父親からの手紙

青空太郎

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感動した映画

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最近、私は定額制動画配信サービスに入会した。「今までで一番感動した映画は何ですか? 」 と父親にLINEすると、次のような返信が返ってきた。



私の感動の一作は1979年制作のサーフィンの映画「ビッグ・ウェンズデー   」である。 学生時代テレビでも放送されて、それをビデオに録画して、友人らと何度も何度も見た。 

カリフォルニアの大きな波を滑っていくサーファーたちとその友情物語に憧れた。

映画にも触発され「俺たちもやろうぜ 」 ということになった。当時はサーフィンのブームの時であり、街にいくつものサ ーフショップがあった。私が中古のサーフボードを買って、友人は中古の商業用のバンを買った。

地元の海は、夏は海水浴場になるような静かな波しか立たず、冬にサーフィン用のサイズの波になる。

漁連に勤める糸島の明おじさんからダイビングに使うような厚手の真っ黒のウエットスーツを譲ってもらって、友人と代わる代わる真冬の海に入った。(ボードは一つしかないので、一人が乗ったら、一人は岸で待っている)

それでも、ビッグ・ウェンズデーの世界に近づけたことが嬉しかった。

見よう見まねで沖に出て波を待つ自分は、水曜日の大波を待つマット・ジョンソンになりきっていた。

学生時代に暇を見つけて何度となく海へ通ったが、結局うまく立つことはできなかった。 ボードはボロボロになっているが、捨てることができず、ベランダで雨ざらしになっていた。

ずっと捨てきれずにいたのだが、最近、ごみ処理場に持っていって、粗大ゴミとして処分した。

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