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第一章 ピンチとチャンスは紙一重

最後の空旅

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 空の旅を初めて7日、僕たちは最後の空旅をしていた。

「いよいよ、空の旅も終わりか……」

 眼下に広がる白く眩い山々を眺めながら、僕はポツリと呟く。

 僕らの横を一羽の鳥が飛び去っていく。
 あの鳥さんはどこへ向かうのだろうか。

 そんなことを考えてしまった。

 僕らは……、この空で、何をしてきたのだろう。

 初代鳥さんに捕まってから、僕の意思は鳥さんたちと共にあった。

 鳥さんたちは、そう。自由だった。

 この名前のない大空を思いつくまま飛んで、ご飯を食べたいときに食べ、自由に……。
 自由に。
 そうか、僕らはこの空に自由を求めて来たのか。

 そう思うと少しだけ、この自由な時間が終わってしまうことが寂しく感じる。

「……僕、思ったんだ、魔物も人間と一緒で良い奴もいれば悪い奴もいるって」

 誰に聞かせる訳でもなく、どこか遠くへ向かって話すような口調だった。
 そう、魔物も基本的なことは僕たちと一緒なんだ。

「ただ、扱う言葉が違って、翼があって、くちばしがあって、体がすごく大きくて、全身の体毛が鮮やかで、もの凄く力持ちで、人一人ぐらい楽々と運べるってだけだよね!」

「……。」

 そっかそっか!鳥さんもそう思ってくれるか~!

 沢山の鳥さんたちと出会ってきたからこそ分かる。
 この鳥さんは、性格の良さが違う。

「ねえ、鳥さん鳥さんの名前はなんていうの?」
  
「……。」
  
 鳥さんは、なにも答えてはくれなかった……。

 ……いや、違う!!
 鳥さんほどの大きくてモフモフした鳥さんは滅多にいない。
 つまり、名前は知っていて当たり前の話なのだ。
  
 だが、僕は、魔物の名前なんて知らない!
 だって関わる予定なんてなかったんだから!

 けれど、それが鳥さんのプライドを傷つけてしまった……。

 でも、僕は名前を知らないし、知ったかぶりは失礼だろうし……。
 いったいどうしたら……ハッ!!?


 ニックネームなんてどうだろう?


 これなら名前を知らなくても、つけれるし、何より特別感が出る!

 個人を特定するものとしては、最適かつ最良だ!!
 ニックネームはその人の特徴を最大限反映したものを呼ぶのが一般的だ。
 たとえば、僕のニックネームの「王子」みたいな!
  
 鳥さんの特徴は、ふさふさで、大きくて、モフモフで、うーん。

—―もう、鳥さんでいいか。

「鳥さん!君の名前は鳥さんだ!どうだい!鳥さん!」

「……。」

 よし!気に入ってくれたみたいだな。
 良かった。良かった。
  
「それにしても、随分高いところまで来たな」

 気が付くと、僕らは見上げていたはずの雲の……。上にいた。

「ねえ鳥さん、あのどんよりとした雲なにか分かる?」

「……。」

「あの雲を見てるとこう、ゾワゾワってするのは何でかな?」

「……。」

「なんでさっきから何も答えてくれないの?」

「……。」

「無視は良くないよ!鳥さ—―」


――――ビュオオオオ!!
  
  
 え………
  
――――ッババババババ!!!!
  
  
 いや……
  
――――ッババババババババババ!!!!
  
「……………。」
  
 あー、これアレだよね。
 きっと、夢……だよね!

 だって鳥さんも僕と一緒に落ちているんだ……。

 鳥さんが空から落ちる?

 ははは!あり得ない、あり得ない。あり得ないよね?
 うん。あり得ない、あり得ない。あー、びっくりした!

 うんうん。でも、普通に怖いんだ……。
 だからね……もう目覚めてもといいと思うんだよね!!


 ……。まだ覚めないのかな?


 ……。遅いなぁ~。


 ……。念のため、ほっぺ、つねろう。


「……痛い」


 いや、いやいやいや、そんな訳ない!

 あ、そういえば!
 最近の夢は少しくらいの痛みなら再現できるって、水晶に手をかざしてたおじさんが言ってたな。

 いやぁ、あの時は何言ってんの?この人。とか思っちゃったけど、まさか本当の話だったなんて、今度、お詫びに饅頭でもあげよう。

 さて、少しの痛みは再現できてしまうんだ。
 ここは再現できないくらいに、ここは思いっきり行こう!
  
 拳をギュッと握って、
――ボグッ!


「……ぐすんっ……」
  
  
――――ッババババババババババ!!!!
  
 うん、分かってた、分かってたさ。
 これが現実だってことくらい!!

  
「はぁ…………。ギャァァアアアアアアアアアーーーーーーーーー!!!!」

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