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第十六幕 魔族領の暗黒騎士
しおりを挟むブラッド領、クラエベール領、ユースタス領が落ち着き、道路の整備が始まった頃だ。
俺はライエとの結婚式と、流れでアーシャとも同時に行うことになって、その前にある一つの大きな課題をこなしていた。
魔族領は、今大きく分けて三勢力によって支配されている。
一つは、魔族筆頭の元魔王の一族であるアグサレシアスが支配するアゲルベガネス区。
その地域ではまだ人間ではなく魔族が土地を支配している。かつての魔王軍の残党で構成される軍が、周辺地域の物資を略奪している。
もう一つは、人間たちに支配されている魔属領最東のリガナルバナス区。
この区を支配する人間たちの主は、隣国アダルカンの軍で、現在は勇者ベント・ラグナの猛威によって半壊しているが、この区にいた軍に関しては全くの無傷で今も駐留し続けている。
女が奴隷のように人の街へと連れ去られ、魔族領から出た途端死んだため、今ではその区内で多くの女が体を物の様に扱われている。
そして、最後の一つ、暗黒騎士ラグナが統べるジョリナス区。
魔王死後、急に現れた魔族の英雄は、周辺の支配された街町や村を解放し、自身の支配下に置くと、次々にその支配域を広め、しばらくして急にそれがピタッと止むと、数週間後再び周囲の街や防衛陣に攻め入る。
自ら暗黒騎士ラグナを名乗り、虐げられる魔族を解放している彼は、まさに英雄と呼ばれるだけの成果を出していた。もちろん、この暗黒騎士ラグナは俺ことブラッドである。
「トグル、その後どうだ、村の様子は」
「はい、手配していただいた若い者たちのおかげで、女たちの世話も年寄りの世話も無事に行き届いておりますよ」
解放した周辺の街から、四肢を失ったり年老いたりした者たちをトグルの村に集め、世話する者たちも手配した結果、あの村は今、大きな病院のようになっている。
そして、俺たちがいるジョリナス区ハナキの街は、以前は魔族のガーボン一家が牛耳る街だったが、暗黒騎士ラグナが解放し、拠点として滞在している街である。
「若い者が増えたため、今ではそこかしこで子作りが絶えませんな、のほほほほ」
「……今は傷の療養を優先させろ、衣食住どれをとっても不足しているんだ、子どもどころではないぞ」
溜息が出るほどに魔族の領地の解放は時間がかかっている。というのも、この問題には俺だけで取り組んでいて、ブラーニやクラエベールたちは関わらせていないからだ。
これ以上ブラッドとして敵を作るのは避けたいために、黒いフルプレートメイルで体も顔も覆い、その素性を隠して活動している。
「そういえばラグナ様、また、ラグナ様の世話係の娘たちがこの拠点に詰め寄せているようですな」
「俺の世話係などいらん、全員追い返せ」
「しかし、どの娘も若く美しいですぞ」
まったく、俺は恋愛するためにここにいるのではないぞ。
「世話係ならマイダがいれば十分だ」
「お呼びですか、ラグナ様」
マイダは俺の唯一の世話係で、薄い青い肌に紺色の髪を肩で結び右胸に垂らしている。トグルを除いて彼女だけが、俺がブラッドという名で人側の存在であることと冑の中身を理解している。やたらと胸が大きいため、時々視線を自然に向けてしまう。
「いや、特には……待て、そういえば例の案件はどうなっている?」
「魔法術部隊の話であれば、順調に訓練課程を終え、二部隊ほどは作れました」
「まだ二部隊か……ペースも遅い、もう少し急ぐことはできないのか?」
「素質がある者が少なく……」
軍を整備してこの街の守りを固めたい気持ちが強いが、何せ魔法以外で使命も何もない者たちであるため、正直どうにかして守るための力を付けなければならない。
「ラグナ様、そのお怒り、この身で受ける所存でございます」
「……いや、いい、お前の落ち度ではないだろう」
「……ですが」
