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1章 変態紳士二度目の異世界転移

その人の価値で命の天秤は決まる?なら俺はお前らが捨てた命を助けてやるよ。

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「クニャラどうしたんだ!」

「レオナが、レオナが……」

 俺は入り口前で倒れるクニャラを起こすと我が目を疑った。昨日直したばかりの服がボロボロに破れ身体中切り傷だらけで、まだ新しい傷からは血が滝のように流れていた。

「クニャラ話はあとだ、先にこれを飲め」

 俺はストレージから回復薬(大)を取り出すとクニャラに飲ませた。傷が回復したクニャラは気力が戻り何があったかを話し出した。

 二人は最初いつもの狩場で魔物を狩っていたのだが、普段より調子よく魔物を狩れていたこともあり、いつもよりも深く森に入ったのだろ言う。

 しばらく行くと見たこともない洞窟が目の前に出現した。

 そして,それが昨日新緑の風エルフィーネが言っていた新しい魔窟だと気がつき、いつもより調子がよかった二人はそのまま魔窟を探検することにした。

 魔窟を進むと当然のごとく魔物が現れた。

 その魔物は見たこともない魔物で、二人の攻撃はあまりダメージを与えなかった。

 これ以上戦っても勝てないと判断したクニャラは撤退を提案したがレオナは引かなかった。

 俺に恩返しするんだと言って。それでクニャラもそれに賛同して一緒に戦ったのだが、突如罠が発動して魔物とレオナは地底へと吸い込まれた。

 その穴は石を投げても音が聞こえないほど深くクニャラはレオナを助けられなく、泣く泣く戻ってきたと言うのだ。

「お願い誰か助けて。レオナが、レオナが」

 冒険者に助けを求めるクニャラにある男は言った。

「自業自得だろう。魔窟探検はD級ができるほど甘くないし許可もされてない、冒険者の常識だ」

 そして女の冒険者もクニャラを侮蔑ぶべつして言う。

「あなた達の身勝手に私たちを巻き込まないでよ」

 ルールを守らなかった二人が悪い。自分の力を省みないで欲を張ったんだ自業自得だ。その言い分もわかる。

 だけど。

 だけど。

「クニャラ、俺がレオナを助ける。場所を教えろ」

「おいおい、やめてけよ鍛冶屋がどうこう出来る場所じゃないんだぜ魔窟はよ」

「そうよ、あんたがいなくなったら私達の武器を研ぐ人がいなくなるじゃない。D級冒険者よりあんたの方が重要なのよ」

 先程騒いだ冒険者が俺が魔窟へ行こうとするのを止める。当然利用価値の差だろう。D級冒険者が死んだところで彼らにはなんのデメリットもないのだから。

 その人の価値で命の天秤は決まるのか? なら俺はお前らが捨てた命を助けてやるよ。

「あんたらの中じゃ、レオナはただのD級冒険者なんだろう、でも俺にとっては笑顔も知ってる。怒った顔も知ってる。D級冒険者なんて名前のやつじゃない、大事なレオナなんだよ」

「「「……」」」

 俺は紙を取りだしクニャラに地図を書くように言った。

「私もいくです!」

「ダメだ! クニャラは足手まといだ」

「……でもです」

「俺は弱い、レオナを一人抱えて逃げるのが精一杯だろう。クニャラも一緒にもぐると生存率が下がるんだ、分かってくれ」

「……分かりましたです。でも魔窟までの道案内はさせてくださいです」

 確かに地図を見ながらいくよりその方が遥かに早い。

「しかし、魔窟の外で一人にはさせておけない」

「ならクニャラは私が守るよ」

 そう言うとゴメスさんは受付から出てきてクニャラを担ぐ。

「いいんですか?」

「この足じゃ魔窟で戦えないし走れないけど。フィールドくらいの魔物なら敵じゃないさ、元々私はS級冒険者だからね」

 ゴメスさんはS級冒険者だったのか。それならこの年で管理者として任せられているのもうなずける。

「分かりました、クニャラはお願いします。じゃあ行きましょう」


 町の外に出ると、レッサーゴブリンの群れがいたがゴメスさんがすべて一瞬で始末してしまった。どうやら元S級冒険者と言うのは嘘ではないようだ。

 魔窟は思ったよりも町の近くにあった。

「これは不味いね、魔窟が町に近すぎる」

 どうやら魔窟の中の魔物でも魔窟から出てくる種もいるようで、今の町の防御力では心もとないと言う。

 俺は魔窟の中を覗くため右手を魔窟につけた。

◎グレイドラスの魔窟
・S級冒険者4人以上推奨
・ナイトビジョン不可
・出現魔物:ハ虫類種、竜種
・最下層ボス:グレイドラス

「ゴメスさん、この魔窟はハ虫類種と竜種が出るそうです、ボスはグレイドラスと言うらしいです」

「見えるの? え? グレイドラス? ダメだよケンタ。行ったらダメだ。グレイドラスはドラゴン最強種の一角だ生きて帰ってこれない。それに竜種が出現魔物だなんて不味すぎるよ」

 竜はエルダートレインでも強い部類だ生産職の俺じゃ倒せない。

「それでも、行かなくちゃいけないんです」

「震えてるじゃないか」

「武者震いですよ」

 俺はストレージから、いつも来ていた装備を一式だした。見た目は皮鎧だが防御力はフルプレートを上回り付加効果盛りだくさんのやつだ。ただ体力アップや筋力アップの生産仕様で戦闘用じゃない。そして武器はつるはしだ。剣売らなきゃよかったな。

 だがこの”つるはし”だって伊達じゃない。何せ道具作成スキル1000の俺が作ったつるはしだ。

 形状は一方が尖っており、もう一方が平刃のもので、いわゆる鉄道ツルハシと言われるもので頭部はオリハルコン、柄の部分はアダマンタイトで作り上げた。

 付加効果は攻撃力+100%、追撃攻撃、追撃攻撃、追撃攻撃、追撃攻撃がついているお遊び装備だ。

 試し打ちすらしたこと無いが、今はこいつを信じるしかない。

 装備を整えた俺は二人にお別れを言う。

「じゃあ、行ってきます」

「ねえ、ケンタ、もし私が同じことになったとしたら助けてくれる?」

「当たり前でしょ?ゴメスさんでもクニャラでも必ず助けますよ」

 そう言う俺をゴメスさんが抱き締めキスをする。つづいてクニャラも俺の襟首をつかみゴメスさんの肩から俺の唇を奪う。

「勝利の祈願だよ」

「なのです、絶対に帰ってきてくださいです」

 いつのまにか震えは止まっていた。

 確かにこれは勝利の祈願だな。

 女神が二人もついているんだ負けるわけがない。

 俺はサムズアップすると魔窟の闇の中へと足を踏み入れた。
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