いて行く決断をするなんて思ってもいなかったし、内心動揺が収まらない俺は本当は尚斗たちと冒険に出たかったのだと今更自覚していた。

「同級生のお守とか、太一だってしたくないだろ?」
「あぁ、……同級生だもんな俺たちは」

 親友とすら思われていなかったらしい。

 三人が出て行くところを見ながら、ガッカリしている自分に驚いていた俺は、ようやくアビリティの制限時間を思い出していた。

「冒険に出て戦闘中に効果が無くなっても、自業自得ってもんだよな」

 後ろ姿が見えなくなった頃に、俺は吐き捨てるように言った。

「ざまぁ」

 負け惜しみだと分かっていても、言わずにいれないのがその時の俺の心境だった。
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