残念そうにそう言う彼女も、俺に抱かれたいのは分かる。だが、俺は本当に忙しい身で、早く魔族領を住みやすくして、ミレイユたちとゆっくり過ごしたいのだ。
「俺は今からリガナルバナス区の南側の街と土地を解放してくる、終わり次第また人を連れてくるから、治癒魔法士と教育係、それに性欲処理班の準備を済ませておいてくれ」
「はい、仰せのままに」
今までも解放した場所から、負傷者に、幼い子どもたち、性欲を薬で解き放たれた者たちがいた。その経験上、治癒、教育、性欲処理は常に配備できるように訓練してある。
今回向かう街はこのハナキの街よりも大きく、人も多いはずだが、敵も多いのは間違いない。
そして、ここを優先して解放したい理由が、その土地の面積と立地だ。
作物を育てることに適した土地が、今所有する土地面積の十倍はある。
「ここを確保できれば、魔法で作物がどんどん量産できて、食料事情は一気に解決される」
いや、それだけではなく、もしかすると南側の海で海洋資源を漁することも可能かもしれないと考えれば、絶対に確保するべき場所ではある。
街の近くに転移して、単身街へといつものように血の沼とともに暗黒騎士ラグナが現れる。
「あ、暗黒騎士ラグナだ!」
「暗黒騎士ラグナだって!」
「暗黒騎士様がシュダハを解放しに来てくれたぞ!」
俺が姿を現した途端に、街にいる魔族たちが暴徒と化し、街に留まっていた人間の兵たちを捕らえてしまう。これまでも、村や町の解放時には魔族たちが助力することが多かった。
だが、この街でのこの反応は、暗黒騎士ラグナの噂を聞いた街の反乱分子が多くいたことを意味している。ある意味、俺の行動で彼らの心に希望が芽生えているのかもしれない。
集められた人間の兵士を前に、俺は暗黒騎士として見下ろしていると、怯えた一人の兵士が、「どうかご慈悲を」と命乞いをする。
「……俺は忙しい、命を奪い、残骸を掃除する時間も欲しい、まだまだ救わねばならない者たちがこの俺を待っているのだからな」
俺はその場にいた人間を転移でいつものようにアダルカンの国の辺境へと移動させると、その後は不満そうな民衆へ言葉を言う。
「お前たちの不満は分かる、だが、病人や子ども、四肢をもがれた女を癒すことが先だ!」
不満は時間とともに消える、中にはそれを持ち続ける者もいるが、その時は多少物理的に理解を求める。
「病人はこれで全部だな、なら子どもたちを集めろ、女たちはどうした?まさか手を出してはいないだろうな」
「いいえ、滅相もございません!ほら、早くしろ!」
期待の視線に混じる不満や困惑、悪いが段取りよくやりたいんだ、この後にライエとアーシャとの結婚式が控えているんだから。
集まった民衆は平等に扱う事は必要だが、状況により優先度が変わるのは仕方がない。
「暗黒騎士様……私の娘と孫が、隣の町で囚われているのです、どうかお救い下さい」
「……この者たちを転移させた後すぐに隣の町も解放へ向かおう」
「ありがたき幸せ!感謝します!」
体が二つあれば同時に対処できることも、今は致し方ないと置き去りにする。
転移した俺を出迎えるマイダとトグル、その周囲には手配した者たちが並んでいて、病人や老人、子どもたちを次々と手順通りに導く。
「十八人、また沢山ですなラグナ様」
「あぁ、やはり大きな街になると途端に増えるな」
四肢のどこかしらが無い女たちは性の捌け口として扱われ、薬で発情してる者も多い。
そのような者たち専用の性欲処理班は全員女で、俺が直接教えた処理法で発散させていく。
喘ぎ声が鳴り響く中、股間を膨らました男たちに「配置に戻っていろ!」と怒鳴ると慌てて彼らは仕事へ戻る。
処理班の女たちは、主に容姿に秀でていて、壊されることなく狂わされることなく、偉いてのを相手にさせられていた女たちで、今回のようなことがない限りは普段見ることもできないため、彼らのようにサボって様子を見に来る者が後を絶たない。
「班長、この子を」
