上 下
58 / 67
4章 守りたい者たちは誰なのか

桃色の髪のクニャラ

しおりを挟む
「ケンタぁぁぁぁぁ!」
 地上に降りたサラにクニャラとレオナ、それと二人の少女が合流する。
「サラ、大丈夫?」
「サラお姉様!」
 太陽の華フラワーのメンバーがサラに駆け寄り体の状態を確認する。
 サラはシーファとシャーロンの魔法の協力で上空の伊400型まで打ち上げられたのだ。
 当然、かなり無茶をしたので身体に負担がかかり実力を発揮しきれなかったのだ。
 もちろん死ぬ気だったと言うこと前提だが。

「ケンタが、ケンタが」

「ケンタがどうしたです?」
「ゴメス、ケンタさんになにしたの?」
 合流したクニャラとレオナがケンタに何かをしたと思ってサラを問い詰める。

「違うんだ、ケンタが、ケンタがサラって、私の頭を昔のように撫でてくれて、サラって呼んでくれて。ケンタぁぁぁぁ!」
 サラは今まで押さえていた気持ちが溢れるようにケンタの名前を呼ぶ。
 サラは二人よりも年上だったと言うこともあり感情を押さえていたのだ。

「だからケンロウはケンタだと言ったです」
「気づくの遅いのよ、ゴメスは」
 感情を露にして泣くゴメスにヤレヤレと自分達のことを棚にあげて呆れる。

「ケンロウはやっぱりケンタさんと言うことでいいの?」
 シーファが地面に突っ伏して泣いているサラ尻を叩いてしっかりしろと激を飛ばす。

「ごめん、もう大丈夫だ。そうだケンロウはケンタだ私はゴメスだと言ったのにサラと言って頭を撫でてくれた」

「「頭を撫でた!?」」
 サラのその発言にふたりは頬を膨らませるが、今はそれどころではないと思い直した。

「なら、やることは一つなのです」
「そうだね、さっさと行きましょう」
 クニャラとレオナの二人は黒い飛行体を追うために数歩歩き出すと後ろを振り返り手を差し出す。

「早く立つのです、バカ巨人族」
「行きましょうゴメスさん」
 サラは二人の手を取るとクニャラを肩に乗せレオナを小脇に抱えると全力ダッシュでケンタの後を追いかけた。

「ちょ! ゴメス! 私たちそんなに早く走れないわよ!」
「おねぇさま~ぁ!」


◆◇◆◇◆

 サラが地上に降りたのを確認して俺はほっと胸を撫で下ろす。
 青髪の少女、赤髪の少女、サラを含めた、あの三人が俺が守りたい人たちだったのか。
 サラの名前を思い出せたのは名前が強烈だったからだろうか。

 まあいい、今、俺がやることはひとつだ。

ケンさぁ、さすがに突き落とすのはないだろ」

「シンミアが常識を俺に問うとか成長したな」
 俺がそう言うとシンミアはヘルムをゴツンと叩く。

『ケンロウ様、王城衝突まで30秒前です。衝撃に備えて手すりにお捕まりください』
 俺は伊400型のデッキに付いている手すりを強く握り込む。

『20』

『10』

『9.8.7.』
『ケンタ様エネルギー波が来ます!』
 突如スヴィニヤーから警告が来る。その警告の意味を考える暇もなく王城から光の玉が飛び出し俺たちを穿つ。

「シンミア頭を引っ込めろ!」
 魔法なら俺の鎧は無効化できる。俺が盾になればシンミアは傷つかない。

ケン、これ神の光だ! 魔法じゃないぞ!」
 光が当たりバキバキと潜水艦が破損していく。
 落とされると思った瞬間、スヴィニヤーの風が巻き上がり水蒸気を集め光を拡散させる。

 だが最初の衝撃のせいで衝突地点が大幅に変わり、伊400型は城壁に突き刺さった。

 突き刺さると同時に城から魔法や剣技が大量に降り注ぎ飛んで来る。

「温いな」
「ヒュ~ケンカッコいい!」
 魔法や剣技が効かないのをいいことに、ちょっと格好つけてみた。
 当然それを知っているシンミアは俺を茶化す。

 いや、もっと俺を誉めてもいいんだぞ? と言おうとしたらスヴィニヤーが不穏なことを言い出す。

『ケンタ様、先程の光は神属性の光です』
 神属性の光? スヴィニヤーの風みたいなものか。つまり王国側には光の神がいる?

『どう言うことだ?』

『あちらは光の神リュミエール様が協力しているのかもしれません』
 俺の女神様である光の神リュミュールなぜ俺と敵対する。

 なにか事情があるのか、それともいやいや力を貸してるとか?

