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しおりを挟む俺が朝一でやる仕事。お店を開けた後、室内の掃き掃除に拭き掃除。来てくれるお客さんに居心地が良い様に心を込めて綺麗にする。その内に二人がやって来た。
「おはよう響也君。おっ、頑張っているね」
「おはようございます。はい。頑張ります。今日からよろしくお願いします」
「はは。気合い入っているなぁ。よろしく」
「おはよう響也君。よろしくね」
俺に挨拶した二人は奥の厨房に消えて行った。美味しそうなパンは二人を中心に作られている。
「おはようございます。君が響也君?今日からよろしくね」
もう一人厨房から男性が出て来た。
見た目二十代だろうか。栗色の短髪に筋肉がついたがっしりとした体つき。人が良さそうにニコニコと笑顔を浮かべている。パン作りの二人の通いのアシスタントのエリックさんだ。
「はい。小林響也って言います。今日からよろしくお願いします」
ぺこりとお辞儀をした。人の良さそうな人だ。俺環境に恵まれているのかな?
「はい。よろしくね。余り固く成らずに気楽にね~」
エリックさんは笑顔で手を振り厨房へ行った。これから三人はパンを成形したり焼いたり戦場になる。俺は沢山ある小麦粉の袋を運んだり、材料を聞いて揃えたり、器具を揃えたり、自分が出来そうな事を探して三人の手伝いをした。
お金の単位も教えて貰った。1ギル=1円みたいで覚えやすくて良かった~。国の独特な単位だったら計算する時面倒くさそうだもん。何とか接客はやっていけそうだ。
そうこうしているうちにパンが仕上がりお店の棚に並べられていく。何も入って無いノーマルなパンや、食パンみたいな物、クリームパンみたいな物、フランスパンみたいな物、果物や生クリームが乗ったパイ生地みたいな物、チョコが大量に乗った物などなどだ。惣菜パンも大量に有る。見ているだけで楽しい。
そして開店の準備が整った。
「響也君、お客さんを入れるからプレートをひっくり返して開店にして」
俺はお客さんを入れる為ドアを開けて見てみると、お客さんがお店の前で列を作って開店を待っている。
(凄い。人気なんだ此処。美味しそうなパンいっぱいあるもんな)
人気振りにびっくりして目が丸くなったけれど、気を取り直してプレートをひっくり返して開店にした。
「お待たせ致しました。ただ今開店します。いらっしませ。どうぞ」
店内に入る客を眺めその盛況振りに此処は住民の生活に欠かせない所なんだと嬉しく思えた。
「ありがとうございました。又お待ちしております」
最後のお客さんが帰りお店の中はがらんとしている。達成感で胸がいっぱいだ。今猛烈に感動している。
「お疲れ様。初日で結構大変だったわね?どう、やって行けそう?」
「疲れたんですけど疲れよりやり遂げたという達成感の方が大きいです。それに色々な人と交流出来て嬉しかったんです」
「そうなの?貴方が辛く無くて良かったわ。そうだ、初日って事でみんなでお疲れ様と歓迎の打ち上げしない?うちのパンで良ければ」
「えっ。そんな気を使ってもらって良いんですか?」
「良いよ。君は此処の一員だ。懐に入った人は大事だからね」
「ヨハネスさん。ありがとうございます。何て言ったら良いか...優し過ぎです」
「これが私達なんだから。やり過ぎかしら?」
当たり前の様に言う人達に目尻が涙ぐんでしまう。泣き虫じゃないんだけど此処へ来て泣く事が増えた。莉央との間に感じ無かった温かさに弱くなってしまったようだ。この国で最初に会えたのがこの人達で良かった。幸せな毎日がこのまま続いて行って欲しいと願い俺は感慨に浸って想いを馳せた。
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