「分かったわ」
マイダも彼女らと同じ立場だったが、覚えが良く手間をかけた結果、俺が気に入って傍に置くようにしたのが最初の出会いだった。
覚えがいいのは性処理ではなく、人員の配置や時間の管理に関してだ。
「あっぁああぁあ!」
「そうよ、感じて、気持ち良くなっていっちゃいなさい」
「彼女はそういう時に胸を強く揉むともっと感じさせられるぞマイダ」
「はい、ラグナ様」
女同士より血の支配者としての能力で俺の方がより理解が深い。
「では、ここは任せるぞマイダ」
「は!お任せください!」
この場をマイダに任せて去ろうとしていると、トグルが小さく呟いた言葉に俺は溜息を吐く。
「ワシももう少し若ければ……我が息子よ!奮い立つときは今ぞ!……無理か~」
転移後、俺は解放した街の様子を見て回り、動ける男たちに建物の見立てを伝えていく。
「この建物はこのまま食堂として使え、隣の建物は倉庫に変えて、前の建物は取り壊せ」
「はい!」
性処理施設だったそこは残しておいても利用価値もない。
それだけ伝え、俺は老人に頼まれた隣の町へと足早に移動する。
解放したシュダハの街と比べると、随分小さい町だ。
匂い、血が漂い過ぎている。
「何人殺したらここまで匂う……」
町に入るのも躊躇うほどの血の香りに、俺は少し酔いながら足を進めた。
さすがに、耐えるのが辛い、何なんだ……この町は。
一番血の匂いの濃い建物の前に立つと、俺はその静けさに嫌な感覚を覚えて扉を押し開けた。
キィィィイとなる扉を通る前から、既に誰かが吊るされているのが見て取れた。
微動だにしないその吊るされた誰かしらは、間違いなく死んでいるのだろう。
そして、その体からポタポタと血が落ちているが、足を踏み入れてみると、ピチャっと音を立てて靴の底が少し水溜まりを踏む感覚を覚える。
血の沼を歩く感覚に似ている、だが、吊るした者の血でこれ程血まみれにする意味が分からない。
「……魔族の男の死体、それにこっちは人間の兵士の死体か」
まさかまた悪魔が関係しているのでは、俺がそう考えながらさらに中へ進むと、隣の部屋の壁に複数の遺体が張り付けられているのを見つけた。
「儀式の類か?それとも、こういう報復方法なのか?」
「だ、だれ?」
血の匂いが強すぎて、生きている人間の血の流れに気が付けなかった。
視線をその部屋の壁から右側に並んだベットの下へと向けると、魔族の子どもが隠れていた。
「出てこい、俺は暗黒騎士ラグナ、この町の異変に気が付いて助けに来た」
「……た、助けに?」
男の子である子どもを抱き上げると、余程怖かったのか泣き出してしまう。
「うぁあああん!」
俺はしばらくその子を抱いたまま周囲を確認して、生きている者がいないのを確かめると、家の外へと出ることにした。
周囲にこの子以外の気配はない、だが、町の規模からしても血の量からしても死体の数が合わないのが解せない。
「何があったか話せるか?」
「み、緑色の肌の変な人たちが、人間たちと戦って、人間たちが負けると、僕らも襲い始めたんだ……母さんも姉さんもどこかへ連れて行かれちゃったんだ」
緑色の肌?そんな人間には会ったことがないな。
俺は子どもを瞬間昇転移でトグルに預けて、もう一度町へと戻ると、周囲の状況を確認して、妙な足跡をいくつも発見する。
「裸足、二足足、小さいものは子どもほど、大きなものは大人よりも大きい、人間ではない」
集団が歩き続ける方角は森になっていて、俺はその足跡を辿って森へと進む。
森の動物たちも気配を殺し、一帯が静かに息を殺すように潜んでいるようで、緑色の肌を持つ者たちがまだそこにいるのだと察した。
足早に森を進むと、複数の血の気配を感じて木の上で静止する。
そこから見る集団は確かに緑色の肌をしていた。
「あれは……ゴブリンか?」
緑色の肌に、髪の毛の無い頭、尖った耳に、鋭い歯、鋭い目、性悪な笑みを浮かべるそれは間違いなくテレビアニメで見たゴブリンの姿そのものだった。
