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Old story___むかしの物語
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久しぶりに昔の景色を、思い出した。
10年前。
私がまだシスターじゃなくて、
レイラ・ウォーカー____レイラおばさんがまだ元気な頃で...
そして____
ヘッダ・クラインが産まれる前の、話であった。
アンナ・ウォーカー___8才。
私は、親を早くに亡くした人間だ。
『あんな小さいのに___可哀想ね』
そう、今まで出会ったどんな人からも言われてきた。
でも私はそうは思わない。
そりゃ常識的に考えればそうだと思う。
でも...飲んだくれの父と
貧乏だけど頑張って暮らしている母親...。
『貧乏でも、幸せならいいじゃないか』
そう思う人は当然いるだろう。
...でも、
大酒飲みの父親と、
他に売るものが無いからといって
仕方なく自身の体を売っている母親でも、
それは『幸せな家族』だと言えるのだろうか?
正直私は、これで良かったんだと思う。
あんな人の傍にいたら、
自分まで狂ってしまうに違いない。
そんな私も、孤児だから、という理由で
良くしてくれた近所のおばさんが、
クライン教会、という所に入れてくれたのだ。
建物自体はそこまで大きくはないが
人もそれなりに多い。
..少なくとも、
あの頃よりは居心地の良い空間だ。
それに、クライン教会には
面白いおはなしを聞かせてくれる、
レイラ・ウォーカーというおばあさんがいる。
絵本の読み聞かせがすごく上手で
色々な話を聞かせてくれる___そんなひとだ。
私はすごくそのおばあさんが好きだったし、
この人のようでありたい、と
幼いながらに思っていた。
この人のおしゃべりを聞くのが
その時自分の生きがいだったかもしれない。
数年後、
ヘッダ・クラインという赤ん坊が産まれた、らしい。
その時は教会中が凄く煩くて、
あまり気にしていなかったが、
父親はこの教会の神父さまだけど、
母親はもう既に亡くなっているため
孤児、らしく。
自分と同じ、レイラおばさんの元に預けられた。
....ヘッダ・クライン。
綺麗な蒼い眼をしている、小さい赤ん坊。
クライン教会の娘、だからといって
他のシスターさん達からは
特別扱いをしなければ駄目よ、とそう言われていた。
当然だとも思った。
でも、素直に認めることはできなかった。
そんな私を、悪い子だと誰もが言った。
でも、レイラおばさんは違ったのだ。
「ごめんね、アンナ。
今、ちょっと手が離せないから____」
『ねぇ、レイラおばさん。』
「なんだい?」
『あのね、私、言われたの。
私は悪い子だ、って....』
「いいや、それは違うさ。
確かに、嫉妬心はいけない思いかもしれないよ。
でも、その感情を憶えた、ってことは
またひとつ、『成長した』ってことさ。
アンナは成長を、悪いことだと思うかい?」
首を大きく横に振った。
「...そうかい。
そう思うんだったら、好きなだけ泣きな。
泣くのは自由だからね。」
私をちゃんと認めてくれた人、初めてだ。
そう思った。
その日、私はヘッダ・クラインが寝てから
いっぱいいっぱい、レイラおばさんと話した。
楽しくて....すごい嬉しかった。
こんな感情、初めてだと思った。
そして、
もうちょっとだけ、
ヘッダ・クラインとちゃんと、
接してみようかなと思った。
数年が、経った。
「ねぇ、アンナ!!アンナどこー?」
幼い、可愛いらしい声が教会に響く。
「ヘッダ....ここだよ!!」
よく教会の人に叱られた。
仲良くするなと、
ヘッダ様に対して__クライン教会ではずっとそう言われてきた。
でも、頑張って接してみようか。
.......仲良く、できたらいいなぁ。
この日から、私は変わる勇気を持ったのだった。
10年前。
私がまだシスターじゃなくて、
レイラ・ウォーカー____レイラおばさんがまだ元気な頃で...
そして____
ヘッダ・クラインが産まれる前の、話であった。
アンナ・ウォーカー___8才。
私は、親を早くに亡くした人間だ。
『あんな小さいのに___可哀想ね』
そう、今まで出会ったどんな人からも言われてきた。
でも私はそうは思わない。
そりゃ常識的に考えればそうだと思う。
でも...飲んだくれの父と
貧乏だけど頑張って暮らしている母親...。
『貧乏でも、幸せならいいじゃないか』
そう思う人は当然いるだろう。
...でも、
大酒飲みの父親と、
他に売るものが無いからといって
仕方なく自身の体を売っている母親でも、
それは『幸せな家族』だと言えるのだろうか?
正直私は、これで良かったんだと思う。
あんな人の傍にいたら、
自分まで狂ってしまうに違いない。
そんな私も、孤児だから、という理由で
良くしてくれた近所のおばさんが、
クライン教会、という所に入れてくれたのだ。
建物自体はそこまで大きくはないが
人もそれなりに多い。
..少なくとも、
あの頃よりは居心地の良い空間だ。
それに、クライン教会には
面白いおはなしを聞かせてくれる、
レイラ・ウォーカーというおばあさんがいる。
絵本の読み聞かせがすごく上手で
色々な話を聞かせてくれる___そんなひとだ。
私はすごくそのおばあさんが好きだったし、
この人のようでありたい、と
幼いながらに思っていた。
この人のおしゃべりを聞くのが
その時自分の生きがいだったかもしれない。
数年後、
ヘッダ・クラインという赤ん坊が産まれた、らしい。
その時は教会中が凄く煩くて、
あまり気にしていなかったが、
父親はこの教会の神父さまだけど、
母親はもう既に亡くなっているため
孤児、らしく。
自分と同じ、レイラおばさんの元に預けられた。
....ヘッダ・クライン。
綺麗な蒼い眼をしている、小さい赤ん坊。
クライン教会の娘、だからといって
他のシスターさん達からは
特別扱いをしなければ駄目よ、とそう言われていた。
当然だとも思った。
でも、素直に認めることはできなかった。
そんな私を、悪い子だと誰もが言った。
でも、レイラおばさんは違ったのだ。
「ごめんね、アンナ。
今、ちょっと手が離せないから____」
『ねぇ、レイラおばさん。』
「なんだい?」
『あのね、私、言われたの。
私は悪い子だ、って....』
「いいや、それは違うさ。
確かに、嫉妬心はいけない思いかもしれないよ。
でも、その感情を憶えた、ってことは
またひとつ、『成長した』ってことさ。
アンナは成長を、悪いことだと思うかい?」
首を大きく横に振った。
「...そうかい。
そう思うんだったら、好きなだけ泣きな。
泣くのは自由だからね。」
私をちゃんと認めてくれた人、初めてだ。
そう思った。
その日、私はヘッダ・クラインが寝てから
いっぱいいっぱい、レイラおばさんと話した。
楽しくて....すごい嬉しかった。
こんな感情、初めてだと思った。
そして、
もうちょっとだけ、
ヘッダ・クラインとちゃんと、
接してみようかなと思った。
数年が、経った。
「ねぇ、アンナ!!アンナどこー?」
幼い、可愛いらしい声が教会に響く。
「ヘッダ....ここだよ!!」
よく教会の人に叱られた。
仲良くするなと、
ヘッダ様に対して__クライン教会ではずっとそう言われてきた。
でも、頑張って接してみようか。
.......仲良く、できたらいいなぁ。
この日から、私は変わる勇気を持ったのだった。
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