 女神様には世話になっている、敵対するのは正直嫌なんだが。だが、やると決めた以上女神様が敵対者だとしてもやるしかない。

「いくぞシンミア、俺から手を離すなよ」
「おうよ、ぶちのめしてやろうぜ」
「いや、スルーだぞ」
「おう、分かってる。分かってる」

 シンミアは上機嫌で鼻歌交じりの俺の背中にへばりつく。こんなに機嫌がいいのは久しぶりだな。
 シンミアの機嫌が良いからか俺の動きも良くなり、魔法や斬撃を楽々かわし、俺は城の中へと入った。
 フルメイルの騎士団員が俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。その勢いはまるでダムが決壊した河川のようだ。

 幾人いくにんかの持つ武具はエルダートレインの天叢雲剣や神杖ケーリュケイオン等だが、弱すぎる。
 モンスターテイマーには効かないとは言えこんなに弱くもない。

 偽物か?

 だが偽物とはいえ、一応特殊な力はあるようだ。その武器たちに興味を持った俺は偽物の天叢雲剣とティルフィング、偽物の神杖ケーリュケイオンを次々と奪い取りアイテムボックスにしまった。

 攻撃を避けつつ素材確認すると、とんでもない情報が出てきた。

◎偽天叢雲剣
 ・罪人の脳神経
 ・罪人を打ち付けた鉄釘
 ・罪人を焼いた灰
 ・鉄9kg
 ・緑魔石300g

 うあ、なんだこれ。
 罪人とはいえ人間を材料に使うとかドン引きれじゃないか。
 
 人を材料に剣を打つと強い剣ができるって漫画で見たことがある。これもそのたぐいか?

 こんなものが有用だとなれば、力ない人間は材料にされ武器を作るようになるだろう。そんなことはさせられない。
 すべての武器を破壊する。

 俺は攻撃を高速移動で避けつつすべての騎士団の武器を奪い取り破壊してた。武器を奪われた壊された騎士達は、なにもできずにオロオロしだす。
 武器に頼った戦いしか知らないやつらの反応だな。

 すべての騎士団を潜り抜け王宮の間の扉をこじ開ける。扉を開けると玉座にはバカ王が余裕の表情で俺を笑う。
 その前にはブーケを被った少女が頭を下げ膝を着き腕を胸の前で合わせて座っている。

「ふん、ここまで来るとはなあ~なんと言ったかな?」
「ケンロウでございます陛下」
「ふん、下賎な輩の名前など呼ぶ必要はないな。おい貴様さっさと降伏すれば許してやるぞ。ただしお前は我が配下になるがな」
 そう言うとガハハと馬鹿笑いをした。

 俺が前に出ると玉座に座る王の前にいる、小さな桃色髪の少女が顔を上げ目を見開く。

 顔を上げた少女の顔を見て俺は動きは止まる。
 その顔は、俺の魂の残響に出てくる、いや青髪の少女クニャラと同じ顔だったからだ。

 そして目を見開いた少女からは俺たちに向け神光の玉が放たれた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

賭け場【完】

雑煮
恋愛
18禁。誘拐された少女達がオジサマ達の『賭け場』と呼ばれる会場で様々なプレイでかけの対象にされる。

Switch jobs ~転移先で自由気ままな転職生活~

天秤兎
ファンタジー
突然、何故か異世界でチート能力と不老不死を手に入れてしまったアラフォー38歳独身ライフ満喫中だったサラリーマン 主人公 神代 紫(かみしろ ゆかり)。 現実世界と同様、異世界でも仕事をしなければ生きて行けないのは変わりなく、突然身に付いた自分の能力や異世界文化に戸惑いながら自由きままに転職しながら生活する行き当たりばったりの異世界放浪記です。

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。 小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。 本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。 お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。 その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。 次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。 本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

ここ掘れわんわんから始まる異世界生活―陸上戦艦なにそれ?―

北京犬(英)
ファンタジー
第一章改稿版に差し替中。 暫く繋がりがおかしくなりますが、ご容赦ください。(2020.10.31) 第四章完結。第五章に入りました。 追加タグ:愛犬がチート、モフモフ、農業、奴隷、少しコメディ寄り、時々シリアス、ほのぼの  愛犬のチワワと共に異世界転生した佐々木蔵人(ささき くらんど)が、愛犬プチのユニークスキル”ここ掘れわんわん”に助けられて異世界でスローライフを満喫しようとします。 しかし転生して降り立った場所は魔物が蔓延る秘境の森。 蔵人の基本レベルは1で、持っているスキルも初期スキルのLv.1のみ。 ある日、プチの”ここ掘れわんわん”によりチート能力を得てしまいます。 しかし蔵人は自身のイメージ力の問題でチート能力を使いこなせません。 思い付きで農場をチート改造して生活に困らなくなり、奴隷を買い、なぜか全員が嫁になってハーレム生活を開始。 そして塒(ねぐら)として確保した遺跡が……。大きな陰謀に巻き込まれてしまいます。 前途多難な異世界生活を愛犬や嫁達と共に生き延びて、望みのスローライフを送れるのだろうかという物語です。 基本、生産チートでほのぼの生活が主体――のはずだったのですが、陸上戦艦の艦隊戦や戦争描写が増えています。 小説家になろう、カクヨムでも公開しています。改稿版はカクヨム最新。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます

ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。 何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。 生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える そして気がつけば、広大な牧場を経営していた ※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。 7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。 5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます! 8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!

処理中です...