十数のゴブリンが、魔族の女を縛って、人間の兵士の男も何人か連れているようだった。
一人の女を数人で嬲っている様子の奴らは、どうやら休憩中のようで、鍋には血の量からは足りない死体の肉が時々視界に入ってくる。
「一番強そうな奴がリーダーだろう、そいつ以外を殺して言葉が通じるなら色々詳しく聞かせてもらいたいものだが」
俺はその場から女の上に跨るゴブリンを右手を払って頭だけ血を爆ぜさせると、兵士たちを殴っている体格のいいゴブリン以外の頭を次々に弾き飛ばす。
グチャ!と周囲に異音が響くと、リーダーらしきゴブリンは周囲に警戒心を向け始める。
「ウゲアァ!」
言葉は分からないようだ、後はこちらの言葉を話せなければ、その時点で会話は不成立になる。俺は木の上から、リーダーらしきゴブリンの前に移動して言う。
「おい、お前たちはなんだ?」
体格のいいゴブリンは戸惑いながら手を振り頭を下げる。
「うぐあぁがぃぐだがひあ!」
まったく何を言っているか分からない。
会話ができないのなら生かしておくのも難しい。
俺は、躊躇なく最後のゴブリンの頭を爆ぜさせると、捕まっていた人間の兵士も魔族の女たちも涙を流して言う。
「助けてください!」
「助けて!」
「お礼なら何でも差し出しますから!」
人間の兵士たちはそのままいつもの如く転移させるだけに留め、女たちは街へと転移させた。
「ば、化け物が私の体に噛みついて、服を引き剥がし無理矢理に……」
泣き崩れる嬲られていた女は、あの少年とは関係なかったが、どうやらゴブリンという存在に関しては一切知らないらしい反応だった。
あの少年の母と姉は助けた女の中にいて、姉はほぼ無傷で正気だったが、母の方は嬲られた後だったため、今は治療中だ。
「トグル、緑色の肌の魔族はいるのか?」
「いいえ、魔族はこの土地のマソを食し吸引して生きているため、肌の色は等しく青くなるのですが、緑色の者は見たことも聞いたこともありませんな」
人間に嬲られていた女も、「あの化け物たちに犯されていたら……きっと自殺してました」と言うほど、やはりあの外見は嫌悪されるものらしい。
「ラグナ様……緑色の肌の化け物のことですが……皆も恐れています」
「……ゴブリンだ、奴らはゴブリン」
「ゴブリン?アレが南の大陸に住む亜人の一種であるゴブリンなのですか!」
「なに?南の亜人だと……そうか、そういう事なのか」
元々南の大陸は魔族と亜人とが争っていたのだったな、聞き覚えはあるが見るのは初めてなのは必然だろう。
「ラグナ様!こちらをお手伝い下さい!」
「どうしたマイダ!」
マイダが俺に手伝いを願う事など初めてだったため、ただ事ではないと思い、俺はすぐに彼女の後を追った。すると、そこにはあの少年の母親が湯の中で悲鳴を上げて暴れていた。
「何があった?」
「この女性が殺して欲しいと暴れまわっているのです!」
別に四肢が無くなったわけでもないのに、ゴブリン嬲られていたことが相当苦しかったらしい。俺はすぐに彼女や他のゴブリンに嬲られた女を別室に集めて、洗脳のスキルで記憶を塗り替えていった。そうしなければ、彼女らの死への願望はずっとくすぶっていただろう。
少年はグラゴ、母はパーテ、姉はパム、三人は浅からぬ縁でマイダの傍に住まわせることにした。だが、グラゴともパーテとも俺は一度たりとも会うことはなかった。
「ラグナ様!マイダ様!何かお手伝いすることはありませんか?」
パムは率先して俺たちに話しかけてくるが、パーテは洗脳で俺を敵視するようになってしまったため、今はグラゴとパムが俺の傍にいること嫌っている。
「グラゴは元気にしてるかパム」
「はい!でも……母がグラゴをラグナ様に会せないようにしているんです……助けて頂いたのに、どうして母はあんな無礼なことを」
洗脳はとてもガッカリな性能で、他人の認識を少し変えられる程度に留まる。
