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第二章 真の勇者は異世界人

チバケイン神国の策略

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 サラスティは花嫁修行のためチバケイン神国の学園に通っていた。

 数日前、同じ学園に通う同室の友人が大怪我をした。

 それは片腕を失うほどの大ケガだった。

 サラスティは躊躇なく親友に回復魔法を使い、部位欠損を回復させた。

 そこまでの回復魔法は神国に目をつけられる。神国には回復魔法を使う者の生殺与奪権がる。一般的には知られてないが使徒を抹殺するためだ。

 使徒が目覚める前に殺す条件は卓越した力を持つもの又は部位欠損を直すほどの力を持つものなのだ。

 特に部位欠損回復は使徒を判断するための重要な項目なのだ。

 だから回復魔法は見ざる言わざる聞かざると言うのが貴族の間では暗黙の了解なのである。

 誰しも自分の子供を殺させたくないと思うのは当たり前の親心である。

 だがチバケイン神国側にサラスティが部位欠損を治すほどの回復魔法を使ったのが漏れた。

 あらゆる場所に間者を放っている王国連合や神国の目から逃れることはできなかった。

 サラスティは神国側に連行された。

 チバケイン神国はサラスティを利用することを考えた。

 彼女を捕まえた神国はその力で神国に協力する気はあるかを聞いた。

 自分はベルナルド王国貴族の子弟でチバケイン神国に協力できないと意思表示をした。

 協力できないのであれば国外退去処分にすると言われた。

 犯罪を犯したわけでもない他国の貴族の子弟を国外退去処分にするなどふざけた国だと思ったけど神国の噂、回復魔法の使い手の生殺与奪権を持つなど大袈裟な噂だったのだろうと思った。

 国外退去は納得いかないが、親友を助ける事が出来たサラスティはそれだけで満足だった。

 サラスティは意気揚々とチバケイン神国を出国した。

 

「なるほどね、だいたい分かったわ」

「多分、あなたは盗賊に襲われ死んだことにして、神国に無理やり協力させようとしたと言うことかしら?」

「信じたくないですが思い当たるのは思い当たるのはそれしか無いです」

 すぐに言えなかったのはマリアが神国出身者だからだったのかな。ミリアスにマリアが大丈夫か聞いたのだろう。いきなり斬りかかろうとしたしね。

「でも、なぜ神国はこんな無法なことを」

 そう言うと彼女はマリアをちらりと見る。

「神国は貴女のような三流国家の貴族の娘など、どうとでも出来る権力をもった国なのです」

 侮蔑の眼差しで見られた事に苛立ったマリアが挑発的に言い捨てる。

 今のはサラスティが悪いかな、チバケインとアキトゥーは別な国だ同じに扱われれば誰だって怒る。

「申し訳ありませんマリア様、無礼をお許しください」

 空気を察したのかサラスティは謝罪をする。

「謝ってすむなら憲兵隊はいらないわ」

 そう言うとマリアはそっぽを向く。

「おいマリア、彼女も謝っているんだ許してやれ」

「うるさいわね色ボケタンク。タンクはタンクでもあんたはザーメンタンクでしょ」

「誰が色ボケザーメンタンクだ!」

 とうとうマリアとミリアスが喧嘩をしだした。

 まあ、やらせておこう。ここで止めても心にわだかまりができてギスギスするだけだ。

 理由がある喧嘩を止めるのは良くない、せいぜいやりすぎるのを止めるくらいがちょうど良い。

 さて、問題はこのままベルナルド国に彼女を連れ帰っても神国や王国連合の圧力がかかるだろう、手に入らないなら殺せと言うこともあるかもしれない。

 そもそも、使徒は殺すのが神国や王国連合の存在意義なのだ。

 放って置くわけがない。つまり彼女の危険はとり除かれていない。

 引くか、進むか……。

 このまま彼女を国に送り届けても危険があるのだから当然ミリアスはサラスティの元に残るだろう。

 それだと私も残らないといけなくなる。

 ミリアスを守るのはガリウス様との大事な約束だ。

 私に残された道は前進あるのみ、猪突猛進よ。

「よし! 決めたわ」

 マリアとミリアスの殴り合いの喧嘩を終了させ、私は今後の方針を話した。

「マイラねえ、本気かよ」

「さすがお姉様です、私もとことん付き合います」

「そなん事が……」

 そう、これしかない。

 私達の目標と彼女を救うことを両立するにはこれしかない。

「チバケイン神国をぶっ潰すわ!」

「こんな時に兄貴がいてくれれば……」

 ミリアスが私の案に不安を持ってるのだろうけど、その言い方だと、まるで私がおかしいこと言ってるみたいじゃない。

 まったく失礼な話ね。

「兄様ならチバケイン神国にいらっしゃいますよ?」

「「「は?」」」

 みんなはミリアスの兄貴であるメルウスがチバケインにいると言われたと思って疑問の声を上げる。

「グランヘイム王国第二王子ミノバ=ディル=グランヘイム殿下ですよね?」

 メルウスのことではなかった。そりゃそうよねサラスティがメルウスを知ってるわけないんだから。

「兄貴違いだな。というか、ディルのやつチバケイン神国に居るの?」

「はい、グランヘイム唯一の生き残りとしてグランヘイム臨時政府を発足しております」

「唯一って、俺も居るんだけど」

 ミリアスは、自分が死んだことになっていることに不快感を示す。

「そうなんです、ミリアス様は死んだと聞いていたので……」

 ミリアスが生きているのはアキトゥー神国を通じて王国連合に連絡が行っているはずなのに。

 この事件に王国連合が絡んでるとしたら?

 長く続いた組織は腐敗するというし、戦争が起きても王国連合は不干渉の可能性があるわね。

 そして冒険者ギルドも神国や王国連合の組織なので守ってくれない。

 最悪、冒険者ギルドも敵になる。

 こんな時にメルウスが居れば、良い案を出してくれたろうと思わずにいられなかった。
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