ゴブリンに嬲られた事実を暗黒騎士ラグナに嬲られた、そう勝手に洗脳されてそれを解くには性的にまた俺以外の存在が上書きするしかない。
「きっと心を痛めてしまったのだ、彼女の態度は気にしない、生きる希望を持ってくれてよかった」
「ラグナ様……私!ラグナ様に恩返しします!母の分も必ずです!」
別に恩返しなど、しかし、こうしてパムの様にラグナに対して恩義を持つのは悪い傾向ではない。将来的にはそれによってこの魔族領にとってはいいことになる。
パムは、薄い黒髪とマイダに劣るものの大きな胸が特徴と言える美少女だが、どうやら魔族には貧乳の概念がないらしい。
それにしても、南の大陸からゴブリンがやって来るとは予定外過ぎる。
「どうやらゴブリンの斥候、コボルトの斥候、ラビッツの斥候がやってきているようです」
「ゴブリンにコボルトにラビッツ……厄介なタイミングだな」
あれから一週間、結婚式をすっぽかし、俺は情勢悪化の魔族領に留まっている。
コボルトは犬頭の亜人で、ラビッツはウサギ頭の亜人なのだが、ゴブリン同様にこの大陸へと侵攻していて、略奪を繰り返しているらしい。
この区に限っては俺が早急に対策したが、リガナルバナス区とアグサレシアス区に関しては対処が遅れている。というのも、断続的にゴブリンの軍が南から続々と到着しているからだ。
「東西を助ける者がいないとなると……早急に暗黒騎士ラグナの存在を周知させる必要がありそうだな」
「ラグナ様?いかがしました?」
「いや、なんでもない」
パムは俺の冑をジッと見ながら言う。
「ところで、どうしてラグナ様は冑をいつも被っていらっしゃるのですか?」
「……特に意味はない、気にするな」
替え玉が使えるように常に顔を隠している、などと言ってもな……将来的にはまったく別の男に暗黒騎士ラグナを務めてもらうつもりでいるからとも言えない。
「なら、一度だけお顔をお見せ下さいませ」
「パム、詮索はよせ、俺の顔など知らなくてもいいんだ」
「え~知りたいです~」
「こらパム」
マイダの言葉にようやくパムは口を閉じた。
俺の顔を知るマイダは、ジッと俺の冑の中の顔を思い返し、「ラグナ様はとても男らしい顔立ちをしています」と自慢げにそう言った。
「ズルいですマイダさんだけ~」
彼女らの想いにも答えたいが、ミレイユやアーシャたちを後回しにしていることが、今の俺には後ろめたさが残り、彼女らに触れることを躊躇ってしまう。
「すべてが終わった時には一度だけ見せてやる」
「ほ、本当ですか!やった~楽しみだな~」
そうしてパム達のところで息抜きした後は、再びのゴブリン退治だ。
これまでに遭遇したゴブリンの集団は全て斥候か、もしくは小隊規模の最小集団たちだ。
船でこの大陸へ向かってきている彼らの胆力には恐れ入るが、船の技術的な面を鑑みた結果、彼らが大規模で来ることはないと予想できる。
おそらくは、こちらへ着く前にかなりの数の船が難破している可能性が高い。
彼らが使用する能力的なものは強化魔法に特化しているらしく、使命によるスキルがないことからも、彼らの親はゴブリン自身か魔族で間違いない。
稚拙な技術で海洋へ進出したはいいが、サバイバルするしか生き延びることができないのが現状といったところだ。
南の街と領土を奪っておいたおかげで、水際処理が可能になっている。
街の防衛にと考えていた魔法小隊を、全て南の街に駐在させて日々海岸には交代制で見張りを置いている。
今しばらくはこのままで何とかなる、そう思った俺は久しぶりにミレイユたちの元へ帰ることにした、が、憂鬱なのはすっぽかしてしまった結婚式だ。
「こっちに来ていることを伝えているライエはまだいいが、アーシャはきっと怒っているのだろうな」
そう思いつつ転移した俺を待っていたのは、ミレイユやエシューナ、トライエやアーシャの心配していたという表情だった。
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